一般社団法人でクリニックを開設したい方から、近年特に増えているのがオンライン診療を中心としたクリニックについてのご相談です。
例えば、
「一般社団法人でオンライン診療専門クリニックを開設できますか?」
「患者が来院しないなら、小さな事務所だけでも開設できますか?」
「医師はクリニックに常駐しなければいけませんか?」
「非医師が代表理事になり、管理医師がオンライン診療を担当することはできますか?」
「東京のクリニックから全国の患者を診察できますか?」
「保険診療でオンライン診療をする場合、施設基準の届出は必要ですか?」
といった質問です。
結論からいうと、一般社団法人を開設者としてオンライン診療を行うクリニックを開設することは可能です。
ただし、
「オンライン診療だから普通のクリニックより簡単に開設できる」
と考えるのは危険です。
一般社団法人が診療所の開設者になる以上、まず医療法に基づく診療所開設許可が必要です。
さらに2026年4月1日からはオンライン診療について医療法上の規定が新設され、オンライン診療を行う医療機関、医師、患者の受診場所、オンライン診療受診施設などについて、新しいルールが施行されています。厚生労働省も2026年4月版へ「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を改訂しています。
したがって、2026年現在のオンライン診療クリニックでは、
一般社団法人設立
↓
診療所開設許可
↓
管理医師
↓
オンライン診療を行う体制
↓
オンライン診療指針への対応
↓
保険診療なら保険医療機関指定・施設基準
↓
患者所在地に応じた対面診療への移行体制
まで一体として設計する必要があります。
この記事では、一般社団法人によるオンライン診療クリニックの開設方法を、2026年4月の制度改正まで踏まえて詳しく解説します。
一般社団法人でオンライン診療クリニックを開設できる?
結論|一般社団法人でも開設可能
一般社団法人を開設者として診療所を開設し、そこで勤務する医師がオンライン診療を行うことは可能です。
一般社団法人だから、
「自由診療しかできない」
「オンライン診療はできない」
ということではありません。
適法に診療所開設許可を受け、必要な体制を整えれば、
- 保険診療
- 自由診療
- 対面診療
- オンライン診療
を法人の事業計画に応じて組み合わせることができます。
ただし一般社団法人は医師個人ではない法人開設者です。
そのため、医療法上の診療所開設について事前許可を取得しなければなりません。
また、一般社団法人が医療機関の開設者になる場合には、開設・経営の実質的責任主体であることと非営利性が審査されます。
「オンラインだけならクリニックそのものはいらない」は誤解
医師は病院・診療所に所属してオンライン診療を行う
2026年4月施行の医療法施行規則では、オンライン診療を行う医師または歯科医師について、
病院または診療所に所属し、その病院・診療所と問い合わせ先を明らかにすること
が定められました。
したがって、
「一般社団法人だけを登記して、クリニックは作らず、医師が自宅から患者を診察する」
というだけの仕組みでは、通常のオンライン診療クリニックの開設モデルにはなりません。
基本となるのは、
開設者=一般社団法人
医療機関=診療所
所属医師=オンライン診療担当医
という構造です。
「ウェブサイト=クリニック」ではない
患者から見ると、
予約
↓
ビデオ診察
↓
処方
↓
薬配送
だけで完結するため、オンラインサービスのように見えることがあります。
しかし行政上は、
どの医療機関が診療を行っているのか
が必ず存在します。
ウェブサイトやアプリそのものが診療所になるわけではありません。
一般社団法人によるオンライン診療クリニック開設の全体像
一般的には次のように進めます。
| STEP | 主な手続き |
|---|---|
