【2026年最新版】医療法人の診療所移転完全ガイド|定款変更・開設許可・保険医療機関指定・遡及指定まで

「医療法人のクリニックを移転したいのですが、何から始めればいいですか?」

「同じ駅の近くへ移るだけでも定款変更が必要ですか?」

「医療法人の場合、移転は保健所への変更届だけではだめですか?」

「保険医療機関指定はそのまま引き継げますか?」

「近距離移転なら保険医療機関指定を遡及できますか?」

「移転先で4月1日から保険診療を始めたい場合、いつから準備すればいいでしょうか?」

医療法人が運営する診療所・歯科診療所の移転は、一般的な事務所移転とは全く異なります。

結論からいうと、医療法人の診療所移転では通常、

医療法人の定款変更

定款変更認可

必要な法人登記

旧診療所の廃止・新診療所の開設に関する保健所手続き

保険医療機関指定

施設基準等の届出

新診療所での診療開始

という複数の行政手続きを、開院予定日から逆算して進める必要があります。

特に医療法人の場合、診療所の名称・所在地は定款に記載されていることが一般的です。

そのため、

「同じ区内だから単なる住所変更」

「500メートル先だから変更届だけでよい」

とは限りません。

東京都は、診療所の新規開設や移転等を行う場合、事前に医療法人の定款変更認可を受け、法人登記を済ませた上で診療所開設等の手続きを進める必要があると案内しています。また定款変更の仮申請から認可書受領まで約3か月程度を要するとしています。

大阪府も、定款変更認可申請について、

仮申請:約2~2.5か月
本申請:約2週間
合計:約3か月

を標準的な期間として案内しています。

したがって、

「3か月後に移転開院したいので、今から行政手続きを始めます」

では、すでにスケジュール的に厳しい可能性があります。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • 医療法人の診療所移転とは何か
  • なぜ定款変更が必要なのか
  • 同じ区内・同じビル内でも定款変更が必要か
  • 移転に必要な期間
  • 新物件を契約する前の注意点
  • 保健所への事前相談
  • 診療所開設許可・廃止手続き
  • 管理医師
  • 保険医療機関指定
  • 遡及指定
  • 「至近距離」とは何か
  • 2km以内なら必ず遡及できるのか
  • 施設基準
  • オンライン資格確認
  • X線設備
  • 公費
  • 移転でよくある失敗

まで、2026年最新の公的情報を踏まえて詳しく解説します。


医療法人の診療所移転について相談したい先生へ

診療所移転で最も避けたいのが、

物件契約・内装工事・開院日決定を先に行い、最後に行政手続きを確認すること

です。

例えば、

「現在のクリニックは3月31日まで」

「新クリニックは4月1日から」

と決めていても、

医療法人の定款変更認可が4月中旬になれば、その時点で計画が崩れます。

さらに保険医療機関指定について遡及指定が利用できなければ、

新診療所で保険診療を開始できる日が予定より後ろ倒し

になる可能性があります。

移転では、

医療法人

保健所

地方厚生局

を一つの手続きとして設計することが非常に重要です。

移転する診療所が医療法人の分院である場合には、移転手続きだけでなく、医療法人の定款や本院・分院の関係も確認します。

医療法人による分院開設・運営については「医療法人の分院開設完全ガイド」で詳しく解説しています。


目次

医療法人の診療所移転とは?

例えば、

現在、

医療法人社団○○会
○○クリニック
東京都新宿区A町1丁目

を運営している法人が、

東京都新宿区B町2丁目

へ診療所を移転するケースです。

医療法人そのものは同一法人ですが、

診療所の所在地が変わります。

医療法人の定款には通常、法人が開設する診療所について、

  • 名称
  • 開設場所

が記載されています。

そのため、診療所を移転すると定款記載内容も変更する必要があります。


医療法人の診療所移転には定款変更が必要?

原則として必要です。

東京都は、医療法人が診療所の新規開設や移転等を行う際には、事前に定款又は寄附行為の変更認可を受け、必要な法人登記を済ませるよう案内しています。

したがって、

先に診療所を移転し、後から定款を直す

という順番ではありません。


同じ区内への移転でも定款変更は必要?

