【2026年最新版】一般社団法人クリニックの管理医師との契約完全ガイド|雇用契約・報酬・権限・退職・競業まで

一般社団法人でクリニックを開設・運営する場合、非常に重要になるのが管理医師との契約です。

実務では、

「管理医師とは雇用契約を結べばよいですか?」

「一般社団法人の理事にもする場合、雇用契約と委任契約の両方が必要ですか?」

「管理医師の給与はいくらにすればよいですか?」

「診療以外の経営判断は代表理事が行ってもよいですか?」

「管理医師が突然辞めた場合、クリニックはどうなりますか?」

「退職後に近隣で同じ美容クリニックを開業しないという競業避止条項を入れられますか?」

といったご相談があります。

結論からいうと、一般社団法人クリニックの管理医師との関係は、通常の勤務医との雇用契約だけでは整理しきれません。

特に2026年現在は、

管理医師としての医療法上の地位

勤務医としての雇用関係

一般社団法人の理事としての地位

という3つの関係を分けて考えることが重要です。

一般社団法人と理事との関係については、一般社団法人法第64条により委任に関する規定に従うとされています。つまり、管理医師が一般社団法人の理事でもある場合、医師としての勤務関係と理事としての法人役員関係は法的には別です。

さらに2026年に厚生労働省が示した一般社団法人医療機関の非営利性確認ポイントでは、一般社団法人が開設する医療機関の管理者を理事に加えることが確認事項として明確化されています。

そのため現在は、

管理医師=雇用する勤務医

というだけではなく、

管理医師=一般社団法人の理事

まで含めて契約・法人組織を設計することが重要です。

この記事では、一般社団法人クリニックの管理医師との契約について、雇用契約、役員就任、給与・役員報酬、権限、勤務時間、兼務、退職、秘密保持、競業避止、行政手続きまで実務に沿って詳しく解説します。


目次

一般社団法人クリニックの管理医師とは?

管理医師は単なる「院長」という肩書ではない

医療法第10条では、診療所の開設者は原則として臨床研修等修了医師に診療所を管理させなければならないと定めています。

したがって、一般社団法人がクリニックを開設する場合には、

開設者=一般社団法人

であり、

管理者=管理医師

という関係になります。

一般社団法人そのものは医師ではありません。

そのため、法人が医療機関を開設する以上、医療法上の要件を満たす医師を管理者として置く必要があります。

管理医師には従業者を監督する責任がある

医療法第15条では、診療所の管理者について、

診療所に勤務する医師・薬剤師その他の従業者を監督し、その業務遂行に必要な注意をする義務

を定めています。

つまり管理医師は、

「診療だけ担当する勤務医」

ではありません。

医療機関の管理者として、

医療安全
診療体制
医療従事者の業務
法令遵守
医療機器
診療録
院内感染対策

などについて責任を負います。

そのため契約書上も、

「法人の指示に全面的に従う勤務医」

というだけの位置付けにするのは適切ではありません。

一般社団法人と管理医師の間には3つの法律関係がある

実務では次のように整理すると分かりやすいでしょう。

地位法的な関係主な役割
勤務医雇用契約診療・勤務
管理医師医療法上の管理者医療機関の管理・監督
理事一般社団法人との委任関係法人運営への関与

この3つは重なることがありますが、同じものではありません。

例えば、

A医師
=管理医師
=一般社団法人理事
=法人に雇用される勤務医

という構成は考えられます。

しかし、

雇用契約を終了したから自動的に理事でもなくなる

とは限りません。

反対に、

理事を辞任したから雇用契約も自動終了する

とも限りません。

ここを明確にしておかないと、退職時に大きな問題になります。

2026年以降は「管理医師を理事にする」ことが重要

2026年に厚生労働省が示した一般社団法人医療機関の非営利性確認ポイントでは、

一般社団法人が開設する医療機関の管理者が理事に加えられていること

が確認事項になっています。

そのため、

代表理事:非医師A
理事:A・B
管理医師:C医師

という構成で、C医師が理事になっていない場合には、現在は法人構成の見直しを求められる可能性があります。

実務上は、

代表理事A
理事A・B・C医師
管理医師C医師

といった構成を前提として考えることが重要です。

管理医師の理事就任だけでなく、社員・理事構成、役員報酬、MS法人との取引、資金の流れなどを含めた非営利性の考え方については、「一般社団法人クリニックの非営利性完全ガイド」で詳しく解説しています。

管理医師との契約は「雇用契約書だけ」でよい?

