「医療法人の分院長が退職することになりました。何を変更すればいいですか?」
「分院長を変更する場合、医療法人の理事も変更しなければなりませんか?」
「新しい院長が勤務医から昇格する場合、保健所への届出だけでいいでしょうか?」
「保険医療機関の管理者変更も厚生局へ届け出る必要がありますか?」
「分院長が変わっても定款変更は必要ありませんか?」
「新しい分院長は週3日勤務でも大丈夫でしょうか?」
医療法人が複数のクリニックを運営していると、
分院長・院長の交代
は避けて通れない手続きです。
しかし、医療法人の分院長変更は単なる人事異動ではありません。
一般的に分院長がその診療所の管理医師を兼ねている場合、
分院長変更に伴って、
管理医師変更
理事変更
保健所への届出
医療法人の役員変更届
保険医療機関であれば地方厚生局への管理者変更届
など、複数の手続きが連動します。
特に医療法人が開設する病院・診療所等の管理者については、原則としてその医療法人の理事へ加える必要があります。
厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱でも、法人が開設するすべての病院等の管理者が理事に加えられていることが確認事項とされています。
したがって、
「分院長をA医師からB医師へ変更したので、保健所へ管理者変更届だけ出して終わり」
という処理では不十分な場合があります。
新しい分院長であるB医師を理事へ就任させ、
旧分院長A医師については、
管理者退任後も引き続き理事として残るのか
それとも、
理事からも退任するのか
を整理する必要があります。
さらに、保険医療機関の場合には地方厚生局への管理者変更届も重要です。
関東信越厚生局は、保険医療機関の管理者変更について、2026年3月31日時点の案内で、管理者変更欄を記載し、健康保険法第70条の2第1項に掲げる管理者要件を満たす旨を確認したうえで、管理者に係る添付書類を提出するよう案内しています。
近畿厚生局も、2026年4月1日以降の管理者変更について、新しい管理者に関する取扱いを案内しています。
つまり2026年現在、分院長変更は、
医療法人側
だけではなく、
医療機関側
保険医療機関側
の3つを同時に確認する必要があります。
本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、
- 分院長とは何か
- 分院長と管理医師の違い
- 分院長変更と管理医師変更
- 新分院長は理事にする必要があるか
- 旧分院長は理事を退任する必要があるか
- 社員総会
- 理事会
- 役員変更届
- 保健所の管理者変更
- 厚生局の保険医療機関管理者変更
- 2026年4月以降の管理者要件
- 定款変更は必要か
- 理事定数
- 施設基準
- 分院長が他院勤務している場合
- M&A・承継時の分院長変更
まで詳しく解説します。
医療法人の分院長変更について相談したい先生へ
分院長変更で最も注意したいのは、
退職日だけ先に決めてしまうこと
です。
例えば、
旧分院長A医師:9月30日退職
新分院長B医師:10月1日就任
と決めた場合、
10月1日時点で、
- B医師が管理医師として適格か
- B医師を理事へ就任させているか
- 保健所手続きが可能か
- 厚生局の管理者変更要件を満たすか
- 必要な施設基準に影響しないか
まで確認する必要があります。
分院長退職が決まったら、
後任採用 → 行政要件確認 → 理事変更 → 管理医師変更
という順番を意識してください。
医療法人の「分院長」とは?
「分院長」という言葉自体は、医療法上の正式な役職名として統一的に定義されているわけではありません。
実務では、医療法人が複数の病院・診療所を運営している場合に、
各分院を責任者として担当する医師・歯科医師
を分院長と呼ぶことがあります。
多くの場合、
分院長=その診療所の管理医師
です。
分院開設についての完全ガイドはこちらです。
分院長と管理医師は同じ?
実務上同じ人物であるケースが非常に多いですが、言葉の意味は分けて考えると分かりやすいです。
分院長
法人内部・組織上の呼称
管理医師
医療法上、診療所を管理する者
です。
したがって行政手続きでは、
「分院長変更」
というより、
「管理者変更」
として扱われることが基本になります。
大阪府も法人等が開設する診療所について、2026年4月時点で「診療所管理者変更届出書」を公開しています。
医療法人が開設する診療所の管理医師は理事になる必要がある?
