医療法人の定款変更が必要なケース一覧|分院・移転・名称変更・理事定数変更

「医療法人で分院を出す場合、定款変更は必要ですか?」

「診療所を移転するだけでも定款変更認可が必要でしょうか?」

「クリニック名を変更したいのですが、保健所への届出だけでいいですか?」

「理事長を変更すると定款変更も必要ですか?」

「理事の人数を増やしたい場合はどうすればいいですか?」

「医療法人の主たる事務所を移転する場合、認可が必要ですか?」

医療法人を設立した後、法人運営の中で非常に多く発生するのが定款変更です。

結論からいうと、医療法人の定款に記載されている事項を変更する場合には、原則として定款変更の手続きが必要です。

ただし、すべての変更で都道府県知事の「認可」が必要になるわけではありません。

医療法上、一定の事項については定款変更認可が必要ですが、例えば大阪府では、

  • 医療法人の事務所所在地のみの変更
  • 公告方法のみの変更

については、認可申請ではなく定款変更届の対象としています。

一方、

  • 新しい分院を開設する
  • 診療所を移転する
  • 診療所名称を変更する
  • 新しい附帯業務を始める
  • 理事定数を変更する

などの場合は、定款の内容そのものを実質的に変更するため、定款変更認可が必要になるケースがあります。

東京都は、定款変更について事前審査から認可書交付まで約3か月程度を要すると案内しています。大阪府も、仮申請から本申請を含め約3か月が標準的な期間としています。

つまり、

「来月から分院を開院したいので、今から定款変更をしたい」

では間に合わない可能性があります。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • 医療法人の定款とは何か
  • 定款変更認可と定款変更届の違い
  • 分院開設
  • 診療所移転
  • 診療所名称変更
  • 医療法人名称変更
  • 主たる事務所変更
  • 理事定数変更
  • 理事長変更
  • 社員変更
  • 附帯業務追加
  • 診療所廃止
  • 分院廃止
  • 医療法人M&A・承継
  • 定款変更にかかる期間
  • よくある失敗

まで、2026年最新の公的情報を踏まえて詳しく解説します。


医療法人の定款変更について相談したい先生へ

医療法人の定款変更で重要なのは、

「変更後に申請すればよい」

と考えないことです。

特に、

  • 分院開設
  • 診療所移転
  • 新規事業開始

などでは、原則として事業開始前に定款変更認可を受けておく必要があるケースがあります。

大阪府も、本来業務・附帯業務・収益業務について、事業開始前に定款へ定める必要があると案内しています。

厚生労働省も、医療法人が附帯業務を新たに行う場合には、個別法上の許認可等とは別に、定款変更認可を先行して行う必要があるとの考え方を示しています。

そのため、

物件契約

内装工事

開院日決定

最後に定款変更

という進め方は危険です。

【医療法人の定款変更について相談する】


目次

医療法人の「定款」とは?

定款とは、医療法人の基本的なルールを定めたものです。

株式会社でいう会社の憲法に近い存在です。

一般的な社団医療法人の定款には、

  • 法人名称
  • 目的
  • 本来業務
  • 附帯業務
  • 主たる事務所
  • 開設する病院・診療所
  • 社員
  • 社員総会
  • 役員
  • 理事会
  • 資産
  • 会計
  • 定款変更
  • 解散
  • 公告方法

などが定められています。

そのため、医療法人の事業内容や組織構造を変更するときには、

「現在の定款と変更後の実態が一致しているか」

を確認する必要があります。


定款変更には「認可」と「届出」がある

ここが非常に重要です。

医療法人の定款変更は大きく、

① 定款変更認可

と、

② 定款変更届

に分けて考えます。


定款変更認可とは?

定款の重要事項を変更する場合、所管する都道府県知事等の認可を受ける手続きです。

認可が必要な変更については、

社員総会で決議しただけでは効力が完成しない

点に注意が必要です。

行政庁による審査を受け、認可後に必要な登記・医療機関関係手続きへ進みます。


定款変更届とは?