通常、診療所所在地が定款に記載されている以上、所在地が変われば定款変更を確認する必要があります。

例えば、

東京都新宿区西新宿1丁目

から、

東京都新宿区西新宿2丁目

への移転でも同様です。

重要なのは、

距離ではなく、定款記載事項が変わるかどうか

です。


100メートル先への移転でも?

同じ考え方です。

医療法人の定款変更と、後で説明する保険医療機関の遡及指定は別問題です。

100メートルしか移転しない場合でも、

定款上の所在地が変わるなら定款変更

を確認します。

一方、近距離であることは、保険医療機関指定の遡及が認められるかという別の場面で重要になります。


同じビル内の階数移転なら?

現在の定款にどこまで住所が記載されているかを確認します。

例えば定款が、

東京都港区○○一丁目1番1号

までしか記載しておらず、

3階→5階

へ移る場合と、

定款に、

○○ビル3階

まで記載されている場合では、検討が異なる可能性があります。

さらに保健所側では医療機関の構造・所在地変更として別途手続きが必要になる場合があります。

したがって、同一建物内でも事前確認してください。


医療法人の「事務所移転」と「診療所移転」は違う

ここは非常に重要です。

例えば、

法人の主たる事務所

大阪市中央区A

診療所

大阪市北区B

という医療法人があります。

主たる事務所だけを移転するケースと、

診療所そのものを移転するケースでは手続きが違います。

大阪府では、事務所所在地のみの変更は一定の場合に定款変更届で処理できますが、事務所と診療所等を同時に移転する場合には定款変更認可申請が必要と案内しています。また、事務所のみの移転でも他府県へ移転する場合は認可申請が必要です。

つまり、

法人事務所の住所変更

と、

診療所の移転

を混同しないことが重要です。


診療所移転の全体的な流れ

一般的には次のように進めます。

STEP1 移転計画を作る

まず、

  • 移転先
  • 移転予定日
  • 診療開始予定日
  • 管理医師
  • 診療科
  • 診療時間
  • 設備
  • スタッフ
  • 移転費用

を整理します。


STEP2 移転候補物件を確認する

契約前に、

  • 医療用途として使用可能か
  • 建築上問題ないか
  • 保健所の構造設備基準を満たせるか
  • X線設備を設置できるか
  • 消防関係
  • バリアフリー等

を確認します。


STEP3 保健所へ事前相談

内装設計の段階で、移転先所在地を管轄する保健所へ相談します。

平面図を持参し、

  • 診察室
  • 処置室
  • 待合室
  • 医薬品保管
  • X線室
  • 手洗い
  • その他設備

を確認します。


STEP4 医療法人の社員総会

診療所移転及び定款変更について、社員総会で必要な決議を行います。


STEP5 定款変更認可申請

所管都道府県へ定款変更認可申請を行います。


STEP6 定款変更認可

行政庁の審査・補正を経て認可を受けます。


STEP7 必要な法人登記

変更内容に応じて登記を行います。

東京都は、診療所開設等の手続き前に、定款変更認可と必要な法人登記を済ませるよう案内しています。


STEP8 旧診療所の廃止・新診療所の開設手続き

保健所で必要な手続きを行います。


STEP9 地方厚生局の保険医療機関指定

保険診療を継続するなら、移転後の診療所について必要な指定申請を行います。

条件を満たす近距離移転なら、遡及指定を検討します。


STEP10 施設基準等

新しい保険医療機関コード等に応じて、施設基準の取扱いを確認します。


STEP11 新診療所で診療開始

すべての行政手続きを整えた上で、新しい場所で診療を開始します。


診療所移転には何か月必要?

