熊本県熊本市でクリニックが医療法人設立する手続きの流れやスケジュール、要件は?

熊本県熊本市のクリニック(医科、歯科、美容外科)の医療法人設立申請代行などの医療法務の手続きを専門にしているカミーユ行政書士事務所です。

弊所では医療法人設立や非営利型一般社団法人での分院開設などを全国対応にてサポートしています。

熊本県熊本市でクリニックが医療法人設立する手続きの流れやスケジュール、要件は?について解説をしていきます。

目次

医療法人の種類及び性格は?


医療法では、医療機関が医業の非営利性を損なうことなく法人格を取得することにより、医業の永続性を確保するとともに、資金の集積を容易にし、医療の普及向上を図ることを目的として医療法人制度を設けています。

医療法人は、病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設することを主たる目的として、医療法の規定により設立された法人のことをいい、社団たる医療法人と財団たる医療法人の二つの形態があります。

社団たる医療法人は、医療施設を開設することを主たる目的とした人の集合体に法人格が付与されたものです。

法人の資産は、拠出又は寄附からなります。

なお、平成19年4月の医療法改正により、持分の定めのある法人は設立できなくなりました。

財団たる医療法人は、医療施設を開設することを主たる目的として寄附された財産に法人格が付与されたものです。

医療法人は、公益法人でも営利法人でもなく、いわば両者の中間的性格を持つ、医療法による特別法人であるといえます。

昭和60年12月の医療法改正により、医師又は歯科医師が一人又は二人常時勤務する診療所を開設する小規模な診療所にも法人化の道が開かれました。

これがいわゆる「一人医師医療法人制度」です。

この制度は、医療経営と家計、医業所得と給与所得を分離することにより、診療所経営の合理化や組織の適正化を図ることを目的とした制度で、基本的には従来の医療法人と全く同じ制度のものです。

社員や役員が一人で良いとする制度ではないのでご注意ください。

医療法人を設立するには、知事の認可が必要です。

医療法人を設立しようとする場合は、医療法人設立認可申請書に必要な関係書類を添えて、設立代表者名で知事あて申請することが必要です。

医療法人の土地、建物等は、法人の所有であることが望ましいですが、賃貸借契約による場合でもその契約が長期間にわたるもので、かつ、確実なものである場合には差し支えありません。

新たに診療所を開設するために一人医師医療法人を設立する場合及び経営実績が2年未満で一人医師医療法人を設立する場合には、2か月以上の運転資金を有することが必要です。

参考:厚生労働省HP

医療法人設立において決めなければならない事項は?

定款の作成

まずは定款を決めなければいけません。

定款は、社団たる医療法人の組織、運営等に関する基本を定めたものです。

定款には、次の事項を定めなければなりません。(医療法第44条)

(1) 目 的
(2) 名 称
(3) 開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の名称及び開設場所
(4) 事務所の所在地
(5) 資産及び会計に関する規定
(6) 役員に関する規定
                                                               (7) 理事会に関する規定
(8) 社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
(9) 解散に関する規定
(10) 定款の変更に関する規定
(11) 公告の方法
(12) 医療法人設立当初の役員

設立総会の開催

社団たる医療法人を設立するには、あらかじめ設立総会を開催し、次に掲げる事項を審議し、決定しなければなりません。

(1) 医療法人の設立の趣旨承認
(2) 社員の確認
(3) 定款の承認
(4) 拠出(寄附)申込み及び設立時の財産目録の承認
(5) 初年度及び次年度分の事業計画及び収支予算の承認
(6) 役員及び管理者の選任
(7) 設立代表者の選任
(8) 診療所の土地、建物等を賃借する場合の契約の承認
(9) その他の必要事項

社団たる医療法人の運営機関には、法人の意思決定機関である「社員総会」、執行機関である「理事会」並びに監査機関である「監事」があります。

社員総会及び理事会の議事については厚生労働省令に定める事項を内容とする議事録を作成し、会議の日から10年間、主たる事務所に備え置かなければなりません。


社団たる医療法人は複数の人が集まって構成された団体であり、その構成員のことを社員と呼びます。

従業員とは異なります。

社員は社員総会という合議体の構成員となる為、原則として3人以上必要です。

社員は社員総会において法人運営にあたっての重要事項について議決権及び選挙権を行使するため、実質的に法人の意思決定に関われない者を名目的に社員として選任することは認められません。

社員の入社については、社員総会で承認を得ることが必要です。

また、その退社については定款で定める手続きを経ることとされています。

社団たる医療法人は社員名簿を据え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加える必要があります。

社員総会の開催

社団たる医療法人の運営機関の一つとして社員総会があります。

社員総会は、社員をもって構成する法人の最高意思決定機関であり、次の事項は社員総会の議決を経なければなりません。

(1) 定款の変更
(2) 毎事業年度の事業計画の決定又は変更
(3) 収支予算及び決算の決定又は変更
(4) 重要な資産の処分
(5) 借入金額の最高限度の決定
(6) 社員の入社及び除名
(7) 本社団の解散
(8) 他の医療法人との合併若しくは分割に係る契約の締結又は分割計画の決定
(9) その他重要な事項