雇用契約書だけでは不十分になるケースが多い

管理医師が単に勤務医として働くだけなら、通常の雇用契約が中心です。

しかし管理医師を理事にもする場合には、

勤務医としての雇用関係

と、

理事としての委任関係

を分ける必要があります。

一般社団法人法第64条は、一般社団法人と理事の関係を委任関係としています。

したがって、実務上は次の書類を整理しておくと分かりやすくなります。

書類主な内容
雇用契約書・労働条件通知書勤務日、勤務時間、給与、休日等
理事就任承諾書一般社団法人理事への就任
社員総会議事録理事選任
管理医師の職務・権限確認書医療法上の管理権限
秘密保持・競業等の条項患者情報、営業秘密等

全てを別々の契約書にする必要があるとは限りませんが、少なくともどの条項が雇用関係で、どの条項が役員・管理医師としての義務なのかは明確にしておくことをおすすめします。

雇用契約書には何を書けばよい?

管理医師を労働者として雇用する場合、労働基準法第15条により、使用者は賃金・労働時間その他の労働条件を明示する必要があります。

管理医師の場合には、通常の勤務医よりも契約内容を詳細にした方がよいでしょう。

例えば次のような事項です。

契約事項内容
雇用期間無期・有期
勤務場所クリニック所在地
職務医師業務・管理医師業務
勤務曜日月~金等
勤務時間10時~19時等
休憩1時間等
給与月額固定、賞与等
時間外労働有無・取扱い
休日所定休日
社会保険加入関係
管理医師手当給与に含むか別途か
秘密保持患者情報・経営情報
退職事前通知・引継ぎ
競業必要な範囲で設定

管理医師の給与と役員報酬は分ける?

医師としての給与と理事としての報酬は法的性質が異なる

例えば、

勤務医として月額120万円
理事として役員報酬10万円

とする設計を検討するケースがあります。

勤務医としての給与は雇用契約に基づく賃金です。

一方、理事としての役員報酬は法人役員としての報酬です。

したがって、

管理医師給与
理事報酬

を契約上・会計上どう整理するかは明確にした方がよいでしょう。

ただし、税務・社会保険上の扱いは勤務実態や法人組織によって変わるため、税理士・社会保険労務士とも連携して決めることをおすすめします。

「管理医師だから高額報酬」で終わらせない

一般社団法人クリニックでは非営利性の問題もあります。

管理医師に相応の責任があるため報酬が高くなること自体は不自然ではありません。

しかし、

実際にはほとんど勤務しない
管理者業務もしていない
それでも極端に高額な報酬を支払う

という場合には、法人財務や非営利性の説明が必要になる可能性があります。

管理医師の勤務日数・勤務時間はどう決める?

