【2026年最新版】一般社団法人クリニックを閉院・廃止する方法|診療所廃止・保険医療機関・カルテ・法人解散まで

一般社団法人でクリニックを運営していると、

「一般社団法人のクリニックを閉院するには何をすればよいですか?」

「保健所へ廃止届を出せば終わりですか?」

「クリニックを閉じたら一般社団法人も解散しなければなりませんか?」

「保険医療機関指定や施設基準はどうなりますか?」

「閉院後のカルテは誰が保管しますか?」

「美容クリニックの未消化コース・前受金はどう処理しますか?」

といった問題が生じます。

結論からいうと、一般社団法人クリニックの「診療所廃止」と「一般社団法人の解散」は全く別の手続きです。

クリニックを閉院しても、一般社団法人が自動的に消滅するわけではありません。

実務では、

患者対応

最終診療日決定

診療所廃止

保険医療機関廃止

施設基準・公費等の整理

カルテ保存

スタッフ・契約・資産・債権債務整理

必要に応じ一般社団法人解散・清算

という流れになります。

医療法第9条では、病院・診療所等を廃止した場合、廃止後10日以内に都道府県知事等へ届け出ることが定められています。

一方、一般社団法人そのものを解散する場合には、一般社団法人法に基づく社員総会、解散登記、清算人、債権者保護、債務弁済、残余財産処理、清算結了登記など、別の法人清算手続きが必要です。

この記事では、一般社団法人クリニックの閉院・廃止について、保健所・地方厚生局・カルテ・患者・スタッフ・契約・法人解散まで実務に沿って詳しく解説します。


目次

「閉院」と「診療所廃止」と「法人解散」は別

まず、この3つを区別してください。

用語意味
閉院一般的な表現。クリニックの営業・診療を終了すること
診療所廃止医療法上、医療機関として廃止すること
法人解散一般社団法人そのものを終了させ、清算へ移ること

例えば、

一般社団法人ABC

ABCクリニック

という1院だけを運営しているケースで、ABCクリニックを閉院したとしても、一般社団法人ABCはそのまま残ります。

逆に、一般社団法人が2院運営しており、

東京院を閉院
大阪院は継続

という場合には、一般社団法人を解散する理由は通常ありません。

したがって最初に、

「クリニックだけ閉じるのか」
「一般社団法人も最終的に解散するのか」

を決める必要があります。

一時的に診療を止めるなら「廃止」ではなく「休止」も検討

将来再開する可能性がある場合には、廃止ではなく休止を検討することがあります。

医療法では、診療所を休止した場合も10日以内に届出が必要で、再開した場合も同様に届出が必要です。

例えば、

管理医師が突然退職した
移転先がまだ決まらない
一時的に改装する
後任医師を探している

といった場合です。

ただし、

「再開時期が全く決まっていない」

「事実上もう診療する予定がない」

のであれば、長期間の休止ではなく廃止を求められる可能性があります。

休止・廃止の具体的な運用は管轄保健所へ確認してください。

一般社団法人クリニックを閉院する全体の流れ

一般的には、次のように進めます。

STEP主な内容
1最終診療日・閉院方針決定
2患者への案内・診療引継ぎ
3レセプト・未収金・前受金整理
4スタッフへの対応
5賃貸借・リース等の解約準備
6診療所廃止
7保健所へ廃止届
8厚生局へ保険医療機関廃止届
9公費・各種指定・施設基準等の整理
10カルテ・診療情報の保存
11資産・負債・契約を整理
12一般社団法人を残すか解散するか判断
13解散する場合は法人清算
14清算結了登記