| 1 | 診療内容・オンライン診療モデル決定 |
| 2 | 管轄保健所への事前相談 |
| 3 | 社員・理事・代表理事・管理医師決定 |
| 4 | 定款・事業計画・収支予算・資金計画作成 |
| 5 | 一般社団法人設立 |
| 6 | 診療所物件・オンライン診療設備整備 |
| 7 | 診療所開設許可申請 |
| 8 | 開設許可取得 |
| 9 | 診療所開設・開設届 |
| 10 | オンライン診療実施に関する届出対応 |
| 11 | 医師のオンライン診療研修受講 |
| 12 | オンライン診療体制・対面移行体制整備 |
| 13 | 保険診療なら保険医療機関指定申請 |
| 14 | 情報通信機器を用いた診療の施設基準届出 |
| 15 | ウェブサイト・チェックリスト等整備 |
| 16 | オンライン診療開始 |
この流れは地域や診療内容によって変わるため、具体的な案件では管轄保健所・厚生局への事前確認が必要です。
STEP1|最初に「オンライン診療の何をするのか」を決める
診療科・疾患によってオンラインとの相性が違う
オンライン診療で重要なのは、
「オンラインで診察できるか」ではなく、「その患者についてオンライン診療が医学的に適切か」
です。
厚生労働省はオンライン診療について、対面診療と適切に組み合わせることを基本としています。
ただし、必要な診療情報をオンラインだけで十分取得でき、結果として対面診療を行うことなく治療が完結するケースがあり得ることもQ&Aで認めています。
つまり、
「オンライン専門クリニックを名乗ればすべてオンラインで診察できる」
というわけではありません。
患者ごとに医師が判断します。
2026年4月からオンライン診療が医療法上明確に定義された
2026年4月1日から、医療法上「オンライン診療」の定義が新設されました。
医師・歯科医師側の情報通信機器と患者側の情報通信機器を通信回線で接続し、映像・音声を相互に送受信しながら診療する方法として位置付けられています。
この点は重要です。
チャットだけの診療はオンライン診療にならない
厚生労働省のQ&Aでは、対面診療の代替となるオンライン診療について、
リアルタイムの視覚・聴覚情報を含む通信手段
を使う必要があり、チャットだけによる診療は認められないとされています。
したがって、
LINEチャットだけ
メールだけ
問診フォームだけ
で診断・処方するサービスを「オンライン診療」として運用することはできません。
STEP2|一般社団法人の組織を設計する
オンライン診療クリニックでも、一般社団法人としての組織設計は通常のクリニックと同じく重要です。
少なくとも、
- 社員
- 理事
- 代表理事
- 管理医師
を決めます。
非医師を代表理事にすることは検討できる
一般社団法人法上、代表理事に医師資格を要求する一般的な規定ではありません。
したがって、
代表理事=非医師
管理医師=医師
という構成も検討できます。
しかしオンライン診療だから非営利性の審査が緩くなるわけではありません。
一般社団法人が医療機関の開設者である以上、
- 誰が人事を決定しているか
- 誰が銀行口座を管理しているか
- MS法人が実質支配していないか
- 管理医師に十分な権限があるか
- 利益が関連会社へ不当に還流していないか
などを説明できる法人設計が必要です。
管理医師は一般社団法人の理事にする
2026年の一般社団法人医療機関の非営利性確認では、
一般社団法人が開設する医療機関の管理者を理事に加えていること
が明確な確認事項となっています。
したがって、
代表理事=非医師A
理事=非医師A・B
管理医師=C医師だが理事ではない
という法人を先に設立してしまうことはおすすめできません。
現在は、
管理医師を理事に加えることを前提に一般社団法人を設計する
ことが重要です。
オンライン診療クリニックの管理医師は何をする?