少なくとも数か月単位で計画してください。

東京都は定款変更について、変更予定の3か月前までには仮申請するよう案内し、仮申請から認可書受領まで約3か月程度必要としています。

大阪府も約3か月を標準的な処理期間として案内しています。

しかもその後に、

  • 保健所
  • 厚生局
  • 施設基準
  • オンライン資格確認

があります。

そのため実務上は、移転希望日の6か月程度前から行政手続きを確認しておくと安全です。


移転6か月前からのモデルスケジュール

6か月前

  • 移転候補地決定
  • 行政スケジュール確認
  • 保健所事前相談
  • 管理医師確認

5か月前

  • 物件・賃貸条件確定
  • 内装設計
  • 定款変更資料作成
  • 社員総会

4~5か月前

  • 定款変更仮申請

2か月前

  • 定款変更審査・補正
  • 内装工事
  • 厚生局スケジュール確認

1か月前

  • 認可
  • 必要登記
  • 保健所開設関係
  • 保険医療機関指定申請

移転日

  • 旧診療所廃止
  • 新診療所開設
  • 条件を満たす場合は保険医療機関指定の遡及

実際には自治体・厚生局によって日程を調整します。


移転先物件を先に契約していい?

契約そのものが直ちに禁止されるわけではありませんが、行政スケジュールを確認してから契約条件を決めることをおすすめします。

例えば、

10月1日から月額150万円の家賃発生

なのに、

定款変更認可が12月、

保険診療開始が1月、

となれば数百万円の空家賃が生じます。


賃貸借契約に停止条件を付ける方法

案件によっては、

医療法人の定款変更認可

や、

診療所開設手続き

を前提とする停止条件・解除条件等を検討する方法があります。

契約条項については貸主・仲介会社・弁護士等と調整してください。


内装工事前に必ず保健所へ相談する

これは非常に重要です。

内装完成後に、

「この診察室の配置では認められません」

「X線室の構造を変更してください」

となれば、

  • 再工事費
  • 開院延期
  • 家賃
  • スタッフ人件費

が追加で発生します。

平面図の段階で事前相談

してください。


医療法人の診療所移転では「変更届」ではなく開設・廃止になる?

医療法人による診療所移転では、一般に旧所在地の診療所を廃止し、新所在地で新たな診療所を開設する形の手続きになることがあります。

これは、

医療法人は同じでも、医療機関としての所在地が変わる

ためです。

具体的な様式、開設許可・届出、廃止日・開設日の扱いは所在地の保健所へ事前確認してください。


医療法人の診療所開設は許可が必要?

医療法人が診療所を開設する場合、原則として医療法上の開設許可手続きが関係します。

医師・歯科医師個人が自己名義で開設する診療所の「開設届」と、法人が開設する診療所では手続きが異なります。

移転先でもこの点を確認します。


管理医師は移転後も同じ人でいい?

同じ医師・歯科医師が引き続き管理者になることは可能です。

例えば、

旧所在地:Aクリニック
管理医師:山田医師

新所在地:Aクリニック
管理医師:山田医師

というケースです。

ただし、移転先診療所について必要な管理者関係書類を提出します。


移転と同時に管理医師を変更する場合

移転時に院長交代も行うケースがあります。

この場合、

診療所移転

と、

管理者変更

を同時に整理します。

また、医療法人が開設する診療所の管理者は原則として医療法人の理事となるため、新管理医師の理事就任も確認してください。


診療所移転と保険医療機関指定

ここが移転手続きで最も重要なポイントの一つです。

保険医療機関の指定は、所在地等と結びついています。

したがって、診療所を別の場所へ移転した場合、

現在の指定が何もせずそのまま移転先へ自動的についてくる

と考えてはいけません。

地方厚生局へ必要な申請を行います。


保険医療機関指定の「遡及指定」とは?

通常、保険医療機関指定には申請締切・指定日があります。

しかし一定のケースでは、

指定日を遡って取り扱う遡及指定

が認められることがあります。

診療所移転は、その代表例の一つです。


診療所移転なら必ず遡及指定できる?

いいえ。

関東信越厚生局は、遡及指定が認められる移転ケースとして、

保険医療機関が至近の距離に移転し、同日付で旧医療機関を廃止・新医療機関を開設し、患者が引き続き診療を受ける場合

を挙げています。

つまり、

単に、

「移転だから」

では足りません。


「至近の距離」とは何km?

関東信越厚生局は、

移転先が2km以内の場合を原則

として案内しています。

ただし非常に重要なのは、

2km以内なら自動的に遡及指定される

という意味ではありません。


なぜ「2km以内=必ずOK」ではない?

関東信越厚生局は、「至近の距離」について、

これまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内で、患者が引き続き診療を受けることが通常想定される場合

という考え方を示しています。

つまり、

距離だけでなく、

患者の診療継続性

が重要です。


2.1kmなら遡及指定は絶対無理?