ポイントは、最終診療日にいきなりすべてを止めないことです。

診療終了後にも、

レセプト請求
返戻対応
診療報酬入金
患者返金
未収金回収
契約解約

などが残ります。

STEP1|まず「いつまで診療するか」を決める

閉院手続きの起点になるのが最終診療日です。

例えば、

2027年3月31日
最終診療日・診療所廃止

とするのであれば、そこから逆算して、

患者通知
スタッフ対応
業者解約
レセプト
保健所
厚生局

のスケジュールを作ります。

閉院日の数か月前から準備する

特に、

保険診療患者が多い
慢性疾患患者が多い
美容医療のコース契約が多い
高額リースがある
多数の従業員がいる

場合には、閉院直前に準備を始めるのは危険です。

少なくとも数か月前から閉院チェックリストを作成することをおすすめします。

STEP2|患者へ閉院を案内する

患者対応は行政届出以上に重要です。

例えば、

  • 院内掲示
  • ホームページ
  • LINE
  • 電話
  • 郵送
  • 予約システム

などを利用して、

最終診療日
今後の診療方法
紹介先
診療情報提供書の発行方法
カルテ等に関する問い合わせ先

を案内します。

継続治療患者は特に慎重に

例えば、

高血圧
糖尿病
精神科
在宅診療
透析関連
歯科継続治療

など、治療を途中で止めることが患者へ大きな影響を与える場合があります。

単に、

「3月31日で閉院します」

と通知するだけではなく、必要に応じて他の医療機関への紹介を行います。

患者のカルテを別のクリニックへ勝手に渡してよい?

慎重な対応が必要です。

例えばM&Aや事業譲渡で、

旧クリニック

新クリニック

へ患者診療を引き継ぐ場合でも、

患者情報は極めて重要な個人情報

です。

「事業を譲渡したからカルテを全部そのまま渡す」

と機械的に考えるのではなく、個人情報保護法、診療情報の性質、患者への説明、承継スキームを踏まえて対応する必要があります。

通常は、

患者へ承継・紹介について説明

必要な診療情報を適切に引継ぎ

という流れを検討します。

STEP3|保健所へ診療所廃止届を提出する

一般社団法人クリニックの医療法上の中心手続きです。

医療法第9条では、病院・診療所等の開設者が廃止した場合、廃止後10日以内に届け出ることとされています。

例えば、

3月31日廃止

なら、法律上の期限を踏まえて速やかに診療所廃止届を提出します。

提出先は原則として管轄保健所等です。

「一般社団法人を解散してから廃止届」ではない

順番を逆にしないよう注意してください。

クリニックを運営している法人を先に消滅させるのではなく、

診療所の廃止

医療機関関係の整理

法人の債権債務整理

法人解散・清算

という順番で考えるのが基本です。

なお、現在の診療所を廃止して別の場所で診療を継続する場合には、単純な「閉院」ではなく、旧診療所の廃止と移転先での新規開設として手続きを検討します。詳しくは、「一般社団法人クリニックを移転する方法」で解説しています。

STEP4|地方厚生局へ保険医療機関廃止届を提出する

保険診療を行っている場合は、保健所だけでは終了しません。

地方厚生局へ、

保険医療機関・保険薬局廃止・休止・再開届

を提出します。

地方厚生局は、保険医療機関を廃止した場合には廃止届を提出する手続きを案内しています。

届出には、

  • 医療機関名称
  • 医療機関コード
  • 廃止年月日
  • 廃止理由
  • 法人名称
  • 代表者
  • 主たる事務所所在地

などを記載します。関東信越厚生局の案内では、廃止届自体の添付書類は「なし」とされています。

保健所への診療所廃止手続きと、地方厚生局への保険医療機関関係の手続きは別です。保険医療機関指定の仕組みや指定・廃止・遡及指定等については、「一般社団法人クリニックの保険医療機関指定完全ガイド」で詳しく解説しています。

閉院後も最後のレセプト請求が残る

例えば3月31日に閉院しても、

3月診療分のレセプト請求

4月請求

その後入金

となります。

さらに、

返戻
再請求
査定
過誤調整

が発生することもあります。

したがって、

クリニックを閉院した日に銀行口座まで閉じる

ことはおすすめできません。

診療報酬の入金・返戻処理が完了するまで、必要な銀行口座や事務体制を確保しておきます。

施設基準はどうする?

