【2026年最新版】医療法人の社員変更完全ガイド|入社・退社・社員名簿・親族承継・M&Aまで

「医療法人の社員を変更したいのですが、どのような手続きが必要ですか?」

「医療法人の社員とは、株式会社の株主のような人ですか?」

「社員を父から息子へ変更すれば医療法人を承継できますか?」

「医療法人M&Aで社員を全員入れ替えることはできますか?」

「社員変更は法務局で登記するのでしょうか?」

「理事を辞めたら社員も自動的に退社しますか?」

医療法人の運営、親族承継、M&Aで非常に重要になるのが**「社員」**です。

まず最初に押さえていただきたいのは、

医療法人の「社員」は、一般企業でいう従業員ではありません。

社団医療法人の社員とは、社員総会を構成し、医療法人の重要事項について議決権を持つ法人の構成員です。

厚生労働省は、社団医療法人について社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えることを求めています。また理事・監事は社員総会で選任する仕組みになっています。

つまり医療法人では、

誰が社員なのか

が、

誰を理事・監事に選ぶことができるのか

ひいては、

誰が医療法人の経営をコントロールするのか

に大きく影響します。

特に医療法人M&Aでは、

理事長を変更しただけでは経営権移転が完成したとは限りません。

旧オーナー側が社員として残っていれば、社員総会の意思決定権限が旧体制側に残る可能性があるからです。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • 医療法人の社員とは何か
  • 従業員との違い
  • 社員と理事の違い
  • 社員と出資者・基金拠出者の違い
  • 社員の議決権
  • 社員は何人必要か
  • 社員になるための資格
  • 社員の入社手続き
  • 社員の退社手続き
  • 社員名簿
  • 社員変更と登記
  • 社員変更と役員変更
  • 親から子への事業承継
  • 医療法人M&Aでの社員総入替え
  • 持分あり医療法人の場合
  • 基金拠出型医療法人の場合
  • 社員死亡時の対応
  • よくある失敗

まで、2026年時点の制度を踏まえて詳しく解説します。


目次

医療法人の社員変更について相談したい先生へ

社員変更で最も重要なのは、

「退社届・入社届を作れば終わり」

と考えないことです。

例えば、父親が理事長を務める医療法人を医師である息子へ承継するとします。

現在、

社員:父・母・第三者A
理事長:父

となっている状態から、

理事長だけ息子へ変更しても、

社員総会は、

父・母・A

のままです。

これでは、

代表者は息子

なのに、

社員総会は旧世代

という状態になります。

親族承継やM&Aでは、

社員

理事

理事長

持分または基金

を一体として確認することが重要です。

【医療法人の社員変更・承継について相談する】


医療法人の「社員」とは?

医療法人の社員とは、一般企業でいう従業員ではありません。

社団医療法人における、

法人の構成員

です。

社員は社員総会へ出席し、医療法人の重要事項について議決権を行使します。

厚生労働省の医療法人制度では、社員総会、理事、理事会、監事などの機関が整備されており、社員名簿を備え置くことも求められています。


「社員=従業員」ではない

例えば、

医療法人○○会に、

  • 看護師20名
  • 医療事務10名
  • 医師5名

が勤務していたとしても、

この35名全員が医療法人法上の「社員」になるわけではありません。

従業員は、

雇用契約等により医療法人で働く人

です。

一方、社員は、

社員総会を構成する法人のメンバー

です。

まったく別の制度です。

医療法人の社員は、一般企業でいう従業員ではありません。

また、社員と理事・監事もそれぞれ役割が異なります。社員変更を正しく理解するためには、まず医療法人の機関構成を整理することが重要です。


社員・理事・監事それぞれの役割については「医療法人の社員・理事・監事の違い完全ガイド」で詳しく解説しています。


社員と理事は何が違う?

これも非常に重要です。

区分主な役割
社員社員総会で重要事項を決定
理事医療法人の業務執行を担う
理事長医療法人を代表
監事法人の業務・財産状況等を監査

つまり、

社員=意思決定側

理事=業務執行側

と考えると分かりやすいでしょう。

理事・監事については、社員総会で選任する仕組みが基本とされています。


社員と理事を兼ねることはできる?