管理医師は診療所を実質的に管理できる勤務体制でなければなりません。

例えば、

週5日診療しているクリニックで、

管理医師は月1日だけ勤務

という形であれば、

本当に診療所を管理できているのか

という問題が生じます。

一方で、勤務時間について全国一律に、

「週40時間勤務しなければ管理医師になれない」

という単純な判断でもありません。

診療時間、他の勤務医、診療内容、オンライン診療等によって実態が異なるため、管轄保健所等へ事前確認することが重要です。

管理医師を「労働基準法上の管理監督者」と考えない

名称に「管理」と付いているため、

管理医師=労働基準法上の管理監督者

と思われることがあります。

しかし、これは別の概念です。

医療法上の「管理者」であるという肩書だけで、当然に労働基準法上の管理監督者となるわけではありません。

労働者としての実際の権限、待遇、勤務実態等から判断されます。

したがって、

「管理医師だから残業代は一切発生しない」

と機械的に契約書へ記載することは避けるべきでしょう。

医師の時間外労働にも上限規制がある

2024年4月から、診療に従事する勤務医にも時間外・休日労働の上限規制が適用されています。

原則となるA水準では、時間外・休日労働の上限は年間960時間です。一定の指定を受けた医療機関については別の特例水準があります。

一般的な無床クリニックで管理医師を雇用する場合には、

勤務時間
診療時間
開院前後の業務
カルテ記載
会議
スタッフ管理

まで含めた実際の労働時間を管理する必要があります。

管理医師の「権限」を契約書で明確にする

一般社団法人クリニックでは、管理医師と代表理事の役割分担が非常に重要です。

例えば非医師の代表理事がいる場合、

代表理事=法人経営

管理医師=医療機関の管理

という基本的な役割分担を明確にします。

管理医師は医療法上、従業者を監督する責任を負います。

そのため、

「管理医師は代表理事の指示に従い、医療上の判断についても異議を述べない」

といった条項は適切ではありません。

管理医師に認めるべき権限の例

管理医師が実質的に医療機関を管理できるよう、少なくとも次のような分野について関与方法を定めておくことをおすすめします。

分野管理医師の関与
診療方針医学的判断を行う
医療安全管理・改善
医師勤務医療上必要な意見を述べる
看護師等業務監督
医療機器安全性・必要性を確認
医薬品医療上の管理
院内感染体制整備
診療録適正管理
医療広告医療内容の適正性確認
行政対応医療面で協力

一方、

資金調達
広告予算
賃料交渉
経理
一般的な事業計画

などについては、代表理事・理事会等が中心となることも考えられます。

重要なのは、非医師経営者が医学的判断まで支配しないことです。

「売上目標」を管理医師へ設定してもよい?

一般企業では営業目標を設定することがあります。

しかし医療機関では、

「今月は売上2,000万円なので、この患者には必ず高額施術を勧める」

といった指示が医学的判断へ介入すると問題になります。

経営上、

患者数
売上
原価
人員

などの経営数値を管理することと、具体的な患者への医療判断は分けてください。

特に美容クリニックでは、

診療判断と販売目標の境界

を契約・院内ルールで明確にすることが重要です。

MS法人がある場合はさらに注意

一般社団法人クリニックでは、MS法人が、

広告
受付
採用
システム
経理
不動産

等を担当するケースがあります。

業務委託自体が一律に禁止されるわけではありません。

しかし厚生労働省は、医療機関の開設者が実質的に開設・経営の責任主体となっていることを求めており、営利法人等との関係によって医療機関経営が左右されないことを確認事項としています。

そのため、

MS法人社長が管理医師を自由に解任できる
MS法人が医療判断を決める
MS法人だけがスタッフ人事を決定する

といった構造は避ける必要があります。

管理医師は他院と兼務できる?

医療法第12条では、病院・診療所を管理する医師は、原則として他の病院・診療所を管理しない者でなければならず、一定の場合には都道府県知事の許可を受ける仕組みとなっています。

