福岡県、広島県で再生医療クリニックの分院設立!医療法人vs一般社団法人を行政書士が解説

福岡県や広島県、沖縄県、愛知県などで再生医療クリニックなどの医療法人、一般社団法人による分院開設などを全国展開でサポートしているカミーユ行政書士事務所です。弊所は北海道から沖縄まで幅広い実績がございます。

本日は再生医療クリニック(PRP療法など)が法人設立や分院による全国展開を行う際に医療法人か一般社団法人のどちらを選択するのが良いか解説をしていきます。

【この記事で解決できること】

  • 再生医療(PRP療法など)クリニックの分院展開における最適な法人形態(医療法人か一般社団法人か)が判断できる。
  • 医療法人、一般社団法人それぞれの設立・分院開設の具体的な手順がゼロから理解できる。
  • 再生医療特有の法規制(再生医療等安全性確保法)や広告規制のポイントがわかる。
  • 事業計画の立て方からウェブ集患戦略まで、成功のための実務的なノウハウが手に入る。

【こんな先生におすすめです】

  • 整形外科分野でPRP療法などの再生医療を本格的に導入・拡大したいと考えている。
  • 現在の個人クリニックを法人化し、多拠点での分院展開を目指している。
  • 医療法人と一般社団法人のメリット・デメリットを正確に理解し、後悔のない選択をしたい。
  • 複雑な行政手続きや法規制をクリアし、スムーズに事業を軌道に乗せたい

目次

はじめに:再生医療の波に乗り、地域医療の未来を創る先生方へ

近年、整形外科の領域において、PRP(多血小板血漿)療法やAPS(自己タンパク質溶液)療法、脂肪由来幹細胞治療といった再生医療が、従来の保存療法や手術に代わる新たな選択肢として大きな注目を集めています。変形性膝関節症やスポーツ外傷に悩む患者様のQOLを劇的に改善する可能性を秘めたこれらの治療は、まさに「未来の医療」と言えるでしょう。

多くの先生方が、この先進的な自費診療を自身のクリニックの強みとし、より多くの患者様に届けたい、そして事業としても大きく成長させたい、という熱い想いをお持ちのことと存じます。その想いを実現する強力な戦略が**「分院展開」**です。

しかし、いざ分院展開を考え始めると、

「そもそも個人事業主のまま分院展開ってできるのか?」 「法人化するなら、医療法人一般社団法人、どちらが有利なんだろう?」 「再生医療特有の法律や手続きが複雑で、どこから手をつけていいかわからない…」 「設立後の運営や税務、スタッフのマネジメントはどうなるのか?」

といった、数多くの疑問や不安に直面するのではないでしょうか。

法人格の選択は、一度決めるとなかなか後戻りできない、クリニック経営の根幹をなす重要な意思決定です。税制、事業の自由度、社会的信用、将来の事業承継まで、あらゆる面に影響を及ぼします。

ご安心ください。この記事では、これまで数多くのクリニックの法人化と分院展開をサポートしてきた専門家の視点から、先生の疑問を一つひとつ丁寧に解消していきます。

本稿を最後までお読みいただければ、先生のビジョンに最適な法人形態を選択し、再生医療クリニックの分院展開を成功に導くための明確なロードマップを手に入れることができるはずです。それでは、まいりましょう。

第1章: なぜ今、再生医療クリニックの分院展開が戦略的に有効なのか?

分院展開は単なる規模拡大ではありません。特に、先進的な自費診療である再生医療においては、極めて有効な経営戦略となり得ます。その理由を3つの視点から解説します。

1. 市場の追い風:拡大する再生医療の需要

高齢化社会の進展に伴い、変形性膝関節症をはじめとする運動器疾患の患者数は増加の一途をたどっています。一方で、「手術は避けたい」「できるだけ自分の身体への負担が少ない治療を受けたい」という患者様のニーズは年々高まっています。

PRP療法などの再生医療は、まさにこのニーズに応える治療法です。ご自身の血液や脂肪を用いるためアレルギー反応などのリスクが低く、日帰りで治療が可能なケースも多いことから、仕事や生活への影響を最小限に抑えたい現役世代からも強く支持されています。

この需要は、都心部だけでなく地方都市にも確実に広がっています。しかし、再生医療を提供できる医療機関はまだ限定的です。いち早く専門クリニックとして複数の拠点を構えることで、競合が少ないエリアの需要を独占し、先行者利益を享受することが可能になります。