できます。

実際、多くの医療法人では、

社員兼理事

という人物が存在します。

例えば、

父:社員・理事長
母:社員・理事
長男:社員・理事

という構成です。

しかし、

社員だから必ず理事にならなければならない

わけではありません。

逆に、

理事だから必ず社員でなければならない

という単純な関係でもありません。

社員資格と役員資格は別々に考えます。


社員と出資者は同じ?

必ずしも同じではありません。

これは特に持分あり医療法人で重要です。

例えば、

A医師:出資持分100%

であっても、

社員が、

A
B
C

の3名なら、社員総会はこの3人で構成されます。

出資持分の有無・金額と社員の議決権は別の問題です。

厚生労働省の制度では、社員総会の議決権は資本多数決ではなく、原則として社員単位で考える仕組みとなっています。医療法人の定款例でも社員1人につき1個の議決権を持つ構造が示されています。


社員と基金拠出者は同じ?

これも違います。

基金拠出型医療法人の場合、

基金を出した人=社員

とは限りません。

例えば、

A医師:基金1,000万円
B:基金0円
C:基金0円

でも、

A・B・Cが社員なら、それぞれが社員総会の構成員になります。

つまり、

基金=財産関係

社員=ガバナンス

です。


社員の議決権は出資額に比例する?

原則として比例しません。

社団医療法人の定款例では、

社員1人につき1個の議決権

を有する構造が示されています。

例えば、

A:出資9,000万円
B:出資500万円
C:出資500万円

でも、3人が社員なら、

A:1票
B:1票
C:1票

という考え方になります。


なぜ社員が医療法人の「経営権」に重要なのか?

社員総会には、医療法人運営における重要事項についての権限があります。

特に重要なのが、

理事・監事の選任

です。

厚生労働省の医療法人の機関に関する通知でも、理事・監事は社員総会で選任する仕組みが示されています。

そのため、

誰が社員総会を構成するか

が、

医療法人のガバナンスを考える上で極めて重要になります。


理事長だけ変更しても経営権移転が不十分な場合がある

例えば、

社員:



叔父

の3名で、

理事長だけ、

父→息子

へ変更したとします。

この場合、

代表者は息子ですが、

社員総会は依然として、

父・母・叔父

です。

社員総会が理事選任等の重要な意思決定を行う以上、

親族承継やM&Aでは理事長だけでなく社員構成まで変更する必要がある場合があります。


医療法人の社員は何人必要?

医療法だけを見て全国一律に、

「必ず3人以上」

と単純化することには注意が必要です。

実際には、医療法人の現行定款や行政庁の運用を確認します。

多くの社団医療法人では複数名の社員を置いて運営されています。

東京都の2026年版医療法人設立手引でも、設立申請書類として役員及び社員の名簿が用意されています。

したがって、社員変更ではまず、

現行定款に社員資格・人数についてどのように定められているか

を確認してください。


社員になるために医師免許は必要?

社員であること自体について、

必ず医師・歯科医師でなければならない

という制度ではありません。

そのため、

  • 配偶者
  • 成人した子ども
  • 医師でない親族
  • 第三者

が社員になることも制度上考えられます。

ただし、誰でも形式的に社員へ置けばよいという話ではありません。


社員は「名義貸し」ではいけない

社員は社員総会へ参加し、医療法人の重要事項について自ら判断する立場です。

そのため、

「名前だけ貸してください」

という社員構成は望ましくありません。

特にM&Aや一般社団法人・MS法人等との関係がある場合には、

  • 誰が実質的に意思決定しているか
  • 営利法人から指示を受けていないか
  • 社員本人に意思決定能力・意思があるか

という点が重要です。


親族だけで社員を構成できる?