一部の事項は、行政庁の認可を受けず、変更後に届出を行う取扱いがあります。

例えば大阪府では、

  • 医療法人の事務所所在地のみの変更
  • 公告方法のみの変更

について、定款変更認可ではなく定款変更届の対象としています。

ただし、

主たる事務所の変更なら全国どこでも必ず届出だけ

と単純化してはいけません。

自治体・定款の記載方法・変更内容によって確認が必要です。


定款変更が必要なケース一覧

まず全体像を表で整理します。

変更内容定款変更の可能性主なポイント
分院新設原則必要診療所名称・所在地を追加
診療所移転原則必要定款記載所在地変更
診療所名称変更原則必要定款記載名称変更
医療法人名称変更必要法人名称変更・登記
理事定数変更必要定款上の役員数変更
新しい附帯業務原則必要事業開始前に定款へ追加
分院廃止原則必要定款から診療所を削除
診療所廃止原則必要定款記載事業の削除
主たる事務所変更ケースによる届出扱いの自治体あり
公告方法変更ケースによる届出扱いの自治体あり
理事長変更通常は不要役員変更・登記が中心
理事変更通常は不要役員変更届
監事変更通常は不要役員変更届
社員変更通常は不要社員名簿・内部手続き
管理医師変更通常は不要保健所等への変更届
医療法人M&A内容による名称・事業等も変えるなら必要

以下、詳しく見ていきます。


ケース① 分院を新しく開設する

これは代表的な定款変更認可案件です。

医療法人の定款には通常、法人が開設する病院・診療所の、

  • 名称
  • 所在地

が記載されています。

したがって、新しい診療所を追加する場合には定款を変更する必要があります。

厚生労働省も、医療法人が具体的な分院を新設する場合には、必要な添付書類を伴う定款変更手続きを行う考え方を示しています。

新たな診療所を追加する場合には、定款変更だけでなく、管理医師の選任、診療所開設許可、保健所・地方厚生局への手続きまで含めてスケジュールを設計します。
分院開設全体については「医療法人の分院開設完全ガイド」で詳しく解説しています。


「適宜分院を設けることができる」と書いてあれば認可不要?

いいえ。

厚生労働省は、

「適宜分院を設けることができる」

という一般条項を定款へ追加することと、

具体的な分院を実際に開設すること

を区別しています。

具体的な分院開設時には、その診療所に関する資料を添付した定款変更手続きが必要です。


ケース② 診療所を移転する

診療所の所在地が定款へ記載されている場合、

移転=定款記載事項の変更

になります。

そのため、通常は定款変更認可が必要です。

例えば、

東京都新宿区西新宿1丁目

から、

東京都新宿区西新宿2丁目

への移転であっても、定款上の所在地が変わるなら確認が必要です。

診療所を移転する場合には、定款変更だけで完結せず、保健所や保険医療機関指定への影響も確認する必要があります。
詳しくは「医療法人の診療所移転完全ガイド」をご覧ください。


同じビル内の階数変更でも定款変更?

