【2026年最新版】医療法人設立完全ガイド|メリット・要件・費用・スケジュールは?

医療法人設立などのクリニックの医療関係手続に強いカミーユ行政書士事務所がです。

個人でクリニック・歯科医院を経営している先生から、

「そろそろ医療法人にした方がいいでしょうか?」

「医療法人を設立するには、どのくらいの期間がかかりますか?」

「医療法人化すると節税になりますか?」

「将来的に分院を出したいのですが、先に法人化した方がいいですか?」

といったご相談をいただくことがあります。

医療法人の設立は、株式会社の設立とは大きく異なります。

株式会社であれば、原則として必要な書類を作成して設立登記を行えば法人が成立します。

一方、医療法人は、原則として主たる事務所を置く都道府県の知事から「医療法人設立認可」を受け、その後に設立登記をすることで初めて成立します。

しかも、医療法人設立認可申請には受付時期が設定されている自治体もあり、「医療法人化したい」と思ってからすぐ法人化できるとは限りません。

そのため、医療法人設立では、

「いつ法人化したいのか」から逆算して準備を始めること

が非常に重要です。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、2026年時点の制度を踏まえて、

  • 医療法人とは何か
  • 医療法人設立のメリット・デメリット
  • 医療法人を設立できる人
  • 医療法人設立に必要な社員・理事・監事
  • 医療法人設立に必要な財産
  • 基金とは何か
  • 設立認可申請の流れ
  • 医療法人化に必要な期間
  • 必要書類
  • 設立後に必要となる手続き
  • 保険医療機関指定との関係
  • 分院開設との関係
  • 医療法人設立で失敗しやすいポイント
  • 行政書士に依頼するメリット

まで、できる限り分かりやすく解説します。

医療法人化を検討している医師・歯科医師の先生は、ぜひ最後までご覧ください。


目次

医療法人設立について相談したい先生へ

医療法人設立は、「申請書を作れば終わり」という手続きではありません。

法人化後のクリニック経営まで考えると、

社員構成、役員構成、基金、診療所不動産、医療機器、借入金、リース、法人化する時期、保険医療機関指定、将来の分院展開、医療法人の承継

などを総合的に検討する必要があります。

特に、設立認可申請の受付時期が決まっている自治体では、準備開始が遅れると法人化が半年程度ずれ込む可能性もあります。

「自分の場合、いつから準備すればいいのか」

「現在のクリニックをどうやって法人へ引き継げばいいのか」

「将来、分院を出したい」

という先生は、できるだけ早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。


医療法人とは?

医療法人とは、病院、医師・歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設または介護医療院を開設することを目的として、医療法に基づいて設立される法人です。

医療法人制度は株式会社制度とは性質が異なります。

医療法人には医療の継続性・公共性が求められており、剰余金の配当は禁止されています。

つまり、

「利益を出してはいけない」

という意味ではありません。

クリニック経営によって利益を上げること自体は当然可能です。

禁止されているのは、株式会社の配当のように、法人に生じた剰余金を社員などに分配することです。

法人内部に蓄積された資金は、医療機器の購入、設備投資、職員採用、分院展開など、医療法人の事業に使用していくことになります。


「一人医師医療法人」とは?

「一人医師医療法人」という言葉を聞いたことがある先生も多いでしょう。

名称だけを見ると、

「理事が一人でいい医療法人」

「社員が一人でいい医療法人」

という意味に思われるかもしれません。

しかし、そういう意味ではありません。

一人医師医療法人とは、一般的には医師または歯科医師が常時1人または2人勤務する診療所を開設する医療法人を指します。

したがって、院長1人のクリニックであっても医療法人化することは可能です。

現在では、個人クリニックを経営する医師・歯科医師が法人化する場合、この形態が一般的です。


医療法人は誰でも設立できる?

医療法人は株式会社のように、単に資本金を用意して登記すれば設立できる法人ではありません。

医療法人を設立するためには、医療法に基づく設立認可を受けなければなりません。

そして都道府県は、申請された医療法人について、

  • 必要な資産を有しているか
  • 定款等が法令に違反していないか
  • 医療法人として適切に運営できる体制になっているか

などを審査します。

その上で都道府県医療審議会の意見を聴き、設立認可が行われます。

つまり医療法人設立は、単なる「法人登記」ではなく、行政庁による認可を伴う医療行政上の手続きなのです。


医療法人設立に必要な人員は?