親族が社員になること自体が直ちに禁止される制度ではありません。

例えば、



息子

の3人が社員となっている医療法人は考えられます。

ただし、監事については独立性等の別の問題があるため、社員と役員の構成を一緒に考えないことが重要です。

親から子への医療法人承継では、後継者を社員にするだけでは承継は完了しません。

理事・理事長・管理医師、持分あり医療法人であれば出資持分まで含めて全体を設計する必要があります。


親族承継全体の進め方については「医療法人の親族承継完全ガイド」で詳しく解説しています。


社員の入社はどうやって行う?

ここから実務です。

社員の入社方法は、

現行定款の規定

に従います。

したがって最初に確認するのは、

定款の「社員」条項

です。

定款に、

  • 社員資格
  • 入社方法
  • 承認機関

などが定められています。


「入社届」を出せば自動的に社員になる?

必ずしもそうではありません。

現行定款で、

社員総会の承認

等が必要とされている場合には、その手続きを経る必要があります。

したがって、

新社員候補が、

「今日から社員になります」

と宣言するだけで社員になるわけではありません。


社員入社の一般的な流れ

案件によりますが、例えば、

STEP1 現行定款を確認

STEP2 社員候補を決定

STEP3 入社申出・必要書類を準備

STEP4 定款所定の承認手続き

STEP5 社員資格取得

STEP6 社員名簿更新

という流れになります。

具体的な承認方法は定款を確認してください。


社員名簿とは?

社団医療法人は社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならないと厚生労働省が示しています。

つまり社員変更の都度、

現在誰が社員なのか

が分かる社員名簿を更新する必要があります。


社員名簿には何を書く?

一般的には、

  • 氏名
  • 住所
  • その他法人管理上必要な事項

等を記録します。

実際に使用する様式は所管行政庁や法人の管理方法に応じて確認してください。

東京都でも、医療法人関係様式として役員及び社員の名簿を公開しています。


社員変更は法務局で登記する?

通常、社員個人は医療法人の登記事項ではありません。

したがって、

A社員→B社員

という変更について、

その都度社員名を法務局で変更登記する仕組みではありません。

これは株式会社の役員変更などと大きく異なる点です。


登記しないなら社員変更は重要ではない?

むしろ逆です。

登記簿に社員が載らないため、

医療法人M&Aでは社員名簿を確認しないと、実際に誰が法人の意思決定権限を持っているのか分からない

ことがあります。

つまり、

登記事項証明書だけでは医療法人のガバナンスを完全には確認できません。


医療法人M&Aでは社員名簿が非常に重要

買主側がDDを行う場合、最低限、

  • 現行定款
  • 社員名簿
  • 過去の社員総会議事録
  • 役員名簿
  • 登記事項証明書

を照合します。

例えば登記簿上、

理事長:A医師

となっていても、

社員が、

A
B
C

なのか、

D
E
F

なのかは登記簿だけでは分かりません。

第三者M&Aでは、社員変更が医療法人のガバナンス移行における重要な手続きになります。

ただし、社員だけを入れ替えるのではなく、理事・監事・理事長等の変更と連動させる必要があります。


医療法人M&A全体の承継スキームについては「医療法人の承継・M&A完全ガイド」で詳しく解説しています。


社員の退社はどうする?

退社についても現行定款を確認します。

一般的には、

  • 本人の退社意思
  • 退社届
  • 定款上必要な手続き
  • 社員名簿変更

などを行います。


社員はいつでも自由に退社できる?

一律には言えません。

定款の規定や具体的事情を確認する必要があります。

特に持分あり医療法人の場合、

社員退社と出資持分払戻請求

が関係するケースがあるため、非常に慎重に扱う必要があります。


持分あり医療法人で社員が退社するとどうなる?

持分あり医療法人では、定款内容によって社員退社時に出資持分払戻請求権が問題になることがあります。

したがって、

「M&Aだから社員3人全員に退社届を書いてもらえばいい」

と単純に進めてはいけません。

退社によって、

多額の持分払戻請求が発生しないか

を確認する必要があります。


社員と持分は別なのに、なぜ退社時に持分が問題になる?

