岡山県岡山市の医療法人設立のメリットとデメリット、タイミングやスケジュールについて解説

岡山県岡山市、倉敷市等のクリニック(医科、歯科、美容外科)の医療法人設立申請代行などの医療法務を専門にしているカミーユ行政書士事務所です。

弊所では医療法人設立や非営利型一般社団法人での分院開設などを全国対応にてサポートしています。。

この記事では、医療法人化のメリットとデメリット、そしてそのタイミングや手続きの流れやスケジュールについて詳しく解説します。

目次

医療法人化のメリットは?

まず医療法人のメリットについて説明をしていきます。

節税効果につながる

医療法人化することで、所得の分散や給与所得控除、法人税率の低さなどを活用して節税が可能です。

例えば、個人事業主としての所得が高額になると、累進課税制度により高い税率が適用されますが、法人化することで法人税率が適用され、税負担が軽減されます。

また、家族を役員にすることで給与所得控除を受けることができ、さらに節税効果が期待できます。

さらに、法人化することで、経費として計上できる範囲が広がり、事業運営に必要な支出を経費として認められるため、実質的な税負担が軽減されます。

分院開設など将来を見越した事業の拡大

法人化することで、分院展開や介護事業、他の法人のM&Aなど、事業の拡大が容易になります。

法人としての信用力が向上し、金融機関からの融資も受けやすくなります。

これにより、新たな設備投資や人材採用が可能となり、事業の成長を加速させることができます。

例えば、分院を開設する際には、法人としての資金調達力が重要となりますが、法人化することで金融機関からの信頼が高まり、必要な資金をスムーズに調達することができます。

また、介護事業や訪問看護など、新たな事業分野への進出も容易になり、総合的な医療サービスの提供が可能となります。

事業承継をスムーズに行うことができる

ご子息への継承やM&Aによる事業継続がスムーズに行えます。

個人事業主の場合、事業承継は相続税の負担が大きくなることがありますが、法人化することで株式の形で事業を承継することができ、相続税の負担を軽減することができます。

また、M&Aによる事業承継も選択肢として考えられ、事業の継続性が確保されます。

例えば、後継者がいない場合でも、M&Aを通じて他の医療法人に事業を譲渡することで、患者さんへのサービス提供を継続することができます。

相続税対策につながる

基金拠出型医療法人の利益剰余金部分は相続税がかかりません。

これにより、事業承継時の相続税負担を大幅に軽減することができます。特に、資産が多い場合や事業を次世代に引き継ぐ際には、大きなメリットとなります。

例えば、医療法人の利益剰余金を基金として積み立てることで、相続税の対象外とすることができ、後継者への負担を軽減することができます。

万一の備えになる

院長に不測の事態があった場合でも、医院運営の継続が可能です。

法人化することで、経営の責任が法人に帰属し、個人のリスクを軽減することができます。

また、法人としての組織体制が整っているため、院長が不在の場合でも、他の役員やスタッフが医院運営を継続することができます

例えば、院長が急病や事故で長期間不在となった場合でも、法人としての運営体制が整っていれば、他の役員やスタッフが代わりに業務を遂行し、患者さんへのサービス提供を継続することができます。

退職金を受け取れる

個人事業主の場合は、退職金が受け取れません。万が一の場合や事業承継の際にも退職金がないことは、個人事業主のデメリットの一つです。

それに対して、医療法人の場合は本人や遺族が退職金を受け取ることができます。

退職所得は、一般的な給与所得よりも税率が優遇されています。さらに、適正額の範囲内の場合は、支払った法人側も全額経費にできるため、節税にも効果的です。

退職時死亡退職時
本人遺族
退職慰労金 最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(3倍程度) 特別功労金 特別功労者には退職金の30%を超えない範囲で特別功労金を加算死亡退職金 最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(3倍程度) 特別功労金 特別功労者には退職金の30%を超えない範囲で特別功労金を加算 弔慰金 業務上の死亡の場合:最終報酬月額×36カ月 業務外の死亡の場合:最終報酬月額×6カ月

医療法人化のデメリットは?

一方、医療法人化にデメリットがありますので紹介をさせて頂きます。

設立費用がかかる

医療法人の設立には費用がかかります。

具体的には、設立登記費用や専門家への報酬、その他の諸費用が発生します。

これらの費用は、初期投資として考慮する必要があります。また、法人化後も、定期的な会計監査や税務申告などの費用が発生するため、継続的なコストも考慮する必要があります。

例えば、設立登記費用として数十万円からの費用がかかることがあり、これに加えて専門家への報酬や各種手続き費用が発生します。

手続きの煩雑さがある

設立や運営に関する手続きが増えます。

法人設立には、定款の作成や登記申請、各種許認可の取得など、多くの手続きが必要です。

また、法人運営においても、定期的な総会の開催や事業報告書の提出など、法令遵守のための手続きが求められます。

これらの手続きは、専門家のサポートを受けることが推奨されます。

例えば、定款の作成には法律の専門知識が必要であり、適切な内容で作成しないと後々の運営に支障をきたすことがあります。

税務調査の厳格化の可能性がある

法人化により税務調査が厳しくなる可能性があります。

法人としての税務申告は、個人事業主よりも厳格に監視されることが多く、税務調査の頻度や内容が厳しくなることがあります。

これにより、税務リスクが増加する可能性がありますが、適切な税務対策を講じることでリスクを軽減することができます。

例えば、法人としての会計処理や税務申告は、専門家のサポートを受けることで正確に行うことができ、税務調査に対する備えを万全にすることが重要です。

医療法人化のタイミングは?