したがって、

Aクリニック管理医師

Bクリニック管理医師

という二施設の管理者兼務を当然にできるとは考えないでください。

一方、

Aクリニックでは管理医師
Bクリニックでは単なる勤務医

というケースは別の論点です。

実際にAクリニックの管理責任を果たせる勤務状況かを確認する必要があります。

他院勤務を認める場合は契約書に書く

例えば、

月・水・金
→当院管理医師

火・木
→他院勤務

という働き方を認めるのであれば、

勤務曜日
診療時間
緊急連絡
他院勤務の届出
競合関係
患者紹介

などを契約上整理します。

特に他院が近隣の競合美容クリニックの場合には、秘密保持・競業との関係も検討します。

2026年4月から保険医療機関の管理者要件にも注意

保険診療を行うクリニックでは、2026年4月1日から保険医療機関の管理者要件も導入されています。

厚生労働省によると、基本的には、

保険医であること

に加えて、

一定期間の保険診療等の経験

が必要です。

したがって、

一般社団法人としては管理医師にできる

としても、

保険医療機関の管理者としての要件を満たしていない

可能性があります。

保険診療を予定している一般社団法人クリニックでは、雇用契約を締結する前に候補医師の経歴を確認してください。

保険医療機関の管理者要件だけでなく、一般社団法人による指定申請、指定日、遡及指定、施設基準等については、「一般社団法人クリニックの保険医療機関指定完全ガイド」で詳しく解説しています。

管理医師が退職すると何が起こる?

管理医師の退職は通常の勤務医退職とは影響が大きく異なります。

診療所には管理者が必要だからです。

したがって、

「管理医師が辞めたので翌月から院長不在」

という状態を前提に運営することはできません。

後任管理医師を確保し、行政手続きを行う必要があります。

管理医師が一般社団法人の理事を兼ねている場合には、管理医師変更とは別に、理事の辞任・後任理事の選任・変更登記等も検討する必要があります。詳しくは、「一般社団法人クリニックの社員・理事・代表理事を変更する方法」をご確認ください。

退職時は4つの地位を確認する

管理医師が退職する際には次のように整理します。

地位主な対応
勤務医雇用契約終了
管理医師後任へ変更
理事辞任・後任理事選任
保険医療機関管理者厚生局変更届

これらを一括して「退職」と考えないことが重要です。

管理医師の変更は保健所への手続きが必要

例えば東京都渋谷区では、法人開設診療所の管理者変更について、変更後10日以内の届出を案内し、後任管理者の職歴書、医師免許証、臨床研修修了登録証等を必要書類として挙げています。

具体的な期限・必要書類は自治体によって異なるため、管轄保健所へ確認してください。

一般社団法人の場合には、2026年の非営利性確認を踏まえ、後任管理医師を理事へ加える法人手続きも忘れないようにします。

保険医療機関なら厚生局にも変更届

保険医療機関では、管理者変更は地方厚生局への届出事項です。

2026年現在、各厚生局は**「保険医療機関・保険薬局届出事項変更(異動)届」**を管理者変更時の様式として案内しています。

さらに2026年4月以降、新しい管理者については保険医療機関管理者要件を確認するための添付書類も必要になります。

「退職するなら3か月前までに申し出る」と契約できる?

実務では非常に重要です。

管理医師が突然辞めるとクリニック自体の運営に影響するため、

退職希望日の2~3か月前までに書面で申し出る

といった条項を設けることがあります。

管理医師の特殊性を考えれば、早期通知を求める合理性はあります。

ただし、契約書に書けばどのような状況でも医師を強制的に在職させ続けられる、という意味ではありません。

そのため契約では、

退職予告期間
後任採用への協力
行政手続きへの協力
患者引継ぎ
カルテ・医療情報引継ぎ

などをまとめて定める方法が実務的です。

法人から管理医師を簡単に解雇できる?

できません。

雇用契約上の労働者である場合、労働契約法第16条により、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には無効となります。