これは定款の所在地記載方法によります。

例えば定款が、

東京都新宿区西新宿一丁目1番1号

までしか記載していない場合と、

○○ビル5階

まで記載している場合では扱いが変わる可能性があります。

定款原本を確認して判断してください。


診療所移転では定款変更だけでは足りない

移転では通常、

定款変更認可

だけでなく、

  • 保健所
  • 診療所開設・廃止
  • 保険医療機関指定
  • 地方厚生局
  • 施設基準
  • X線設備
  • 公費

等の手続きも関係します。

そのため、定款変更だけを単独で考えないことが重要です。


ケース③ 診療所名称を変更する

例えば、

山田クリニック

から、

東京メディカルクリニック

へ名称変更する場合です。

診療所名称が定款に記載されていれば、その名称変更に伴って定款変更が必要になります。

さらに、

  • 保健所
  • 厚生局
  • 医療情報ネット
  • 各種施設基準
  • 公費
  • 契約
  • 看板・広告

等の変更も確認してください。


ケース④ 医療法人そのものの名称を変更する

例えば、

医療法人社団山田会

から、

医療法人社団メディカルフューチャー

へ変更するケースです。

法人名称は定款の基本事項ですので、定款変更が必要です。

さらに法人名称は登記事項でもあるため、

定款変更認可

変更登記

登記事項関係届出

銀行・契約等変更

という手続きになります。


M&A後の法人名称変更にも注意

医療法人M&Aで、

「クロージング日に新ブランド名へ変えたい」

というケースがあります。

しかし法人名称変更には定款変更認可が関係するため、

社員・理事・理事長変更だけのM&Aより時間がかかる

可能性があります。

M&A契約時点からスケジュールへ組み込んでください。


ケース⑤ 理事定数を変更する

例えば現在の定款が、

理事3名以上5名以内

となっている法人で、

分院開設によって新しい管理医師を理事へ追加し、

理事6名体制にしたい場合です。

この場合、

5名以内

という定款規定に抵触するため、

理事定数を、

3名以上7名以内

などへ変更する必要があります。

理事定数は定款記載事項なので、定款変更手続きが必要です。

理事定数を変更する場合には、定款上の役員定数だけでなく、現在の社員・理事・監事の構成が適切かも併せて確認することをおすすめします。
医療法人の社員・理事・監事それぞれの役割については「社員・理事・監事の違い完全ガイド」で詳しく解説しています。


分院開設時は理事定数を必ず確認する

医療法人が開設する診療所の管理者は原則として理事に加える必要があります。

そのため、

分院追加

分院管理医師追加

理事追加

となるケースが多くあります。

現在の理事数が定款上限に達している場合には、

分院追加と理事定数変更を同時に申請

することを検討します。


ケース⑥ 新しい附帯業務を始める

医療法人は、本来業務である病院・診療所等の運営以外にも、医療法上認められた一定の附帯業務を行うことができます。

ただし大阪府は、

本来業務、附帯業務及び収益業務は、事業開始前に定款へ定める必要がある

と案内しています。

したがって、新しい附帯業務を開始する場合には定款変更認可が必要になることがあります。


附帯業務とは?

例として、

  • 訪問看護
  • 介護関連事業
  • 有料老人ホーム
  • その他医療法第42条で認められる事業

などがあります。

ただし医療法人なら何でも自由にできるわけではありません。

医療法上の業務範囲を確認する必要があります。


附随業務なら定款変更不要の場合もある

大阪府は、医療法人が開設する病院等の業務の一部として、またはこれに附随して行われるものについては附随業務として行うことが可能で、特段の定款変更等を要しないと案内しています。

つまり、

附帯業務

と、

附随業務

を混同しないことが重要です。


ケース⑦ 分院を廃止する

定款に記載された分院を閉院する場合、

その分院を定款から削除する必要があります。

そのため定款変更が関係します。

さらに、

  • 診療所廃止
  • 保険医療機関廃止
  • 施設基準
  • 管理医師
  • 理事変更

等も確認します。


分院長が理事なら理事変更も確認

分院管理者は原則として理事です。

したがって分院廃止に伴い管理医師が退職する場合、

分院廃止+理事退任

が同時に発生する可能性があります。


ケース⑧ 本院を廃止する

法人が開設する診療所そのものを廃止する場合にも定款の変更を検討します。

ただし、法人がすべての病院・診療所等を失う場合には、

医療法人として今後どのような業務を行うのか

という根本的な問題になります。

単なる定款変更だけで済まない可能性があるため、事前に所管行政庁へ相談してください。


ケース⑨ 主たる事務所を変更する

ここは「認可」と「届出」の区別が重要です。

例えば大阪府では、

医療法人の事務所所在地のみを変更した場合

には、定款変更認可申請ではなく定款変更届の対象としています。

ただし、住所変更に伴って所管行政庁自体が変わる場合や、定款の他の事項も同時に変更する場合には別途確認が必要です。


主たる事務所と診療所所在地は同じもの?

違います。

例えば、

主たる事務所:東京都港区

診療所:東京都新宿区

という構成も可能です。

そのため、

法人事務所の移転

と、

診療所移転

は分けて考えます。

診療所移転は医療機関そのものの所在地変更なので、行政手続きが大きくなります。


ケース⑩ 公告方法を変更する

公告方法も定款記載事項です。

例えば、

官報公告

から、

ホームページ等による公告

へ変更する場合などです。

大阪府では公告方法のみの変更は定款変更届の対象としています。

具体的な公告方法が医療法上適切かも確認してください。


理事長変更では定款変更が必要?

