【2026年最新版】医療法人とMS法人の取引完全ガイド|賃料・業務委託・医療機器・役員兼務・利益相反まで

「医療法人から自分のMS法人へ家賃を払っても問題ありませんか?」

「MS法人に経営コンサルティング料を支払うことはできますか?」

「医療機器をMS法人で購入して医療法人へリースしてもいいですか?」

「理事長がMS法人の代表取締役を兼ねることはできますか?」

「医療法人の利益をMS法人へ移すと問題になりますか?」

「MS法人との取引価格はいくらまでなら大丈夫でしょうか?」

医療法人を運営していると、いわゆる**「MS法人」**を利用するケースがあります。

MS法人は法律上の法人類型の名称ではありません。

一般的には、医療法人やクリニックと密接な関係を持ち、

  • 不動産賃貸
  • 医療機器等の賃貸
  • 物品販売
  • 清掃
  • 広告
  • 経理・事務
  • 人事
  • 経営支援

などを行う株式会社等を実務上「MS法人」と呼んでいます。

厚生労働省の医療法人制度に関する検討会でも、MS法人について、医薬品・医療機器等の共同購入、不動産管理、クリーニング、病院売店管理などを行い、医療法人の経営効率化を支える法人として整理されています。

したがって、

医療法人とMS法人が取引すること自体が禁止されているわけではありません。

問題になるのは、

その取引が本当に必要なのか

価格が適正なのか

医療法人の利益をMS法人へ不当に移していないか

MS法人が医療法人を実質的に支配していないか

という点です。

特に医療法人には剰余金配当禁止という株式会社にはない大原則があります。

MS法人との取引価格が市場価格等から見て妥当な範囲を超え、医療法人の利益を関係者側へ移していると評価されれば、医療法人の非営利性との関係で問題となる可能性があります。厚生労働省もこの点を明示しています。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • MS法人とは何か
  • MS法人を設立するメリット
  • 医療法人とMS法人の取引は可能か
  • 建物・土地の賃貸
  • 賃料はいくらまで許されるか
  • 医療機器リース
  • 業務委託
  • コンサルティング料
  • 広告費
  • 人材関係
  • 理事長とMS法人社長の兼務
  • 管理医師との兼務
  • 利益相反
  • 関係事業者取引報告
  • 医療法人M&AでのMS法人DD

まで、2026年時点の制度・行政実務を踏まえて詳しく解説します。



目次

医療法人とMS法人の取引について相談したい先生へ

MS法人で最も危険なのは、

「自分の会社なのだから、医療法人からいくら払っても自由」

と考えることです。

例えば、

医療法人の年間利益が5,000万円あるため、

理事長が100%所有するMS法人へ、

年間4,000万円の経営コンサルティング料

を支払うとします。

実際の業務内容がほとんどなく、市場相場から見ても著しく高額なら、

「医療法人で生じた利益をMS法人へ移しているだけではないか」

と疑われる可能性があります。

厚生労働省は、医療法人とMS法人との取引について、市場価格等から見て妥当な価格を超える場合には、医療法上の剰余金配当禁止との関係から指導監督の対象となり得るという考え方を示しています。

したがって、MS法人取引は、

契約書

だけではなく、

業務の実態+価格根拠

まで説明できる状態にしておくことが重要です。



MS法人とは?

MS法人という名称の法人制度が法律上存在するわけではありません。

実務上、

Medical Service法人

などと呼ばれ、医療機関周辺の非医療業務を行う株式会社等を指します。

医療法人は医療法上行える業務範囲が限定されています。

そのため、医療法人では行いにくい事業や周辺サービスを別法人で行うためにMS法人を設けるケースがあります。


医療法人とMS法人を分ける理由

例えば医療法人は、

医療そのもの

を行います。

一方MS法人では、

  • 不動産所有
  • 不動産賃貸
  • 物品販売
  • 医療機器賃貸
  • 広告
  • Web制作
  • 経営管理

などを行うことがあります。

このように、

医療事業

と、

周辺事業

を分けることができます。


MS法人を使うこと自体は違法?