2. スケールメリットによる経営の安定化と成長加速

分院展開がもたらす最大のメリットは「スケールメリット」です。

  • 収益基盤の強化: 複数の拠点で収益を上げることで、一つのクリニックの業績に左右されない安定した経営基盤を構築できます。リスク分散効果は絶大です。
  • コスト削減: 医薬品や医療機器、消耗品などを一括で大量に購入することで、単価を下げることができます。また、広告宣伝費や事務管理コストも効率化できます。
  • 人材の確保と育成: 法人としての安定性やキャリアパスの提示は、優秀な医師、看護師、理学療法士、事務スタッフを惹きつけます。複数院で人材を融通し合ったり、研修制度を充実させたりすることも容易になります。
  • データと知見の集積: 多くの症例データを集積・分析することで、治療プロトコルの改善や新たな研究開発につなげることができます。これはクリニックの医療レベルを向上させ、さらなる競争優位性を生み出します。

3. ブランド価値の向上と社会的信用の確立

「〇〇整形外科」という個人名クリニックも素晴らしいですが、「医療法人社団△△会」として複数のクリニックを運営することは、患者様や地域社会、金融機関に**「組織として確立された信頼性の高い医療グループ」**という印象を与えます。

  • 認知度の向上: 複数のエリアで看板を目にすることで、地域住民への認知度が飛躍的に高まります。
  • 専門性のブランディング: 「膝の再生医療専門クリニックグループ」といった形で専門性を打ち出すことで、ブランディングが容易になります。患者様は「専門のところで診てもらいたい」という心理から、多少遠くても先生のクリニックを選んでくれるようになります。
  • 資金調達の有利化: 新たな分院開設や高額な医療機器を導入する際の銀行融資において、法人格、特に医療法人は社会的信用が高く、審査で有利に働く傾向があります。

このように、再生医療という成長市場において分院展開を行うことは、クリニックを次のステージへと飛躍させるための極めて合理的な戦略なのです。

第2章: 【徹底比較】医療法人 vs 一般社団法人 究極の選択ガイド

分院展開の決意が固まった先生が、次に直面するのが「法人格の選択」です。ここでは、再生医療クリニックの分院展開という文脈において、医療法人と一般社団法人をあらゆる角度から徹底的に比較・解説します。

比較一覧表:医療法人と一般社団法人の違い

まずは全体像を掴むために、主要な項目を比較表で見てみましょう。

項目医療法人(社団)一般社団法人ポイント解説
設立根拠法医療法一般社団・財団法人法医療法人は医療に特化した法人。一般社団法人は汎用的な法人格。
設立要件厳しい ・理事3名、監事1名以上 ・社員2名以上 ・理事長は原則、医師・歯科医師 ・拠出金(資本金)が必要比較的容易 ・社員2名以上 ・理事1名以上(理事会を置く場合は3名以上) ・医師である必要はない医療法人は役員の構成に厳格なルールがある。
許認可都道府県知事の**「認可」**が必要 (申請時期が年2回など限定的)法務局への**「登記」**のみ (随時申請可能)設立スピードは一般社団法人が圧倒的に速い。
事業範囲医療に関連する業務に限定 (附帯業務も可能だが制約あり)原則自由 (公益性に反しない限り)MS法人と連携しやすいのは一般社団法人。
剰余金の配当禁止(非営利性の徹底)可能(ただし診療所開設では非営利性が求められるため実質困難)医療法人は利益を役員に分配できない。
税制軽減税率が適用される場合が多い (社会保険診療収入が8割以下など条件あり)原則として**普通法人課税** (非営利型法人の要件を満たせば収益事業のみ課税)自費診療100%の場合、医療法人の税制メリットは薄れる可能性。
社会的信用度非常に高い医療法人に比べると低い傾向金融機関からの融資や公的な補助金申請では医療法人が有利。
分院開設定款変更の認可が必要理事会決議等の内部手続+届出 (手続きが比較的簡便)分院展開の機動性は一般社団法人に軍配。
解散時の財産国や地方公共団体等に帰属定款の定めによる(残余財産を社員に分配することも可能)医療法人の財産は「公のもの」という性格が強い。