医療法人設立で最初につまずきやすいのが、人員構成です。

社団医療法人では主に、

区分原則的な考え方
社員定款例・自治体運用を踏まえた構成が必要
理事原則3名以上
監事1名以上
理事長原則、医師または歯科医師である理事から選出
診療所の管理者原則として理事に加える必要あり

という構成を検討します。

ここで非常に重要なのが、

「社員」と「従業員」は全く違う

という点です。


医療法人の「社員」とは?

医療法人における「社員」は、一般企業でいう従業員ではありません。

社団医療法人の最高意思決定機関である社員総会を構成するメンバーです。

株式会社で例えるなら株主に近い立場と説明されることがありますが、医療法人には株式会社の株式と同じ意味での持分があるわけではありません。

社員総会では、例えば、

  • 役員の選任・解任
  • 定款変更
  • 重要事項
  • 解散

など、法人運営上重要な事項を決定します。

したがって、

「名前だけ借りればいい」

「とりあえず家族を社員にしておけばいい」

という考え方はおすすめできません。

将来的な法人運営や承継まで考え、社員構成を決定する必要があります。

医療法人の「社員」は従業員という意味ではなく、社員総会を構成する法人の構成員です。

また、社員・理事・監事では役割や権限がそれぞれ異なります。

社員・理事・監事の違いや、それぞれ誰を選任すべきかについては「医療法人の社員・理事・監事の違い完全ガイド」で詳しく解説しています。


医療法人の理事は何人必要?

医療法上、医療法人には原則として、

理事3名以上

を置く必要があります。

ただし、都道府県知事の認可を受けた場合には、理事を1名または2名とすることが認められる場合があります。

一人医師医療法人だからといって、自動的に理事1名でよいわけではありません。

また、医療法人が開設する病院・診療所等の管理者は、原則として理事に加える必要があります。


医療法人の監事は何をする人?

医療法人には、原則として監事1名以上が必要です。

監事は、理事の業務執行や医療法人の財産状況などを監査する重要な機関です。

したがって、

「形式的に誰かの名前を借りる」

という発想は適切ではありません。

また、理事との関係性、取引先との関係、顧問専門家との関係などによって監事としての独立性が問題になる場合があります。

監事候補者を決める前に、申請先自治体の最新の手引・運用を確認することが重要です。


医療法人の理事長は誰でもなれる?

原則として、医療法人の理事長は、

医師または歯科医師である理事

の中から選出します。

医師・歯科医師ではない者を理事長とする制度上の例外はありますが、都道府県知事の認可が必要です。

したがって、通常のクリニックの医療法人化では、院長である医師・歯科医師が理事長になるケースが一般的です。

医療法人の理事長と診療所の管理医師は、制度上の役割が異なります。

理事長が管理医師を兼務する場合や、分院の管理医師を別の医師が務める場合には、理事就任を含めて確認が必要です。

理事長と管理医師の関係については「医療法人の理事長・管理医師兼務完全ガイド」で詳しく解説しています。


医療法人設立にはいくら必要?

これは非常によく聞かれる質問です。

結論からいうと、

「医療法人を設立するには全国一律で現金○○万円が必要」という制度ではありません。

医療法では、医療法人はその業務を行うために必要な資産を有しなければならないとされています。

実際の設立認可申請では、

  • 現預金
  • 医療機器
  • 備品
  • 医業未収金
  • 負債
  • 運転資金
  • 賃貸借契約
  • リース契約

などを確認しながら、法人化後に安定した運営が可能かを検討します。

必要となる資産の考え方や審査方法については自治体ごとの差もあるため、

「ネットに○○万円必要と書いてあった」

という情報だけで判断するのは危険です。


医療法人の「基金」とは?

現在、新しく設立される社団医療法人では、持分の定めのない医療法人が基本となります。

そこで利用されることが多い仕組みが基金制度です。

基金とは、簡単に説明すると、医療法人の財産的基礎を確保するために拠出される金銭等で、定款に基金制度を設けることで利用できます。

株式会社の「資本金」と似て見えますが、法的な性質は同じではありません。

基金については、

  • 誰が拠出するか
  • いくら拠出するか
  • どのように会計処理するか
  • 将来返還する場合の条件
  • 定款をどう定めるか

などを検討する必要があります。

「医療法人設立=とりあえず基金○○万円」

と機械的に決めるのではなく、法人化後の運転資金や財務計画と一緒に検討することが重要です。


個人クリニックの財産は医療法人に引き継げる?