MS法人が存在することや、医療法人とMS法人が取引すること自体が直ちに違法になるわけではありません。

厚生労働省の検討会でもMS法人が医療機器・物品購入、不動産管理等の機能を担っていることを前提として制度上の透明化が議論されています。

重要なのは、

取引の必要性・価格・透明性

です。


医療法人には「剰余金配当禁止」がある

医療法人は株式会社と違い、利益を社員・出資者等へ配当することはできません。

そのため、

医療法人→MS法人

という形を使って、

実質的に医療法人の剰余金を関係者へ移転する行為が問題になります。

例えば、

市場家賃50万円

なのに、

MS法人へ毎月300万円支払う、

という場合です。

取引名目が「賃料」であっても、

実質的に過大な利益移転なら問題となり得ます。

厚生労働省も、市場価格等から見て妥当な価格を超えるMS法人取引について、剰余金配当禁止との関係で指導監督が行われる仕組みを説明しています。


MS法人との取引で見るべき3つの基準

実務では少なくとも、

① 本当に必要な取引か

② 実際にサービスが提供されているか

③ 金額が適正か

を確認してください。

特に③が重要です。


医療法人からMS法人へ建物賃料を払える?

可能です。

典型的なのは、

MS法人所有建物

医療法人へ賃貸

医療法人がクリニックとして使用

という形です。

このスキーム自体が直ちに問題になるものではありません。

しかし、

賃料額の適正性

が重要です。


賃料はいくらなら適正?

全国一律に、

「坪○万円以内ならOK」

という医療法上の基準があるわけではありません。

そのため、

  • 周辺賃料相場
  • 同一用途物件
  • 面積
  • 築年数
  • 駅距離
  • 建物設備
  • 医療用途
  • 敷金・保証金
  • 契約期間

等から合理的に説明できる価格を設定します。

重要なのは、

第三者間取引でも同じ賃料になるか

という視点です。


理事長個人所有の建物を医療法人へ貸す場合も同じ?

基本的な考え方は同じです。

理事長個人→医療法人

という関係でも、

関係者間取引である以上、

相場から大きく乖離した賃料

には注意が必要です。

さらに個人側・法人側それぞれの税務処理もあるため、税理士へ確認してください。


賃料を途中から大幅に上げてもいい?

契約変更自体はあり得ます。

しかし例えば、

月額40万円

月額100万円

へ変更する場合、

なぜ2.5倍になったのか

を説明できるようにしてください。

  • 周辺相場上昇
  • 増床
  • 設備追加
  • 建物改修
  • 鑑定評価

等の合理的理由が重要です。

単に、

「医療法人に利益が出ているからMS法人へ移したい」

という理由では問題になります。


賃料の適正性を説明する資料

例えば、

  • 不動産鑑定
  • 不動産会社の査定書
  • 周辺募集物件
  • 同一建物の他テナント賃料
  • 坪単価比較
  • 建物取得価額
  • 固定資産税等

を保存しておく方法があります。

特に医療法人設立認可・定款変更・M&Aでは、関係者との賃貸借条件について行政庁から説明を求められることがあります。


MS法人から医療機器を借りることはできる?

可能なスキームです。

例えば、

MS法人:

レーザー機器を5,000万円で購入

医療法人:

月額100万円で借りる

というケースです。

ただしここでも、

リース料・賃貸料が合理的か

を確認します。


医療機器リース料の考え方

例えば、

  • 医療機器購入価格
  • 耐用年数
  • 保守費用
  • 金利
  • 保険
  • 故障リスク
  • 中古価値

等を踏まえて設定します。

外部リース会社と比べて極端に高額であれば、

なぜMS法人へその金額を払うのか

を説明する必要があります。


医療機器をMS法人で買うメリット

例えば、

  • 医療法人と資産を分離できる
  • 他法人への貸出等を検討できる
  • 医療法人M&A時に資産を残すことができる

という設計が考えられます。

一方でM&Aでは、

医療法人を買えば医療機器も手に入ると思っていたら、実はMS法人所有だった

という問題が起きます。

そのため所有権は明確にしてください。


MS法人へ経営コンサルティング料を払える?