原則として必要です。
医療法第46条の5第6項の趣旨について、厚生労働省は、医療施設において医療業務に実質的責任を有する管理者の意向を法人運営へ正しく反映させるための制度であると説明しています。
さらに医療法人運営管理指導要綱では、
法人が開設するすべての病院等の管理者が理事に加えられていること
が確認事項とされています。
したがって、
新しい分院長=新しい管理医師
であれば、
原則として、
新分院長を医療法人の理事へ加える
必要があります。
新しい分院長が医療法人の理事にも就任する場合には、就任時の手続きだけでなく、その後の役員任期・重任管理も必要になります。
医療法人役員の任期については「医療法人の役員任期・重任完全ガイド」で詳しく解説しています。
管理医師を理事にしない例外はある?
例外はあります。
都道府県知事の認可を受けた場合には、管理者を理事に加えないことが認められる制度があります。厚生労働省の指導要綱でも、管理者を理事に加えない場合には知事の認可を得ていることを確認する仕組みになっています。
ただし、
「分院長だから理事にはしたくない」
という理由だけで自由に例外扱いできるものではありません。
原則は理事就任です。
分院長変更でまず確認する5つのポイント
分院長交代が決まったら、最初に次を確認してください。
① 新分院長候補
医師・歯科医師免許、勤務体制等を確認します。
② 管理医師変更日
旧管理医師退任日と新管理医師就任日を整理します。
③ 理事就任
新管理医師を理事へ加える必要があります。
④ 旧分院長の理事資格
管理医師退任後も理事として残すかを確認します。
⑤ 保健所・厚生局
それぞれ別途変更届を確認します。
分院長変更の基本的な流れ
一般的な医療法人の場合、一例として次のように進めます。
STEP1 新分院長候補を決める
↓
STEP2 勤務実態・管理医師適格性を確認
↓
STEP3 現在の理事構成・定款を確認
↓
STEP4 社員総会で新分院長を理事へ選任
↓
STEP5 必要に応じ旧分院長を理事から退任
↓
STEP6 新分院長が管理医師へ就任
↓
STEP7 医療法人所管庁へ役員変更届
↓
STEP8 保健所へ管理者変更届
↓
STEP9 地方厚生局へ保険医療機関管理者変更届
↓
STEP10 施設基準・公費等を確認
という流れになります。
新分院長を理事へ選任するのは社員総会?
通常、理事・監事は社員総会で選任します。
そのため、新分院長が現在理事でない場合、
社員総会で新たに理事として選任
します。
理事長が単独で、
「今日からB先生を理事にします」
と決めるだけではありません。
新分院長は社員にもする必要がある?
必ずしも必要ありません。
ここは非常に重要です。
管理医師は原則として理事になる必要がありますが、
社員
である必要まではありません。
つまり、
B医師:
分院管理医師
理事
社員ではない
という構成も制度上考えられます。
社員と理事は別です。
旧分院長は理事も退任する?
ここは個別に確認します。
厚生労働省は、管理者であることを理由として理事に就任している者について、管理者職を退いた場合には原則として理事職も失うという考え方を示しています。医療法人の機関に関する通知でも、管理者と理事の関係について整理されています。
ただし、旧分院長を、
管理医師ではない通常の理事
として引き続き法人運営へ参加させたい場合には、改めて理事としての位置づけを整理することが考えられます。
例えば旧分院長を法人本部の理事として残す場合
旧分院長A医師が、
分院管理医師を退いた後も、
法人運営に必要な人物である場合には、
A医師を一般の理事として継続させることを検討できます。
しかし、
「管理者だから当然理事」
という根拠がなくなりますので、
理事選任状況を改めて確認してください。
理事変更では定款変更も必要?
通常、
理事個人がAからBへ変わるだけなら定款変更は不要
です。
定款には通常、
「理事3名以上5名以内」
など人数が定められており、個々の理事氏名までは定款本文に記載しないからです。
ただし、
新理事を追加すると定款上の上限を超える
場合は別です。
理事定数を超える場合
例えば定款が、
理事3名以上5名以内
で、
現在すでに理事が5名いるとします。
そこへ新分院長B医師を理事として追加すると、
理事6名
になります。
この場合には、
理事定数変更のため定款変更
を検討する必要があります。
大阪府の定款変更認可申請は、仮申請から本申請まで約3か月を要すると案内されています。
したがって、分院長退職直前になって理事定数不足に気づくとスケジュールに影響する可能性があります。
旧分院長退任と新分院長就任を同じ日にできる?
