【2026年最新版】一般社団法人クリニックを移転する方法|定款・開設許可・保健所・厚生局・保険医療機関指定まで

一般社団法人でクリニックを運営していると、

「同じ一般社団法人のままクリニックを移転できますか?」

「住所変更の届出だけでよいのでしょうか?」

「移転先でも診療所開設許可を取り直す必要がありますか?」

「保険医療機関指定はそのまま使えますか?」

「今の場所から1km程度の移転なら、保険診療を途切れさせずに移転できますか?」

「移転と同時に管理医師や代表理事も変更できますか?」

といったご相談があります。

結論からいうと、一般社団法人そのものを存続させたまま、クリニックを別の場所へ移転することは可能です。

ただし、医療法上は単純な「所在地変更届」ではありません。

東京都の保健所も、診療所を実際に別の場所へ移転する場合には、従前施設の廃止手続と、移転先での新規開設手続が必要と案内しています。法人が開設者の場合、新しい診療所では事前の開設許可を受ける必要があります。

つまり基本的には、

旧診療所

廃止

と、

移転先診療所

一般社団法人による新規開設許可・開設

を連動させる手続きになります。

さらに、保険診療を行っているクリニックでは、保健所だけではありません。

2026年9月1日から保険医療機関の遡及指定ルールが変更され、同一都道府県内の直線距離2km以内への移転と、2kmを超える移転では取扱いが大きく変わります。

したがって一般社団法人クリニックの移転は、

一般社団法人

定款・登記

保健所

厚生局

保険医療機関指定

施設基準

を一つのプロジェクトとして設計することが重要です。

この記事では、一般社団法人クリニックを移転する方法を、2026年9月からの新しい遡及指定制度まで踏まえて詳しく解説します。


目次

一般社団法人クリニックは同じ法人のまま移転できる?

結論|一般社団法人を作り直す必要はない

例えば、

現在
一般社団法人ABC
東京都港区○○1丁目
ABCクリニック

から、

移転後
一般社団法人ABC
東京都港区○○2丁目
ABCクリニック

へ移る場合です。

開設法人そのものは、

一般社団法人ABC

のままです。

そのため、クリニックを移転するために一般社団法人自体を解散して、新しい一般社団法人を設立し直す必要は通常ありません。

一方で、診療所という医療施設については別です。

旧所在地の診療所を廃止し、新所在地で診療所を新たに開設することになります。

クリニック移転に伴って定款変更が必要になるかどうかは、現在の定款で診療所所在地や主たる事務所をどのように定めているかによって異なります。定款の目的、所在地、社員・理事、基金等の設計については、「一般社団法人クリニックの定款完全ガイド」で詳しく解説しています。

「住居表示変更」と「実際の移転」は別

例えば区画整理等によって、

東京都○○区1番1号

東京都○○区1番2号

のように住所表記だけが変更されたケースと、

実際に別の建物・テナントへクリニックを移すケースは全く違います。

東京都の案内でも、住居表示等の変更については変更届の対象とする一方、施設自体の移転については廃止・新規開設が必要と明記されています。

一般社団法人クリニック移転の全体の流れ

一般的には次のように進めます。

STEP主な手続き
1移転計画・希望日を決定
2現在の定款・法人登記を確認
3移転先物件について保健所へ事前相談
4厚生局へ遡及指定の類型を確認
5必要に応じて定款変更・主たる事務所変更
6移転先物件・内装・構造設備を確定
7移転先で診療所開設許可申請
8開設許可取得
9旧診療所廃止
10新診療所開設
11開設後の届出
12保険医療機関指定・遡及指定
13施設基準の届出
14公費・各種指定・契約等の変更
15カルテ・患者・スタッフ等の移行

ポイントは、

保健所の開設許可が終わってから厚生局へ相談するのでは遅い場合がある

ことです。

特に2026年9月以降、遡及指定が「類型3」に該当する場合には、原則として希望日の3か月前までの予定届出が必要です。

一般社団法人クリニックの移転で定款変更は必要?