契約・実態があるのであれば検討可能ですが、特に慎重に扱うべき取引です。

例えば、

  • 経営計画策定
  • 採用支援
  • 財務分析
  • 人事制度
  • IT支援
  • 経営会議運営

等をMS法人が実際に提供しているのであれば、業務委託契約を締結することが考えられます。

ただし、

契約書だけあって業務実態がない

状態は避けるべきです。


「毎月100万円のコンサル料」は大丈夫?

金額だけでは判断できません。

重要なのは、

100万円分のサービスが本当に提供されているか

です。

例えば、

年間1,200万円を払っているなら、

  • 誰が
  • 毎月何時間
  • 何をしているか
  • 成果物は何か
  • 外部会社ならいくらか

を説明できる状態にします。


コンサル料の証拠を残す

例えば、

  • 業務委託契約書
  • 月次報告書
  • 経営会議議事録
  • 採用活動記録
  • 成果物
  • 作業時間
  • 請求書

等を残します。

「契約書と毎月の請求書だけ」

よりも、実際の業務内容を示せる資料が重要です。


医療法人の経理をMS法人へ委託できる?

一般的な事務業務について委託することは考えられます。

例えば、

  • 給与計算補助
  • 請求書整理
  • 会計資料整理
  • 総務
  • 人事事務

などです。

ただし税理士法・社会保険労務士法等により資格者でなければできない業務を、無資格のMS法人が受託しないよう注意してください。


広告・WebマーケティングをMS法人へ委託できる?

これも取引自体は考えられます。

例えば、

MS法人が、

  • ホームページ制作
  • SNS
  • Web広告
  • SEO
  • 動画
  • 採用広告

を担当するケースです。

美容クリニックでは特に多い形です。

ただし、

広告費実額+手数料

なのか、

包括委託料

なのかを明確にしておくとよいでしょう。


MS法人へスタッフを所属させ、医療法人へ派遣できる?

ここは労働法上の別の問題があります。

医療スタッフをMS法人へ雇用し、実質的に医療法人の指揮命令下で働かせる場合には、労働者派遣法や職業安定法等の問題が関係する可能性があります。

特に医師・看護師等の医療従事者については慎重な確認が必要です。

人材配置スキームは、社会保険労務士・弁護士等と確認してください。


理事長がMS法人の代表取締役を兼ねてもいい?

ここは非常に誤解が多いところです。

すべての兼務が一律禁止されているわけではありません。

厚生労働省は2012年の通知で、医療法人役員と営利法人役職員の兼務について、問題がないと考えられる範囲を明確化するため従前の通知を改正しています。

つまり、

「医療法人理事=株式会社役員なら即NG」

という単純な制度ではありません。


ではどのような場合が問題?

重要なのは、

その営利法人が医療機関の開設・経営に利害関係を有しているか

です。

厚生労働省の医療機関非営利性確認の考え方では、医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員との兼務について、医療機関の開設・経営へ影響を与えないことなどが問題となります。

したがって、

MS法人と医療法人が多額の取引をしている場合ほど慎重です。


「理事長=MS法人社長」は絶対禁止?

絶対禁止と断定するのは正確ではありません。

個別の関係・影響力・取引内容によって判断されます。

一方で、医療法人と関係の強い営利法人の役員が医療法人経営へ影響することについては、非営利性の観点から行政上慎重に見られます。厚生労働省の病院経営管理資料でも、医療法人と関係のある特定の営利法人の役員が医療法人の理事長等として参画することについて、非営利性の観点から問題となる旨が示されています。


管理医師とMS法人役員の兼務は?

理事長兼務以上に慎重に確認すべき場合があります。

管理医師は、

医療機関を実際に管理する責任者

です。

その管理者が、医療機関と強い利害関係を持つ営利法人から影響を受ける状態では、

医療機関の独立性・非営利性

が問題になり得ます。

個別案件では、MS法人との契約内容・株主・役員関係まで示して保健所等へ事前確認することをおすすめします。

MS法人と医療法人の人的関係を確認する場合には、誰が社員・理事・理事長・管理医師になっているかを整理することが重要です。

特に医療法人の代表者と診療所の管理者は役割が異なるため、形式的な役職名だけで判断しないよう注意してください。


理事長と管理医師の役割や兼務については「医療法人の理事長・管理医師兼務完全ガイド」で詳しく解説しています。


MS法人株主が医師でなくてもいい?