保険医療機関そのものを廃止するのであれば、そこで算定していた施設基準も実質的に終了します。

ただし、

  • 施設基準
  • 届出医療
  • 各種加算
  • 在宅関係
  • 歯科施設基準

などについて、厚生局側で個別の辞退・届出等が必要になるものがないかを確認しておくと安全です。

特に、閉院前に一部の施設基準だけを先に終了する場合には、辞退届等が必要になることがあります。

公費医療・各種指定も忘れない

保険医療機関指定とは別に、

  • 生活保護法指定医療機関
  • 自立支援医療
  • 指定難病
  • 小児慢性特定疾病
  • 労災
  • 各種公費
  • 被爆者医療
  • 結核
  • 精神通院医療

などの指定を受けている場合があります。

制度ごとに廃止・変更・辞退等の手続きが異なります。

例えば生活保護の指定医療機関では、診療・診療報酬請求に関する帳簿・書類について5年間の保存義務があります。

「厚生局へ保険医療機関廃止届を出したから全部終了」

とは考えないことが重要です。

STEP5|カルテは閉院しても捨てられない

閉院時に最も重要な問題の一つがカルテです。

医師法第24条では、病院・診療所に勤務する医師が診療した診療録について、診療所等の管理者が5年間保存することとされています。

歯科についても歯科医師法第23条により、同様に診療録を5年間保存する義務があります。

したがって、

閉院した

カルテを廃棄してよい

ではありません。

保険診療ではその他の帳簿等にも保存期間がある

保険医療機関及び保険医療養担当規則では、療養の給付に関する帳簿・書類その他の記録について、原則として完結の日から3年間保存することとされています。

一方、診療録は5年間保存が基本です。

さらに公費制度等では別の保存期間が定められている場合があります。

そのため閉院時には、

書類ごとの保存期間一覧

を作っておくことをおすすめします。

電子カルテも保存が必要

電子カルテであっても保存義務がなくなるわけではありません。

閉院する場合には、

  • 電子カルテ契約終了日
  • サーバー停止日
  • データ出力方法
  • PDF等への書き出し
  • バックアップ
  • 閲覧ソフト
  • 問い合わせ対応
  • 個人情報保護

を確認します。

特に、

「電子カルテ会社との契約を解約したら過去カルテを開けなくなった」

ということがないよう注意してください。

厚生労働省は、一定の基準を満たす場合には診療録等の外部保存も認めています。

法人を解散する場合、カルテはどうする?

一般社団法人自体を清算する場合でも、法定保存期間中のカルテ等を廃棄することはできません。

したがって法人解散前に、

誰が
どこで
どの媒体で
いつまで保存するか

を決めておく必要があります。

具体的な保存方法については、管轄保健所へ事前相談しておくことをおすすめします。

特に電子カルテでは法人消滅後のアクセス方法まで確認してください。

STEP6|スタッフの雇用を整理する

クリニック閉院は、スタッフの雇用にも直接影響します。

例えば、

  • 医師
  • 看護師
  • 歯科医師
  • 歯科衛生士
  • 医療事務
  • カウンセラー

などです。

確認する事項として、

  • 退職日
  • 解雇予告
  • 有給休暇
  • 未払給与
  • 退職金
  • 社会保険
  • 雇用保険
  • 源泉徴収票
  • 離職票

などがあります。

従業員の雇用関係については労働法上の問題がありますので、必要に応じて社会保険労務士等と連携して進めます。

M&Aなら雇用が自動的に移るとは限らない

例えば事業譲渡によって別法人がクリニックを承継する場合、

一般社団法人Aのスタッフ

法人Bのスタッフ

へ自動的に雇用主が変わるとは限りません。

雇用承継の方法を事前に設計する必要があります。

STEP7|テナント・医療機器・契約を整理する

閉院には多数の契約終了が伴います。

例えば、

  • テナント賃貸借
  • 医療機器リース
  • 電子カルテ
  • 電話
  • インターネット
  • 医療廃棄物
  • 薬品卸
  • 検査会社
  • 清掃
  • 広告
  • 予約システム
  • クレジット決済
  • MS法人業務委託
  • 医師紹介会社