通常、理事長変更だけなら定款変更は必要ありません。

多くの医療法人定款では、理事長個人の氏名を定款そのものには記載せず、

「理事のうち1名を理事長とする」

というような定めになっているためです。

理事長変更の場合は、

  • 必要な理事選任
  • 理事会
  • 理事長変更登記
  • 役員変更届
  • 登記事項変更届

等が中心となります。

大阪府も理事長変更を役員変更届の対象として案内しています。


理事変更では定款変更が必要?

通常、個々の理事氏名は定款本文に直接記載しないため、

理事の人が変わるだけなら定款変更は通常不要

です。

ただし、

理事定数

を変える場合には定款変更が必要です。

つまり、

理事A→理事B

は役員変更、

理事3~5名→理事3~7名

は定款変更、

という違いです。


監事変更では定款変更が必要?

監事そのものの交代だけなら通常は定款変更ではなく役員変更です。

ただし監事定数を変更する場合には定款の確認が必要です。


社員変更では定款変更が必要?

通常、社員個人の氏名を定款へ列挙しているわけではないため、

社員の入社・退社だけなら定款変更は通常必要ありません。

社員の変更は、

  • 定款に基づく入退社手続き
  • 社員総会
  • 社員名簿更新

等で行います。


M&Aで社員を総入替えしても定款変更は不要?

社員・理事・理事長を入れ替えるだけで、

  • 法人名称
  • 診療所
  • 事業内容
  • 理事定数

など定款本文が変わらないのであれば、社員総入替え自体を理由とする定款変更は通常必要ありません。

ただしM&A後に、

  • 法人名称変更
  • 診療所名称変更
  • 分院追加
  • 理事定数変更

などを同時に行うなら定款変更が必要になります。


管理医師変更では定款変更が必要?

通常、管理医師個人の氏名は定款本文へ記載しません。

したがって管理医師変更だけなら定款変更ではなく、

保健所等への管理者変更届

が中心となります。

大阪府も法人等が開設する診療所について管理者変更届の様式を設けています。

ただし、新管理医師は原則として理事へ加える必要があるため、役員変更も確認します。


医療法人の定款変更認可には何か月かかる?

自治体によって異なります。

東京都は、事前審査(仮申請)から認可書交付まで3か月程度を要すると案内しています。

大阪府も、

仮申請:約2~2.5か月
本申請:約2週間
合計:約3か月

と案内しています。

そのため、

定款変更が必要な事業は少なくとも数か月前から準備

することが重要です。


定款変更認可はいつから効力がある?

重要な点です。

定款変更認可が必要な事項については、

社員総会で決議しただけで、すぐ新定款に基づく事業を開始できるわけではありません。

行政庁から認可を受けてから、その後の必要な登記・医療機関関係手続きを進めます。

そのため、新規事業・分院開設等では認可前に事業を開始しないよう注意してください。


定款変更認可の基本的な流れ

一般的には、

STEP1 変更内容を決定

STEP2 所管行政庁へ事前相談

STEP3 社員総会で定款変更を決議

STEP4 仮申請

STEP5 行政庁による審査・補正

STEP6 本申請

STEP7 定款変更認可

STEP8 必要な変更登記

STEP9 登記事項関係届出

STEP10 保健所・厚生局その他個別手続き

という形になります。


定款変更には社員総会が必要?

社団医療法人では、定款変更について社員総会の決議が必要になります。

したがって、

理事長が単独で定款を書き換える

ことはできません。

現在の社員構成、定款上の決議要件を確認し、適切な社員総会議事録を作成します。


定款変更の決議要件にも注意

定款変更は通常の社員総会議案より重い決議要件が定められている場合があります。

具体的な要件は現行定款を確認してください。

M&A直後などで社員を入れ替えている場合には、

どの時点の社員が定款変更を決議するのか

も重要になります。


申請書以外に何が必要?