MS法人は通常の株式会社等なので、医師資格自体を株主資格とする制度ではありません。

問題になるのは、

そのMS法人が医療法人を支配していないか

です。

例えば医療法人の社員全員がMS法人の従業員で、すべてMS法人社長の指示どおり議決するような状態なら、医療法人の独立性について疑義が生じる可能性があります。


MS法人から医療法人へ融資できる?

金銭貸借そのものは契約として検討できますが、

  • 金利
  • 返済条件
  • 資金使途
  • 担保
  • 経営介入

を確認する必要があります。

特に資金提供を理由としてMS法人が医療法人の経営へ介入するような構造は避けるべきです。

厚生労働省の非営利性確認でも、第三者からの資金提供と医療機関経営への関与の有無が重要な確認事項とされています。


MS法人との取引には報告制度がある

現在、医療法人には一定の関係事業者との取引状況を報告する制度があります。

報告事項には、

  • 関係事業者の名称・所在地
  • 医療法人との関係
  • 取引内容
  • 取引金額
  • 取引条件
  • 取引条件の決定方針
  • 債権債務残高

などが含まれます。

これはまさに、

「MS法人と何を、いくらで、どのような条件で取引しているのか」

を透明化する制度です。


すべてのMS法人取引を報告する?

一定の関係性・取引規模に該当する場合です。

医療法施行規則では、例えば事業収益・事業費用に関する取引について、

1,000万円以上

かつ、

当該年度の事業収益または事業費用総額の10%以上

を占める取引などが基準として規定されています。

また、特別利益・特別損失については1,000万円以上の取引等も対象となる規定があります。


「関係事業者」とは誰?

医療法施行規則では、例えば、

  • 医療法人役員またはその近親者が代表者である法人
  • 役員または近親者が議決権の過半数を有する法人

などが関係事業者の対象として規定されています。

つまり、

理事長本人のMS法人

理事長の家族が支配するMS法人

などは特に確認が必要です。


1,000万円未満なら何をしても大丈夫?

もちろん違います。

1,000万円等の基準は、

関係事業者取引報告書の報告範囲

の問題です。

その基準未満なら、

医療法上の非営利性や税務上の適正性を確認しなくてよい、

という意味ではありません。


利益相反取引にも注意する

例えば、

理事長A

が、

医療法人A会の理事長

かつ、

MS株式会社の代表取締役

だとします。

そして、

医療法人A会

と、

MS株式会社

が賃貸借契約を締結する。

この場合、同一人物が双方の経営に関与しており、

利益相反

が問題になります。

医療法人の理事には法人に対する忠実義務等があり、関係事業者取引の透明性確保も制度化されています。


利益相反では何をする?

案件ごとに、

  • 理事会承認
  • 契約条件の適正性確認
  • 当該理事の関与方法
  • 議事録
  • 相場資料

等を整理します。

重要なのは、

理事長個人に有利だから契約した

のではなく、

医療法人にとって合理的な契約である

と説明できることです。


MS法人に利益を出すこと自体は問題?

MS法人は営利法人なので利益を出すこと自体は通常の企業活動です。

問題は、

医療法人から不当に利益を移転して得た利益かどうか

です。

例えば適正価格100万円のサービスを100万円で提供し、効率化によってMS法人に利益が残ることと、

実質価値100万円のサービスを500万円で請求することは全く違います。


「節税目的」でMS法人を使う場合の注意

税務メリットを検討すること自体は税理士と行うことになります。

しかし医療法人では、

税務上損金になるか

だけを基準にしてはいけません。

医療法上の、

非営利性

剰余金配当禁止

も同時に確認してください。

税務上処理できても、医療法人行政上問題がないとは限りません。


過大な経済的利益は税務上も問題になる

国税庁も、法人から役員等へ供与する経済的利益について、不相当に高額な部分や仮装・隠蔽による利益供与については損金算入を認めない取扱いを示しています。

MS法人取引の具体的税務処理については、法人税・所得税等を含めて税理士へ確認してください。


医療法人M&AではMS法人が最重要DD項目になることもある

医療法人M&Aでは、

医療法人だけを調べてはいけません。

例えば、

クリニック売上:5億円

でも、

  • 建物:MS法人
  • CT:MS法人
  • Webサイト:MS法人
  • ブランド商標:MS法人
  • スタッフ採用機能:MS法人

なら、

買主が医療法人だけ取得しても事業を継続できない可能性があります。

医療法人M&Aでは、医療法人だけを調査しても実態を把握できないことがあります。

診療所不動産、医療機器、広告、業務委託等を旧オーナー側のMS法人へ依存している場合には、MS法人との契約関係までデューデリジェンスの対象として確認することが重要です。