そう単純ではありません。

「2km以内が原則」という表現であり、具体的な移転環境・生活圏等も含めて判断される可能性があります。

一方、

「2kmを少し超えているから大丈夫だろう」

と自己判断するのも危険です。

必ず移転前に管轄地方厚生局へ確認してください。


500メートルの移転なら必ず遡及指定?

こちらも必ずとは言えません。

近距離でも、

  • 診療が連続していない
  • 旧診療所廃止日と新診療所開設日がずれている
  • 患者継続性がない
  • 開設者が変わる

など、他の条件に問題があれば通常の指定になる可能性があります。


遡及指定の重要条件「同日付」

関東信越厚生局は、

同日付で新旧医療機関を開設・廃止した場合

を移転の遡及指定対象例としています。

例えば、

旧診療所:3月31日廃止

新診療所:4月1日開設

について、厚生局上どのように指定日を組むかは事前に確認する必要があります。

行政手続き上の日付を自己判断で設定しないでください。


患者が引き続き診療を受けていることも重要

遡及指定制度の趣旨は、

実質的に診療所が連続しているのに、行政手続き上だけ保険診療の空白を作らない

ことにあります。

したがって、

  • 患者層が継続する
  • 診療内容が継続する
  • 同一医療法人が運営する
  • 実質的な移転である

という事情が重要になります。


移転と同時に診療科を大きく変える場合は?

例えば、

旧診療所:内科

から、

新診療所:美容外科中心

のように事業内容が大きく変わる場合、

「単なる移転として患者が継続する」と評価できるかは慎重に確認する必要があります。

定款変更認可の事業計画にも影響します。


移転と同時にクリニック名を変えても遡及できる?

名称変更があることだけで一律に不可とは限りませんが、

  • 同一開設者
  • 患者継続性
  • 至近距離
  • 同一性

等を総合的に確認する必要があります。

事前に厚生局へ、

所在地変更+名称変更

であることを伝えて確認してください。


移転と同時に理事長が変わる場合

医療法人そのものは同じでも、

  • 理事長変更
  • 診療所移転

が同時に起きるケースがあります。

この場合、

理事長変更登記・役員変更届

と、

診療所移転・保険医療機関指定

を並行して進めます。

厚生局への申請書類では法人代表者の情報も関係するため、変更タイミングを整理してください。


移転と同時に法人が変わる場合は「単なる移転」ではない

例えば、

旧開設者:医療法人A

新開設者:医療法人B

となる場合です。

これは同一医療法人の診療所移転とは異なります。

事業譲渡・M&A等による開設者変更の手続きとして整理する必要があります。

遡及指定についても、開設者変更に関する別の要件を確認します。


保険医療機関指定の申請期限を確認する

遡及指定を利用できない場合、通常の新規指定スケジュールを前提にします。

地方厚生局では申請締切と指定日が決められているため、

移転日だけ先に決めない

ことが重要です。


遡及できないとどうなる?

例えば、

新診療所開設:4月1日

通常の保険医療機関指定:5月1日

となれば、

4月1日~4月30日に新所在地で通常の保険診療を行うことについて問題が生じます。

だからこそ、移転計画では、

厚生局へ最初に遡及指定の可否を確認

することが重要です。


移転後の施設基準はどうなる?