変更内容によって大きく異なります。

例えば分院新設なら、

  • 定款変更案
  • 社員総会議事録
  • 新旧条文対照表
  • 事業計画
  • 予算
  • 管理者関係資料
  • 物件関係資料
  • 賃貸借契約
  • 平面図
  • 資金計画

などが必要になることがあります。

大阪府の定款変更認可では、変更内容別に必要書類を案内しています。


分院・新規事業では「資金」が審査される

単に、

定款に診療所名を1行追加

するだけではありません。

分院新設等の場合には、

  • 初期投資
  • 運転資金
  • 資金調達
  • 収支
  • 患者数
  • 人件費
  • 家賃

など、新事業を安定して運営できるか確認されます。

したがって、分院の定款変更は実質的には新規事業審査の側面があります。


診療所物件を先に契約していい?

慎重に進めてください。

定款変更認可には約3か月を要する自治体があります。

例えば、

1月:テナント契約
2月:定款変更申請
3月:内装完成
4月:開院予定

としても、定款変更認可が5月なら計画が崩れます。

そのため契約前に行政スケジュールを確認してください。


定款変更と保健所申請はどちらが先?

変更内容によりますが、分院開設などでは、医療法人側の定款変更認可を先行して確認する必要があります。

厚生労働省も、附帯業務について個別法上の許認可等が必要な場合、基本的には定款変更認可申請を先に行う考え方を示しています。

実際には行政庁間で並行事前相談することもあります。


定款変更と登記はどちらが先?

認可を要する定款変更については、

定款変更認可

登記

という流れになります。

先に勝手に登記だけ変更するものではありません。


定款変更認可後、登記しないとどうなる?

変更内容に登記事項が含まれる場合は法務局で変更登記が必要です。

例えば、

  • 法人名称
  • 主たる事務所

等です。

登記後には行政庁へ登記事項変更関係の届出が必要になる場合があります。


定款変更でよくある失敗① 「保健所に出せば終わり」と思う

医療法人が新しい診療所を出す場合、

保健所だけではなく、その前に医療法人の定款変更が必要になることがあります。


よくある失敗② 開院日を決めてから定款変更を始める

定款変更認可だけで約3か月かかる自治体があります。

必ず開院日から逆算してください。


よくある失敗③ 理事長変更にも定款変更が必要だと思う

通常、理事長個人の変更だけなら定款変更ではなく役員変更・登記が中心です。


よくある失敗④ 理事の人が変わるだけなのに定款を書き換える

理事個人の交代と、理事定数変更は別です。


よくある失敗⑤ 分院長を理事にしたら理事上限を超えた

分院管理医師は原則として理事になるため、事前に定款上の理事定数を確認してください。


よくある失敗⑥ 附帯業務を先に始める

大阪府は、本来業務・附帯業務・収益業務について事業開始前に定款へ定める必要があると案内しています。


よくある失敗⑦ 主たる事務所移転と診療所移転を混同する

法人事務所の移転と診療所そのものの移転では手続きの重さが違います。


よくある失敗⑧ 診療所名を変えてから定款を直す

定款記載名称との不一致が生じます。

変更前に必要な手続きを確認してください。


よくある失敗⑨ 古い定款を使い続ける

長年運営している医療法人では、法改正内容が定款へ十分反映されていないケースがあります。

東京都の2026年版運営手引でも、定款変更時には現行制度への適合を含めて確認する必要があります。


よくある失敗⑩ 一つ変更するたびにバラバラに申請する

例えば、

  • 分院追加
  • 理事定数変更
  • 法人名称変更

を近い時期に予定しているなら、案件によってはまとめて定款変更する方が合理的な場合があります。

将来計画まで確認して申請内容を設計してください。


定款変更が必要か迷ったときの判断方法

まず次の順番で考えます。

① 現在の定款を見る

② 今回何が変わるか確認する

③ 変更後、定款本文と実態が一致するか確認する

④ 認可事項か届出事項か確認する

⑤ 関連する保健所・厚生局・登記手続きを確認する

この流れです。


医療法人の定款変更FAQ

Q1. 分院を出す場合は定款変更が必要ですか?

原則として必要です。

新しい診療所の名称・所在地等を定款へ追加します。厚生労働省も具体的分院新設時には必要な定款変更手続きを行う考え方を示しています。


Q2. 「分院を設けることができる」と定款に書いてあれば不要ですか?