「名前だけの院長」ではいけない
オンライン診療中心で患者が来院しないと、
「管理医師は診察だけ担当すればよい」
と思われがちです。
しかし管理医師は、診療所の管理・運営について医療法上の責任を負います。
オンライン診療を行う医療機関についても2026年から、管理者には、
- オンライン診療基準への対応
- 医師への必要な指導
- 情報セキュリティ対策
- 患者への説明
- オンライン診療実施体制
などが求められています。
「医師免許を借りて管理医師欄へ名前を書く」という考え方は避ける必要があります。
保険診療をする場合は2026年4月の管理者要件にも注意
2026年4月1日から、保険医療機関の管理者には新しい要件が設けられました。
基本的には、
①保険医であること
②一定期間の保険診療等の経験を有すること
が必要です。
オンライン診療クリニックでも例外ではありません。
特に若手医師を管理医師にする場合には、
「医師免許があるから院長にできる」
だけではなく、保険医療機関管理者としての要件も確認してください。
STEP3|物件を選ぶ
オンライン中心でも物件選びは必要
患者がほとんど来院しないオンライン診療中心のクリニックでも、
医療機関としての所在地
は必要です。
そのため、一般社団法人が適法に使用できる物件を準備します。
ただし、
「オンラインなので普通のオフィスなら何でもよい」
とは限りません。
管轄保健所へ、
- 建物用途
- 契約形態
- 診察スペース
- 医師の勤務場所
- 患者が来院する可能性
- 医薬品・医療機器
- 事務スペース
などを事前相談してください。
バーチャルオフィスだけでの開設は考えない
法人登記だけであればバーチャルオフィスを使用できるケースがあっても、
診療所開設許可の所在地
としてそのまま利用できるとは限りません。
医療機関として実態のある施設・管理体制が必要です。
医師が常駐しないオンライン診療専用診療所という選択肢
オンライン診療については、通常の診療所とは別に、
「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所」
という制度があります。
厚生労働省は、都道府県等が必要性があると認めた場合には、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所を特例的に認める取扱いを示しており、2026年3月に標準的な開設許可申請書・開設届も示しました。
「オンラインなら自動的に非常駐でよい」わけではない
これは重要です。
通常の診療所で、
「患者がオンラインだけだから管理医師はどこにいてもよい」
という制度ではありません。
医師非常駐診療所には特例の要件があり、行政が必要性を認めた上での運用です。
さらに急変時に対面対応できる医療機関との連携等も求められます。
したがって、オンライン診療専門クリニックで医師の勤務形態を通常と異なる形にしたい場合は、法人設立前に管轄行政庁へ相談することが重要です。
STEP4|診療所開設許可を申請する
一般社団法人は法人開設者なので、医療法第7条に基づく診療所開設許可が必要です。
オンライン診療中心でもこの点は変わりません。
審査では一般的に、
- 定款
- 登記事項証明書
- 社員・理事
- 代表理事
- 管理医師
- 開設趣意書
- 事業計画
- 収支予算
- 資金計画
- 物件
- 非営利性
- MS法人との関係
などを確認します。
オンライン診療だから一般社団法人の非営利性審査がなくなるわけではありません。
むしろ、
アプリ運営会社
広告会社
MS法人
決済会社
薬局
発送会社
など関係事業者が増えやすいため、契約関係を整理しておくことが重要です。
2026年4月から「オンライン診療を行う旨」も届出事項に
2026年4月1日以降、病院・診療所について、
勤務する医師・歯科医師がオンライン診療を行う場合、その旨
が医療法上の届出事項に加わりました。
変更した場合も10日以内の届出対象です。なお、2026年4月1日時点ですでにオンライン診療を実施していた一定の既存医療機関には2027年3月31日までの経過措置があります。
新規で一般社団法人オンライン診療クリニックを開設する場合は、最初から新制度を前提に準備します。
STEP5|オンライン診療を担当する医師は研修を受講する
厚生労働省のオンライン診療指針では、オンライン診療を実施する医師は、厚生労働省が定める研修を受講することとされています。
研修はe-learning方式で提供されています。
そのため開設準備では、
管理医師だけでなく、
実際にオンライン診療を担当する医師全員
について研修受講状況を確認してください。
非常勤医師を多数採用して全国向けオンライン診療を行う場合には、採用時チェックリストへ組み込むとよいでしょう。
初診からオンライン診療はできる?
原則は「かかりつけ医」
厚生労働省は、オンライン診療について、
初診は原則として「かかりつけの医師」が行う
という考え方を示しています。
一方、かかりつけ医がいない患者についても一定のルールに基づいて初診オンライン診療を行えるケースがあります。
重要なのは、
「初診オンライン診療は一切禁止」
でも、
「誰でも問診だけで初診オンライン診療できる」
でもないことです。
急病でも一律オンライン禁止ではない
厚生労働省のQ&Aでは、急性発症であっても症状が軽い患者は必ずしもオンライン初診の対象外ではなく、医師の判断で初診オンライン診療が可能な場合があるとされています。
一方、直ちに対面診療が必要な急病・急変患者についてはオンライン診療を継続すべきではありません。
初診オンライン診療では薬の処方に制限がある
薬剤処方はオンライン診療事業で非常に重要です。
特に、
- 美容
- ダイエット
- 精神科
- ED
- AGA
- ピル
- 睡眠
などのオンライン診療では注意が必要です。
2026年の医療法施行規則では、対面診療を経ていない場合など一定の場合に、
- 麻薬・向精神薬
- 基礎疾患等の情報を把握できていない患者への特に安全管理が必要な薬剤
- そのような患者への8日分以上の薬剤
などについて制限が設けられています。
「初診オンライン→再診オンライン」でも向精神薬が処方できるとは限らない
2026年度診療報酬改定の疑義解釈では、
初診をオンライン
↓
再診もオンライン
というだけでは、対面診療を経ていない症状について向精神薬を処方することはできないと明確化されています。
オンライン診療を事業化するときは、
どの薬を販売・処方したいかからスキームを考えるのではなく、その疾患に対してオンライン診療が医学的・法的に適切か
という順番で考えることが重要です。
ED治療をオンラインだけで完結できる?