なお、後述する理事及び監事は、社員総会に出席し、社員から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければなりません。(医療法第46条の3の4)

役員数


医療法人は、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置くことが原則です。( 医療法第46条の5 )

医療法人の理事は、理事会の構成員として、医療法人の業務執行に係る決定に参画します。

なお、知事の認可を受けた場合を除き、医療機関の管理者は必ず理事に加えなければなりません。

医療法人の理事のうち、1 人は理事長とし、医師又は歯科医師のう ちから選出しなければなりません。

医療法人を代表する者は、理事長のみであり、理事長以外の理事には代表権はありません。

理事長は、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。

監事は、当該医療法人の理事又は法人の職員を兼ねることは認められません。

監事の職務の重要性に鑑み、実際に法人監査業務を実施できない者が名目的に選任されることなく、法人運営を含む財務諸表の監査を客観的に行える者を選任することが必要です。

医療法人設立手続きの流れは?

医療法人設立手続きの流れは概ね下記の通りにて進んでいきます。

余裕をもって準備を進めていきましょう。

①医療法人設立認可申請書(素案)の作成、提出

②都道府県による事前審査

③医療法人設立認可申請(本申請)

④設立認可書の交付、受領

⑤設立登記申請書を法務局に提出

※認可を受けた後、法務局に設立登記をしてください。

⑥開設許可書の交付、受領

⑦保険医療機関指定関係書類を管轄地の厚生局へ提出

⑧保険医療機関指定通知書の交付、受領

⑨保険診療の開始

なお、下記の点に注意しましょう。

※社員・役員について
原則として、拠出(寄附)は1 名以上、社員は3 名以上とし、役員については、医療法人と関係のある特定の営利法人の役員と兼務しないようにしてください。
※不動産等を拠出(寄附)する場合について
土地・建物等を拠出(寄附)される場合には、これを基本財産とすることが望まれます。

財産に関する注意点

土地、建物は、医療法人の所有であることが望ましいですが、個人が開業医として賃借していた診療所の土地、建物、医療機械器具等を医療法人が、引き続き賃借することは差し支えありません。

なお、この場合は、土地、建物又は医療機械器具等の所有者の承認が必要です。

また、個人開業医と土地、建物の所有者との賃貸借契約を終了させ、新たに医療法人と所有者との賃貸借契約を締結させる必要があり、この契約は長期間にわたるものであり、かつ、確実なものであることを要します。

この賃貸借契約書は、法人設立認可申請の際の添付書類の一つになります。

なお、個人開業医が所有者( 甲)から賃借していた土地、建物又は医療機械器具等については、新たに賃借人( 乙) を医療法人○○会 設立代表者□□□□と表示した覚書又は賃貸借契約を締結し、特約事項として「 本契約は、●●県知事に申請中の医療法人の設立が登記された日をもって発効するものとし、同法人設立のうえは乙の表示は、医療法人○○会 理事長□□□□( 主たる事務所の所在地を記載)と読み替えるものとする。」を加えておくことが必要です。

医療法人の運営スケジュールは?

医療法人の具体的な運営スケジュールについて紹介していきます。

◎決算に係る定時社員総会スケジュールの参考例(4月から翌年3月決算の場合)

法人税の確定申告期限との関係から、毎会計年度の終了後2月以内に定時社員総会を開催するケースを例としています。

3月31日 会計年度末

4月 1日 新会計年度開始

決算関係書類・事業報告書等の作成

・医療法人は、毎会計年度終了後2月以内に、事業報告書等(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び関係事業者との取引の状況に関する報告書)を作成

4月23日

監事へ事業報告書等を提出し、監事の監査を受ける監事による監査報告書の提出

・監事は、事業報告書等を受領した日から4週間を経過した日又は理事及び監事が合意により定めた日のいずれか遅い日までに監査報告書を社員総会及び理事会に提出

5月14日 理事会招集通知の発出

・上記期間の間に、スケジュール調整など会議開催に向けた作業

・理事会招集権者が、理事会の日の1週間前までに理事会招集通知を発出

5月22日 理事会開催 (過半数の理事と監事が出席)

・監事の監査を受けた事業報告書等の承認

・社員総会の日の1週間前までに、事業報告書等と監事の監査報告書を主たる事務所に備え置く

5月22日 社員総会召集通知の発出

・理事長は社員総会の1週間前までに、理事会の承認を受けた事業報告書等などとともに社員総会召集通知を発出

5月30日 定時社員総会開催 (総社員数の過半数が出席)

・貸借対照表及び損益計算書の承認

・前記を除く事業報告書等及び監事報告書の報告

6月中 知事に事業報告書等を届出

・知事に事業報告書等届を提出

法務局への登記申請

・毎事業年度末から3月以内に変更登記

知事に医療法人登記事項届を届出

・登記後、知事に医療法人登記事項届を提出

いかがでしたか?

お聞きしてみたいことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。趣味は週7日の筋トレ。

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