栃木県宇都宮市で建設業許可申請を取り扱っているカミーユ行政書士事務所です。
今回のテーマは「建設会社を設立して1年目で建設業許可は取ることができるのか?」について
解説をしていきます。

建設業許可の要件
建設業許可を取得するためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
①経営能力があること(経営業務の管理責任者がいること)
②技術力があること(営業所ごとに専任の技術者がいること)
③誠実であること(請負契約に関して不正又は不誠実な行為をする恐れがないこと)
④財産的基礎又は金銭的信用があること(請負契約を履行するに足りる財産的基礎があること)
また、建設業法には欠格用件という許可を受けられないものの要件が規定されています。
建設業許可を取得するためには、この欠格用件に該当しないことも必要です。
なお、これらの要件は許可を取得するときだけでなく、許可を維持するための要件でもあります。
これらの要件のいずれかが欠けてしまうと建設業許可が取り消されることになりますので注意が必要です。
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建設業の経営経験は必要なのか?
建設業許可の要件のうち「経営能力があること」つまり、経営業務の管理責任者がいることという要件は、建設業の経営業務について一定期間の経験を有したものが一人必要であるという要件です。
会社員を辞めて起業してすぐに建設業許可を取得しようと考えている人にはかなりハードルの高い要件となっています。
具体的に言いますと、許可を受けようとするものが法人である場合には常勤の役員のうちの一人が、個人である場合には本人または支配人のうちの1人が次のいずれかに該当することが必要で、これらの者を経営業務の管理責任者といいます。

経営業務の管理責任者になるには下記のどれかに該当していれば大丈夫です。
イ.以前と同様のパターン
以前とほとんど同じですが、以前は建設業許可を取りたい業種と経験した業種が同じかどうかで分けられていましたが、今は建設業であればどんな業種であっても構わなくなりました。
具体的には、建設業許可を取りたい業種が「建築一式工事」、経営を経験した業種が「内装工事」という場合、6年の経験が必要でしたが、この改正で建設業であればどんな業種かは問われず一律5年の経営経験でOKになりました。
イ(1)役員として5年以上建設業を経営してきた経験がある
一番多いパターンになります。
取締役や個人事業主、支配人、建設業許可業者の営業所長(令3条の使用人)などの役職で建設業を経営していた方になります。
経営実績を裏付けとして証明する必要がありますが、何が要求されるかは都道府県によって違います。
あと、取締役、個人事業主経験と違い、建設業の営業所長をしていたという令3条の使用人に関しては過去の建設業許可申請書の中できちんと所長として名前が挙がっていたことが必要になります。
今までご相談を受けた中で多かったのは、
- 出張所の扱いで特に建設業許可申請では申請されていなかった。
- 営業所としては申請されていたが、その代表としてはお名前がなかった。
- 申請書の写しなどを元の会社から借りられなかった。
ということで申請できないというものでした。
営業所長などは登記されるわけではないので、あくまでその業者さんの過去の申請書でしか確認ができません。
行政への文書開示請求もできますが、過去の文書を行政が処分しているとどうしようもないため、喧嘩別れなども含めるとなかなか営業所長の経験を持って経営業務の管理責任者の証明をしていくのは厳しいかと思います。
イ(2)権限の委任を受け準ずる地位として5年以上の建設業の経営経験がある
具体的には執行役員を指すのですが、主に大企業にあるパターンかと思います。
執行役員制度自体は法律で定められたものではなく、あくまで会社内の役職になります。
ですから会社で制度を制定し、各執行役員の権限を決めて就任させることになります。
執行役員に関しても登記をするわけではありませんから、登記簿謄本のような誰が見ても分かる証拠がありません。
そのため、制定した規程や、執行役員に就任したことが議事録等で分かること、建設業に関しての権限を持っていたことなども経験期間の5年間の証拠として提示することになりますので、役職上だけとか、名刺でただ名乗っているだけ、というのではダメです。
細かくは各行政ごとでの対応になりますが、東京都などは独自のガイドラインを設けてなかなか認めようとしないなど都道府県によってまだまだ温度差がある状況です。
イ(3)経営者に準ずる地位として6年以上経営者を補助した経験がある
こちらに関してよくあるのは取締役直下の工事部長などの地位や、個人事業主の下の番頭さんのような方が当てはまります。