医療法人のメリット・デメリット

《メリット》
  1. 圧倒的な社会的信用: 「医療法人」という名称自体が、患者様や金融機関、取引先に対して絶大な信頼感を与えます。これは、厳しい医療法の規制下で運営されていることの証明でもあります。
  2. 税制上の優遇: 自費診療がメインであっても、法人税率が一般の株式会社等より低く設定されています(所得800万円以下の部分など)。また、役員退職金の損金算入など、節税の選択肢が豊富です。
  3. 事業承継の円滑化: 理事長の交代や出資持分の譲渡・相続により、個人クリニックよりもスムーズに事業を次世代へ引き継ぐことが可能です。特に「持分なし医療法人」へ移行すれば、相続税の問題をクリアできます。
《デメリット》
  1. 設立ハードルの高さ: 役員構成の要件を満たし、事業計画書や定款を作成し、年2回程度の限られた申請期間に都道府県の認可を得る必要があります。準備開始から設立まで1年近くかかることも珍しくありません。
  2. 事業範囲の制限: 医療法人は、本来業務である医療提供と、それに付随する業務しか行えません。例えば、医療とは直接関係のない不動産賃貸業や化粧品の開発・販売などを法人の事業として行うことは原則できません。
  3. 非営利性の徹底: 利益が出ても、株式会社のように出資者(社員)に配当することができません。役員報酬という形でしか利益を還元できず、その額も社会通念上、不相当に高額であってはならないとされています。
  4. 行政の監督: 都道府県への事業報告書の提出が義務付けられており、運営に関して厳しい監督下に置かれます。

一般社団法人のメリット・デメリット

《メリット》
  1. 設立の迅速性と容易さ: 社員2名以上いれば、公証役場で定款認証を受け、法務局で登記するだけで設立できます。許認可ではないため、最短1〜2週間で法人格を取得することも可能です。
  2. 事業範囲の自由度: 公序良俗に反しない限り、どのような事業でも定款に定めることができます。これにより、診療所運営の傍ら、MS法人を介さずに健康食品の販売やセミナー事業などを一体的に展開することも理論上は可能です。
  3. 機動的な経営判断: 分院の開設や閉鎖、事業内容の変更などが、理事会決議といった内部手続きで迅速に行えます。医療法人のように、都度、行政の認可を待つ必要がありません。
  4. MS法人との親和性: 医療法人よりも柔軟な組織設計が可能なため、不動産管理や経理代行などを行うMS(メディカルサービス)法人と連携したスキームを構築しやすいという特徴があります。
《デメリット》
  1. 社会的信用度の課題: 「一般社団法人」という名称は非営利活動のイメージが強く、営利目的のクリニック運営との間にギャップを感じる人がいるかもしれません。金融機関の融資審査においても、医療法人より事業計画の妥当性を厳しく見られる傾向があります。
  2. 税制上のメリットが限定的: 原則として株式会社と同じ普通法人として扱われ、法人税が課されます。「非営利型法人」の要件を満たせば、収益事業から生じた所得のみが課税対象となりますが、自費診療クリニックがこの要件を満たすのは容易ではありません。
  3. 診療所開設における非営利性の要求: 一般社団法人が診療所を開設する場合、医療法と同様に「非営利性」が求められます。定款で剰余金の分配を行わない旨を定める必要があり、実質的には医療法人と同様の制約がかかります。この点を誤解しているケースが散見されるため注意が必要です。

【結論】先生のビジョンに最適なのはどちらか?

  • 医療法人が向いているケース
    • 長期安定経営を目指す: 将来的な事業承継も見据え、盤石な経営基盤と社会的信用を最優先したい。
    • 公的な存在としてのクリニック: 地域医療の中核を担うという意識が強く、公的なイメージを重視したい。
    • 資金調達を重視: 今後も大規模な設備投資や分院展開で、金融機関からの融資を積極的に活用したい。
  • 一般社団法人が向いているケース
    • スピード感と機動性を重視: いち早く法人格を取得し、市場の変化に柔軟に対応しながらスピーディーに分院展開を進めたい。
    • 多角的な事業展開を視野に: 医療提供だけでなく、関連するヘルスケアビジネスやコンサルティングなど、自由な発想で事業を広げたい(MS法人との連携を前提とする)。
    • 共同経営のパートナーがいる: 医師以外の経営のプロなど、複数の対等なパートナーシップで事業を始めたい。

再生医療という先進分野においては、スピード感のある一般社団法人でスタートし、事業が軌道に乗ってから社会的信用のある医療法人へ組織変更するという戦略も考えられます。ご自身の目指す将来像と照らし合わせ、慎重に判断することが肝要です。