などです。

医療機器リースは特に注意

閉院してもリース契約が自動的に終了するとは限りません。

残期間5年
リース残高3,000万円

などの場合には、閉院後も支払義務が残る可能性があります。

そのため閉院を検討する段階で、

契約期間
中途解約条項
違約金
買取条件

を確認してください。

MS法人との契約も終了・精算する

一般社団法人クリニックでは、

MS法人へ、

  • 家賃
  • 業務委託料
  • 広告費
  • 医療機器賃料
  • システム料

を支払っていることがあります。

閉院時には、

未払費用
保証金
貸付金
預り金
機器返却

などを整理します。

特に一般社団法人を解散する場合には、関連MS法人との債権債務を曖昧にしたまま清算しないことが重要です。

STEP8|未収診療報酬・売掛金を整理する

閉院しても、

  • 社保診療報酬
  • 国保診療報酬
  • 自費未収金
  • クレジット入金
  • 助成金
  • 保証金返還

などが後から入金することがあります。

そのため、一般社団法人をすぐ解散・清算するのではなく、すべての債権回収予定を確認してから法人清算へ進む方が実務上安全です。

美容クリニックでは「前受金・コース契約」が最大の問題になることもある

美容クリニックでは、

医療脱毛5回コース
美容施術10回コース
年間プラン

などについて、患者から先に代金を受け取っている場合があります。

例えば、

患者から受け取った前受金
5,000万円

未消化施術相当額
3,000万円

というケースです。

閉院するからといって、この3,000万円相当の義務が消えるわけではありません。

対応方法を決める

主に、

未消化分を返金する

または、

他の医療機関へ治療を承継する

などの対応を検討します。

ただし別法人へ契約を承継する場合には、患者契約・個人情報・事業譲渡契約等の整理が必要です。

美容クリニックでは、医療機器より前受金債務の方がM&A・閉院の最大論点になるケースもあります。

一般社団法人はクリニック閉院後も残せる?

結論|残すことは可能

ABCクリニックを廃止したからといって、

一般社団法人ABC

を必ず解散しなければならないわけではありません。

例えば、

債権回収のため残す
別の適法な事業を行う
将来別のクリニック開設を検討する

といったケースが考えられます。

ただし、定款目的、実際の事業内容、税務、今後の医療機関開設予定等を踏まえて判断します。

逆に、クリニックだけ閉じて法人を放置するのはおすすめできない

一般社団法人を存続させる場合には、

  • 法人登記
  • 役員任期
  • 社員総会
  • 決算
  • 税務申告

等の法人管理は残ります。

「クリニックを閉じたので法人はそのまま何もしない」

という状態は避けてください。

一般社団法人は最後の登記から5年間登記がない場合、休眠一般社団法人としてみなし解散制度の対象になり得ます。

一般社団法人そのものを解散する方法

クリニックを廃止し、

今後法人を利用する予定もない

のであれば、一般社団法人の解散・清算を検討します。

主な流れは、

社員総会で解散決議

解散・清算人登記

債権者保護手続

債権回収

債務弁済

残余財産処分

決算報告承認

清算結了登記

です。

STEP9|社員総会で一般社団法人を解散する

一般社団法人法第148条では、一般社団法人の解散事由の一つとして社員総会の決議を定めています。

さらに社員総会による解散決議は、原則として、

総社員の半数以上で、総議決権の3分の2以上

に当たる多数が必要な特別決議です。定款でさらに厳しい要件を設けている場合は、その定款に従います。

M&A後の社員構成にも注意

例えばM&Aや経営紛争によって社員関係が悪化していると、

「閉院したので法人を解散したい」

と思っても必要な社員総会決議を取れないケースがあります。

一般社団法人では誰が社員なのかが極めて重要です。

STEP10|解散登記・清算人

一般社団法人を社員総会決議等によって解散した場合には、主たる事務所所在地で原則として2週間以内に解散登記を行います。

解散すると法人がその瞬間に完全消滅するわけではありません。

一般社団法人法では、解散した法人は清算目的の範囲内で、清算結了まで存続するとされています。

つまり、

一般社団法人ABC

解散

清算法人ABC

債権債務整理

清算結了

という流れです。

清算人は何をする?