社員の地位と持分は別の法的関係ですが、持分あり医療法人の定款には、

社員資格を喪失した場合の持分払戻し

について規定が置かれていることがあります。

そのため、

社員変更の行政・法人手続き

と、

出資持分という財産問題

を同時に確認する必要があります。


基金拠出型医療法人なら退社時に基金は返る?

社員退社と基金返還は別問題です。

例えば、

A医師が、

  • 社員
  • 理事長
  • 基金1,000万円の拠出者

だったとしても、

A医師が社員を退社しただけで基金1,000万円が自動返還されるわけではありません。

基金返還には別の法令上の条件があります。


社員が死亡した場合は?

社員本人が死亡した場合には、定款に従って社員資格の扱いを確認し、社員名簿を変更します。

ここで重要なのは、

社員の地位そのものが、相続財産として当然に相続人へ移るとは限らない

という点です。

一方、持分あり医療法人の出資持分や基金返還請求権等については財産上の相続問題が別途生じる可能性があります。


「父が社員だったから息子が自動的に社員になる」は危険

親族承継ではよくある誤解です。

父が亡くなったからといって、

父の社員としての地位を息子が当然に相続する

と決めつけてはいけません。

息子を社員にする場合には、

定款に基づく新規入社手続き

を確認します。


親から子へ医療法人を承継する場合の社員変更

例えば、

承継前

社員:父・母・叔父
理事長:父

から、

承継後

社員:息子・妻・第三者
理事長:息子

へ変更するとします。

この場合、

理事長変更だけでなく、

社員構成そのものを新世代へ移す

必要があります。


親族承継の基本的な流れ

一例として、

現行定款確認

現在の社員確定

新社員候補決定

新社員入社

社員総会

新理事選任

新理事長選出

旧社員退社

社員名簿更新

という形を検討します。

具体的な順番は定款・現在の人数等によって異なります。


旧理事長を社員として残してもいい?

制度上考えられるケースはあります。

例えば、

理事長:父→息子

と変更した後も、

父を社員として一定期間残す構成です。

ただし、

実際に誰が医療法人の意思決定を行うのか

を考える必要があります。

完全な世代交代を目指すなら、旧世代社員をいつ退社させるか検討してください。


医療法人M&Aでは社員を全員変更できる?

定款に基づき適切な手続きを行えば、新体制へ変更することは可能です。

例えば、

旧体制

社員:A・B・C

新体制

社員:D・E・F

という変更です。

しかし、重要なのは変更する順番です。

M&A等で社員だけでなく理事・監事まで大幅に入れ替える場合には、各手続きを別々に考えるのではなく、クロージング時の順序まで含めて設計することが重要です。


具体的な総入替えの流れについては「医療法人の社員・理事を総入替えする方法」で詳しく解説しています。


旧社員全員を先に退社させてはいけない

これはM&Aで特に注意すべき点です。

例えば社員A・B・Cが全員先に退社して、

社員0人

となった後、

「D・E・Fを新社員にします」

と進めると、

誰が法人として新社員の加入手続きを成立させるのかという問題が生じます。

そのため、

法人の意思決定機関に空白を生じさせない

ことが極めて重要です。


M&Aでの社員変更モデル

一例として、

STEP1 旧社員A・B・Cが在籍

STEP2 新社員D・E・Fの加入手続きを行う

STEP3 新旧社員が一時的に併存

STEP4 必要な社員総会を開催

STEP5 新理事・監事を選任

STEP6 新理事長を選出

STEP7 旧社員A・B・C退社

STEP8 社員名簿をD・E・Fへ更新

という設計を検討します。

ただし、これはあくまで一例です。

現行定款の社員入退社方法・定足数等に合わせて設計してください。


新旧社員を一時的に6名にしてもいい?

定款や社員資格等に問題がなければ、一時的な併存を検討するケースがあります。

ただし、

  • 社員総会定足数
  • 議決権
  • 利害関係
  • M&A契約

等にも影響するため、単純に人数だけ増やせばよいわけではありません。


「同じ日に社員全員を変更」できる?