これも重要です。

保険医療機関コードが変更されるなどの場合、旧医療機関で届出していた施設基準について新しい医療機関でどのように取り扱うか確認します。

関東信越厚生局のFAQでは、遡及指定日以降も従前と同じ施設基準を算定する場合でも、改めて届出が必要となる旨を案内しています。

したがって、

「遡及指定が通ったから施設基準も全部自動継続」

とは考えないでください。


施設基準の届出時期にも注意

例えば、

  • 医療DX推進体制整備加算
  • 外来感染対策向上加算
  • 在宅療養支援診療所
  • 時間外対応加算
  • 歯科関係施設基準

など、現在算定している施設基準について、

新所在地でも要件を満たしているか

を確認します。

建物・設備要件が関係する施設基準では特に注意が必要です。


オンライン資格確認も移転対応が必要

保険医療機関の所在地や医療機関コード等が変わる場合、

  • オンライン資格確認
  • マイナ保険証
  • 電子証明書
  • 医療情報システム

の設定変更も必要になります。

システム会社へ早めに連絡してください。


電子カルテ・レセコン会社への連絡

移転では、

  • 保険医療機関コード
  • 所在地
  • 電話番号
  • 医療機関名称

等が変更する可能性があります。

レセプト請求に直結するため、行政手続きとシステム変更のタイミングを一致させます。


X線設備がある場合

移転先にX線装置、CT等を設置する場合、

診療所開設手続きとは別にX線関係の届出・設備基準を確認します。

旧診療所の装置を移設する場合でも、

「同じ機械だから何も手続き不要」

とは限りません。


医療機器リースも確認する

医療機器をリースしている場合、

  • 設置場所変更
  • リース会社承諾
  • 保険
  • 保守契約

を確認します。

MRI、CT等の大型設備では搬出入計画にも時間がかかります。


公費負担医療も確認する

診療内容によっては、

  • 生活保護法指定医療機関
  • 難病
  • 自立支援医療
  • 労災
  • その他公費

などの指定・届出が関係します。

保険医療機関指定だけでなく、現在利用している公費制度を一覧化してください。


生活保護指定などは自動継続?

制度・自治体によって異なります。

移転に伴う変更・再申請等を確認してください。

特に開院後に、

「生活保護患者の請求ができない」

と判明しないよう注意します。


労災指定も確認する

労災保険指定医療機関の場合も、移転に伴う手続きを確認します。

医療法人の行政手続きとは窓口が別です。


医療情報ネットも変更する

移転後は、

  • 所在地
  • 電話番号
  • 診療時間
  • 診療科

等の情報が正しく表示されるよう変更します。

Googleマップやホームページだけ直して終わりではありません。


患者への移転案内はいつ始める?

行政スケジュールに一定の見通しが立ってから、

  • 院内掲示
  • ホームページ
  • SNS
  • 郵送
  • 予約患者への案内

を行います。

認可・指定の見通しがない段階で確定日を大々的に告知すると、延期時の影響が大きくなります。


医療広告にも注意

新所在地の広告、看板、Webサイト等は医療広告ガイドライン等に適合させる必要があります。

美容クリニックなど自由診療の場合は特に、

  • 治療内容
  • 費用
  • リスク・副作用

等の表示も確認してください。


移転前の診療所はいつまで診療できる?

旧診療所の廃止日と新診療所の開設日、保険指定日を一致させて計画します。

例えば、

金曜日まで旧院で診療

土日で引越し

月曜日から新院

という計画は実務上よくありますが、行政手続き上の日付が整合している必要があります。


移転で休診日を作るべき?

業務上、数日の休診を設けて、

  • 医療機器移設
  • 電子カルテ設定
  • 薬品移送
  • カルテ移送
  • 電話・ネットワーク
  • 職員研修

を行う方法があります。

ただし保険指定・廃止・開設の日付との整合は別途確認してください。


カルテはどうする?

医療法人自体が同じで診療所を移転する場合でも、診療録等の適切な管理・移送が必要です。

患者情報を紛失・漏えいしないよう、移転時の個人情報管理を徹底してください。


医薬品の移転にも注意

医薬品について、

  • 保管
  • 温度管理
  • 麻薬
  • 向精神薬
  • 毒薬・劇薬

等がある場合には、それぞれ関係する法令・届出を確認します。


麻薬施用者免許等も確認

麻薬を扱う医療機関では、所在地変更に伴って免許・届出関係を確認する必要があります。

診療所移転には多数の周辺手続きがあるため、対象制度を洗い出すことが重要です。


美容クリニック移転で注意すること

美容クリニックの場合、

  • 高額医療機器
  • レーザー
  • 麻酔設備
  • 自由診療広告
  • 高額テナント
  • 内装費
  • MS法人契約

などの論点があります。

特に高額テナントでは、定款変更認可・保険指定が遅れた場合の空家賃リスクが大きくなります。


歯科医院移転で注意すること

歯科診療所では、

  • 歯科ユニット
  • パノラマ
  • CT
  • X線
  • 技工設備
  • 歯科施設基準

等を確認します。

大型設備の移転スケジュールと保健所確認を早めに行ってください。


同じ医療法人で分院を移転する場合

本院ではなく分院だけを移転する場合でも基本的な考え方は同じです。

定款に記載されている分院所在地を変更し、

  • 定款変更認可
  • 保健所
  • 厚生局
  • 施設基準

等を行います。


本院を移転すると主たる事務所も変わる?