清算人は主に、

  • 現在の業務の終了
  • 売掛金・未収金の回収
  • 借入金・未払金の支払い
  • 契約精算
  • 残余財産の処理

を行います。

清算中に新たなクリニック事業を積極的に始めるのではなく、法人を終了させるための事務を行う期間と考えると分かりやすいでしょう。

STEP11|債権者保護手続を行う

一般社団法人の清算では、債権者へ債権申出を求める公告が必要です。

一般社団法人法第233条では、清算法人は遅滞なく、

官報公告

把握している債権者への個別催告

を行うこととされています。

そして債権申出期間は、2か月を下回ることができません。

したがって、

「3月31日に法人解散して、4月10日に法人を完全消滅させる」

というような清算はできません。

法人清算には一定期間が必要です。

STEP12|債権を回収し、債務を支払う

この段階で、

  • 診療報酬
  • 自費売掛金
  • 敷金
  • 保証金
  • 貸付金

などを回収します。

その一方で、

  • スタッフ給与
  • 退職金
  • リース
  • 家賃
  • 医療機器
  • MS法人への未払金
  • 患者返金
  • 税金
  • 借入金

などを支払います。

法人を早く解散しすぎると困る理由

一般社団法人クリニックの閉院では、最後の診療報酬入金が閉院後になることが多いため、

診療報酬を受け取る前に銀行口座や清算実務を終わらせない

ことが重要です。

残った現預金を代表理事・社員へ分配できる?

原則として「オーナーへ分配」という発想はしない

一般社団法人法上、残余財産はまず定款の規定に従って帰属します。定款で決まらなければ社員総会等で決定し、それでも定まらないものは国庫へ帰属する仕組みです。

しかし、医療機関を開設する一般社団法人では、さらに非営利性の制約があります。

2026年に厚生労働省が示した非営利性の確認ポイントでは、一般社団法人クリニックの残余財産について、


地方公共団体
持分なし医療法人等

所定の非営利主体から帰属先を選定し、定款に明記することを求める方向が示されています。

したがって、

「クリニックを10年間運営して5,000万円残ったので、最後に代表理事へ5,000万円配る」

という株式会社的な出口は想定されていません。

基金がある一般社団法人は特に注意

一般社団法人が基金制度を採用しており、

基金1,000万円

などが残っている場合には、基金返還と法人清算の関係も整理する必要があります。

基金は通常の株式出資とは異なり、一般社団法人法上特別な返還ルールがあります。

清算時には、

基金
その他債務
残余財産

を区別して処理する必要があるため、司法書士・税理士等と確認してください。

STEP13|清算結了登記を行う

すべての清算事務が完了したら、

清算人が決算報告を作成

社員総会で承認

清算結了登記

へ進みます。

法務局も一般社団法人について、

「解散及び清算人選任」
→「清算結了」

という2段階の登記様式を用意しています。

清算結了登記によって、一般社団法人は最終的に法人としての清算を終えます。

法人の帳簿は清算後も10年間保存

一般社団法人法第241条では、清算結了登記後も、清算人等は法人の帳簿や事業・清算に関する重要資料を10年間保存しなければならないとしています。

つまり、

法人清算が終わった

すべての書類を捨ててよい

ではありません。

診療録の保存義務と、法人帳簿の保存義務を分けて管理してください。

閉院ではなく「事業譲渡・M&A」を検討した方がよいケース

完全閉院する前に、第三者へ承継できないかを検討する価値があります。

例えば、

患者基盤
スタッフ
物件
医療機器
内装
ウェブサイト
予約システム

に価値がある場合です。

選択肢として、

一般社団法人そのものを承継
事業譲渡
別法人へのクリニック承継

などがあります。

特に美容クリニックや自由診療クリニックでは、単純閉院すると、

  • 多額の内装費
  • 医療機器
  • 患者基盤
  • 広告アカウント

等の価値を失う可能性があります。

閉院を決める前にM&A可能性を検討するのも一つの方法です。

一般社団法人によるクリニック運営を終了しても、診療所自体を閉院せず、新たに医療法人を開設者として診療を継続する方法も考えられます。詳しい手続きについては、「一般社団法人クリニックから医療法人へ切り替える方法」をご確認ください。