M&A時に確認すべきMS法人取引を含むチェック項目については「医療法人M&Aのデューデリジェンス完全ガイド」で詳しく解説しています。


M&Aで確認すべきMS法人10項目

  1. MS法人株主
  2. MS法人役員
  3. 医療法人との人的関係
  4. 不動産所有
  5. 医療機器所有
  6. 業務委託契約
  7. 賃料
  8. 年間取引金額
  9. Web・商標等の権利
  10. M&A後の契約継続可否

を確認します。


医療法人だけ買えばMS法人契約は切れる?

自動的には切れません。

対象医療法人が契約当事者であれば、原則として契約は法人に残ります。

そのため、

M&A後も旧理事長所有MS法人へ毎月多額の支払いを続けなければならない

可能性があります。

DD段階で確認してください。

医療法人とMS法人の取引関係が深い場合には、医療法人だけを第三者へ承継した結果、診療所運営に必要な不動産・設備・業務が旧オーナー側に残ってしまう可能性があります。

M&Aでは、医療法人とMS法人の関係を含めて承継後の事業継続性を確認することが重要です。


医療法人M&A全体の進め方については「医療法人の承継・M&A完全ガイド」で詳しく解説しています。


MS法人契約をクロージング前に整理する

例えば、

  • 解約
  • 条件変更
  • 買主MS法人への切替
  • 資産売却
  • 医療法人による資産取得

等を検討します。

M&A契約のクロージング条件として整理することもあります。


医療法人とMS法人の取引一覧

取引可否の基本特に確認する点
建物賃貸検討可相場賃料
土地賃貸検討可相場・契約条件
医療機器賃貸検討可購入価額・リース相場
経営支援検討可業務実態・価格
経理事務検討可資格業務に注意
Web広告検討可実費・手数料
物品販売検討可市場価格
金銭貸付慎重金利・経営介入
人員提供慎重派遣法等
医療行為原則MS法人では不可医療機関側で実施

MS法人取引でよくある失敗① 「自分の会社だから相場不要」

最も危険な考え方です。

関係会社だからこそ、

第三者価格を意識

してください。


よくある失敗② 売上の一定割合を全部MS法人へ払う

例えば、

医療法人売上の30%を経営指導料

とする場合、

業務量と対価が本当に比例しているのかを説明する必要があります。

医療法人利益を抜く目的と見られないよう注意します。


よくある失敗③ 契約書だけ作る

業務実態の証拠も残してください。


よくある失敗④ 賃料の根拠がない

近隣相場・坪単価等を残します。


よくある失敗⑤ 医療機器の所有者が分からない

固定資産台帳・契約書・請求書を確認してください。


よくある失敗⑥ 役員兼務は全部自由だと思う

営利法人との兼務は一律禁止ではありませんが、医療機関の開設・経営への影響や非営利性を確認する必要があります。


よくある失敗⑦ 逆に「MS法人役員なら絶対理事になれない」と思う

これも正確ではありません。

厚生労働省は兼務可能範囲を明確化する通知改正を行っています。

個別関係を見て判断します。


よくある失敗⑧ 関係事業者取引報告を忘れる

一定の取引規模に該当する場合には報告が必要です。


よくある失敗⑨ M&AでMS法人を見ない

医療法人の重要資産がMS法人側にある場合があります。


よくある失敗⑩ 税務だけ確認する

医療法・税務・会社法・労務等を横断的に確認してください。


医療法人とMS法人のFAQ

Q1. MS法人とは何ですか?

医療法人周辺の不動産・物品・事務等を担う株式会社等を実務上MS法人と呼びます。厚生労働省も医療機器購入、不動産管理等を行う法人として認識しています。

Q2. 医療法人とMS法人は取引できますか?