可能なケースが一般的ですが、
法的・行政上の空白を作らない
ことが重要です。
例えば、
9月30日:
A医師管理者退任
10月1日:
B医師管理者就任
とする場合、
10月1日からB医師が適切に診療所を管理できる体制を整えておきます。
管理医師が1日でも不在になっていい?
原則として、診療所には適切な管理者が必要です。
したがって、
旧分院長が辞めた後、
「後任が決まるまで1か月管理医師なし」
という運用は避けるべきです。
退職日と後任就任日を連続させるよう調整してください。
保健所への管理医師変更
法人開設診療所については、管理者変更の際に管轄保健所への変更届が必要になります。
大阪府は2026年4月現在、法人等開設診療所について「診療所管理者変更届出書」を公開しています。
東京都の法人開設診療所に関する案内でも、2026年7月時点で、医療法人の場合には管理者が法人の理事であり、診療時間中に管理する診療所へ常勤する必要がある旨が示されています。
管理医師は診療所に常勤しなければならない?
東京都多摩府中保健所の2026年7月案内では、医療法人開設診療所の管理者について、
管理者が医療法人の理事であること
に加え、
診療時間中、管理する診療所に常勤する必要がある
と案内されています。
したがって、
名義だけの分院長
は適切ではありません。
週3日勤務でも分院長になれる?
全国一律に、
「週3日なら可」
という単純なルールではありません。
重要なのは、
- 診療日
- 診療時間
- 他院勤務
- 実際の管理体制
です。
特に診療時間中に他の医療機関へ勤務しているような勤務表になっていないか確認してください。
具体的な勤務体制は所管保健所へ事前相談することをおすすめします。
新分院長が別病院の勤務医でも大丈夫?
一律に禁止されているとは限りませんが、
管理医師として分院を適切に管理できるか
が重要です。
例えば、
月水金:
分院管理医師
火木:
他院勤務
という形と、
同じ曜日・時間帯に2院勤務となっているケースでは全く違います。
管理医師を2つの診療所で兼務できる?
慎重な確認が必要です。
管理者には医療機関を実際に管理する責任があるため、
「分院長が足りないので、とりあえず本院長を兼務させる」
という運用を安易に行うことはおすすめできません。
勤務曜日・診療時間・所在地・移動時間等を具体的に示して保健所へ確認してください。
分院長変更と理事長変更は別
分院長が変わっても、
医療法人の理事長
が変わるわけではありません。
例えば、
医療法人A会
理事長:山田医師
本院管理医師:山田医師
分院管理医師:鈴木医師
から、
分院管理医師だけ、
鈴木医師→佐藤医師
へ変更しても、
山田理事長はそのままです。
分院長変更だけなら理事長登記は不要?
理事長が変わらないなら、通常は理事長変更登記は発生しません。
ただし新旧分院長について、
役員変更届
は確認します。
医療法人の役員変更届
新分院長が理事へ就任する場合、
医療法人所管行政庁への役員変更届が必要になります。
大阪府も役員について、理事・監事等の変更や重任に関する届出制度を設けています。
旧分院長が理事から退任する場合にも合わせて整理します。
新分院長の理事任期はどうなる?
現行定款を確認します。
例えば定款に、
補欠により就任した役員の任期は前任者の残任期間
という規定があれば、新分院長の理事任期は前任者の残存任期になります。
したがって、
就任日から新たに2年間
とは限りません。
保険医療機関なら厚生局への届出も必要
分院が保険医療機関の場合には、
保険医療機関管理者の変更
として地方厚生局への届出を確認します。
関東信越厚生局の2026年3月31日案内では、保険医療機関の管理者変更について、管理者欄を記載し、管理者要件を満たす旨を確認したうえで添付書類を提出する仕組みとなっています。
2026年4月から管理者変更で特に注意
2026年度は重要です。
近畿厚生局は2026年5月時点の保険医療機関指定案内で、
2026年4月1日以降の管理者変更
について特に注意喚起を行っています。
そのため、以前の感覚で、
管理者名だけ変更届へ書けば終わり
と考えないことが重要です。
保険医療機関の管理者要件とは?