医療法人と一般社団法人を混同しない

ここは非常に重要です。

医療法人では、診療所の名称・所在地が定款に記載されるため、診療所の移転には通常、都道府県による定款変更認可が関係します。

実際、東京都は医療法人の診療所移転について、定款変更認可を事前に受け、登記を済ませたうえで診療所開設手続へ進むよう案内しています。

しかし、一般社団法人は医療法人とは制度が異なります。

一般社団法人法上、定款に必ず記載する事項は、

  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立時社員
  • 社員資格の得喪
  • 公告方法
  • 事業年度

などであり、各クリニックの所在地自体が法律上当然の必須記載事項というわけではありません。

したがって、

一般社団法人クリニックを移転する=必ず定款変更

とは限りません。

定款変更が必要になりやすいケース

例えば現在の定款に、

主たる事務所を東京都港区に置く。

と書かれていて、

港区

渋谷区

へ法人の主たる事務所も移すのであれば、定款変更を検討する必要があります。

また、

当法人は東京都港区○○にABCクリニックを開設する。

など、個別診療所の所在地を定款へ具体的に記載している場合には、その条文変更が必要になります。

定款変更が不要となり得るケース

例えば、

定款
「主たる事務所を東京都港区に置く」

実際の主たる事務所
東京都港区A町1丁目

から、

東京都港区B町2丁目

へ移転する場合には、定款の「東京都港区」という記載自体は変わりません。

ただし、主たる事務所の実際の所在場所は登記事項ですので、法人登記上の移転手続は別途必要になります。一般社団法人の主たる事務所移転については法務局も専用の変更登記様式を案内しています。

クリニックだけ移転し、法人本店は残す場合

例えば、

一般社団法人主たる事務所
東京都新宿区

クリニック
東京都港区

で、

クリニックだけを、

東京都港区

東京都渋谷区

へ移転する場合です。

一般社団法人の主たる事務所自体を変更しないのであれば、主たる事務所変更を理由とする定款・登記変更は生じない可能性があります。

ただし、定款にクリニック所在地を個別記載していないかなど、必ず現在の定款を確認してください。

STEP1|移転先物件を契約する前に保健所へ相談する

内装工事後の相談は避ける

診療所の移転では、まず新しい物件が医療機関として使用できるか確認する必要があります。

一般社団法人による診療所開設では、法人開設のため事前の開設許可が必要です。保健所では構造設備等の相談を受け付けており、東京都も計画段階での事前相談を案内しています。

確認対象としては、例えば、

  • 診察室
  • 待合室
  • 処置室
  • X線設備
  • 手術室
  • 消毒設備
  • 給排水
  • 換気
  • 動線
  • 医薬品保管
  • 医療廃棄物
  • 建築用途

などがあります。

診療科によって必要設備も異なります。

そのため、

物件契約

内装工事完了

最後に保健所へ相談

という順番はおすすめできません。

設計図の段階で相談します。

STEP2|旧クリニックと新クリニックの切替日を決める

例えば、

3月31日
旧クリニック廃止

4月1日
新クリニック開設

とすれば、医療法上は連続した日程になります。

しかし保険診療クリニックでは、これだけでは不十分です。

厚生局の保険医療機関指定も4月1日に連続できるか

まで確認する必要があります。

このとき重要になるのが、2026年9月からの新しい遡及指定制度です。

2026年9月1日から移転時の遡及指定が大きく変わる

保険医療機関は移転すると原則「旧指定廃止+新規指定」

保険医療機関の所在地を実際に移転すると、旧医療機関を廃止し、新所在地で新たな保険医療機関指定を受けることになります。

通常の新規指定では、指定申請後の翌月1日が指定日の基本です。

そのため、何も特例がなければ、

旧クリニック3月31日廃止

新クリニック4月1日開設

保険指定5月1日

となり、4月中の保険診療に問題が生じます。

一定の条件を満たす場合に利用するのが遡及指定です。

診療所の移転手続きと保険医療機関指定は別制度です。特に2026年9月以降は、移転距離、開設者、診療の継続性等によって遡及指定の取扱いが異なるため、移転前から厚生局との調整が重要です。詳しくは、「一般社団法人クリニックの保険医療機関指定完全ガイド」で解説しています。