第3章: 医療法人による再生医療クリニック分院展開【完全ロードマップ】

「よし、社会的信用を重視して医療法人でいこう!」と決断された先生のために、設立から分院開設までの具体的な手順をステップ・バイ・ステップで解説します。

STEP 1: 医療法人設立の要件確認と準備

まずは医療法人を設立するための「人・モノ・金」の要件をクリアする必要があります。

  • 人的要件(誰がやるか)
    • 社員: 2名以上。法人の最高意思決定機関である社員総会の構成員です。
    • 役員: 理事3名以上、監事1名以上が必要です。
    • 理事長: 原則として医師または歯科医師である必要があります。先生ご自身が理事長に就任します。
    • 役員の親族制限: 理事のうち、理事長の親族(配偶者や三親等内の親族)は定数の3分の1以下でなければならない、といった制限があります。信頼できる他の医師や知人に役員就任を依頼する必要があります。
  • 資産要件(いくら必要か)
    • クリニックの設備資金や、年間支出予算の2ヶ月分以上の運転資金を、法人の財産として拠出(出資)する必要があります。
    • 自己資金で不足する場合は、融資の検討もこの段階で始めます。
  • 設備要件(どこでやるか)
    • 開設する診療所が、医療法に定められた構造設備基準(診察室の広さ、X線室の遮蔽など)を満たしている必要があります。

STEP 2: 設立認可申請の準備

要件の目処が立ったら、都道府県への認可申請に向けた書類作成に取り掛かります。ここが最も専門性を要する部分です。

  1. 設立発起人会の開催: 医療法人設立の意思決定を行います。
  2. 定款の作成: 法人の根本規則です。事業目的、役員の選任方法、資産に関する規定などを詳細に定めます。特に再生医療を行う旨は明確に記載しておくべきです。
  3. 事業計画書・予算書の作成: 今後2年間の事業計画と収支予算を作成します。なぜ再生医療なのか、地域のニーズはどこにあるのか、どのように集患し、どれくらいの収益を見込むのか。説得力のある事業計画書は、認可審査の鍵を握ります。
  4. 設立総会の開催: 定款や事業計画を正式に承認します。

STEP 3: 都道府県への設立認可申請

準備した膨大な書類一式を、管轄の都道府県(医療政策課など)に提出します。

  • 申請スケジュール: 多くの都道府県では、申請受付期間が**年2回(例:春と秋)**と定められています。このタイミングを逃すと、設立が半年遅れてしまうため、計画的な準備が不可欠です。
  • 事前協議: 申請前に、担当部署と設立内容について事前に相談(内見)することが強く推奨されます。ここで指摘された点を修正しておくことで、本申請がスムーズに進みます。
  • 審査: 申請後は、数ヶ月にわたる審査が行われ、医療審議会での審議を経て、認可・不認可が決定します

参考:東京都HP

STEP 4: 設立登記と開設手続き

無事に認可書が交付されたら、法的な手続きの最終段階です。

  1. 設立登記: 認可書を受け取ってから2週間以内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で設立登記を行います。この登記が完了した日をもって、医療法人が正式に誕生します。
  2. 診療所開設許可申請: 登記完了後、保健所に「診療所開設許可申請」を行います。個人クリニックからの法人成りであれば「開設者変更」の手続きとなります。
  3. 保険医療機関指定申請など: 厚生局への保険医療機関指定申請や、その他各種法令に基づく届出(生活保護法、労災保険法など)を行います。

STEP 5: 再生医療提供のための専門手続き

通常の診療所開設手続きに加え、再生医療を行うためには「再生医療等安全性確保法」に基づく手続きが必須です。

  1. 再生医療等提供計画の提出: どのような再生医療を、どのような手順で、どのような患者様に行うのかを詳細に記載した「提供計画」を作成します。
  2. 特定認定再生医療等委員会への審査依頼: 作成した提供計画を、国が認定した第三者委員会に提出し、その妥当性や安全性について審査を受けます。
  3. 地方厚生局への提出: 委員会で承認された提供計画を、管轄の地方厚生局に提出します。この提出が受理されて初めて、患者様への提供が可能になります。

PRP療法はリスクの程度に応じて第2種・第3種に分類され、手続きが異なります。自院の治療がどれに該当するのか、正確に把握することが重要です。

【分院開設の手続き】

本院の設立が完了し、経営が軌道に乗った後の分院開設は、以下の流れで進めます。

  1. 定款変更認可申請: 新たな分院の名称や所在地を定款に追記するため、都道府県に「定款変更認可申請」を行います。
  2. 分院の診療所開設許可申請: 定款変更の認可が下りたら、分院の所在地を管轄する保健所に、新たに「診療所開設許可申請」を行います。
  3. 各種届出: 保険医療機関の指定など、本院と同様の届出を分院ごとに行います。