したがって、

「代表理事と意見が合わない」

「売上目標を達成しなかった」

という理由だけで当然に解雇できるわけではありません。

有期契約はさらに注意

例えば、

管理医師契約期間1年間

という有期労働契約の場合、契約期間中の解雇は、原則としてやむを得ない事由が必要です。

管理医師契約では、

無期雇用
1年更新等の有期雇用

のどちらにするかを慎重に決める必要があります。

「管理医師から外す」ことと「解雇」は別

例えば法人側が、

管理医師としては交代してほしい

と考えても、

医師としては引き続き勤務してもらう

というケースもあります。

この場合、

管理者変更

雇用契約終了

です。

逆に、雇用契約を終了するなら管理者変更も必要です。

さらに理事でもある場合には、

理事辞任・解任

という別問題もあります。

管理医師
勤務医
理事

の3つを分けて判断してください。

理事を辞任した場合の注意

管理医師が一般社団法人の理事でもある場合、

「管理医師は続けるが理事だけ辞めたい」

というケースも考えられます。

しかし2026年の一般社団法人医療機関の非営利性確認では、管理者を理事に加えることが確認事項となっています。

そのため、管理医師が理事だけ辞任するスキームは、現在は慎重に検討する必要があります。

管轄行政庁へ事前確認することをおすすめします。

秘密保持条項は必ず入れた方がよい

管理医師はクリニックの重要情報へ広くアクセスします。

例えば、

患者情報
診療情報
医師・スタッフ情報
仕入価格
広告戦略
売上
経営資料
業務マニュアル

などです。

そのため雇用契約等には秘密保持条項を設けておくことをおすすめします。

特に患者情報については、一般的な営業秘密以上に慎重な管理が必要です。

退職後も患者カルテや患者リストを持ち出せないことを明確にします。

退職後の競業避止条項は設定できる?

一定の範囲では検討可能だが、広すぎる条項は危険

例えば、

「退職後5年間、日本全国で一切医師として働いてはならない」

という条項は、医師の職業選択・生計への影響が極めて大きく、合理性が問題となります。

一方、

一定期間
一定地域
具体的な競合事業

に限定し、クリニックが持つ営業秘密等を守る合理的必要性がある場合には、競業避止特約が有効と判断された裁判例もあります。

JILPTが整理する裁判例でも、使用者に保護すべき営業上・技術上の秘密があり、その秘密を知る立場の従業員について、一定範囲の退職後競業避止を認めた例があります。

管理医師の競業避止で考えるポイント

競業避止条項を設ける場合には、少なくとも次のように合理性を検討します。

項目
期間6か月・1年など必要最小限
地域同一区・一定距離等
対象業務同一診療モデル等
医師の地位経営情報へアクセスしていたか
保護利益患者リスト・営業秘密等
制約の程度医師の生計を過度に妨げないか
代償措置必要に応じ検討

「近隣で一切の医療行為を禁止する」

より、

特定の競合ビジネスについて一定期間制限する

など、対象を具体化する方が合理的です。

患者の引抜き・スタッフ引抜きも別条項で検討

競業そのものとは別に、

患者への組織的な勧誘
従業員の一斉引抜き
患者リストの持出し

などを禁止する条項を設けることがあります。

例えば美容クリニックでは、

院長退職

徒歩3分の場所で新院開業

LINE等で旧院患者へ一斉案内

というトラブルも考えられます。

このような問題は、

競業避止
秘密保持
患者情報
引抜き禁止

を分けて契約設計した方が整理しやすいでしょう。

SNSアカウントの帰属も決める

近年特にトラブルになりやすいのがSNSです。

例えば、

「○○クリニック院長Dr.A」

としてInstagramやXを運用している場合、

アカウントが、

医師個人のものなのか
一般社団法人のものなのか

を明確にしてください。

法人が広告費・スタッフを使って育成したアカウントなのに、管理医師退職時にそのまま持っていかれるとトラブルになります。

契約書またはSNS運用規程で、

アカウント所有者
ログイン情報
投稿データ
退職後の名称使用

を決めておくと安全です。

管理医師退職時の引継ぎ事項

退職予定が決まった場合には、次のような事項を整理します。

項目主な対応
患者継続治療・予約
カルテ診療情報整理
医師業務後任へ引継ぎ
スタッフ管理事項共有
医薬品管理状況
医療機器点検・管理
行政保健所変更
厚生局管理者変更
理事辞任・後任選任
登記理事変更登記
SNSアカウント整理
電子カルテID権限削除
鍵等法人へ返却