同一日をクロージング日として新旧社員の入退社を連動させることは検討できます。

ただし、

同じ日だから順番は関係ない

という意味ではありません。

例えば、

新社員がまだ加入していない時点で、

「新社員だけの社員総会」

を開催したことにはできません。

書類上・法的な前後関係を整理してください。


社員変更と理事変更はどちらが先?

全国一律の唯一の順序があるわけではありません。

しかしM&A・承継では、

誰が社員総会を構成し、誰が新理事を選任するのか

を明確にする必要があります。

厚生労働省は理事・監事を社員総会で選任する仕組みを示しているため、社員構成と役員変更の順番には注意が必要です。


社員変更と理事長変更

新理事長候補が現在理事でなければ、

社員総会で理事へ選任

した後、

理事会で理事長を選出

するという流れになります。

つまり、

社員変更は理事長変更とも密接に関係しています。


社員変更と定款変更

社員個人の変更だけなら、通常は定款本文を書き換える必要はありません。

したがって、

社員A→社員B

という変更だけで定款変更認可を行うものではないのが一般的です。

ただし、社員資格そのものに関する定款条項を変更する場合などは別です。


社員変更を都道府県へ届け出る必要はある?

社員個人の入退社について、役員変更のような独立した全国一律の「社員変更登記」があるわけではありません。

一方で、行政手続きによっては社員名簿の提出を求められることがあります。

例えば東京都では設立申請等の様式として役員・社員名簿が用意されています。

そのため社員名簿は常に最新にしておく必要があります。


定款変更・分院開設時に社員名簿を見られることもある

社員構成は普段登記簿に表示されません。

しかし、

  • 定款変更
  • 分院開設
  • 合併
  • 分割
  • M&A後の各種手続き

などで社員構成が確認される場合があります。

東京都の2026年の各種医療法人認可申請資料でも、役員名簿・社員関係資料が関連書類として扱われています。


社員総会は誰が招集する?

通常は現行定款及び医療法のルールに基づいて招集します。

社員総会では、

  • 日時
  • 場所
  • 議題
  • 出席社員
  • 議決結果

等を適切に記録します。

東京都の2026年版医療法人運営手引でも、社員総会・理事会議事録について、法人内で実際に意思決定済みの内容であることが留意点として示されています。


M&A用に後から架空の社員総会議事録を作ってはいけない

当然ですが、

実際には開催・決議していない社員総会について、

「書類だけ整えればいい」

ということではありません。

東京都も2026年版運営手引で、社員総会・理事会議事録について法人内で実際に意思決定済みであることを明示的な留意点としています。

医療法人M&Aではクロージング前から議事日程を設計することが重要です。


社員総会の議決権は1人1票

医療法人定款例では、

社員は社員総会において1個の議決権

を有する構造です。

このため、

父が出資持分90%、

母が5%、

息子が5%、

でも全員が社員なら原則1票ずつです。


多数の持分を持つ理事長でも社員総会では1票?

原則、その理解になります。

これが株式会社M&Aとの大きな違いです。

株式会社では株式保有割合が経営権に直結することが多いですが、医療法人では、

持分割合

と、

社員総会議決権

が一致するとは限りません。


社員3人のうち2人が対立したら?

例えば、

社員:



息子

で、

父と息子が対立した場合などです。

社員総会での意思決定は、定款及び議案ごとの法定要件に従います。

つまり社員構成を誰にするかは、

単なる形式上の名簿作りではなく、将来のガバナンス設計

そのものです。


「仲の良い友人」を社員にすればいい?

慎重に検討してください。

設立時には関係が良くても、10年・20年後には、

  • 人間関係悪化
  • 相続
  • 離婚
  • M&A
  • 法人方針対立

などが起こる可能性があります。

社員は重要な議決権を持つため、

長期的な法人運営を考えて選ぶ

ことが重要です。


税理士を社員にしてもいい?