所得が1,800万円を超える時

:所得が1,800万円を超えると、節税の観点から医療法人化する絶好のタイミングです。

個人事業主としての所得が高額になると、累進課税制度により高い税率が適用されますが、法人化することで法人税率が適用され、税負担が軽減されます。

また、法人化することで、所得の分散や給与所得控除を活用することができ、さらに節税効果が期待できます。

例えば、所得が1,800万円を超えると、個人事業主としての税率は最大45%に達することがありますが、法人税率は約23%であり、大幅な節税が可能です。

医療機器の償却期間が終わる時

開業6年が経過し、医療機器の償却期間が終わるタイミングも適しています。

医療機器の償却が終了すると、減価償却費が減少し、所得が増加するため、法人化することで節税効果を最大限に活用することができます。

また、新たな医療機器の導入を検討している場合も、法人化することで資金調達が容易になり、設備投資がスムーズに行えます。

例えば、新たな高額医療機器を導入する際には、法人としての資金調達力が重要となりますが、法人化することで金融機関からの信頼が高まり、必要な資金をスムーズに調達することができます。

医療法人化の手続きはどうなの?

1. 医療法人設立の要件

医療法人を設立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

人的要件

  • 社員: 社員総会の構成員であり、原則として3名以上が必要です。社員は医療法人の意思決定機関である社員総会に参加し、重要な事項について議決します。社員は医師や歯科医師である必要はありませんが、医療法人の運営に関心を持ち、積極的に関与することが求められます。
  • 理事: 理事長を含めて3名以上が必要です。理事長は医師または歯科医師でなければなりません。理事は医療法人の業務執行機関であり、日常の運営や管理を担当します。理事会は定期的に開催され、法人の運営方針や重要な業務について協議します。
  • 監事: 1名以上が必要です。監事は理事や職員を兼任することはできません。監事は医療法人の業務や会計を監査し、不正や不適切な行為がないかをチェックします。監事は独立した立場で監査を行うため、理事や職員と利害関係がないことが重要です。

施設・設備要件

  • 病院・診療所の設置: 少なくとも1か所以上の病院、診療所、または介護老人保健施設を設置する必要があります。これにより、医療法人としての実態が確保され、地域医療に貢献することが求められます。
  • 医療設備の確保: 医療行為に必要な設備や器具を確保する必要があります。例えば、診療所であれば診察室や処置室、検査機器などが必要です。これらの設備は、医療法人の提供する医療サービスの質を左右するため、適切な設備投資が求められます。

資産要件

  • 運転資金: 設立後2か月分の運転資金を現預金で確保する必要があります。運転資金は、医療法人の設立初期における運営費用や人件費、医療材料費などに充てられます。十分な運転資金を確保することで、安定した運営が可能となります。
  • 設備の買い取り資金: 個人事業時代の設備を買い取る場合、その資金も別途必要です。個人事業から医療法人に移行する際には、既存の医療設備や器具を法人名義に変更するための資金が必要です。

その他の要件

  • 法人名の制限: 既存の法人と同じ法人名や誇大広告に該当する法人名は使用できません。法人名は、地域や業界内での認知度や信頼性に影響を与えるため、慎重に選定する必要があります。

2. 医療法人設立の手続きの流れ

医療法人を設立するための手続きは以下の通りです。

手順1. 医療法人設立説明会への参加 自治体が開催する医療法人設立説明会に参加する必要があります。開催は年2回程度で、説明会では医療法人設立に関する基本的な情報や手続きの流れが説明されます。参加することで、設立に必要な書類や手続きについての理解が深まります。

手順2. 定款の作成 医療法人の定款を作成します。定款には名称、所在地、目的、事業内容、資産、会計規定などを記載します。定款は医療法人の基本的なルールを定める重要な文書であり、設立後の運営においても遵守されるべきものです。

手順3. 設立総会の開催 設立者3名以上による設立総会を開催し、議事録を作成します。設立総会では、定款の承認や理事・監事の選任、設立に関する重要事項が議決されます。議事録は設立手続きの一環として提出する必要があります。

手順4. 設立認可申請書の提出・審査 設立認可申請書を作成し、提出します。仮申請と本申請があり、仮申請後の審査に通らないと本申請に進むことができません。仮申請では、設立の意図や計画について詳細に説明し、自治体の審査を受けます。

手順5. 設立認可書の交付 設立認可申請書の審査を通過すると、設立認可書が交付されます。設立認可書は、医療法人として正式に認められたことを証明する文書であり、これをもって設立手続きが完了します。

手順6. 設立登記申請書類の作成・申請 設立認可書が交付されたら、2週間以内に設立登記申請書類を作成し、提出します。登記申請書類には、定款や設立総会の議事録、設立認可書などが含まれます。登記が完了すると、医療法人としての法人格が正式に認められます。

手順7. 登記完了 (設立) 登記申請書類を提出し、登記が完了すると医療法人の設立が完了します。その後、銀行口座の名義変更や各種手続きを進めます。設立後は、医療法人としての運営を開始し、地域医療に貢献することが求められます。

まとめ

医療法人化は、節税や事業拡大、事業承継など多くのメリットがありますが、設立費用や手続きの煩雑さなどのデメリットも存在します。適切なタイミングで医療法人化を検討し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

医療法人化を成功させるためには、事前の準備と計画が不可欠です。

専門家のサポートを受けながら、慎重に進めることをお勧めします。

いかがでしたか?

お聞きしてみたいことがございましたらお気軽にお問い合わせさい。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。趣味は週7日の筋トレ。

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