医療法人の分院開設は、その都度、行政の「認可」が必要となるため、スピード感に欠ける側面があることは念頭に置いておきましょう。

第4章: 一般社団法人による再生医療クリニック分院展開【完全ロードマップ】

「スピードと自由度を優先して、一般社団法人でいこう!」と決断された先生のためのロードマップです。医療法人に比べて手続きはシンプルですが、押さえるべき重要なポイントがあります。

STEP 1: 一般社団法人設立のポイント

  1. 社員と役員の決定: 社員2名以上、理事1名以上を決めます。医療法人のような厳格な親族制限はありません。先生が理事長(代表理事)となり、管理者(院長)を兼務するのが一般的です。
  2. 「非営利性」の確保: 診療所を開設するためには、法人の非営利性が求められます。定款に**「剰余金の分配を行わない」**旨を必ず記載する必要があります。これを怠ると、診療所の開設許可が下りません。
  3. 定款の作成と認証: 事業目的に「診療所の経営」「再生医療の提供」などを明記した定款を作成し、公証役場で認証を受けます。

STEP 2: 法務局への設立登記

認証済みの定款と必要書類を、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に提出し、設立登記を申請します。書類に不備がなければ、1〜2週間程度で登記が完了し、法人が誕生します。都道府県の認可を待つ必要がないため、非常にスピーディーです。

STEP 3: 診療所開設許可申請

法人設立後、保健所に「診療所開設許可申請」を行います。添付書類として、法人の登記事項証明書や定款が必要になります。

STEP 4: 再生医療提供のための専門手続き

この手続きは、医療法人と全く同じです。「再生医療等安全性確保法」に基づき、提供計画を特定認定再生医療等委員会に提出し、承認を得た上で、厚生局に届け出る必要があります。法人格によって手続き内容が変わることはありません。

【分院開設の手続き】

一般社団法人の分院展開は、その機動性が最大の魅力です。

  1. 内部での意思決定: 理事会設置法人であれば理事会決議など、定款で定められた方法で分院開設を決定します。
  2. 分院の診療所開設許可申請: 分院の所在地を管轄する保健所に「診療所開設許可申請」を行います。医療法人のように、事前に都道府県の認可を得る必要はありません。
  3. 各種届出: 保険医療機関の指定などの届出を行います。

このスピード感により、良い物件が見つかった際や、地域のニーズに変化があった際に、迅速に対応することが可能です。

【応用編】MS法人との連携スキーム

一般社団法人の自由度を最大限に活かす戦略が**MS法人(メディカルサービス法人)**との連携です。

  • 一般社団法人(クリニック): 医療行為に専念します。
  • MS法人(株式会社など): クリニックの不動産管理、医療機器のリース、経理・総務・人事のアウトソーシング、ウェブサイトの管理・集患マーケティング、サプリメントや医療関連グッズの販売などを担います。

これにより、一般社団法人からMS法人へ業務委託費などを支払う形で利益を移転し、節税を図ったり、役員への利益還元を柔軟に行ったりすることが可能になります。ただし、両法人の取引価格が不当に高額であると税務署から指摘されるリスク(租税回避行為)もあるため、専門家である税理士と連携し、適切なスキームを構築することが不可欠です。

第5章: 集患の鍵を握る!再生医療クリニックのウェブ戦略と医療広告ガイドライン

自費診療である再生医療クリニックの成功は、「いかにして治療を必要としている患者様に見つけてもらい、信頼してもらうか」にかかっています。その主戦場は、間違いなくウェブ上です。SEO、LLMO/AIO対策を意識した情報発信と、厳格な医療広告ガイドラインの遵守が、分院展開の成否を分けます。

なぜ、今までのSEO対策だけでは不十分なのか?