資格だけを理由に一律不可とは言えません。

ただし、

  • 顧問税理士としての立場
  • 社員としての意思決定
  • 監事との兼務
  • 利害関係

などを整理する必要があります。

特に監事は独立性が重要なので、社員・理事・監事の役割を混同しないよう注意してください。


MS法人関係者を社員にしていい?

これも慎重に検討すべきテーマです。

社員は医療法人の重要意思決定に関与します。

そのため、

医療法人と大きな取引を行う株式会社の代表者・役員等が社員となり、実質的に医療法人を支配していないか

という点が問題になる可能性があります。

特に美容クリニックやM&A案件では、人的関係・資金関係・業務委託関係まで整理してください。


社員変更でよくある失敗① 社員=従業員だと思う

医療法人制度上の社員は従業員ではありません。

社員総会を構成する重要な法人構成員です。


よくある失敗② 理事と社員は同じだと思う

別です。

理事から退任しても社員として残るケースもあります。

逆に社員でない理事も制度上考えられます。


よくある失敗③ 理事長変更だけで承継完了と思う

親族承継・M&Aでは社員構成まで確認してください。


よくある失敗④ 社員変更を登記簿だけで確認する

社員は通常登記事項ではありません。

社員名簿・社員総会議事録を確認します。


よくある失敗⑤ 旧社員をM&Aで全員先に退社させる

社員総会機能に空白が生じる可能性があります。

新旧体制を適切に橋渡ししてください。


よくある失敗⑥ 社員入社方法を定款で確認しない

社員資格・入社方法は現行定款を確認します。

過去の別法人の書式をそのまま流用しないでください。


よくある失敗⑦ 社員名簿を更新していない

厚生労働省は社員変更の都度、社員名簿へ必要な変更を加えることを求めています。


よくある失敗⑧ 社員死亡後も名簿に残っている

社員資格・相続関係を確認し、適切に社員名簿を更新してください。


よくある失敗⑨ 持分あり医療法人の社員退社を簡単に行う

退社によって出資持分払戻請求の問題が発生する可能性があります。

持分を必ず確認してください。


よくある失敗⑩ 基金拠出者の退社=基金返還と思う

基金と社員資格は別です。

基金返還には別の条件があります。


よくある失敗⑪ 社員全員を親族にして将来の対立を考えない

社員構成は将来の事業承継まで考えて決定してください。


よくある失敗⑫ M&A仲介会社だけで社員変更の順番を決める

医療法人の社員・役員変更は通常の株式会社株式譲渡と異なります。

現行定款と医療法人制度を確認できる専門家を含めてクロージングを設計することをおすすめします。


医療法人の社員変更FAQ

Q1. 医療法人の社員とは従業員ですか?

違います。

社団医療法人の社員は、社員総会を構成する法人の構成員です。


Q2. 医療法人の社員は株主ですか?

株式会社の株主とは異なります。

持分あり医療法人でも、出資持分と社員資格は別の関係です。


Q3. 社員には議決権がありますか?

はい。

医療法人定款例では社員1人につき1個の議決権を持つ構造が示されています。


Q4. 出資持分90%なら議決権も90%ですか?

原則としてそうではありません。

社員総会では資本多数決ではなく、社員単位の議決権となります。


Q5. 社員は医師でなければなりませんか?

社員であること自体について、すべての社員に医師・歯科医師資格が必要という制度ではありません。


Q6. 配偶者を社員にできますか?

制度上検討可能です。

ただし定款の社員資格・承認手続きを確認してください。


Q7. 子どもを社員にできますか?

定款等の条件を満たす場合には検討できます。

将来の親族承継を考えて社員構成を変更するケースがあります。


Q8. 社員と理事を兼任できますか?

可能です。

実際、多くの医療法人で社員兼理事という構成があります。


Q9. 理事は必ず社員ですか?

必ずしもそうではありません。

社員資格と理事資格は別です。


Q10. 理事長は社員でなければなりませんか?

理事長は理事の中から選出される役職であり、社員資格とは別の問題です。

承継・M&Aではガバナンス上、社員にもするかを検討します。


Q11. 社員を変更するには何をしますか?

