福岡県福岡市で開業しているクリニックが医療法人を設立するスケジュールや流れについて解説

福岡県福岡市の医療法人設立認可申請に強いカミーユ行政書士事務所です。

福岡、熊本、佐賀、長崎、大分など九州各地の医療法人設立認可申請や分院開設手続きのサポートを行っています。

福岡県福岡市等で開業しているクリニックが医療法人を設立するスケジュールや流れについて解説していきます。

全国対応ですのでお気軽にお問い合わせ下さい。

目次

医療法人の特徴とは?

医療法人の特徴は大きく分けて下記の2つがあります。

(1)「本来業務」と「附帯業務」

医療法第39条は「医療法人の本来業務」、第42条は「医療法人の附帯業務」を規定しています。

医療法人は“定款に記載した本来業務の実施”が存在の目的ですから、実施することができる業務の範囲に次の特徴があります。

・本来業務は病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院の開設、運営

・附帯業務の実施は、本来業務に支障がない場合に限り可能(定款への記載が必要)

(2)剰余金の配当禁止規定

医療法人制度の目的である「非営利性の確保」を担保するために、医療法第54条は剰余金の配当を禁止しています。

① 剰余金は、医療施設の整備等に充てなければならず、配当は禁止されている。

② その他の「実質的な利益配当行為」を禁止。

医療法第54条 (剰余金配当の禁止) 医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

参考:厚生労働省HP

医療法人の種類や構成はどのようになっているのか?

医療法人の組織の形態は、大別して「医療法人社団」と「医療法人財団」の2つです。

本記事では以降、主に医療法人社団の設立・運営について解説します。

(1) 医療法人社団

設立しようとする者(自然人)が設立総会を開催し、基本事項を「定款」で定め、市保健所長あて設立認可を申請し、認可後、登記することによって成立します。

必要な資産(現金、不動産、医療機器など)については、以下の方法によって調達します。

①設立者等が期限を定めて、設立される法人へ資産を拠出(「基金制度」という。)

②設立者等による寄附設立者は医療法人の「社員」となり、法人成立以降、重要事項を社員総会で決定します。

(2) 医療法人財団

個人や法人が無償で寄附する財産(寄附財産)により成立し、基本事項を「寄附行為」で定めます。

「財団」は理事会と評議員会が一定の運用方針に従って財産を運用します。

医療法人の構成について

社団たる医療法人の最高意思決定機関は「社員総会」です。

事業計画、収支予算、決算、定款変更など重要事項の決定は、「社員総会」の議決(承認)を必要とします。また、医療法人には次の役員を置かなければなりません(医療法第46条の5)。

理 事 執行機関として3人以上(うち1名を理事長とする)

監 事 監査機関として1人以上(理事や当該法人の職員の就任は不可。医療法第46条の5第8項)

(1)社 員
医療法人の「社員」とは、社団の医療法人を構成する「人の集まり」の「人」に相当します。

日常使用する「会社に勤務する人」という意味の「社員」とは区別されます。

医療法人の社員は“自然人”でなければならず、他の医療法人や株式会社といった「法人」及び「団体」が社員になることはできません。社員は、医療法人社団の基本的な構成員です。

最高意思決定機関である「社員総会」を構成し、各1個の議決権を行使して重要事項を決定します。

従って社員は常時3人以上いること、及び15歳以上の者であることが望ましいとされています。

(2)理 事

医療法人の理事は、理事会を構成して、社員総会が決議した事業計画に従って法人の業務を執行する機関です。

事業規模に応じた適当数(3人以上)を、原則として法人の社員のうちから選任します。

ただし、必要がある場合は社員でない者を理事に選任できます。

理事の選任に際しては、業務の執行機関という性格上、遠隔地に居住して理事会への出席が困難な者、及び未成年者の理事就任は望ましくありません。

なお、医療法第46条の5第6項の規定により、医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院の管理者は、必ず理事に加えることが義務付けられています。

理事が2人以下の医療法人(医療法第46条の5第1項ただし書)
診療所を1箇所のみ開設し、かつ適任者が不在のためにやむを得ず“理事が2人の医療法人”を設立しようとする場合は、設立認可と併せて「医療法人の理事数の特例認可」を必要とします。認可にあたっては、適任者が不在である理由について、詳細な説明が必要です。