直線距離2km以内への移転なら「類型2」を検討

2026年9月1日以降、

同一都道府県内における直線距離2km以内の移転

で、開設者が変わらない場合には「類型2」の対象となります。

一般社団法人クリニックでいえば、

旧開設者
一般社団法人ABC

新開設者
一般社団法人ABC

で、

東京都内の旧所在地から、直線距離2km以内の新所在地へ移転するケースです。

「車で2km」ではなく直線距離

重要なのは直線距離です。

Googleマップ等の道路距離が1.8kmだからといって、制度上の距離判断をそのまま道路距離で行うわけではありません。

また、

同一都道府県内

であることも条件です。

例えば都県境付近で、

東京都

神奈川県

へ1km移転したとしても、この「同一都道府県内2km以内」という要件には該当しません。

2km以内なら必ず遡及指定されるわけではない

ここは非常に重要です。

「2km以内なら自動的に指定日を引き継げる」

わけではありません。

類型2では、旧医療機関から新医療機関への診療機能の継続性について複数の要件があります。

厚生局が示している主な確認事項には、

  • 1つの旧医療機関の廃止と1つの新医療機関の開設である
  • 診療録等を引き継ぐ
  • 旧医療機関の患者からの問い合わせへ対応する
  • 患者の診療を継続する
  • 新旧の管理者が原則同一
  • 主な標榜診療科を引き継ぐ
  • 旧医療機関の医師の概ね8割以上が新医療機関でも勤務
  • 旧医療機関の常勤医師の概ね5割以上が新医療機関でも常勤

などがあります。

つまり遡及指定は、

「住所は変わったが、実質的には同じクリニックがそのまま移った」

と評価できるかがポイントです。

管理医師を同時に変更するとどうなる?

類型2の移転では、原則として、

旧医療機関の管理者

新医療機関の管理者

であることが確認事項となっています。

したがって、

移転

管理医師変更

を同時に行うと、類型2の要件を満たさず、類型3として検討する必要が生じる可能性があります。

例えば、

旧所在地
管理医師A

新所在地
管理医師B

というケースです。

「移転するので、このタイミングで院長も交代しよう」

という判断が、保険医療機関の遡及指定に影響することがあります。

管理医師変更を予定している場合には、法人側で決定する前に厚生局へ確認することをおすすめします。

移転に伴って管理医師の勤務場所、勤務時間、役割等が変更になる場合には、雇用契約や理事としての地位についても確認が必要です。詳しくは、「一般社団法人クリニックの管理医師との契約完全ガイド」をご確認ください。

2kmを超える移転は「類型3」

類型3は手続きが大きく変わる

旧診療所から新診療所までの直線距離が2kmを超える場合は、原則として類型2ではなく類型3として扱われます。

例えば、

東京都港区六本木

東京都渋谷区恵比寿

など、2kmを大きく超える移転です。

類型3では、類型2より慎重な審査となります。

原則3か月前までに予定届出

2026年9月以降の類型3では、

遡及指定を希望する日の原則3か月前まで

に「予定届出書」を提出する必要があります。

例えば、

2027年4月1日移転

を希望する場合には、2027年3月になってから厚生局へ相談するのでは遅い可能性があります。

遅くとも前年末頃には、移転スキームをほぼ固めておくことが重要です。

2km以内でも類型2の要件を満たさなければ類型3になる可能性

距離が1kmであれば必ず類型2というわけでもありません。

例えば、

移転と同時に管理医師を変更
多数の医師を入れ替える
診療科を大幅変更
患者診療の継続性がない

など、類型2の「基本的には認める要件」を満たさない場合には、類型3として検討することになります。

したがって、移転計画では、

距離だけでなく「何を同時に変更するか」

が非常に重要です。

移転と代表理事変更を同時にしてもよい?