M&Aが決まったら廃止届を先に出さない

事業承継を予定している場合には特に注意してください。

先に、

旧クリニック廃止

保険医療機関廃止

を確定してしまうと、承継スキームや保険診療の継続性に影響することがあります。

M&Aの場合は、

誰が承継するのか
一般社団法人自体を残すのか
別法人へ事業譲渡するのか
管理医師は同じか
保険医療機関指定をどうするか

まで決めてから廃止日を設定します。

一般社団法人クリニック閉院のチェックリスト

分野主な確認事項
患者閉院案内・紹介・継続治療
保健所診療所廃止届
厚生局保険医療機関廃止
施設基準辞退等の要否
公費各指定の廃止・辞退
カルテ5年等の保存
レセプト最終請求・返戻
前受金未消化分返金・承継
スタッフ退職・給与・社会保険
物件賃貸借終了・原状回復
医療機器売却・返却・リース
MS法人契約・債権債務整理
銀行最終入出金後に整理
法人存続か解散か決定
残余財産定款・非営利性確認
清算公告・債務弁済・清算結了

一般社団法人クリニックの閉院・廃止でよくある失敗

1. 保健所へ廃止届を出せば全部終わりだと思う

厚生局、公費、カルテ、従業員、法人等の手続きが残ります。

2. 診療所廃止と一般社団法人解散を混同する

全く別の手続きです。

3. 廃止日に法人銀行口座を閉じる

診療報酬やクレジット売上等が後から入金する可能性があります。

4. 電子カルテ契約をすぐ解約する

法定保存期間中にカルテを閲覧できなくなるリスクがあります。

5. カルテを廃棄する

診療録には原則5年間の保存義務があります。

6. 患者へほとんど通知せず突然閉院する

継続治療患者の医療継続に支障が生じます。

7. 美容クリニックの前受金を忘れる

未消化施術・返金債務を最初に把握してください。

8. リース契約残高を確認しない

閉院後も多額のリース料が残るケースがあります。

9. 法人を先に解散させる

診療報酬、患者返金、カルテ、契約等の処理主体を残す必要があります。

10. 残った財産を社員・代表理事へ配る

一般社団法人クリニックの非営利性・残余財産規定に注意が必要です。

一般社団法人クリニックの閉院・廃止に関するFAQ

Q1. 一般社団法人クリニックを閉院できますか?

できます。

医療法上の診療所廃止手続きを行います。

Q2. 廃止届はいつまでですか?

医療法第9条により、診療所を廃止した後10日以内です。

Q3. 廃止する前に保健所へ相談した方がよいですか?

おすすめします。

特にカルテ保管、M&A、休止との選択等がある場合は事前確認した方が安全です。

Q4. 一時的に診療を止めたい場合も廃止ですか?

再開予定があるなら休止を検討できます。

休止した場合も10日以内の届出が必要です。

Q5. 保険医療機関指定も自動的に消えますか?

保健所の診療所廃止とは別に、地方厚生局へ保険医療機関廃止届を提出します。

Q6. 施設基準はどうなりますか?

保険医療機関の廃止とともに算定できなくなりますが、個別に辞退等の手続きが必要か管轄厚生局へ確認してください。

Q7. カルテは何年保存しますか?

医師法・歯科医師法上の診療録については原則5年間です。

Q8. 保険診療の書類はすべて5年間ですか?