必ずしもそうではありません。

本院所在地と法人の主たる事務所が同じ場所になっている医療法人は多いですが、

診療所所在地と法人事務所は別概念

です。

本院移転に伴い主たる事務所も変更するのかを確認します。


主たる事務所も同時に移転する場合

大阪府では、事務所と診療所等を同時に移転する場合は、単なる定款変更届ではなく、定款変更認可申請が必要と案内しています。

法人登記も含めてスケジュールを組みます。


他府県・他県へ移転する場合

例えば、

東京都→神奈川県

大阪府→兵庫県

のように都道府県をまたいで診療所を移転する場合は、所管行政庁との調整がさらに重要になります。

医療法人の主たる事務所、他の診療所の所在地等によって手続き関係が変わります。

厚生労働省も、複数都道府県に病院等を開設する医療法人の定款変更認可等について手続きルールを示しています。


診療所移転でよくある失敗① 物件契約後に定款変更が必要と知る

非常に多い失敗です。

定款変更だけで約3か月かかる自治体があります。


よくある失敗② 近距離だから保健所の変更届だけと思う

医療法人の定款変更と、保健所の診療所手続きは別です。


よくある失敗③ 2km以内なら必ず遡及指定できると思う

2km以内はあくまで関東信越厚生局が示す原則的な距離目安です。

患者の診療継続性等も確認されます。


よくある失敗④ 遡及指定を確認せず開院日を決める

通常指定しかできなければ、保険診療開始日が予定より遅れる可能性があります。


よくある失敗⑤ 施設基準は自動継続と思う

遡及指定の場合でも、従前と同じ施設基準を算定するには改めて届出が必要となる場合があります。


よくある失敗⑥ 内装完成後に保健所へ相談する

設計変更・工事やり直しにつながります。


よくある失敗⑦ 法人事務所移転と診療所移転を混同する

必要な定款手続きが異なる可能性があります。


よくある失敗⑧ 管理医師変更を同時に行うのに役員変更を忘れる

新管理医師は原則として理事就任も確認してください。


よくある失敗⑨ 電子カルテ・オンライン資格確認の切替を忘れる

保険診療開始日にシステムが間に合わない可能性があります。


よくある失敗⑩ 公費・労災等を忘れる

保険医療機関指定だけではありません。

現在受けている指定・届出を一覧化してください。


医療法人の診療所移転FAQ

Q1. 医療法人の診療所を移転すると定款変更が必要ですか?

原則として必要です。

東京都も診療所の移転等では事前に定款変更認可を受けるよう案内しています。


Q2. 同じ区内でも必要ですか?

定款上の診療所所在地が変わるなら、原則として定款変更を確認します。

距離だけでは判断しません。


Q3. 100メートル先でも必要ですか?

同様です。

近距離であることは保険医療機関指定の遡及判断には関係しますが、定款変更とは別問題です。


Q4. 同じビル内の階数変更なら?

現行定款の住所記載方法、保健所の取扱いによって確認が必要です。


Q5. 定款変更には何か月かかりますか?

東京都・大阪府では約3か月が一つの目安です。


Q6. 物件契約後に申請しても間に合いますか?

開院時期によります。

契約前から行政スケジュールを確認することをおすすめします。


Q7. 移転先でも診療所開設許可が必要ですか?

医療法人が新所在地で診療所を開設するため、原則として所在地を管轄する保健所で必要な開設手続きを確認します。


Q8. 旧診療所は廃止する必要がありますか?

移転の手続きとして旧診療所の廃止と新診療所の開設を組み合わせるケースがあります。

具体的な日付・様式は保健所へ確認してください。


Q9. 管理医師は同じ人で大丈夫ですか?