同じ一般社団法人であれば、

一般社団法人ABC
代表理事A

一般社団法人ABC
代表理事B

となっても、法人自体は同一です。

ただし、代表理事変更については法人登記、保健所への確認、保険医療機関の代表者変更届などが別途関係します。

移転だけでも多数の手続きが発生するため、

移転+代表理事変更+管理医師変更

をすべて同日に実施すると、申請書類と行政協議がかなり複雑になります。

特に管理医師変更は遡及指定の類型へ影響する可能性があるため慎重な判断が必要です。

移転と一般社団法人の主たる事務所移転を同時にする場合

例えば現在、

一般社団法人主たる事務所
=現在のクリニック所在地

となっているケースです。

クリニック移転に伴い法人の主たる事務所も新所在地へ移すのであれば、

クリニックの医療法手続

一般社団法人の法人登記

が必要になります。

一般社団法人の主たる事務所の所在場所は登記事項であり、法務局には管轄内移転・管轄外移転それぞれの変更登記様式があります。

さらに、定款が、

「主たる事務所を東京都港区に置く」

としているのに、

「東京都渋谷区」

へ移すなら定款変更も必要になります。

診療所所在地変更と法人本店所在地変更を混同しないことが重要です。

STEP3|移転先の診療所開設許可を申請する

一般社団法人は法人開設者ですから、新所在地で診療所を開設するには事前の開設許可が必要です。

東京都の保健所も、法人で診療所を開設する場合には、開設届の前に開設許可申請が必要と案内しています。

移転の場合でも、

旧診療所の開設許可を新しい住所へ変更する

というより、

新所在地について新しい開設許可を取得する

という考え方です。

移転先で改めて確認される主な項目

一般的には、

  • 法人の定款
  • 登記事項証明書
  • 管理医師
  • 診療科目
  • 診療時間
  • 建物平面図
  • 賃貸借契約
  • 構造設備
  • 医療従事者
  • 医療機器
  • 非営利性
  • MS法人との関係

などを確認します。

一般社団法人クリニックについては2026年から非営利性確認も具体化していますので、移転を機に、

MS法人との家賃
医療機器リース
業務委託

等が変わる場合には、その契約内容も整理しておくことをおすすめします。

移転先物件をMS法人から借りる場合

例えば、

物件オーナー

MS法人

一般社団法人

という転貸スキームです。

移転を機にMS法人との賃貸借契約を新しくする場合には、

  • 転貸の承諾
  • 賃料
  • 契約期間
  • 保証金
  • 使用目的
  • 医療機関として使用可能か

などを確認します。

また一般社団法人クリニックの非営利性では、関連事業者への過大な賃料・利益移転が問題となる可能性があります。

単に、

「MS法人が借りているから、そのまま一般社団法人が使えばよい」

とは考えず、保健所へ提出できる契約関係を整えてください。

STEP4|旧診療所を廃止する

新所在地で診療できる準備が整ったら、旧診療所を廃止します。

診療所の廃止については、東京都内の自治体でも廃止後10日以内の届出を案内しています。

しかし、実務上重要なのは提出期限より、

いつ旧診療所を廃止するか

です。

新診療所の開設許可や厚生局手続きが完了する前に旧診療所を廃止してしまうと、診療できない空白期間が生じる可能性があります。

そのため、

新診療所開設許可取得

移転準備完了

旧診療所廃止

翌日等に新診療所開設

という順番を基本に設計します。

STEP5|新診療所を開設する

予定日に新所在地で診療所を開設します。

法人開設の診療所は、事前許可を受けた後、実際に開設したことについて開設後の届出が必要になります。

この時点で医療法上は、

旧所在地の診療所

廃止

新所在地の診療所

開設

となります。

しかし、保険診療を行う場合には、まだ厚生局関係の手続きがあります。

保険診療と自由診療の両方を行っているクリニックでは、移転後の保険指定だけでなく、自由診療との併用、料金表示、混合診療等についても確認しておく必要があります。詳しくは、「一般社団法人クリニックの自由診療・保険診療完全ガイド」をご確認ください。