保険医療養担当規則では、診療録以外の療養の給付に関する帳簿・書類等は原則3年間です。別制度でより長い保存期間がある場合もあります。

Q9. 法人を解散したらカルテを捨てられますか?

できません。

法定保存期間が残っている記録については保存体制を確保する必要があります。

Q10. 閉院後の診療報酬は受け取れますか?

廃止日前に行った診療について請求・入金・返戻等の処理が残ります。

そのため必要な銀行口座・事務体制を一定期間維持します。

Q11. 美容クリニックの未消化コースはどうしますか?

返金または適切な承継等を検討します。

患者との契約上の義務を整理せず閉院することは避けるべきです。

Q12. クリニックを閉院したら一般社団法人も解散しなければなりませんか?

いいえ。

診療所廃止と一般社団法人解散は別です。

Q13. 一般社団法人を残して別のクリニックを後から開設できますか?

制度上検討できます。

ただし新しい診療所について改めて開設許可を取得する必要があります。

Q14. 一般社団法人を解散するには社員総会が必要ですか?

社員総会決議によって解散する場合、原則として特別決議が必要です。

Q15. 法人解散後すぐに清算できますか?

債権者に対する公告等があり、債権申出期間は2か月を下回ることができません。

Q16. 解散時の残ったお金を社員へ分配できますか?

医療機関を開設する一般社団法人では非営利性の観点から残余財産の帰属先が制限されます。

2026年の確認ポイントでは、国・地方公共団体・持分なし医療法人等の所定の主体から選ぶことが示されています。

Q17. 法人清算後の会計資料も捨ててよいですか?

一般社団法人法では、清算結了登記後10年間、法人の帳簿や事業・清算に関する重要資料を保存することとされています。

Q18. 閉院とM&Aのどちらがよいですか?

患者基盤、スタッフ、物件、医療機器等に価値がある場合には、完全閉院する前に事業承継・M&Aの可能性を検討する価値があります。

まとめ|一般社団法人クリニックの閉院は「廃止届を出して終わり」ではない

一般社団法人クリニックを閉院する場合、医療法上は診療所廃止届が中心になります。

しかし実際には、

診療所廃止

保険医療機関廃止

公費・施設基準整理

カルテ保存

患者対応

レセプト・未収金

スタッフ

テナント・医療機器

前受金・債務整理

まで行って初めて、医療機関としての閉院処理が完了します。

そして最も重要なのは、

診療所廃止

一般社団法人解散

という点です。

一般社団法人を今後使用しないのであれば、その後に、

社員総会解散決議

解散・清算人登記

債権者公告

債権回収・債務弁済

残余財産処理

清算結了

という法人清算手続きを行います。

特に一般社団法人クリニックでは、2026年以降、非営利性の確認が強化されており、残余財産を社員や事実上のオーナーへ自由に分配することを前提とした法人設計はできません。

また、

保険診療の最終入金
カルテの法定保存
美容クリニックの前受金
リース残債

などは、閉院後も長く残る可能性があります。

そのため一般社団法人クリニックの閉院は、

「閉院日を決めてから手続きを考える」のではなく、「残る義務をすべて整理してから閉院日を決める」

ことが重要です。

一般社団法人クリニックの閉院・廃止をご検討の方へ

一般社団法人クリニックを閉院する場合には、

  • 診療所廃止届
  • 保険医療機関廃止
  • 施設基準
  • 公費医療
  • 患者対応
  • カルテ保存
  • 診療報酬
  • 前受金・未消化コース
  • スタッフ
  • 医療機器
  • MS法人
  • 一般社団法人解散
  • 残余財産
  • 清算結了

まで一体として整理する必要があります。

また、

「完全閉院するかM&Aするか」
「法人は残すか解散するか」
「カルテをどこで保存するか」
「未消化コースをどう処理するか」

によって進め方は大きく変わります。

閉院を公表した後ではM&Aや契約処理の選択肢が狭くなることもありますので、可能であれば患者への閉院告知を行う前の段階から手続き全体を設計することをおすすめします。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

目次