オンライン診療ビジネスでよく扱われるテーマですが注意が必要です。
厚生労働省Q&Aでは、勃起不全治療薬について、禁忌確認等の観点から初診をオンライン診療で行うことは不適切とされ、対面診療で診察した上で処方するよう示されています。
したがって、
「全国の初診患者へ問診+ビデオ通話だけでED薬を処方・配送」
といったビジネスモデルは、最新指針を踏まえて慎重に確認する必要があります。
保険診療でオンライン診療を行う場合
保険医療機関指定が必要
一般社団法人クリニックが保険診療を行う場合は、地方厚生局から保険医療機関指定を受ける必要があります。
医療法上の診療所開設許可とは別の手続きです。
したがって、
保健所でクリニック開設
↓
厚生局で保険医療機関指定
という流れになります。
詳しくは「一般社団法人クリニックの保険医療機関指定完全ガイド」で解説しています。
「情報通信機器を用いた診療」の施設基準を届け出る
保険診療として情報通信機器を用いた診療を算定する場合には、厚生局へ**「情報通信機器を用いた診療に係る基準」**の施設基準届出を行います。
2026年度現在も、各厚生局で専用の届出様式が用意されています。
2026年度改定で施設基準が強化
2026年度診療報酬改定では、この施設基準が見直されました。
特に重要なのが、
①オンライン初診では向精神薬を処方しない旨をウェブサイトに掲載
②「オンライン診療指針」遵守チェックリストの対応状況をウェブサイトに掲載
③医療広告ガイドラインを遵守
④向精神薬を処方するときは、原則として電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェックを利用
という点です。
オンライン診療クリニックではホームページが患者獲得の中心になります。
そのため、
SEO・広告だけではなく「施設基準を満たす医療機関ウェブサイト」にする
ことが重要です。
オンライン診療クリニックのホームページは特に注意
オンライン診療では、
「すぐ薬が届く」
「スマホだけで完結」
「診察3分」
「全国対応」
など、マーケティング色の強いウェブサイトになりやすい傾向があります。
しかし2026年度の施設基準では、医療広告ガイドラインの遵守が明示的な要件に追加されています。
したがって、
集客会社へホームページを丸投げする
のではなく、医療広告規制を理解した上で表示内容を確認する必要があります。
特に自由診療については、
- 費用
- リスク
- 副作用
- 治療内容
などの表示も重要です。
2026年4月から管理者には新しいオンライン診療上の役割がある
医療法施行規則では、オンライン診療実施医療機関の管理者について、
- オンライン診療基準に適合している旨を公表
- 情報セキュリティ確保
- 患者への説明
- 適切な措置
などを求めています。
つまり、
「システム会社がオンライン診療アプリを用意したので、それを使えばよい」
というだけではありません。
医療機関の管理者自身が、オンライン診療体制を管理する必要があります。
医師はどこからオンライン診療をしてもよい?
2026年の医療法施行規則では、オンライン診療を行う医師について、
- 病院または診療所に所属する
- 所属医療機関と問い合わせ先を明らかにする
- 適切な判断を害する場所で診療しない
- 患者情報を適切に得られる体制を整える
- 第三者に患者情報が伝わらないよう物理的に隔離された空間で診療する
ことなどが定められています。
したがって、勤務医が自宅等からオンライン診療を行うケースについても、
「インターネットにつながればどこでもよい」
というわけではありません。
プライバシーや診療環境を医療機関として管理できる体制が必要です。
オンライン診療で全国の患者を診察できる?