これまでは、特定のキーワード(例:「膝痛 治療 西宮市」)で検索結果の上位を取る「SEO(検索エンジン最適化)」がウェブ戦略の中心でした。しかし近年、ChatGPTのような対話型AIが登場し、ユーザーの情報収集の仕方が変わりつつあります。

  • LLMO (大規模言語モデル最適化): AIがユーザーの質問に対して、ウェブ上の情報を要約・生成して直接回答する。
  • AIO (AI最適化): 検索エンジン自体がAIを活用し、よりユーザーの意図に沿った答えを提示する。

これからの時代は、AIに「信頼できる情報源」として認識され、その回答に引用・参照されるような質の高いコンテンツ作りが求められます。

AI時代に勝つためのウェブコンテンツ戦略

  1. E-E-A-Tの徹底:
    • Experience(経験): 実際に治療を行った症例や患者様の声(個人情報に配慮しつつ)を具体的に示す。
    • Expertise(専門性): 治療法の詳細な解説、論文データの引用、学会発表の実績など、専門家としての知見を深く掘り下げて発信する。
    • Authoritativeness(権威性): 院長や担当医師の経歴、資格、所属学会などを明確にプロフィールに記載する。
    • Trustworthiness(信頼性): 料金体系の明瞭化、治療のリスクや副作用の丁寧な説明、問い合わせへの誠実な対応など、患者様が安心して相談できる透明性を担保する。
  2. 網羅的で構造化されたコンテンツ:
    • 疾患別の詳細解説ページ: 「変形性膝関節症」「半月板損傷」「テニス肘」など、疾患ごとに原因・症状・従来の治療法、そして再生医療がどのように有効かを網羅的に解説する。
    • Q&Aページの充実: 「PRP療法の費用は保険適用されますか?」「治療後、すぐに歩けますか?」「副作用はありませんか?」といった、患者様が抱くであろうあらゆる疑問に先回りして回答を用意する。これはAIが回答を生成する際の重要な参照元となります。
    • 構造化データの活用: 見出しタグ(h1, h2, h3)を正しく使い、情報を論理的に整理することで、検索エンジンやAIがコンテンツの内容を正確に理解しやすくなります。

絶対遵守!医療広告ガイドラインの重要ポイント

ウェブサイトやSNSでの情報発信は「広告」とみなされ、医療広告ガイドラインの厳しい規制を受けます。違反すると罰則の対象となるため、細心の注意が必要です。

  • 禁止される表現の例:
    • 誇大広告: 「日本一の治療実績」「絶対安全な治療です」
    • 比較優良広告: 「他のクリニックより効果が高い」
    • 術前術後の写真: 原則禁止。ただし、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用などを併記するなどの詳細な要件を満たせば掲載可能です。
    • 患者の体験談: 主観的な体験談の掲載は原則禁止です。
  • 限定解除要件: 自由診療に関する情報を掲載する場合、ウェブサイト内に以下の項目を記載すれば、広告可能な範囲が広がります。
    1. 問い合わせ先の電話番号・メールアドレス
    2. 標準的な治療費用
    3. 治療内容、主なリスク、副作用に関する詳細な説明

これらの規制を正しく理解し、遵守した上で、患者様にとって有益で誠実な情報発信を続けることが、結果的にクリニックの信頼を高め、持続的な集患につながります。

まとめ:ビジョン実現への第一歩を踏み出しましょう

本日は、再生医療クリニックの分院展開という壮大なテーマについて、法人格の選択から設立・運営の実務、そしてウェブ戦略まで、網羅的に解説してまいりました。

  • 戦略の選択: スピードと自由度を優先するなら一般社団法人、社会的信用と長期安定を重視するなら医療法人。先生のビジョンに合わせて最適な法人格を選びましょう。
  • 手続きの理解: どちらの法人格も、設立・分院開設・再生医療提供には専門的な法的手続きが不可欠です。ロードマップを参考に、計画的に準備を進めることが成功の鍵です。
  • 情報発信の重要性: 自費診療である再生医療の成功は、ウェブでの情報発信にかかっています。E-E-A-Tを意識した質の高いコンテンツを、医療広告ガイドラインを遵守しながら発信し続けましょう。

ここまでお読みいただいた先生は、すでに分院展開の成功に向けて大きな一歩を踏み出しています。しかし、これらの手続きをご多忙な診療の合間に、先生お一人で完璧に進めるのは至難の業です。

定款の一つ、事業計画書の数字一つが、後々の経営に大きな影響を及ぼすこともあります。

そんな時こそ、私たち行政書士のような専門家をご活用ください。

私たちは、医療法人の設立認可申請や一般社団法人の設立登記はもちろんのこと、先生のビジョンをヒアリングし、最適な法人形態をご提案するところからサポートいたします。煩雑な書類作成や行政との折衝はすべてお任せいただき、先生には診療と経営という、本来の業務に集中していただけます。

「自分の場合はどちらの法人が合っているのか、具体的に相談したい」 、 「まずは何から始めたらいいか、話を聞いてみたい」

もし少しでもそう思われましたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。


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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。趣味は週7日の筋トレ。

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