不要にはなりません。

具体的な分院を新設する段階では定款変更手続きが必要です。


Q3. 診療所を移転すると定款変更が必要ですか?

通常は必要です。

診療所所在地が定款に記載されているためです。


Q4. 同じビル内の階数変更でも必要ですか?

現在の定款にどこまで所在地が記載されているかによります。

定款と行政庁の運用を確認してください。


Q5. クリニック名を変更すると定款変更が必要ですか?

診療所名称が定款へ記載されている場合、通常は必要です。


Q6. 医療法人名を変更すると定款変更が必要ですか?

必要です。

法人名称は定款の基本事項です。


Q7. 理事長を変更すると定款変更が必要ですか?

通常、理事長個人の変更だけなら必要ありません。

役員変更、理事長変更登記等を行います。


Q8. 理事を変更すると定款変更が必要ですか?

個々の理事交代だけなら通常不要です。

ただし理事定数を変更する場合には必要です。


Q9. 監事変更は定款変更ですか?

通常は役員変更です。


Q10. 社員変更は定款変更ですか?

通常は定款変更ではありません。

定款に従った入退社手続きと社員名簿更新を行います。


Q11. 管理医師変更は定款変更ですか?

通常は違います。

保健所等への管理者変更届を確認してください。大阪府も法人開設診療所の管理者変更届を設けています。


Q12. 分院長を変更した場合は?

分院長が管理医師なら、管理者変更・理事変更等を確認します。

診療所名・所在地が変わらないのであれば、分院長個人の変更だけで定款変更になるとは限りません。


Q13. 理事定数を3~5名から3~7名に変える場合は?

定款変更が必要です。


Q14. 主たる事務所を移転すると定款変更認可が必要ですか?

自治体・変更内容によって異なります。

大阪府では、事務所所在地のみの変更は定款変更届の対象としています。


Q15. 公告方法だけ変更する場合は?

大阪府では定款変更届の対象です。


Q16. 新しい介護事業を始める場合は?

医療法上の附帯業務に該当する場合、事業開始前の定款変更が必要になることがあります。大阪府も附帯業務等は事業開始前に定款へ定める必要があると案内しています。


Q17. 医療法人M&Aで社員・理事を全部変える場合は?

社員・理事の総入替え自体だけで定款変更になるとは限りません。

ただし法人名称・理事定数・診療所等も変更するなら別です。


Q18. M&A後に法人名を変更する場合は?

法人名称変更に伴う定款変更が必要です。

M&Aクロージングと定款変更認可のスケジュールを調整してください。


Q19. 分院を閉院すると定款変更が必要ですか?

定款に記載された診療所を削除するため、通常は必要です。


Q20. 定款変更認可にはどのくらいかかりますか?

東京都・大阪府では約3か月が一つの目安です。

補正内容によってさらに時間がかかることがあります。


Q21. 定款変更前に事業を開始できますか?

認可を必要とする変更では、原則として認可前に新事業を開始することは避けるべきです。

大阪府は本来業務・附帯業務・収益業務について事業開始前に定款へ定める必要があるとしています。


Q22. 定款変更は行政書士に依頼できますか?

医療法人の定款変更認可申請・届出、社員総会議事録、分院開設等の行政手続きについては、医療法人業務を取り扱う行政書士へ相談できます。

変更登記は司法書士、税務上の検討は税理士等と連携して進めます。


医療法人定款変更チェックリスト

定款変更を検討するときは、最低限次を確認してください。

  1. 現行定款
  2. 最新の定款変更認可書
  3. 今回変更する事項
  4. 分院追加の有無
  5. 診療所移転の有無
  6. 診療所名称変更
  7. 法人名称変更
  8. 主たる事務所変更
  9. 理事定数変更
  10. 監事定数変更
  11. 新規附帯業務
  12. 分院廃止
  13. 診療所廃止
  14. 管理医師変更
  15. 理事変更
  16. 社員変更
  17. 社員総会決議
  18. 資金計画
  19. 保健所手続き
  20. 厚生局手続き
  21. 変更登記
  22. 開業・移転予定日