全国対応そのものが一律禁止されているわけではない
オンライン診療は遠隔地の患者との診療を想定した制度です。
そのため、診療所が東京都にあるから、
東京都民しかオンライン診療できない
という一般的な都道府県単位の制限ではありません。
オンライン診療の特性を利用して全国の患者を対象とするビジネスモデルは検討可能です。
ただし、ここで重要なのが2026年4月改訂の指針です。
「全国対応」で最も重要なのは対面診療への移行体制
オンライン診療では、医師が、
「この患者はオンラインでは診療できない」
「対面診療が必要」
と判断する場面があります。
2026年の医療法施行規則では、その場合、
- 自ら対面診療する
- 日常的に診療している医師等へつなぐ
- 患者の近隣で対面診療できる病院・診療所へ紹介する
など、必要な対面診療へ移行させるための適切な措置が求められています。
さらに2026年4月の指針改訂では、
患者所在地に応じた地域の医療機関との連携
や、
必要に応じ、医師から対面受診可能な医療機関へ連絡・診療情報提供をして確実につなぐこと
が具体例として示されました。
「全国対応」の難しさはここにある
東京に1院だけオンライン診療クリニックを作り、
北海道
沖縄
九州
東北
を含め全国の患者を診療すること自体を検討する場合、問題になるのは、
患者が対面診療を必要としたとき、どう対応するのか
です。
単に、
「必要なら近所の病院へ行ってください」
と表示しておけば十分とは限りません。
全国展開するほど、
患者所在地に応じた対面医療連携ネットワーク
の設計が重要になります。
全国展開には2つの方法がある
オンライン診療クリニックの「全国展開」は、大きく2種類に分けて考えると分かりやすいでしょう。
方法1|1つのクリニックから全国の患者を診療する
例えば、
東京
一般社団法人ABC
ABCオンラインクリニック
を1院開設し、
全国からオンライン予約を受ける方法です。
この場合、全国に診療所を作るわけではありません。
中心となる医療機関は東京のクリニックです。
必要になるのは、
- オンライン診療システム
- 全国患者対応
- 対面診療移行体制
- 薬局・処方体制
- 患者サポート
- 個人情報・セキュリティ
などです。
方法2|複数の地域に診療所・受診拠点を作る
もう一つが、
東京
大阪
福岡
などへ拠点を作る方法です。
この場合、
診療所を新しく開設するのか
それとも、
2026年から制度化されたオンライン診療受診施設を活用するのか
で行政手続きが大きく異なります。
2026年新制度「オンライン診療受診施設」とは?
2026年4月から医療法に新しく**「オンライン診療受診施設」**という制度が設けられました。
これは、事業者が業として、
患者がオンライン診療を受ける場所
を医療機関に提供する施設です。
例えば、
高齢者施設等の一角
地域のオンライン診療ブース
などが想定されます。
オンライン診療受診施設は「クリニック」ではない
重要なのは、
オンライン診療受診施設=分院
ではないことです。
2026年制度改正では、一定のオンライン診療受診施設で、医師・歯科医師がその場所でオンライン診療のみを行う場合には、その患者側施設について診療所を開設しなくてもオンライン診療を行える制度が整備されました。
これにより、オンライン診療の地域展開には新しい選択肢が生まれています。
オンライン診療受診施設は誰が作れる?
オンライン診療受診施設は、
個人でも法人でも設置可能
とされています。
設置者に医師等の医療従事者資格は求められていません。
したがって、
- MS法人
- 介護事業者
- 一般企業
- 一般社団法人
などが設置者になることも制度上考えられます。
設置後10日以内の届出
オンライン診療受診施設の設置者は、
設置後10日以内
に所在地を管轄する都道府県知事等へ届け出なければなりません。
そのため「全国にオンライン診療ブースを置く」場合には、各地域での届出や運営基準を整理する必要があります。
オンライン診療受診施設で何でも医療行為ができるわけではない
オンライン診療受診施設は、あくまで患者がオンライン診療を受ける場所です。
その場所で、
- 採血
- 注射
- 処置
- 通常の医療機器を使った診療補助
などを行えば、別途診療所開設が必要になる可能性があります。
従来の厚労省Q&Aでも、通所介護施設等で看護師が採血等の診療補助を行う場合には診療所開設が必要になると整理されています。
「全国にブースを設置すれば、そこで何でも遠隔医療ができる」
という制度ではありません。
患者が自宅以外からオンライン診療を受けてもよい?