現行定款に従って入社・退社手続きを行い、社員名簿を更新します。


Q12. 社員変更は法務局で登記しますか?

通常、社員個人は医療法人の登記事項ではありません。


Q13. 社員名簿は必要ですか?

必要です。

厚生労働省は、社団医療法人が社員名簿を備え置き、社員変更の都度必要な変更を加えることを求めています。


Q14. 社員が退社したら社員名簿から削除しますか?

社員資格喪失を反映し、現在の社員が分かる状態へ更新する必要があります。


Q15. 社員が死亡したら子どもが自動的に社員になりますか?

当然に自動承継すると決めつけるべきではありません。

新しい社員については現行定款に基づく加入手続きを確認してください。


Q16. 医療法人M&Aで社員全員を変更できますか?

現行定款に基づき適切に手続きを行うことで、新体制へ変更することは可能です。

ただし社員不在の状態を作らないよう順序を設計する必要があります。


Q17. M&Aでは新社員と旧社員のどちらを先に手続きしますか?

一律ではありませんが、法人の意思決定機能を途切れさせないことが重要です。

一般的には新社員加入を適切に成立させた後、旧社員退社を組み合わせる方法を検討します。


Q18. 社員と理事を同じ日に全部変更できますか?

同日クロージングは検討できます。

ただし、社員総会・理事選任・理事会・理事長選出について論理的な前後関係を整える必要があります。


Q19. 持分あり医療法人で社員が退社するとどうなりますか?

定款によって出資持分払戻請求権が問題になる可能性があります。

社員退社前に持分関係を確認してください。


Q20. 基金拠出型医療法人で社員が退社すると基金も返還されますか?

自動的には返還されません。

社員資格と基金返還請求権は別です。


Q21. 社員を変更すると定款変更も必要ですか?

社員個人の変更だけなら通常、定款変更そのものは必要ありません。

社員資格に関する定款条項を変更する場合は別です。


Q22. 社員変更は行政書士に相談できますか?

医療法人の社員入退社に伴う法人内部書類、社員総会、役員変更、定款変更、M&A・親族承継に伴う行政手続き等については、医療法人業務を取り扱う行政書士へ相談できます。

M&A契約については弁護士、登記は司法書士、持分・税務は税理士等と連携して進めます。


親族承継時の社員変更チェックリスト

父母から子世代へ医療法人を承継する場合は、最低限次を確認してください。

  1. 現行定款
  2. 現在の社員
  3. 社員名簿
  4. 過去の社員総会議事録
  5. 現在の理事
  6. 現理事長
  7. 新理事長候補
  8. 新社員候補
  9. 社員入社方法
  10. 社員退社方法
  11. 持分あり・なし
  12. 出資持分権者
  13. 基金拠出者
  14. 管理医師
  15. 新社員加入
  16. 新理事選任
  17. 理事長変更
  18. 旧社員退社
  19. 社員名簿更新
  20. 役員変更・登記

M&A時の社員変更チェックリスト

第三者承継ではさらに、

  1. M&A契約上のクロージング日
  2. 旧社員全員の確認
  3. 新社員候補の確認
  4. 社員資格要件
  5. 入社承認方法
  6. 新社員加入日
  7. 旧社員退社日
  8. 社員総会定足数
  9. 新理事選任
  10. 新監事選任
  11. 新理事長選出
  12. 旧理事長退任
  13. 持分譲渡
  14. 基金返還請求権
  15. 法人印・通帳等引渡し
  16. 社員名簿最終版
  17. 役員変更届
  18. 理事長変更登記
  19. 管理医師変更
  20. クロージング後の行政手続き