保険医療機関指定は住所変更届だけではない

保険医療機関が実際に別の場所へ移る場合、

旧保険医療機関廃止

新保険医療機関指定

を基本として考えます。

2026年9月1日以降は、その間をつなぐ遡及指定について、類型1~3に分けて手続きする制度となっています。

一般社団法人クリニックの純粋な移転で重要なのは主に、

2km以内 → 類型2の可能性

2km超、または類型2要件を満たさない → 類型3

という違いです。

施設基準は移転後もそのまま使える?

自動的に何もしなくてよいわけではない

旧クリニックで、

  • 各種基本診療料
  • 特掲診療料
  • 在宅関係
  • 手術関係
  • 医科・歯科各種加算

などの施設基準を届け出ている場合には、移転時に確認が必要です。

2026年9月以降の遡及指定手続でも、類型2では新医療機関の指定申請とあわせて、届け出を希望する施設基準の届出様式を提出する仕組みが案内されています。

つまり、

旧クリニックで届出済み

新所在地でも一切の手続きなしで当然に算定可能

とは考えない方が安全です。

移転で設備要件が変わる施設基準に注意

例えば旧クリニックでは、

専用室
一定面積
特定設備

などを満たしていたとしても、新所在地で同じ条件を満たしているとは限りません。

そのため、移転前に、

現在の施設基準一覧

を作成し、一件ずつ確認することをおすすめします。

確認項目内容
現在届出中の施設基準全件リスト化
移転後も算定するか継続・廃止を判断
人員要件移転後も満たすか
設備要件新物件で満たすか
実績要件引継ぎ可能か確認
届出書新所在地での再届出確認
算定開始日厚生局確認

カルテは移転先へそのまま持っていける?

診療を継続するのであれば、診療録等を適切に新診療所へ移行します。

特に類型2の遡及指定では、診療録等の引継ぎが明確な要件となっています。

電子カルテの場合には、

  • サーバー移設
  • 契約住所変更
  • ネットワーク
  • バックアップ
  • 個人情報保護

なども確認します。

移転日当日に電子カルテが使用できず診療できない、といったことがないよう事前の移行テストも重要です。

患者への移転案内は重要

遡及指定では、旧医療機関の患者の診療を新医療機関でも継続し、旧医療機関を受診した患者からの問い合わせへ対応することも確認事項です。

したがって、

  • ホームページ
  • 院内掲示
  • LINE
  • 予約システム
  • 電話
  • 郵送

などを利用し、

移転日
新住所
電話番号
交通アクセス
診療開始日

を患者へ十分案内します。

保険医療機関の遡及指定という観点からも、患者診療が実質的に継続していることは重要です。

スタッフは移転先でもそのまま勤務した方がよい?

事業運営上も遡及指定上も、可能であれば一定の継続性を確保することが望ましいでしょう。

類型2では、病院・診療所について、旧医療機関の医師の概ね8割以上が新医療機関で引き続き勤務し、常勤医師についても概ね5割以上が常勤として継続することなどが確認項目となっています。

そのため、

移転と同時に医師を全員入れ替える

といったケースでは、遡及指定への影響を事前に確認する必要があります。

移転時に変更を忘れやすいもの

診療所の移転は保健所と厚生局だけでは終わりません。

例えば、

  • 法人登記
  • 銀行
  • 医療機器リース
  • 薬品卸
  • 電子カルテ
  • 電話・インターネット
  • ホームページ
  • Googleビジネスプロフィール
  • 予約システム
  • クレジット決済
  • 社会保険
  • 労働保険
  • 公費医療
  • 各種指定
  • 医療廃棄物
  • 消防
  • 税務