管理医師が辞める当日に、

「後任医師は来週探します」

という運用にならないよう、退職通知期間の段階から後任選任を進めます。

管理医師との契約でよくある失敗

雇用契約書だけ作って理事就任を忘れる

2026年以降の非営利性確認では管理者の理事就任が重要です。

「院長」という肩書だけで管理者の権限を書いていない

代表理事・MS法人との権限関係が曖昧になります。

医療判断まで非医師代表理事の承認制にする

管理医師が医療法上の管理責任を果たせなくなる可能性があります。

管理医師だから残業代不要と決めつける

医療法上の管理者と労働基準法上の管理監督者は別問題です。

管理医師の他院勤務を確認しない

勤務実態によっては管理責任を果たせない可能性があります。

2026年の保険医療機関管理者要件を確認しない

保険診療を行う場合は特に重要です。

退職条項が「いつでも辞められる」だけ

管理医師退職はクリニック運営に重大な影響があるため、引継ぎ・事前通知を設計します。

管理医師退職=理事退任だと思う

別の法的地位です。

競業避止を広く設定しすぎる

全国・長期間・全医療行為禁止などは有効性に問題が生じやすくなります。

SNS・患者情報の帰属を決めていない

退職後の患者誘導トラブルにつながります。

特に、非医師の代表理事やMS法人が、管理医師の選任・診療方針・医療従事者の人事等まで実質的に支配している場合には、単なる役割分担の問題ではなく、名義貸し・実質支配の問題につながる可能性があります。詳しくは、「一般社団法人クリニックの名義貸し・実質支配とは?」で解説しています。

一般社団法人クリニックの管理医師との契約に関するFAQ

Q1. 管理医師とは雇用契約を結べますか?

はい。

実際に法人の指揮命令のもと勤務し賃金を受けるのであれば、勤務医として雇用契約を締結することが一般的です。

Q2. 管理医師を理事にしても雇用契約を結べますか?

検討可能です。

ただし、勤務医としての雇用関係と、理事としての委任関係を区別してください。一般社団法人と理事との関係は法律上、委任に関する規定に従います。

Q3. 2026年現在、管理医師は理事にする必要がありますか?

一般社団法人医療機関の非営利性確認では、管理者を理事に加えていることが確認事項となっています。

Q4. 管理医師は社員にもする必要がありますか?

管理医師を理事に加えることは確認事項となっていますが、それだけを理由に必ず社員にもする必要があるという制度ではありません。

Q5. 非医師代表理事と管理医師のどちらが偉いのですか?

単純な上下関係で整理するものではありません。

代表理事は法人代表、管理医師は医療法上の医療機関管理者として、それぞれ別の権限・責任があります。

Q6. 経営判断は代表理事がしてもよいですか?

法人経営について代表理事等が判断することは当然あります。

ただし医学的判断や医療安全等について管理医師の権限を侵害しないようにします。

Q7. 管理医師に売上目標を課せますか?

経営指標を共有することと、具体的診療について不要な施術・投薬をさせることは別です。

医学的判断に介入する運用は避けてください。

Q8. 管理医師は他のクリニックでも勤務できますか?

勤務医として他院勤務するケースはありますが、当院の管理責任を実質的に果たせることが必要です。

他施設の「管理者」まで兼務する場合には、医療法第12条上の許可等を確認する必要があります。

Q9. 管理医師を業務委託契約にできますか?

名称だけ業務委託にしても、実態として法人の指揮命令下で勤務し、労働者性が認められる場合には労働法上の問題が生じます。

実際の働き方を踏まえて契約形態を決める必要があります。

Q10. 管理医師の給与と役員報酬は分けた方がよいですか?

分けて整理する方法があります。

医師業務に対する賃金と理事業務に対する役員報酬は性質が異なるため、税務・社会保険も含めて専門家と確認してください。

Q11. 管理医師が突然辞めたらどうなりますか?