患者の受診場所についても2026年の医療法でルールが明確化されています。
患者がオンライン診療を受ける場所は、
清潔かつ安全
であり、
個人情報が保護されるよう物理的に外部から隔離された空間
であることが求められます。
また厚労省Q&Aでは、
職場
学校
通所介護事業所
などでも、個々の事情に応じ、居宅と同様に療養生活を営む場所として長時間滞在している場合にはオンライン診療を受けられる可能性があるとされています。
自由診療なら施設基準は不要?
診療報酬上の施設基準は保険診療の制度
「情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」は、保険診療で診療報酬を算定するための厚生局への施設基準です。
したがって、完全自由診療だけを行うクリニックであれば、同じ意味での診療報酬施設基準届は通常対象となりません。
しかし、
「自由診療だからオンライン診療指針を守らなくてよい」
ということではありません。
厚生労働省Q&Aは、オンライン診療指針について保険診療だけでなく自由診療にも適用されると明示しています。
ここは非常に重要です。
オンライン自由診療クリニックで特に注意したい分野
特に、
- AGA
- 美容内服
- 医療ダイエット
- ピル
- ED
- 睡眠
- 精神科
- 美容皮膚科
などはオンラインとの親和性が高い一方、薬剤処方・広告規制・医学的適応の問題が生じやすい分野です。
ビジネスモデルありきで、
「この薬を全国へ販売したいからオンライン診療クリニックを作る」
という発想にならないよう注意が必要です。
あくまで、
医師による診察
↓
医学的判断
↓
必要な場合のみ処方
という医療の仕組みです。
MS法人にオンライン診療システムを運営させてもよい?
オンライン診療クリニックでは、
MS法人が、
- システム開発
- 予約
- コールセンター
- 広告
- 決済
- 採用
- 患者サポート
を担当するケースがあります。
業務委託自体が一律禁止されているわけではありません。
ただし、
診療判断
医師人事
医療上の意思決定
患者情報へのアクセス
法人口座
利益の配分
までMS法人が支配すると、一般社団法人が実質的な開設・経営主体なのかという問題が生じます。
厚生労働省は、第三者が医療機関の開設・経営を実質的に左右している疑いがある場合、実態面を精査するよう求めています。
オンライン診療はシステム会社への依存度が高いため、通常のクリニック以上に**「IT委託」と「医療機関経営」の線引き**が重要です。
オンライン診療クリニックのセキュリティ対策
2026年の医療法施行規則では、オンライン診療実施医療機関の管理者に、
オンライン診療に用いる情報システムの情報セキュリティ確保等について適切な措置
を講じることを求めています。
そのため、
Zoom等を使えばよい
LINE通話なら簡単
というだけではありません。
少なくとも、
- 本人確認
- 通信の安全性
- 個人情報
- アクセス権
- 録画・録音
- 電子カルテ
- 情報漏えい
- 医師の診療環境
まで設計する必要があります。
患者の本人確認も必要
オンラインでは対面で本人を直接確認できないため、本人確認も重要です。
厚生労働省Q&Aでは、患者について顔写真付き身分証明書による確認が望ましいとされています。
オンライン診療システムを導入するときは、
予約機能だけでなく本人確認フロー
も確認してください。
診療計画を作成・保存する
オンライン診療を継続する場合には診療計画も重要です。
2026年4月の指針改訂では、初診オンライン診療後にオンラインで診療を継続する、または継続する見込みがある場合には、可及的速やかに診療計画を定め、保存することが明確化されました。
診療計画は診療録と一体的に作成することも可能とされています。
一般社団法人オンライン診療クリニック開設のおすすめスケジュール
開設6か月程度前
- 診療モデル決定
- 保険・自由診療の選択
- 診療科・処方内容確認
- 保健所事前相談
- 法人構成決定
- 管理医師候補確認
- MS法人関係整理
開設3~5か月前
- 定款作成
- 一般社団法人設立
- 物件契約
- 事業計画・資金計画
- システム選定
- 管理医師・勤務医契約
- オンライン診療研修
開設1~3か月前
- 診療所開設許可申請
- 補正対応
- セキュリティ体制
- 対面診療連携先の確保
- ホームページ作成
- チェックリスト対応