はい。

ただし、すべての財産・契約が自動的に医療法人へ移るわけではありません。

個人クリニックから医療法人へ移行する際には、

  • 現預金
  • 医業未収金
  • 医療機器
  • 車両
  • 備品
  • 借入金
  • リース
  • 不動産賃貸借契約
  • 従業員との雇用関係
  • 各種取引契約

などについて、それぞれどのように取り扱うか整理する必要があります。

特に高額な医療機器や借入金、リース契約がある場合には注意が必要です。

「個人事業を法人化するのだから、全部そのまま移るだろう」

と考えるのではなく、資産・負債・契約を一つずつ確認することが重要です。


医療法人設立のメリット

医療法人化には多くのメリットがあります。

ただし、すべてのクリニックに法人化をおすすめできるわけではありません。

代表的なメリットを見てみましょう。

メリット内容
経営主体の法人化院長個人とクリニック経営主体を分離できる
分院展開一つの医療法人で複数医療機関を運営できる
事業承継法人格を維持しながら経営を承継しやすくなる
社会的信用法人として継続的な経営体制を構築できる
役員報酬理事長等への役員報酬という形になる
退職金設計要件を満たす場合、法人から役員退職金を支給する設計が可能
経営と個人の分離個人財産と法人財産を区分しやすくなる

メリット① 分院を展開できる

将来的に2院目、3院目を考えている先生にとって、医療法人化は重要な選択肢です。

個人開設の場合、原則として開設者である医師・歯科医師自身が管理者となることとの関係から、複数院展開には制度上の制約があります。

一方、医療法人であれば法人が複数の診療所を開設することができます。

ただし、分院を自由に追加できるわけではありません。

一般的には、

社員総会等での決議

定款変更認可申請

都道府県知事の認可

変更登記

診療所開設手続

保険医療機関指定等

といった複数の行政手続きが必要になります。

将来的に分院展開を考えている場合には、最初の医療法人設立段階から将来計画を踏まえて設計することが重要です。

医療法人化後は、一定の手続きを行うことで2院目・3院目となる分院を開設することも可能です。

ただし、分院開設には定款変更、管理医師、診療所開設許可、保健所・地方厚生局への手続きなどが関係します。


詳しい手続きの流れは「医療法人の分院開設完全ガイド」で解説しています。


メリット② 事業承継をしやすくなる

個人クリニックの場合、経営主体は院長個人です。

そのため第三者へ承継する際には、診療所、設備、契約、従業員などについて個別に整理しなければならないことがあります。

一方、医療法人の場合には法人そのものを存続させながら、

  • 社員の入れ替え
  • 理事の入れ替え
  • 理事長変更

などによって経営権を承継する方法があります。

近年は医師の高齢化や後継者問題もあり、医療法人の承継・M&Aについての相談も増えています。

将来的に第三者承継を考える場合も、医療法人化は検討する価値があります。


メリット③ 法人と個人のお金を明確に分けられる

個人クリニックでは、事業主である院長とクリニックが法律上同一人格です。

医療法人になると、

理事長個人

医療法人

は別の法的主体になります。

法人名義の預金口座を持ち、法人として契約し、法人として医療機器を所有するなど、経営主体が明確になります。

これは将来の分院展開や承継を考える上でも重要です。


医療法人設立のデメリット

一方で、医療法人化にはデメリットもあります。

① 行政手続きが増える

医療法人は設立して終わりではありません。

法人化後も、

  • 事業報告書等
  • 経営情報等
  • 役員変更届
  • 登記事項変更登記完了届等
  • 定款変更認可申請・届出

など、状況に応じた手続きが発生します。

特に現在、医療法人には原則として毎会計年度終了後3か月以内に事業報告書等を都道府県知事へ届け出る義務があり、経営情報等についても原則として同期間内に報告する制度となっています。

医療法人化すると、個人クリニックより法人管理の負担が増える点は理解しておく必要があります。


② 社会保険の負担が発生する

法人事業所は、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。

そのため、個人クリニックから医療法人化する場合、社会保険料負担まで含めて法人化のシミュレーションを行うことが重要です。

単純に、

「法人税率の方が低そうだから法人化する」

という判断ではなく、

税金+社会保険+法人維持コスト+将来の経営戦略

まで含めて判断する必要があります。

税務上の具体的な有利・不利については税理士と連携して検討することをおすすめします。


③ 法人のお金を自由に個人へ移せない

医療法人は理事長個人とは別人格です。

したがって、

「自分が作った医療法人だから、法人のお金も自分のお金」

という考え方はできません。

さらに医療法人では剰余金の配当が禁止されています。

法人から個人へ金銭を移す場合には、

  • 役員報酬
  • 適正な経費精算
  • 退職金
  • 適法な取引

など、適切な根拠が必要です。


医療法人化すると節税になる?