(3)理 事 長
医師又は歯科医師である理事1名が、理事長として医療法人を代表します(医療法人の代表権を有するのは理事長のみ。医療法第46条の6の2第1項)。

設立当初の理事長は、設立総会において設立者間で互選します。

また、設立以後の理事長の変更及び重任は、定款の規定に基づき理事会で決議します。

(4)監 事

医療法人には1人以上の監事を置かなければなりません。

監事は、法人の財産状況及び理事の業務執行状況などを監査し、不正を発見したときは社員総会、理事会又は市保健所長への報告を行い、報告のため必要があるときは社員総会を招集します。

(医療法第46条の8)また、法人の業務又は財産の状況について、理事会に対して意見を述べます(医療法第46条の8の2)。

これらの職責を負う監査機関ですから、法人と利害関係のある営利法人等の役職員、当該法人の理事、当該法人の評議員、当該法人の社員、当該法人の職員、開設する医療機関等の職員、理事の親族、未成年者の監事就任は望ましくありません。

この場合、親族とは6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます。

また、監事は法人の財務諸表を監査しうる者であることが必要です。

医療法人を設立するときの財産の扱いには注意しよう

医療法第41条第1項の規定により、医療法人はその業務を行うのに必要な資産を有しなければなりません。

なお、医療法第54条の剰余金配当禁止規定などがありますので、医療法人の財産の取得及び処分に際しては、次の事項に留意してください。

(1)開設する医療機関の土地、建物
医療法人が開設する医療機関の土地・建物は、当然ながら法人の自己所有であることが望ましいとされています。

土地や建物を賃借する場合は、賃貸借契約書に契約期間の更新が円滑に行われる内容であること又は長期間(概ね10年以上)の契約であることを明記してください。

不動産を購入して法人が自己所有する場合

①役員及びその親族などから購入する場合は、不動産鑑定評価額、固定資産評価額等と照らし適正な売買価格とし、かつ“法人以外の者が債務者の(根)抵当権”を抹することが必要です。

不動産を第三者から賃借する場合

① 賃借権設定登記をすることが望ましい。

② 住宅兼用の場合は、医療機関が使用する箇所しか賃借することができません。

不動産を役員、役員の親族、役員の関連企業などから賃借する場合

① 過大な賃借料の支払いは剰余金の配当と見なされます。契約締結及び賃料改定の際は、適正な賃借料であることの算定根拠を明確にしておくこと。

②設立後の法人運営が順調に推移し、不動産を買い取るのに必要な剰余金が蓄積された場合は、自己所有とするのが望ましい。

自己所有、賃借の場合ともに注意すべき事項

① 「法人の事業」「従業員の福利厚生」以外の目的で使用してはならない。

② 不動産を第三者に賃貸し、賃貸料収入を得ることはできない。

(2)負 債

医療法人の負債については、次の2点に注意してください。

① 個人の負債を医療法人が承継する場合

設立者などの個人負債を医療法人が引き継ぐことは、一定の条件を満たす場合にのみ認められます。

医療法人が、正当な理由がないのに別の者の債務を承継することは、医療法第54条が禁止している「剰余金の配当」に該当します。

② 役員と金銭消費貸借契約を締結して資金を借り入れる場合

役員からの借入金は、無利子としてください。

医療法人の運営上、必要性が希薄であるにも関わらず役員から資金を借り入れ、さらに金利を支払う行為は「剰余金の配当」となります。

(3)設立当初の運転資金

医療法人が医療機関を開設してから最初の2ヶ月間は、保険診療報酬が支払われません。

その間、適正な医療機関経営が行えるだけの運転資金として、現金、預貯金、個人開業時代の医業未収金といった換金が容易な流動資産を御用意ください。

医療法人設立の流れは?