を確認することをおすすめします。


医療法人の社員変更を検討している先生へ

医療法人の社員変更で最も重要なのは、

「誰の名前を社員名簿に載せるか」

ではありません。

本当に重要なのは、

「今後、誰が医療法人の重要事項を決定するのか」

です。

社員は理事長の単なる補助者でも、形式的な名義人でもありません。

社員総会の構成員として、

医療法人のガバナンスの中心を担います。

特に、

親族承継

では、

理事長だけ子どもへ変えて旧社員を残すのか、

社員まで次世代へ移すのかによって、実質的な承継内容が変わります。

また、

第三者M&A

では、

持分を100%譲渡しても、

理事長を変更しても、

社員が旧オーナー側へ残っていれば、ガバナンス移行が不十分になる可能性があります。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

現行定款確認
→ 社員・役員確認
→ 社員入社・退社設計
→ 社員総会議事録
→ 社員名簿更新
→ 新理事・監事選任
→ 理事長変更
→ 司法書士との登記連携
→ 役員変更届
→ 管理医師・保健所関係手続き

まで、親族承継・M&Aを含めた一連の医療法人手続きをサポートしています。

「父から息子へ医療法人を承継したい」

「社員を全員変更したい」

「M&Aで旧社員を退社させたい」

「社員と理事の違いが分からない」

「持分を譲渡したら社員変更も必要なのか知りたい」

「社員名簿が昔のままになっている」

という場合には、理事長変更・M&Aクロージング前の段階からご相談ください。

【医療法人の社員変更について相談する】


まとめ|医療法人の社員変更は「経営権」の設計そのもの

最後に重要なポイントを整理します。

  1. 医療法人の社員は従業員ではない
  2. 社員は社団医療法人の構成員
  3. 社員総会を構成する
  4. 理事・監事選任など重要事項へ関与する
  5. 社員と理事は別
  6. 社員と理事を兼任することは可能
  7. 社員と出資者は別
  8. 社員と基金拠出者も別
  9. 出資額と社員の議決権は連動しない
  10. 社員総会では原則社員1人につき1個の議決権
  11. 社員の入社方法は現行定款を確認する
  12. 退社方法も現行定款を確認する
  13. 社員変更後は社員名簿を更新する
  14. 厚生労働省は社員名簿を備え置くことを求めている
  15. 社員個人は通常登記事項ではない
  16. 登記簿だけでは現在の社員構成を確認できない
  17. 親族承継では理事長だけでなく社員も確認する
  18. M&Aでも社員構成が非常に重要
  19. 旧社員全員を先に退社させない
  20. 法人の意思決定機能に空白を作らない
  21. 同日変更でも法的な順番を整理する
  22. 持分あり医療法人では退社時の持分払戻しを確認する
  23. 基金と社員資格は別
  24. 社員死亡時には社員資格と財産権を分けて考える
  25. 社員構成は将来の事業承継まで考えて設計する

医療法人の社員変更は、

単なる「名簿変更」ではありません。

誰を社員にするかということは、

誰に医療法人の重要な意思決定へ参加してもらうか

を決めることです。

そのため、親族承継でもM&Aでも、

社員

理事

理事長

持分・基金

をセットで確認することが、適切な医療法人承継を行う最大のポイントです。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、厚生労働省「医療法人の機関について」、社団医療法人の定款例、東京都が2026年に公表している「医療法人運営の手引(令和8年4月版)」「医療法人設立の手引(令和8年6月版)」等を基に作成しています。

厚生労働省は、社団医療法人について、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならないことを明示しています。また、理事・監事について社員総会で選任する仕組みを示しています。

医療法人の定款例では、社員が社員総会において1個の議決権を持つ構造が示されており、株式会社のような出資額に応じた資本多数決とは異なるガバナンスとなっています。

東京都の2026年版医療法人設立手引では、設立申請関係書類として役員・社員名簿が公開されています。また2026年版医療法人運営手引では、社員総会・理事会議事録について、法人内で実際に意思決定済みの内容であることが留意点として示されています。

※社員の入社・退社方法、社員資格、社員総会の成立要件等は各医療法人の現行定款によって異なる場合があります。持分あり医療法人の場合は社員退社と持分払戻請求権の関係、M&Aの場合は社員・役員・持分等の移行順序について個別検討が必要です。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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