「売上が○○万円を超えたら医療法人にすべき」

という情報をインターネットで見かけることがあります。

しかし、法人化すべきかどうかを売上だけで判断することはおすすめしません。

検討すべきなのは、

  • 売上
  • 利益
  • 院長の所得
  • 家族構成
  • 従業員数
  • 社会保険料
  • 役員報酬
  • 将来の退職金
  • 設備投資
  • 分院計画
  • 承継計画

などです。

したがって、

「医療法人化=必ず節税になる」

とは限りません。

税務シミュレーションについては税理士、医療法人設立認可や診療所開設等の行政手続きについては行政書士という形で、専門家を使い分けるのが理想です。


医療法人設立にはどのくらいの期間がかかる?

医療法人設立で非常に重要なのがスケジュールです。

設立認可の受付方法や回数は都道府県によって異なります。

例えば東京都では、2026年度の医療法人設立認可申請は年2回の日程が公表されています。

2026年度第1回では、

システム利用登録期限:2026年8月31日
申請受付:2026年8月31日~9月4日
審査:2026年9月~12月
医療審議会:2027年2月初旬予定
認可書交付:2027年2月下旬予定

となっています。

第2回は、

申請受付:2027年3月11日~3月17日
認可書交付:2027年8月下旬予定

というスケジュールです。

つまり、

「来月から法人にしたい」

と思っても、できないケースがあります。

医療法人化したい時期から逆算して、かなり早めに準備する必要があります。


医療法人設立の基本的な流れ

一般的な医療法人設立は、次のような流れで進みます。

STEP1 医療法人化の検討

まず、

  • 法人化する目的
  • 法人化希望時期
  • 分院予定
  • 承継予定
  • 税務上のメリット

などを検討します。

STEP2 社員・役員構成を決める

社員、理事、監事、理事長などを決定します。

STEP3 財産・負債・契約関係を整理する

個人クリニックの、

  • 預金
  • 医業未収金
  • 医療機器
  • 備品
  • 借入
  • リース
  • 不動産
  • 賃貸借契約

などを整理します。

STEP4 設立総会

定款、役員、財産、事業計画、予算など、法人設立に必要な事項を決議します。

STEP5 医療法人設立認可申請

主たる事務所を管轄する都道府県へ申請します。

STEP6 行政庁による審査・補正

提出後、内容について質問や補正依頼が行われる場合があります。

STEP7 医療審議会

都道府県知事は設立認可・不認可を決定するにあたり、あらかじめ都道府県医療審議会の意見を聴きます。

STEP8 設立認可

審査を経て認可書が交付されます。

STEP9 医療法人設立登記

認可された時点で法人が成立するわけではありません。

医療法人は設立登記をすることによって成立します。

STEP10 診療所開設等の手続き

法人名義で診療所を開設するための手続きを進めます。

STEP11 保険医療機関指定等

保険診療を行う場合には、地方厚生局関係の手続きも必要です。


医療法人設立認可と診療所開設は別の手続き

ここは非常に重要です。

医療法人設立認可を受けただけでは、法人として診療所を開始できるわけではありません。

医療法人の設立認可と、法人による診療所の開設手続きは別の行政手続きです。

したがって、個人クリニックを法人化する場合、

「法人を作る手続き」

だけでなく、

「個人開設から法人開設へ切り替える手続き」

まで一体的に考えなければなりません。


保険医療機関指定はどうなる?