後任管理医師を速やかに確保し、保健所・厚生局等の変更手続きが必要です。

管理者不在のまま通常運営を続けることを前提にはできません。

Q12. 退職は3か月前通知にできますか?

管理医師の特殊性から事前通知条項を設定することは実務上有用ですが、条項だけで強制的に在職を続けさせられるわけではありません。

引継ぎ義務等と組み合わせて設計することをおすすめします。

Q13. 法人側から管理医師を解雇できますか?

労働者である場合、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

Q14. 管理医師から外せば自動的に解雇になりますか?

なりません。

管理者の地位と雇用契約は別です。

Q15. 管理医師が辞めたら理事も自動的に辞任しますか?

原則として別手続きです。

理事辞任や後任理事選任、必要に応じて変更登記を行います。

Q16. 退職後の競業を禁止できますか?

合理的な範囲で検討できますが、期間・地域・対象業務等が過度に広いと有効性が問題になります。

Q17. 患者を新しいクリニックへ連れて行かない条項を入れられますか?

患者情報・秘密保持・不当な勧誘防止の観点から条項を検討できます。

ただし患者本人の医療機関選択まで不当に制限する内容には注意してください。

Q18. 管理医師が変更したら保健所へ届出が必要ですか?

必要です。

例えば渋谷区では法人開設診療所の管理者変更について、変更後10日以内の届出を案内しています。

Q19. 保険医療機関なら厚生局にも届出が必要ですか?

必要です。

管理者変更は「届出事項変更(異動)届」の対象です。

Q20. 管理医師との契約はいつ作るべきですか?

一般社団法人設立・診療所開設許可申請の前に基本条件を固めることをおすすめします。

特に管理医師を理事にする場合は、法人設立時の理事構成にも影響するためです。

まとめ|一般社団法人クリニックの管理医師契約は「雇用契約+医療法+法人役員」を一体で考える

一般社団法人クリニックの管理医師との契約で最も重要なのは、

普通の勤務医の雇用契約だけではない

という点です。

管理医師には、

勤務医としての地位
医療法上の管理者としての地位
一般社団法人理事としての地位

が同時に存在することがあります。

2026年現在、一般社団法人が開設する医療機関については、管理者を理事に加えることが非営利性の確認事項となっています。

したがって契約では、

雇用契約

管理医師としての権限

理事としての法人運営

退職・理事辞任・管理者変更

まで一連で設計することが重要です。

特に非医師代表理事やMS法人が関係するクリニックでは、

誰が医療判断をするのか
誰が医師・スタッフを管理するのか
誰が経営判断をするのか

を契約上明確にしておかなければなりません。

さらに退職時には、

雇用契約終了
管理医師変更
理事辞任
後任理事選任
法務局変更登記
保健所変更届
厚生局変更届

が同時に発生する可能性があります。

管理医師契約は、

「月額○万円で週5日勤務してください」

という給与・勤務時間だけの契約ではなく、

クリニックの医療提供体制そのものを維持するための重要契約

として設計することをおすすめします。

一般社団法人クリニックの管理医師契約をご検討の方へ

一般社団法人クリニックの管理医師との契約では、

管理医師の雇用契約
理事就任
給与・役員報酬
勤務日・勤務時間
医療上の権限
非医師代表理事との役割分担
MS法人との関係
他院勤務
退職予告
後任への引継ぎ
秘密保持
競業避止
患者・スタッフの引抜き
SNSアカウント
保健所・厚生局変更手続き

まで、一体として考える必要があります。

特に、

「非医師が代表理事になる」

「美容クリニックで管理医師を雇用する」

「管理医師に別院勤務も認める」

「M&Aで管理医師が交代する」

という案件では、一般的な医師雇用契約書をそのまま使用すると、法人運営・医療法上の責任・退職時の手続きが十分に整理できない場合があります。

具体的な契約内容については、医療法上の行政手続きに加え、労働法・税務・社会保険の確認が必要となるため、必要に応じて弁護士・社会保険労務士・税理士とも連携して設計することをおすすめします。


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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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