健康保険法上、保険医療機関の管理者について一定の要件・責務が設けられています。
関東信越厚生局は管理者変更届について、
健康保険法第70条の2第1項に掲げる管理者要件を満たしている旨
へのチェックと、管理者に係る添付書類を求めています。
したがって新分院長候補については、
医療法上管理医師になれるか
だけでなく、
保険医療機関管理者としても問題ないか
を確認します。
保健所と厚生局は同じ手続き?
違います。
保健所
医療法上の診療所管理者変更
地方厚生局
保険医療機関としての管理者変更
です。
保健所へ届出しただけで、厚生局の情報が自動的に変わると考えないでください。
厚生局への変更届はいつ出す?
変更が生じた際には速やかな届出が求められます。
関東信越厚生局のFAQでも、届出事項や施設基準に変更が生じた場合には速やかに届け出るよう案内されています。
分院長変更で保険医療機関指定を取り直す?
通常、同一医療法人・同一診療所で管理者だけが変わるのであれば、
管理者変更によって直ちに保険医療機関指定を新規で取り直す
という話ではありません。
基本的には指定事項の変更手続きとして整理します。
地方厚生局も「名称・開設者・管理者・その他の変更」という形で変更届を案内しています。
分院長変更で施設基準はどうなる?
ここも確認が必要です。
例えば現在届出している施設基準について、
旧分院長A医師の、
- 専門医資格
- 勤務時間
- 常勤医師数
などが要件に組み込まれている場合、
A医師退職によって施設基準を満たさなくなる可能性があります。
新分院長が同じ資格を持っていれば問題ない?
必ずしも自動的に問題なしとは限りません。
施設基準ごとに、
- 人員
- 資格
- 常勤・非常勤
- 勤務時間
- 経験
等の要件が異なります。
分院長変更時には、
現在算定している施設基準一覧
を必ず確認してください。
在宅療養支援診療所なら特に注意
在宅療養支援診療所など、人員・診療体制が重要な施設基準では、
管理医師変更や医師退職によって要件に影響する可能性があります。
新分院長の就任だけでなく、
法人全体の医師配置
を確認します。
公費関係も確認する
分院が、
- 生活保護法指定医療機関
- 難病指定
- 自立支援医療
- 労災
- その他公費
に関係している場合には、
管理者変更・代表者変更等について各制度の届出要否を確認してください。
医療情報ネット等の情報も確認
患者向け情報として院長名・管理者情報を掲載している場合には、
- 医療情報ネット
- 法人Webサイト
- Google等
- 院内掲示
も変更します。
行政手続きだけでなく、患者向け情報との整合も重要です。
分院名を変更しないなら定款変更不要?
分院長だけが変わり、
- 分院名称
- 所在地
- 法人名称
が変わらないのであれば、通常は分院長個人の変更だけを理由に定款変更するものではありません。
ただし、
理事定数を変更する必要がある場合などは別です。
分院長変更と診療所名変更を同時にする場合
例えば、
旧院長退職をきっかけに、
「○○院長クリニック」
から、
「△△メディカルクリニック」
へ診療所名称も変える場合です。
診療所名称が定款に記載されている場合、
名称変更に伴う定款変更
も検討する必要があります。
単なる管理者変更とは手続きが大きく変わります。
分院長変更と移転を同時にする場合
さらに複雑になります。
この場合、
定款変更認可
診療所移転
管理者変更
保険医療機関関係
を一体で設計します。
大阪府の定款変更認可は約3か月を要すると案内されているため、早めの準備が必要です。
分院長変更とM&A
医療法人M&Aでも分院長変更がよく発生します。
例えば、
M&A前:
旧オーナー医師が本院長・分院長を兼務
M&A後:
新しい勤務医を分院長へ就任
というケースです。
M&Aクロージング時には、
- 社員
- 理事
- 理事長
- 管理医師
をそれぞれ分けて変更します。
旧オーナーが分院管理医師の場合
M&Aクロージング日に旧オーナーが法人から完全に離れるなら、
その日までに、
新しい分院管理医師を確保
しておく必要があります。
理事長変更だけ済ませても、分院管理者がいなくなれば問題です。
親族承継でも同じ
父理事長が、
本院管理医師
だけでなく、
分院の管理医師も兼ねている場合、
息子へ理事長を承継する際に、
各院の管理医師を誰にするか整理します。
理事長承継と管理医師承継は別です。
美容クリニックの分院長変更で注意すること
美容クリニックでは、
- 分院長交代が多い
- 自由診療中心
- 医師の移動が多い
というケースがあります。
しかし自由診療だけであっても、
医療法上の管理医師責任
はあります。
保険医療機関ではないから、
「院長名だけ変えればいい」
ということにはなりません。
保健所への管理者変更を確認してください。
歯科医療法人でも同じ?