- 保険医療機関指定準備
開設後
- 開設届
- オンライン診療実施に関する届出事項対応
- 保険医療機関指定
- 情報通信機器を用いた診療の施設基準
- オンライン資格確認
- 電子処方箋等
- ウェブサイト表示
を行います。
一般社団法人オンライン診療クリニックでよくある失敗
1. 一般社団法人だけ作ってクリニックを作らない
オンライン診療を行う医師は病院・診療所へ所属する必要があります。
2. バーチャルオフィスを診療所所在地にする
法人登記と診療所開設許可は別問題です。
3. オンラインなら管理医師が常にどこでもよいと思う
通常の診療所と医師非常駐型の特例を混同しないことが重要です。
4. 管理医師を一般社団法人の理事にしていない
2026年の非営利性確認では管理者の理事就任が確認事項です。
5. 医師がオンライン診療研修を受けていない
オンライン診療担当医の研修受講を確認します。
6. 初診からどんな薬でも処方できると思っている
薬剤処方には明確な制限があります。
7. チャットだけで診察する
オンライン診療はリアルタイムの映像・音声による診療が基本です。
8. 全国対応なのに対面診療移行体制がない
2026年改訂では患者所在地に応じた対面診療への連携体制がより具体化されています。
9. 保険診療なのに施設基準を届けていない
「情報通信機器を用いた診療に係る基準」の届出を確認します。
10. ホームページを広告会社へ丸投げする
2026年度から施設基準にも医療広告ガイドライン遵守等が明記されています。
11. MS法人が医師人事・口座・診療方針まで支配する
IT・事務委託と医療機関経営を分ける必要があります。
12. 「オンライン診療受診施設」を分院と勘違いする
オンライン診療受診施設と診療所は別制度です。
一般社団法人オンライン診療クリニックに関するFAQ
Q1. 一般社団法人でオンライン診療クリニックを開設できますか?
可能です。
ただし一般社団法人は法人開設者なので、事前の診療所開設許可を受ける必要があります。
Q2. オンライン診療だけなら実店舗は必要ありませんか?
オンライン診療を行う医師は病院または診療所に所属する必要があります。
一般社団法人だけを登記し、医療機関を一切設けずに診療サービスだけ提供するという考え方ではありません。
Q3. バーチャルオフィスで開設できますか?
法人登記と診療所開設は別です。
診療所所在地として認められるかは、物件の実態等を含め管轄保健所へ確認してください。
Q4. オンライン専門なら医師は診療所に常駐しなくてもよいですか?
一律にはいえません。
医師が常駐しないオンライン診療用診療所には特例制度がありますので、通常の診療所と混同せず、管轄行政庁へ事前相談してください。
Q5. 非医師を代表理事にできますか?
制度上検討可能ですが、一般社団法人が実質的な開設・経営主体であること、管理医師の権限、MS法人との関係等を確認する必要があります。
Q6. 管理医師は理事にする必要がありますか?
2026年の一般社団法人医療機関の非営利性確認では、管理者を理事に加えていることが確認事項です。
Q7. オンライン診療担当医は研修が必要ですか?
厚生労働省の指針ではオンライン診療を行う医師に所定の研修受講を求めています。
Q8. 初診からオンライン診療できますか?
一定の場合には可能ですが、原則としてかかりつけ医が初診を行う考え方など、オンライン診療指針に沿って判断する必要があります。
Q9. 初診から向精神薬を処方できますか?
できません。
また、対面診療を経ずオンライン再診を続けただけでは、対象となる向精神薬を処方できない取扱いも2026年に明確化されています。
Q10. 全国の患者をオンライン診療できますか?
全国対応を検討することは可能です。
ただし、患者が対面診療を必要とした場合に、患者所在地に応じて適切な医療機関へ確実につなげられる体制が重要です。
Q11. 全国すべての都道府県に分院を作る必要がありますか?
オンラインで全国の患者を診療するだけなら、患者の居住都道府県ごとに分院を作るという一般的な制度ではありません。
ただし、実際の診療所を各地域に設置するなら、それぞれの開設手続きが必要です。
Q12. オンライン診療受診施設とは何ですか?
2026年4月から医療法に新設された、患者がオンライン診療を受ける場所を業として提供する施設です。診療所そのものとは別制度です。
Q13. MS法人がオンライン診療受診施設を作れますか?