療法人を設立するためには、さまざまな手続きを踏まなければなりません。

ここでは、医療法人の設立に必要な主な手続きと、その流れについて詳しく解説します。

①設立事前協議の実施

医療法人の設立にあたっては、まず都道府県との設立事前協議を行います。

この事前協議は、医療法人設立の仮申請とも呼ばれ、設立認可申請書を都道府県に提出し、内容の確認や修正、必要な資料の追加などについて協議を行います。

事前協議では、申請書類の内容だけでなく、医療法人設立の詳細について審査が行われます。

都道府県は、保健所などの医療機関に照会し、申請者である医師に対する面接を実施することもあります。

②設立説明会への参加

多くの都道府県では、年に2回程度、医療法人設立説明会を開催しています。

この説明会では、医療法人の設立に関する基本的な情報や、申請手続きの詳細について説明が行われます。

説明会への参加は、医療法人設立を円滑に進める上でとても有益です。

近年では、オンラインでの説明会開催も増えています。自身のスケジュールや都合に合わせて、参加方法を選択するとよいでしょう。

③定款の作成

医療法人の定款は、法人運営の基本的なルールを定めた重要な文書です。

定款には、法人の目的や業務、名称、事務所の所在地、開設する病院や診療所の所在地、資産や会計に関する規定、役員や理事会に関する規定、社員や社員総会に関する規定などを定める必要があります。

定款の作成にあたっては、厚生労働省が示している定款例を参考にすると良いでしょう。

④設立総会の開催

定款の作成後は、設立者3名以上による設立総会を開催します。

設立総会では、設立趣旨の承認、設立時社員の確認、定款案の承認、基金拠出申込および財産目録の承認、役員および管理者の選任、設立代表者の選任などを行います。

設立総会の議事については、議事録に残す必要があります。

議事録には、開催日時や場所、出席者の氏名や住所、議題と決議内容などを記載します。

また、病院や診療所の建物を賃貸する場合は、賃貸借契約書の承認も必要です。

設立後の事業計画や収支予算、役員報酬の予定額なども、設立総会で承認を得ておく必要があります。

⑤設立許可申請書の作成

設立総会で必要な事項が承認されたら、医療法人の設立認可申請書を作成し、所轄の都道府県に提出します。

設立認可申請書には、事前協議で指摘された箇所を修正し、必要な書類を添付する必要があります。

⑥設立許可書の受領

設立認可申請書が受理されると、都道府県による審査が行われます。

審査では、申請書類の内容だけでなく、代表者への面接や実地調査などが行われる場合もあります。

審査を通過すると、都道府県の医療審議会による審査も行われます。

審査に通過し、設立が認可されると、都道府県から設立認可書が交付されます。設立認可書を受領したら、いよいよ医療法人としての活動が始まります。

⑦設立登記申請書類の作成

設立認可書を受領したら、2週間以内に法人設立登記を行う必要があります。

設立登記には、医療法人の名称、目的、業務、理事長の氏名と住所、存続期間、資産総額などを登記する必要があります。

従たる事務所を置く場合は、主たる事務所の登記から2週間以内に、別途登記手続きを行う必要があります。

⑧法務局での設立登記

設立登記申請書類が作成できたら、法務局に提出し、設立登記を行います。

設立登記が完了すると、医療法人としての法人格を得ることができます。

設立認可書や定款、登記簿謄本などの重要書類は、大切に保管しておきましょう。

⑨保健所での診療所開設許可の取得

法人設立登記が完了したら、次は診療所開設の許可を得る必要があります。

保健所に診療所開設許可申請書を提出し、現地での立ち会い検査を受けます。

診療所開設の許可を得るためには、診療所の施設や設備が基準に適合していることが求められます。

事前に保健所の担当者に相談し、必要な準備を整えておきましょう。

⑩保健所への開設届の提出

診療所開設の許可が下りたら、10日以内に保健所に開設届を提出します。

あわせて、医療法人化前の個人診療所の廃止届も提出する必要があります。開設届の提出が完了すれば、医療法人としての診療活動を開始できます。

ただし、保険医療機関としての指定を受けるまでは、自由診療のみの実施となります。

設立から1年以内に正当の理由がないのに医療機関を開設しない法人は、設立認可を取り消されます。

⑪厚生局での保健医療機関指定の取得

医療法人として健康保険診療を行うためには、厚生局から保険医療機関の指定を受ける必要があります。

指定を受けると、保険医療機関コードが発行され、健康保険による診療が可能となります。

また、個人診療所の保険医療機関廃止届も忘れずに提出しましょう。

いかがでしたか?

お聞きしてみたいことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。趣味は週7日の筋トレ。

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