基本的な考え方は同じです。
分院の管理歯科医師を変更する場合には、
- 管理者変更
- 理事変更
- 保健所
- 厚生局
を確認します。
分院長の理事任期にも注意
新分院長を理事へ就任させた後は、
役員任期
を管理する必要があります。
医療法人の役員任期は2年を超えることができません。大阪府もこの点を明示しています。
新分院長だけ任期管理から漏れないようにしてください。
分院長退職後も役員変更届を忘れない
非常に多い失敗です。
保健所へ管理者変更届を出したので安心し、
医療法人側の理事変更を忘れる
ケースがあります。
分院長変更時には必ず、
保健所
と、
医療法人所管庁
を別々に確認してください。
分院長変更でよくある失敗① 保健所だけ届け出る
最も多い失敗です。
新管理医師は原則として理事へ加える必要があります。
よくある失敗② 新分院長を社員にも必ず入れると思う
理事と社員は別です。
管理医師だから必ず社員になるわけではありません。
よくある失敗③ 旧分院長を理事名簿に残したまま
管理者退任後にどの立場で理事として残るのか整理してください。
よくある失敗④ 理事定数を確認しない
新分院長追加によって定款上限を超える場合があります。
よくある失敗⑤ 新分院長の勤務実態を確認しない
東京都の2026年案内では、医療法人診療所の管理者は診療時間中に管理する診療所へ常勤する必要があると案内されています。
よくある失敗⑥ 週3日なら自動的に管理医師になれると思う
全国一律の「週3日基準」ではありません。
実際の診療・勤務体制を確認してください。
よくある失敗⑦ 厚生局を忘れる
保険医療機関なら管理者変更届が必要です。
よくある失敗⑧ 2026年4月以降の管理者要件を確認しない
保険医療機関管理者については2026年4月以降の取扱いを必ず確認してください。
よくある失敗⑨ 施設基準への影響を確認しない
旧分院長退職で人員要件・資格要件を欠く可能性があります。
よくある失敗⑩ M&Aクロージング日に管理医師不在になる
新分院長をM&A前に確保しておく必要があります。
医療法人の分院長変更FAQ
Q1. 分院長を変更する場合、何をすればいいですか?
一般的には、
- 新管理医師の確認
- 理事変更
- 保健所への管理者変更
- 医療法人所管庁への役員変更
- 保険医療機関なら厚生局への管理者変更
を確認します。
Q2. 分院長は必ず医療法人の理事ですか?
管理医師を兼ねる場合は原則として理事へ加える必要があります。
Q3. 分院長は社員にもする必要がありますか?
必須ではありません。
社員と理事は別です。
Q4. 旧分院長は理事も自動的に辞めますか?
管理者たる理事としての立場について整理が必要です。
引き続き一般の理事として残す場合には役員選任状況を確認してください。
Q5. 新分院長を理事にすると理事定数を超えます。どうしますか?
定款変更による理事定数変更を検討します。
大阪府では定款変更認可に約3か月を要すると案内しています。
Q6. 分院長変更だけなら定款変更は必要ですか?
通常、管理医師個人の変更だけなら定款変更ではありません。
ただし理事定数変更等を伴う場合は別です。
Q7. 保健所への届出は必要ですか?
必要です。
法人等開設診療所では管理者変更届を確認します。大阪府も専用様式を公開しています。
Q8. 分院長は診療所へ毎日いなければいけませんか?
具体的な診療日・勤務体制によります。
東京都の2026年案内では、管理者は診療時間中に管理する診療所へ常勤する必要があるとしています。
Q9. 週3日勤務でも分院長になれますか?