保険診療を行っているクリニックでは、さらに重要な問題があります。

開設者が、

院長個人 → 医療法人

へ変わるため、保険医療機関指定についても必要な手続きが発生します。

この切り替えを適切に行わないと、保険診療に影響する可能性があります。

そのため医療法人設立では、

設立認可だけを見るのではなく、法人設立日・診療所開設・保険医療機関指定までを一つのスケジュールとして管理する

ことが非常に重要です。


医療法人設立に必要な書類

自治体や案件によって異なりますが、一般的には次のような資料を作成・準備します。

書類・資料主な内容
設立認可申請書医療法人設立の申請書
定款法人の基本ルール
設立総会議事録設立時の決議内容
財産目録法人設立時の財産
財産関係資料預金・医療機器等の裏付け
事業計画書設立後の事業計画
予算書法人化後の収支計画
役員関係書類履歴書・就任関係資料等
診療所関係資料開設中の診療所の資料
不動産関係資料賃貸借契約書等
負債関係資料借入金等
設備関係資料医療機器・リース等

必要書類は申請先自治体や個別案件によって変わるため、必ず最新の手引を確認してください。


医療法人設立で特に審査されやすいポイント

実務では、単に書類の空欄を埋めるだけでは足りません。

特に確認しておきたいのが次のポイントです。

① 資金は十分か

法人化直後から、

  • 給与
  • 家賃
  • 医薬品費
  • リース料
  • その他固定費

が発生します。

一方で診療報酬は、診療した当日にすべて入金されるわけではありません。

そのため、法人設立後の資金繰りまで考える必要があります。


② 賃貸借契約は法人化後も問題ないか

テナント型クリニックの場合、現在の賃借人が院長個人になっていることがあります。

法人化後は医療法人が診療所を開設するため、

  • 法人への契約切替
  • 新規契約
  • 転貸
  • 貸主の承諾

など、物件ごとに整理が必要です。

設立認可申請直前になって貸主との調整が必要だと判明すると、スケジュールに大きく影響することがあります。


③ 借入金はどうするか

個人開業時の借入金が残っているケースは非常に多くあります。

借入金を法人へ引き継ぐ場合には、金融機関との調整が必要になることがあります。

行政手続きだけを先に進めず、金融機関・税理士等と並行して調整することが重要です。


④ 医療機器・リースはどうするか

CT、MRI、歯科ユニット、美容医療機器など、高額設備を利用しているクリニックでは特に注意が必要です。

「所有しているのか」

「リースなのか」

「割賦なのか」

「誰の名義なのか」

を確認します。


⑤ 役員構成に問題はないか

医療法人では非営利性が重要です。

特に株式会社など営利法人との関係が強い場合には、

  • 理事
  • 監事
  • 社員
  • 取引関係
  • 資金関係
  • 不動産関係

などを総合的に確認しておく必要があります。

形式だけ整えるのではなく、誰が実際に医療法人の意思決定をするのかという実態が重要です。


医療法人設立でよくある失敗

失敗① 税理士に相談して安心し、認可スケジュールを確認していなかった

税務上「法人化した方がよい」という結論になっても、希望日に医療法人化できるとは限りません。

まず自治体の認可スケジュールを確認してください。


失敗② 社員・理事・監事を適当に決めてしまう

医療法人では法人設立後も社員総会・理事会等によって意思決定します。

将来の承継まで考えて人員構成を決めるべきです。


失敗③ 物件契約を確認していなかった

賃貸借契約上、法人への切替に貸主承諾が必要となる場合があります。

早い段階で確認してください。


失敗④ 借入・リースの名義変更が間に合わない

金融機関・リース会社の手続きには時間がかかる場合があります。

設立認可申請と並行して準備しましょう。


失敗⑤ 医療法人設立認可だけを考えてしまう

本当に重要なのはここです。

医療法人化では、

設立認可
→ 法人登記
→ 診療所開設
→ 個人診療所の廃止
→ 保険医療機関指定
→ 各種施設基準・公費等

まで考える必要があります。

「認可を取って終了」ではありません。


2026年の医療法人設立で注意したいこと

行政手続きのデジタル化も進んでいます。

例えば東京都では、2026年度第1回受付分から医療法人設立認可の仮申請について東京都医療法人情報支援システムを利用したオンライン提出が開始されています。

兵庫県でも2026年度第1回から医療法人設立認可申請の電子申請が開始されています。

したがって、数年前の記事を参考にすると、現在の申請方法と異なっている可能性があります。

医療法人設立では、

「その自治体の、その年度の最新手引」

を確認することが非常に重要です。


医療法人設立後にも手続きは続く

医療法人は設立したら終わりではありません。

設立後も、

  • 毎年度の事業報告書等
  • 経営情報等の報告
  • 役員変更
  • 理事長変更
  • 診療所名称変更
  • 主たる事務所変更
  • 分院開設
  • 診療所移転
  • 定款変更
  • 解散
  • 承継・M&A