なども確認します。

特に公費医療等は保険医療機関指定とは別の指定・変更手続きがある場合があります。

一般社団法人クリニックを移転するスケジュール例

移転6か月程度前

  • 移転候補物件の検討
  • 保健所への事前相談
  • 現定款確認
  • 主たる事務所変更の有無確認
  • 現在の施設基準一覧作成
  • 厚生局へ遡及指定相談

移転3~6か月前

  • 新物件契約
  • 設計・内装計画
  • 定款変更が必要なら社員総会
  • 必要な法人登記
  • 管理医師・スタッフ移転確認
  • 厚生局類型確定

類型3の場合は原則として遡及指定希望日の3か月前までに予定届出が必要です。

移転1~3か月前

  • 診療所開設許可申請
  • 補正
  • 内装工事
  • 医療機器移設計画
  • 電子カルテ移行
  • 施設基準届出準備
  • 患者案内開始

移転直前

  • 開設許可取得
  • 現地確認等
  • 厚生局指定申請準備
  • 旧診療所最終診療日
  • カルテ・医療機器移送

切替日

旧診療所廃止

新診療所開設

移転後

  • 開設届
  • 旧診療所廃止届
  • 保険医療機関指定関係
  • 施設基準
  • 各種公費
  • 契約住所変更

を進めます。

【一般社団法人クリニックの移転について相談する】

クリニック移転では、物件契約や内装工事より前に、保健所と厚生局の両方へ確認することが重要です。特に2026年9月以降は、直線距離2kmを超える移転や、管理医師変更等を伴う移転では、遡及指定の手続きをかなり早く開始しなければならない可能性があります。

一般社団法人クリニックの移転に関するFAQ

Q1. 一般社団法人クリニックは移転できますか?

できます。

一般社団法人自体を存続させたまま、旧診療所を廃止し、新所在地で同法人が診療所を新規開設する形になります。

Q2. 住所変更届だけで移転できますか?

実際に別の場所へ診療所を移す場合は原則としてできません。

東京都の保健所も、施設移転は旧施設の廃止と新規開設の手続きが必要と案内しています。

Q3. 移転先でも開設許可が必要ですか?

一般社団法人は法人開設者なので、新所在地で診療所を開設する前に開設許可を取得する必要があります。

Q4. 一般社団法人の定款変更も必ず必要ですか?

必ずではありません。

一般社団法人法上、個別診療所の所在地は定款の当然の必須記載事項ではありません。

ただし、主たる事務所も移転する場合や、定款に個別診療所所在地を記載している場合には定款変更が必要となることがあります。

Q5. 法人の主たる事務所も移す場合はどうなりますか?

主たる事務所所在地について定款・登記事項を確認します。

定款記載範囲を超える移転なら定款変更、実際の所在場所が変われば変更登記等が必要になります。

Q6. 保険医療機関指定はそのまま住所変更できますか?

単純な住所変更とは考えません。

旧保険医療機関を廃止し、新所在地の保険医療機関指定を受けることを基本として、条件を満たせば遡及指定を検討します。

Q7. 2km以内なら保険指定を遡及できますか?

同一都道府県内の直線距離2km以内で開設者が変わらず、その他の要件も満たす場合は、2026年9月以降の類型2を検討できます。

Q8. 2km以内なら必ず類型2になりますか?

いいえ。

診療録、患者診療、管理者、診療科、医師等の継続性に関する要件もあります。

満たさない場合には類型3となる可能性があります。

Q9. 2kmを超えるとどうなりますか?

原則として類型3として検討します。

遡及指定を希望する場合、原則3か月前までの予定届出が必要です。

Q10. 県境を越えて1kmだけ移転する場合は類型2ですか?

類型2の至近距離移転は「同一都道府県内における直線距離2km以内」が条件です。

県境を越える場合は類型2のこの要件には当たりません。

Q11. 移転と同時に管理医師を変更できますか?