一律に週3日なら可能というルールではありません。
診療日・勤務時間等を示して所管保健所へ確認してください。
Q10. 他院で非常勤勤務していても分院長になれますか?
可能性はありますが、分院管理に支障がない勤務体制である必要があります。
Q11. 本院長が分院長も兼務できますか?
個別判断です。
双方の診療時間、距離、管理実態等を確認してください。
Q12. 分院長変更で厚生局への届出も必要ですか?
保険医療機関の場合、管理者変更として届出を確認します。
Q13. 2026年4月から何が変わりましたか?
保険医療機関の管理者変更について、管理者要件を満たす旨の確認・添付書類等の取扱いが重要になっています。
Q14. 保険医療機関指定を取り直しますか?
同じ医療法人・同じ診療所で管理者だけが変わる場合は、通常は管理者変更届として整理します。
Q15. 施設基準も確認する必要がありますか?
必要です。
旧分院長の資格や常勤性が施設基準要件に関係している場合があります。
Q16. 分院長と理事長は同じ役職ですか?
違います。
理事長は医療法人の代表者、分院長・管理医師は個々の医療機関の管理者です。
Q17. 分院長変更と理事長変更を同時にできますか?
可能ですが、法人側・保健所・厚生局の各手続きを整理する必要があります。
Q18. M&Aと同時に分院長を変更できますか?
可能ですが、クロージング時に管理医師不在にならないよう事前に新管理医師を確保してください。
Q19. 美容クリニックでも同じですか?
自由診療のみでも医療法上の管理医師変更は必要です。
保険医療機関でなければ厚生局の保険指定変更はありません。
Q20. 歯科医院でも同じですか?
基本的な考え方は同じです。
管理歯科医師変更・理事変更・保健所・厚生局等を確認します。
Q21. 分院長変更は行政書士に依頼できますか?
医療法人の役員変更、保健所への管理者変更、保険医療機関関係の行政手続き等については、医療法人・医療手続きを取り扱う行政書士へ相談できます。
必要な登記が発生する場合は司法書士等と連携します。
分院長変更チェックリスト
分院長交代が決まったら、最低限次を確認してください。
- 現行定款
- 現在の理事数
- 理事定数上限
- 旧分院長の理事資格
- 新分院長候補
- 医師・歯科医師免許
- 新分院長の勤務日
- 新分院長の勤務時間
- 他院勤務
- 管理医師就任日
- 旧管理医師退任日
- 社員総会
- 新理事選任
- 旧理事退任
- 役員変更届
- 保健所管理者変更
- 保険医療機関管理者変更
- 2026年4月以降の管理者要件
- 施設基準
- 公費
- 医療情報ネット
- 法人ホームページ
- 院内掲示
- M&A・承継との関係
- 次回役員任期
分院長変更をスムーズに行うおすすめスケジュール
可能であれば、
3か月前
後任候補確定
勤務体制確認
保健所・厚生局事前確認
2か月前
社員総会準備
理事定数確認
施設基準確認
1か月前
理事選任
役員変更関係書類準備
保健所書類準備
変更日
旧管理医師退任
新管理医師就任
変更後
役員変更届
保健所届出
厚生局届出
施設基準・公費等確認
という流れにすると整理しやすくなります。
複数分院がある医療法人は「管理医師台帳」を作る
3院、5院、10院と分院が増えてきた医療法人では、
各院について、
| 診療所管理医師理事就任日役員任期厚生局 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 本院 | A医師 | ○ | 2026/4/1 | 2028年 | 済 |
| 分院1 | B医師 | ○ | 2026/7/1 | 2028年 | 済 |
| 分院2 | C医師 | ○ | 2026/10/1 | 2028年 | 済 |
のように一元管理することをおすすめします。
分院数が増えるほど、
管理医師変更と理事変更の連動
を忘れやすくなります。
医療法人の分院長変更を検討している先生へ
分院長変更で本当に重要なのは、
「後任の院長を採用すること」だけではありません。
新しい分院長が、
医療法上適切な管理医師であり、医療法人の理事として適切に位置付けられ、保健所・厚生局の届出まで整っている状態
を作ることが重要です。
つまり、
人事
だけではなく、
法人ガバナンス+医療法+保険医療機関制度
を同時に変更する手続きです。
当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、