設置者には医療従事者であること等の資格要件は設定されておらず、個人・法人が設置できます。
ただし設置後10日以内の届出など、医療法上のルールを守る必要があります。
Q14. オンライン診療受診施設で採血できますか?
単なる受診場所の提供を超え、看護師等が採血などの診療補助を行う場合には診療所開設が必要となる可能性があります。
Q15. 保険診療でオンライン診療するには施設基準が必要ですか?
情報通信機器を用いた診療を診療報酬上算定する場合には、「情報通信機器を用いた診療に係る基準」の届出を確認します。
Q16. 自由診療ならオンライン診療指針を守らなくてよいですか?
いいえ。
厚生労働省Q&Aでは、オンライン診療指針は保険診療だけでなく自由診療にも適用されると明示されています。
Q17. オンライン診療だけで治療を完結できますか?
疾患名だけで一律には判断できません。
オンラインだけで必要な診療情報が十分得られ、結果として対面診療なしで治療が完結することはあり得ますが、対面診療と適切に組み合わせることが基本です。
Q18. 対面診療へ切り替える場合、患者に自分で病院を探してもらえばよいですか?
それだけで十分とは限りません。
2026年のルールでは、必要に応じて医師側から患者所在地の対面医療機関へ連絡・診療情報提供等を行い、確実に対面診療へつなぐ体制が重要になっています。
Q19. ホームページに掲載しなければならない内容はありますか?
保険診療の「情報通信機器を用いた診療」の施設基準では、2026年度から、初診オンラインで向精神薬を処方しない旨や、オンライン診療指針のチェックリスト等のウェブサイト掲載が要件に加わっています。
Q20. 一般社団法人でオンライン診療クリニックを開設する場合、いつ行政書士へ相談すべきですか?
できれば、
法人設立・物件契約・管理医師契約・システム契約をする前
です。
オンライン診療の事業モデルによって、診療所の構造、管理医師の勤務形態、保険診療、処方、全国展開の方法が変わるためです。
まとめ|2026年のオンライン診療は「ネットで診察するだけ」の制度ではない
一般社団法人でオンライン診療クリニックを開設することは可能です。
しかし、オンライン診療だからといって、
一般社団法人だけ作ればよい
診療所は不要
医師はどこからでも診療できる
初診から自由に薬を処方できる
全国対応なら患者所在地を気にしなくてよい
というものではありません。
2026年4月1日からオンライン診療が医療法上明確に制度化され、
オンライン診療を行う医師
↓
所属する病院・診療所
↓
医療機関の管理者
↓
患者の受診場所
↓
オンライン診療受診施設
↓
対面診療への移行
まで、ルールが以前より明確になりました。
一般社団法人クリニックの場合にはさらに、
一般社団法人設立
+
診療所開設許可
+
非営利性
+
管理医師の理事就任
+
保険医療機関指定
+
施設基準
も重なります。
特に全国展開を考える場合に重要なのは、
「全国から患者を集められるか」より、「全国の患者を安全に対面診療へつなげられるか」
です。
2026年改訂のオンライン診療指針では、患者所在地に応じた地域医療機関との連携や、必要時には医師から診療情報を提供して確実に対面診療へ移行させる体制が具体化されています。
一般社団法人によるオンライン診療クリニック開設をご検討の方へ
一般社団法人でオンライン診療クリニックを開設する場合には、
- 一般社団法人設立
- 定款
- 社員・理事・代表理事
- 管理医師
- 診療所開設許可
- オンライン診療研修
- 医師の勤務場所
- 初診オンライン診療
- 薬剤処方
- 保険医療機関指定
- 情報通信機器を用いた診療の施設基準
- ホームページ表示
- 医療広告
- オンライン診療受診施設
- 全国の対面診療連携
- MS法人・システム会社との契約
まで一体として検討する必要があります。
特に、
「オンライン診療専門にしたい」
「管理医師を常駐させない形を検討したい」
「全国の患者を対象にしたい」
「MS法人でシステム・広告・決済を運営したい」
「全国にオンライン診療受診拠点を展開したい」
という案件では、一般的なクリニック開設とは異なる論点が多くあります。
法人登記、システム契約、広告開始を先行させる前に、管轄保健所・都道府県・地方厚生局の運用を確認しながらスキームを設計することをおすすめします。