など、法人の状況に応じてさまざまな行政手続きが発生します。

そのため、医療法人設立を依頼する専門家を選ぶ場合には、

「設立認可申請だけできるか」ではなく、「設立後の医療法人手続きまで対応できるか」

も重要な判断基準になります。


将来分院を出すなら、医療法人設立時から考えておく

将来、

「2院目を出したい」

「美容クリニックをもう1院出したい」

「歯科医院を複数展開したい」

という計画がある場合、医療法人化を早めに検討する意味があります。

ただし、医療法人になれば自動的に分院を出せるわけではありません。

分院追加では通常、定款変更認可をはじめとした複数の手続きが必要です。

したがって、

医療法人設立 → 分院開設 → 将来の承継

という中長期的なロードマップを作っておくことをおすすめします。

医療法人設立後に、分院開設、診療所移転、法人名称変更、診療所名称変更、理事定数変更などを行う場合には、定款変更が必要になることがあります。

認可が必要な変更と届出で対応できる変更については「医療法人の定款変更完全ガイド」で詳しく解説しています。


医療法人設立を行政書士に依頼するメリット

医療法人設立は自分で申請することも制度上は可能です。

しかし、医療法人設立の難しさは「申請書の作成」だけではありません。

重要なのは、

医療法人設立前後の一連の行政手続きを矛盾なく設計すること

です。

特に、

  • 法人化希望日
  • 認可スケジュール
  • 社員・役員構成
  • 財産
  • 借入金
  • リース
  • 不動産
  • 診療所開設
  • 保険医療機関指定
  • 施設基準
  • 分院計画

などを同時に考える必要があります。

医療法人・クリニック関係を専門的に取り扱う行政書士に依頼する最大のメリットは、**「認可を取ること」ではなく、「法人化後に診療を円滑に継続できるところまで逆算して設計できること」**にあります。


医療法人設立に関するよくある質問【FAQ】

Q1. 医療法人設立には最低いくら必要ですか?

全国一律で「最低○○万円」と決められているわけではありません。

医療法人には業務を行うために必要な資産が求められ、実際の申請では運転資金、資産、負債、診療所の規模などを踏まえて検討します。

自治体によって審査上の考え方が異なる場合があるため、申請先の最新手引を確認する必要があります。


Q2. 院長1人のクリニックでも医療法人にできますか?

はい。

いわゆる「一人医師医療法人」として法人化することが可能です。

ただし「一人医師医療法人」という名称は、社員や役員がすべて1人でよいという意味ではありません。


Q3. 医療法人の理事は何人必要ですか?

原則として3名以上です。

ただし、都道府県知事の認可を受けた場合には1名または2名とすることが認められる場合があります。


Q4. 医療法人には監事が必要ですか?

はい。

原則として1名以上の監事が必要です。

監事は法人の業務や財産状況を監査する重要な役割があります。


Q5. 医療法人の理事長は医師でなければなりませんか?

原則として、医師または歯科医師である理事の中から選出します。

例外的に、都道府県知事の認可を受けて非医師・非歯科医師の理事を理事長とする制度もあります。


Q6. 医療法人設立には何か月かかりますか?

自治体の受付スケジュールによって大きく異なります。

年2回程度の受付としている自治体もあり、タイミングによっては検討開始から法人化まで半年以上かかることがあります。

希望する法人化時期が決まっている場合は、早めに準備してください。


Q7. 医療法人化すると必ず節税できますか?

いいえ。

利益、役員報酬、社会保険料、家族構成、退職金、将来の事業計画などによって変わります。

税務面については税理士によるシミュレーションをおすすめします。


Q8. 医療法人にすると分院を出せますか?

医療法人は複数の病院・診療所を開設することができます。

ただし分院追加には、定款変更認可、登記、診療所開設、保険医療機関指定などの手続きが必要になる場合があります。


Q9. 医療法人設立認可を受ければすぐ診療できますか?

いいえ。

医療法人設立認可と診療所の開設手続きは別です。

さらに保険診療を行う場合には保険医療機関指定関係の手続きも必要となります。


Q10. 個人クリニックの医療機器を法人に引き継げますか?

可能ですが、所有状況、簿価、リース・割賦の有無、負債との関係などを確認する必要があります。

税務上の処理については税理士とも連携して決定します。


Q11. 医療法人化すると個人クリニックはどうなりますか?