分院・移転・M&Aを予定している医療法人へ

医療法人の定款変更は、

「行政書類を1枚提出する手続き」

ではありません。

例えば分院を出す場合には、

定款変更

管理医師

理事追加

物件

資金計画

保健所

保険医療機関指定

までつながっています。

M&Aの場合でも、

社員・理事長変更

だけなら定款変更が不要なケースでも、

M&A後に、

  • 法人名を変更
  • クリニック名を変更
  • 分院を追加
  • 理事定数を変更

するなら、定款変更認可が必要になります。

したがって、

「今回変わること」だけではなく、6か月後・1年後に何をする予定なのか

まで確認して定款変更を設計することが重要です。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

現行定款確認
→ 変更要否判断
→ 行政庁との事前相談
→ 社員総会議事録
→ 定款変更認可申請
→ 司法書士との登記連携
→ 分院・移転手続き
→ 管理医師変更
→ 保健所
→ 保険医療機関指定
→ 施設基準

まで一連の手続きをサポートしています。

「分院を出したい」

「クリニックを移転したい」

「法人名・診療所名を変えたい」

「理事定数を増やしたい」

「M&A後に法人全体を変更したい」

「これは定款変更認可なのか届出なのか分からない」

という場合には、実際の変更を行う前にご相談ください。

【医療法人の定款変更について相談する】


まとめ|医療法人の定款変更は「変更後の実態」と定款を一致させる手続き

最後に重要なポイントを整理します。

  1. 医療法人の定款は法人の基本ルール
  2. 定款記載事項を変更する場合は手続きが必要
  3. 定款変更には認可と届出がある
  4. 分院新設は原則として定款変更認可
  5. 分院を設けられる一般条項だけでは具体的分院の手続きは省略できない
  6. 診療所移転は原則として定款変更が必要
  7. 診療所名称変更も定款記載内容を確認する
  8. 法人名称変更は定款変更が必要
  9. 理事定数変更は定款変更
  10. 理事個人の変更だけなら通常は役員変更
  11. 理事長変更だけなら通常は定款変更不要
  12. 社員変更だけなら通常は定款変更不要
  13. 管理医師変更だけなら通常は定款変更不要
  14. 新規附帯業務は事業開始前に定款へ定める必要がある
  15. 附随業務は定款変更不要の場合がある
  16. 分院廃止は定款からの削除を検討する
  17. 主たる事務所変更は届出扱いとなる自治体がある
  18. 公告方法変更も届出扱いとなる自治体がある
  19. 定款変更認可には約3か月かかる自治体がある
  20. 開業・移転予定日から逆算する
  21. 社員総会で適切に決議する
  22. 認可後に必要な登記を行う
  23. 定款変更だけでなく保健所・厚生局も確認する
  24. M&Aでは変更後の事業計画まで考える
  25. 将来の分院・承継まで見据えて定款を設計する

医療法人の定款変更で最も大切なのは、

「どの申請書を出すか」だけではありません。

医療法人の現在の実態・将来計画と定款の内容を一致させること

です。

分院開設、移転、名称変更、M&A、事業承継など大きな変更を予定している場合は、実行直前ではなく、数か月前から定款を確認することをおすすめします。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、医療法施行規則、厚生労働省の医療法人関係通知、東京都・大阪府が2026年時点で公表している医療法人関係資料をもとに作成しています。

厚生労働省は、医療法人が具体的な分院を新設する場合には必要な添付書類を伴う定款変更手続きを行う考え方を示しています。

東京都の「医療法人運営の手引(令和8年4月版)」では、定款変更について事前審査から認可書交付まで約3か月程度を要すると案内しています。

大阪府も定款変更認可について仮申請から本申請まで約3か月を目安としており、スケジュールが間に合わない場合には事業開始時期を再検討するよう案内しています。

また大阪府は、本来業務・附帯業務・収益業務について事業開始前に定款へ定める必要がある一方、附随業務については特段の定款変更を要しないとしています。

事務所所在地のみ・公告方法のみの変更については、大阪府では定款変更認可ではなく変更届の対象とされています。

※具体的な定款変更の要否、認可・届出の区別、必要書類、処理期間は医療法人の現行定款、所管自治体、変更内容によって異なります。実際の変更では必ず最新の行政庁資料をご確認ください。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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