現行定款確認
→ 新分院長の管理医師要件確認
→ 理事定数確認
→ 社員総会議事録
→ 理事変更
→ 役員変更届
→ 保健所管理者変更
→ 厚生局管理者変更
→ 施設基準確認
→ M&A・承継との調整
まで一連の手続きをサポートしています。
「分院長が退職する」
「後任の院長を理事にする必要があるのか分からない」
「新分院長が別病院にも勤務している」
「理事数の上限に達している」
「M&Aと同時に分院長を変更したい」
「厚生局への変更までまとめてお願いしたい」
という場合には、退職日・就任日を確定する前の段階からご相談ください。
【医療法人の分院長変更について相談する】
まとめ|分院長変更は「管理医師+理事+保健所+厚生局」をセットで考える
最後に重要なポイントを整理します。
- 分院長は多くの場合、その診療所の管理医師
- 分院長変更は単なる人事異動ではない
- 管理医師変更として行政手続きが必要
- 医療法人開設診療所の管理医師は原則理事
- 厚生労働省も全管理者が理事に加えられていることを確認事項としている
- 新分院長が理事でなければ理事選任を確認する
- 分院長は必ずしも社員である必要はない
- 旧分院長の理事資格も整理する
- 理事個人の交代だけなら通常定款変更不要
- 理事定数上限を超えるなら定款変更を検討する
- 定款変更には数か月かかる場合がある
- 管理医師不在期間を作らない
- 保健所へ管理者変更を届け出る
- 管理医師には実際の勤務・管理実態が必要
- 東京都では診療時間中の常勤を案内している
- 「週3日なら可」という全国一律ルールではない
- 他院勤務との時間重複を確認する
- 保険医療機関なら厚生局変更届も必要
- 2026年4月以降は保険医療機関管理者要件の確認が特に重要
- 医療法上の管理医師と保険医療機関管理者は双方確認する
- 管理者変更だけなら通常保険医療機関指定の取り直しではない
- 施設基準への影響を確認する
- 公費関係も確認する
- 分院長変更と理事長変更は別
- M&A・親族承継ではクロージング時の管理医師不在に注意する
- 自由診療でも医療法上の管理者変更は必要
- 歯科でも基本的な考え方は同じ
- 新分院長の理事任期も管理する
- 分院数が多い法人では管理医師台帳を作る
- 分院長変更は保健所・法人所管庁・厚生局を同時に設計する
医療法人の分院長変更で最も重要なのは、
「誰を次の院長にするか」
だけではありません。
本当に重要なのは、
新しい院長を、医療法上の管理者、医療法人の理事、保険医療機関の管理者として矛盾なく位置付けること
です。
そのため、
分院長変更
=
管理医師変更
+
理事変更
+
保健所
+
厚生局
という認識で進めることをおすすめします。
参考となる公的情報・一次情報
本記事は、医療法、厚生労働省「医療法人運営管理指導要綱」「医療法人の機関について」、東京都・大阪府の診療所・医療法人関係資料、地方厚生局の保険医療機関指定・管理者変更関係資料を基に、2026年8月時点の制度・行政実務を整理しています。
厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱では、法人が開設するすべての病院・診療所等の管理者が原則として理事に加えられていることを確認事項としています。
厚生労働省は医療法第46条の5第6項の趣旨について、医療施設で実質的責任を有する管理者の意向を法人運営へ適切に反映させるための制度であると説明しています。
東京都の2026年7月案内では、医療法人開設診療所の管理者について、医療法人の理事であること、診療時間中に管理する診療所へ常勤する必要がある旨が案内されています。
大阪府は2026年4月現在、法人等が開設する診療所の管理者変更について「診療所管理者変更届出書」を公開しています。
関東信越厚生局では、保険医療機関管理者の変更に際して、健康保険法第70条の2第1項に掲げる管理者要件を満たす旨の確認と管理者に係る添付書類の提出を案内しています。
近畿厚生局も2026年4月1日以降の保険医療機関管理者変更について最新の取扱いを案内しています。
※具体的な管理医師要件、勤務日数・時間、理事就任、必要書類、保険医療機関管理者要件等は、所在地の保健所、所管都道府県、地方厚生局及び個別の診療体制によって異なる場合があります。実際の変更では必ず各行政庁の最新資料・個別運用をご確認ください。