原則として、個人開設の診療所から医療法人開設の診療所へ切り替えることになります。

そのため個人診療所の廃止と法人診療所の開設について、管轄保健所等との調整が必要です。


Q12. 医療法人を作った後で理事を変更できますか?

可能です。

ただし、社員総会での選任や役員変更届など、必要な法人内部手続き・行政手続きがあります。

理事長が変更となる場合には登記等も含めて確認が必要です。


Q13. 医療法人は売却・承継できますか?

株式会社の「株式売却」と同じ仕組みではありませんが、社員・役員・理事長等を変更することによって法人を存続させながら経営を承継する方法があります。

医療法人M&Aでは、行政手続きだけでなく、基金、資産・負債、契約、診療所開設、保険医療機関指定などを総合的に確認する必要があります。


Q14. 美容クリニックでも医療法人を設立できますか?

自由診療中心の美容クリニックであっても、要件を満たせば医療法人化を検討できます。

美容医療では高額な医療機器、MS法人との取引、広告、分院展開など特有の論点があるため、法人設立段階から将来の事業計画を確認することが重要です。


Q15. 医療法人設立は行政書士に依頼できますか?

医療法人設立認可申請は、医療法人手続きを取り扱う行政書士へ相談できます。

特に、設立認可だけでなく、診療所開設、保険医療機関指定、分院開設、定款変更、医療法人承継などを継続して扱っている行政書士へ相談すると、法人化後を見据えた設計がしやすくなります。


医療法人設立を検討している先生へ

医療法人設立は、単に個人クリニックを法人名義に変えるだけの手続きではありません。

成功させるポイントは、

「法人を作ること」ではなく、「法人化した後のクリニック経営まで考えて設計すること」

です。

特に、

  • 将来分院を出したい
  • 医療法人化する時期を迷っている
  • 役員構成が分からない
  • 基金をいくらにすればよいか分からない
  • 借入金が残っている
  • 医療機器のリースがある
  • テナントを法人名義へ変更できるか心配
  • 保険医療機関指定まで一括して相談したい
  • 将来的に子どもや第三者へ承継したい

という先生は、設立認可申請の直前ではなく、法人化を考え始めた段階で相談することをおすすめします。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

医療法人設立
→ 診療所開設
→ 保険医療機関指定
→ 施設基準
→ 分院開設・定款変更
→ 役員・理事長変更
→ 医療法人承継・M&A

まで、医療法人のライフサイクルに沿ったサポートを行っています。

医療法人化をご検討中の医師・歯科医師の先生は、お気軽にご相談ください。


まとめ|医療法人設立は「設立後」から逆算することが重要

最後にポイントを整理します。

医療法人設立で重要なポイント

  1. 医療法人は都道府県知事の設立認可が必要
  2. 認可後、設立登記によって法人が成立する
  3. 理事は原則3名以上、監事は1名以上
  4. 理事長は原則として医師・歯科医師である理事から選ぶ
  5. 全国一律の「最低○○万円」という設立資金ではない
  6. 個人クリニックの資産・負債・契約を整理する必要がある
  7. 自治体によって認可スケジュール・運用が異なる
  8. 設立認可と診療所開設は別の手続き
  9. 保険診療を継続する場合は保険医療機関指定まで考える
  10. 将来分院を出す場合は法人設立時から計画しておく
  11. 医療法人設立後も毎年度の報告や各種変更手続きが必要
  12. 将来の承継・M&Aまで考えて社員・役員構成を決める

医療法人設立では、目先の認可だけを見るのではなく、

「5年後、10年後、この医療法人をどうしたいのか」

から逆算して法人設計を行うことが重要です。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、厚生労働省が公表する医療法人関係法令・通知、各都道府県が公表する最新の医療法人設立手引等を踏まえて作成しています。

医療法人制度・設立認可については、厚生労働省「医療法人・医業経営のホームページ」、医療法第44条以下、各都道府県の医療法人担当部署が公表する最新情報をご確認ください。

東京都で設立する場合は「医療法人設立の手引(令和8年6月版)」および「医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和8年度)」が最新情報として公表されています。

※医療法人の設立要件、必要書類、申請時期、審査運用等は都道府県や個別案件によって異なる場合があります。実際に申請する際は、必ず申請先自治体の最新資料をご確認ください。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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