同じ医師・歯科医師が引き続き管理者になることは可能です。


Q10. 移転と同時に院長を変えられますか?

可能ですが、管理者変更・理事変更等も一体として整理してください。


Q11. 保険医療機関指定は移転先へ自動的に引き継がれますか?

自動的に引き継がれると考えず、地方厚生局への必要な申請を確認してください。


Q12. 移転なら保険医療機関指定を遡及できますか?

一定の要件を満たす場合に可能性があります。

関東信越厚生局は、至近距離への移転、同日付の開設・廃止、患者の診療継続等を条件として案内しています。


Q13. 何km以内なら遡及できますか?

関東信越厚生局では原則として2km以内を「至近の距離」の目安としています。


Q14. 2km以内なら必ず遡及できますか?

いいえ。

患者が引き続き診療を受けることが通常想定される生活圏内かどうかなども考慮されます。


Q15. 2kmを少し超えたら絶対に遡及できませんか?

「2km以内が原則」とされているため、一律に距離だけで断定せず、管轄厚生局へ個別に確認してください。


Q16. 移転と同時にクリニック名を変えても遡及できますか?

名称変更を含む場合は、同一性や患者継続性等を含めて厚生局へ事前確認してください。


Q17. 移転と同時に法人名を変更できますか?

可能ですが、法人名称変更も定款変更・登記等が関係するため、移転単独より手続きが増えます。


Q18. 移転後も施設基準は自動的に継続しますか?

自動継続と決めつけないでください。

関東信越厚生局では、遡及指定後に従前と同様の施設基準を算定する場合も改めて届出が必要と案内しています。


Q19. オンライン資格確認も変更が必要ですか?

医療機関コード・所在地等に応じた変更を確認してください。

システム事業者へ早めに連絡することをおすすめします。


Q20. X線装置をそのまま新院へ持っていけますか?

設備自体の移設可否だけでなく、新所在地でのX線関係届出・構造設備基準等を確認してください。


Q21. 生活保護や労災指定も手続きが必要ですか?

現在利用している公費・指定制度ごとに移転時の手続きを確認する必要があります。


Q22. 他県へ移転できますか?

可能ですが、医療法人所管、定款変更、移転先保健所、地方厚生局等の調整が複雑になります。


Q23. 移転手続きは行政書士へ一括で依頼できますか?

医療法人の定款変更認可、診療所開設・廃止、保険医療機関指定等の行政手続きについては、医療法人・医療手続きを取り扱う行政書士へ相談できます。

法人登記は司法書士、税務は税理士、賃貸借契約等の法的助言は弁護士等と連携して進めます。


移転前チェックリスト

医療法人の診療所移転では、最低限次を確認してください。

  1. 現行定款
  2. 診療所所在地の記載
  3. 法人事務所所在地
  4. 移転先物件
  5. 医療用途可否
  6. 保健所事前相談
  7. 平面図
  8. 内装工事
  9. 管理医師
  10. 理事構成
  11. 社員総会
  12. 定款変更認可
  13. 変更登記
  14. 旧診療所廃止
  15. 新診療所開設
  16. 保険医療機関指定
  17. 遡及指定可否
  18. 旧・新診療所間距離
  19. 患者継続性
  20. 施設基準
  21. オンライン資格確認
  22. 電子カルテ・レセコン
  23. X線関係
  24. 生活保護等公費
  25. 労災
  26. 麻薬等免許
  27. 医療情報ネット
  28. ホームページ・広告
  29. 患者案内
  30. 移転日・診療開始日

医療法人の診療所移転を検討している先生へ

診療所移転で最も重要なのは、

「引越し日を決めること」ではありません。

本当に決めるべきなのは、

いつまで旧診療所で保険診療を行い、いつから新診療所で保険診療を開始するか

です。

そのためには、

定款変更認可

保健所

保険医療機関指定

施設基準

を一本のスケジュールとして設計する必要があります。

特に近距離移転の場合、

保険医療機関指定の遡及が使えるかどうか

によって開院スケジュールが大きく変わります。

「2km以内だから大丈夫」

と自己判断せず、早い段階で地方厚生局へ確認することが重要です。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