手続き自体は検討できますが、遡及指定への影響に注意が必要です。

類型2の移転では原則として新旧管理者が同一であることが確認事項です。

Q12. 移転と代表理事変更を同時にできますか?

制度上検討できますが、法人登記・保健所・厚生局等の変更手続きが増えます。

管理医師変更も同時に行う場合には、遡及指定の類型への影響も確認してください。

Q13. クリニック名を同時に変更できますか?

可能ですが、保健所・厚生局・広告・契約等の手続きが増えます。

遡及指定との関係も含めて事前確認をおすすめします。

Q14. 移転後も同じ施設基準を算定できますか?

自動的に何も手続きせず承継できるとは考えない方が安全です。

施設基準の再届出、設備要件、実績要件等を一件ずつ確認します。類型2の手続きでも施設基準届出をあわせて提出する仕組みが示されています。

Q15. カルテも移転できますか?

適切に引き継ぐ必要があります。

遡及指定でも診療録等の引継ぎが重要な要件です。

Q16. 患者へ移転案内する必要はありますか?

実務上は必ず行うべきです。

遡及指定でも、患者診療の継続や旧医療機関の患者からの問い合わせへの対応が確認事項となっています。

Q17. 新物件を先に契約してから保健所へ相談してもよいですか?

おすすめしません。

診療所として使用できる構造設備かどうか、計画段階で保健所へ相談する方が安全です。東京都も計画段階での事前相談を案内しています。

Q18. 移転手続きは何か月前から始めればよいですか?

案件によりますが、保険診療を行っている場合は早めの検討が重要です。

特に類型3では原則3か月前の予定届出があるため、物件契約・設計・保健所相談を考えると、少なくとも4~6か月程度前から動くことをおすすめします。

まとめ|一般社団法人クリニックの移転は「住所変更」ではなく「旧院廃止+新院開設」

一般社団法人クリニックを移転することは可能です。

ただし、

クリニックの住所だけ変更する

という手続きではありません。

基本的には、

現在の診療所

廃止

移転先

一般社団法人による新規診療所開設許可

開設

という流れになります。

また、一般社団法人の定款については、医療法人と異なり、

移転=必ず定款変更

ではありません。

確認すべきなのは、

法人の主たる事務所も移転するのか
定款に診療所所在地を記載しているのか
移転後も現在の定款内容に収まるのか

です。

そして保険診療を行っている場合には、2026年9月1日以降の遡及指定が最大のポイントになります。

同一都道府県内・直線距離2km以内

同じ開設者

一定の診療継続要件

を満たせば類型2を検討できます。

一方、

2km超
管理医師変更等で類型2要件を満たさない
その他複雑な移転

の場合には類型3として検討し、原則3か月前までの予定届出が必要になります。

したがって一般社団法人クリニックの移転では、

物件

保健所

法人定款・登記

厚生局

施設基準

をバラバラに進めるのではなく、最初から一つのスケジュールとして設計することが重要です。

一般社団法人クリニックの移転をご検討の方へ

一般社団法人クリニックの移転では、

  • 移転先物件の事前確認
  • 定款変更の要否
  • 主たる事務所変更
  • 診療所開設許可
  • 旧診療所廃止
  • 新診療所開設
  • 管理医師
  • 保険医療機関指定
  • 2026年9月以降の遡及指定
  • 施設基準
  • カルテ・患者の承継
  • MS法人との賃貸借契約

まで一体として検討する必要があります。

特に、

「保険診療を1日も途切れさせず移転したい」

場合には、移転距離や管理医師の変更有無によって厚生局の手続きが変わります。

新物件を契約してから、

「このスケジュールでは遡及指定の予定届出が間に合わない」

と判明することを避けるためにも、物件契約前または遅くとも移転計画の初期段階から、管轄保健所・地方厚生局へ事前確認することをおすすめします。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

目次