これに関しては6年以上の経験が必要になります。
以前は経験した業種の経管にしかなることができませんでしたが、今は6年以上の経験が必要にはなりますが、全ての業種の経管になることができます。
ロ.新しく認められたパターン(経営業務管理責任者と補佐者のチーム体制)
こちらのロの2パターンは今回の改正で新たに作られました。
一番特徴的なことは下記のロ(1)、ロ(2)の2パターンのいずれかを満たす方がいる場合には、さらにその補佐ができる方を配置して、複数人で経営業務管理体制を整えることを認めているということです。
その補佐ができる人の経験は、ロ(1)、(2)のいずれのパターンであったとしても下記のような方になります。
- (1) 5年以上建設業の財務管理の経験を有する者
- (2) 5年以上建設業の労務管理の経験を有する者
- (3) 5年以上建設業の業務運営の経験を有する者
※一人でこの3つ全てを満たす方でもいいですし、複数人でこれらの3つを個別に満たしても構いません。
※補佐に関しての経験は申請を行う許可業者での経験しか認めてもらえないので、少なくとも設立後5年以上経過した会社でしかあり得ないということになります。
次に、このような補佐をできる方がおられる場合においてあとはどんな経験を持った役員が必要になるかを下で説明していきます。
ロ(1)
まず取締役や執行役員として建設業の経営について2年以上の経験があること。
さらに、建設業について財務・労務・業務運営いずれかについて役員等に次ぐ地位での経験をして上記の2年以上の経験と加えて5年以上経験している場合。
(例:財務部長として3年間建設業の財務を担当した後に、執行役員に就任して2年以上建設業を管理した、など)
ロ(2)
まず取締役や執行役員として建設業の経営について2年以上の経験があること。
さらに、他の会社で建設業以外の取締役や、同じ会社でも建設業以外の執行役員などの経験をして上記の2年以上の経験と加えて5年以上経験している場合。
(例:執行役員として3年間不動産事業を担当した後、建設業担当執行役員になって2年経過した)
※執行役員、準ずる地位、上記のロに該当するケースに関しては様々な書類を要求されますので申請する行政に対して事前打ち合わせが必須になります。
経営業務管理責任者としての経験とは、営業取引上対外的に責任ある地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を言います。
「営業取引上対外的に責任ある地位」とは、法人の常勤の役員等、個人事業主又は支配人、その他建設業を営業する支店又は営業所などの長(建設魚法施行令第3条に規定する使用人)などが該当します。
会社員を辞めて、1人で建設会社を設立して1年目の方となると、起業前も起業後も経営業務の管理責任者としての経験がない状態ですので残念ながら1人では建設業許可を取得することはできません。
ただし、経営業務の管理責任者としての経験を有する方を取締役として迎え入れることで「経営能力があること」という要件を満たし、建設業許可を取得することは可能です。
経営業務管理責任者の配置規制の見直し
これまで経営業務の管理責任者としての経験は建設業における経営経験しか認められていませんでした。
そのため、建設業以外の業種においては建設業に参入したいと思っても、経営業務管理責任者としての要件を満たせず建設業許可を取得することは困難でした。
それだけでなく、建設業許可を保有している建設業者においても人手不足や後継者不足により、経営業務管理責任者を確保することが難しく、最悪のケースでは許可取り消しというケースもありました。
そのような背景から、令和2年10月の建設業法の改正により、「経営業務管理責任者としての経験」について緩和されました。
上述したような形になっています。
建設業の経営経験しか認められなかったものが、他業種の経営経験までが認められるようになっています。
さらに建設業の経営経験しか認められなかったものが、建設業の管理経験も認められるようになっています。
【経営経験】
建設業、他業種OK
【管理経験】
建設業OK、他業種NG
ただし、他業種の経営経験者や、建設業の管理職経験者に関しては、一人で「経営能力があること」という要件を満たすことはできず、合わせて役員を補助する者の配置も必要です。
これまでは個人の能力で「経営能力があること」という要件が担保されていましたが、個人ではなく、組織で経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有することが求められるようになるということです。
いかがでしたか?
お聞きしたいことがございましたらお気軽にお問い合わせください。
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