現行定款確認
→ 移転スケジュール設計
→ 保健所事前相談
→ 社員総会議事録
→ 定款変更認可
→ 司法書士との登記連携
→ 旧診療所廃止
→ 新診療所開設
→ 保険医療機関指定
→ 遡及指定確認
→ 施設基準

まで一連の手続きをサポートしています。

「クリニックを移転したい」

「近距離移転なので遡及指定を使いたい」

「定款変更が間に合うか知りたい」

「4月1日から新院で保険診療を開始したい」

「移転と同時に院長を変更したい」

「別の都道府県へ移転したい」

という先生は、物件契約・開院日確定前の段階からご相談ください。

【医療法人の診療所移転について相談する】


まとめ|診療所移転は「定款・保健所・厚生局」を同時に設計する

最後に重要なポイントを整理します。

  1. 医療法人の診療所移転は単なる住所変更ではない
  2. 定款上の診療所所在地変更を確認する
  3. 原則として定款変更認可が必要
  4. 同じ区内・近距離でも定款変更が関係する
  5. 法人事務所移転と診療所移転は別
  6. 東京都では移転前の定款変更認可・法人登記が必要
  7. 東京都・大阪府では定款変更に約3か月が目安
  8. 開院日から逆算して6か月程度前から検討する
  9. 物件契約前に行政スケジュールを確認する
  10. 内装工事前に保健所へ相談する
  11. 移転先で新たな診療所開設手続きを確認する
  12. 旧診療所の廃止手続きを確認する
  13. 管理医師を確認する
  14. 管理医師変更時は理事変更も確認する
  15. 保険医療機関指定は自動的に移らない
  16. 一定の近距離移転では遡及指定が検討できる
  17. 関東信越厚生局では至近距離を原則2km以内としている
  18. 2km以内でも自動的に遡及指定されるわけではない
  19. 患者の診療継続性が重要
  20. 新旧医療機関の開設・廃止日を整合させる
  21. 遡及指定不可なら通常指定スケジュールで計画する
  22. 施設基準は移転後の届出を確認する
  23. オンライン資格確認・電子カルテも変更する
  24. X線・公費・労災等も確認する
  25. 開院日を先に広告しない
  26. 他県移転はより早く行政調整する
  27. 移転と法人名・診療所名変更を同時に行う場合は手続きが増える
  28. M&A・理事長変更との同時実施は全体スケジュールを設計する
  29. 旧院から新院へ保険診療を途切れさせないことを最優先に考える
  30. 移転は「定款・保健所・厚生局」を一体で管理する

医療法人の診療所移転で最も重要なのは、

「新しい物件がいつ完成するか」

ではありません。

「新しい場所で、いつから適法に診療を開始し、いつから保険診療を請求できるか」

です。

物件、定款変更、保健所、保険医療機関指定、施設基準を開院予定日から逆算して設計することが、診療所移転を成功させる最大のポイントです。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、東京都・大阪府の医療法人定款変更関係資料、地方厚生局の保険医療機関指定関係資料等を基に、2026年8月時点の制度・行政実務を整理しています。

東京都は、診療所の新規開設・移転等に際して、事前に医療法人の定款変更認可を受け、必要な法人登記を済ませる必要があると案内しており、変更認可には約3か月を要するとしています。

大阪府も、定款変更認可申請には仮申請約2~2.5か月、本申請約2週間、合計約3か月を要すると案内しています。

また大阪府では、医療法人の事務所所在地のみの変更と、診療所等を伴う移転を区別し、事務所と診療所等を同時に移転する場合には定款変更認可申請が必要としています。

保険医療機関指定について、関東信越厚生局は、保険医療機関が至近距離へ移転し、新旧医療機関を同日付で開設・廃止し、患者が引き続き診療を受ける場合を遡及指定対象例としています。また至近距離の目安として、原則2km以内を示しています。

施設基準についても、遡及指定後に従前と同様の施設基準を算定する場合に、改めて届出が必要となる場合があるため注意が必要です。

※診療所移転に伴う定款変更、開設・廃止、保険医療機関指定、遡及指定、施設基準等の具体的な取扱いは、所管都道府県、保健所、地方厚生局及び個別案件によって異なります。実際の移転では必ず各行政庁の最新情報を確認してください。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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