取引自体が一律禁止されているわけではありません。

ただし必要性、実態、価格の適正性、非営利性等を確認してください。

Q3. 医療法人からMS法人へ家賃を払えますか?

可能なスキームですが、相場等から合理的に説明できる賃料設定が重要です。

Q4. 賃料に上限はありますか?

全国一律の「○円まで」という単純な基準ではなく、物件・地域・条件等から適正性を説明します。

Q5. 理事長個人の建物を医療法人へ貸せますか?

検討可能ですが、関係者取引なので賃料の合理性を確認してください。

Q6. MS法人所有の医療機器を医療法人へ貸せますか?

検討できます。

リース料・賃貸料の適正性を確認します。

Q7. MS法人へコンサル料を払えますか?

実際の業務があり、価格が合理的なら検討できます。

業務実態を証拠化してください。

Q8. 医療法人利益をMS法人へ移してもいいですか?

不当な利益移転は問題です。

厚生労働省は市場価格等を超える取引と剰余金配当禁止の関係を指摘しています。

Q9. 理事長がMS法人社長を兼ねられますか?

一律禁止ではありません。

ただしMS法人との利害関係、医療法人経営への影響等を個別に確認します。

Q10. 管理医師がMS法人役員でもいいですか?

医療機関との利害関係が強い場合は慎重な検討が必要です。

非営利性・独立性の観点から事前確認をおすすめします。

Q11. 家族がMS法人社長でも関係事業者になりますか?

医療法人役員またはその近親者が代表者である法人等は、医療法施行規則上の関係事業者に該当し得ます。

Q12. MS法人との取引は都道府県へ報告しますか?

一定の関係・取引規模に該当する場合には関係事業者取引報告の対象となります。

Q13. 1,000万円以上なら必ず報告ですか?

取引類型ごとに金額・割合等の要件があります。

例えば事業収益・事業費用では1,000万円以上かつ総額の10%以上などの基準があります。

Q14. 1,000万円未満なら適正価格でなくてもいいですか?

違います。

報告基準と取引自体の適法性・適正性は別です。

Q15. 医療法人とMS法人の代表者が同じ場合は利益相反になりますか?

具体的な取引内容によって利益相反を検討する必要があります。

理事として医療法人の利益を優先できる手続き・条件を整えてください。

Q16. MS法人から医療法人へお金を貸せますか?

検討できますが、適正な金利・返済条件と、資金提供を通じた経営介入がないことを確認します。

Q17. MS法人に看護師を雇用させてもいいですか?

派遣・職業紹介等の規制が関係する可能性があるため慎重に確認してください。

Q18. M&AでMS法人も買う必要がありますか?

案件によります。

不動産・医療機器・ブランド等がMS法人側にあるなら、MS法人の取得または契約整理が必要になることがあります。

Q19. 医療法人M&AのDDでMS法人を確認しますか?

非常に重要です。

年間取引額、所有資産、株主・役員、契約継続条件等を確認します。

Q20. MS法人取引は行政書士へ相談できますか?

医療法人側の非営利性、役員構成、定款、行政手続き、関係事業者取引等については医療法人業務を取り扱う行政書士へ相談できます。

契約法務は弁護士、税務は税理士、労務は社会保険労務士等と連携して進めます。


MS法人取引チェックリスト

医療法人とMS法人の取引がある場合には、最低限次を確認してください。

  1. MS法人の株主
  2. MS法人の代表者
  3. MS法人役員
  4. 医療法人役員との親族関係
  5. 医療法人社員との関係
  6. 年間取引額
  7. 契約内容
  8. 業務実態
  9. 価格設定根拠
  10. 周辺相場
  11. 賃料
  12. 医療機器リース料
  13. コンサル料
  14. 広告費
  15. 物品販売価格
  16. 金銭貸借
  17. 不動産所有者
  18. 医療機器所有者
  19. 利益相反
  20. 理事会議事録
  21. 関係事業者取引報告
  22. 税務処理
  23. M&A時の契約継続
  24. MS法人が医療法人経営へ介入していないか
  25. 医療法人の利益が不当に流出していないか

理想的なMS法人取引とは?

最も分かりやすい考え方は、

第三者同士でも同じ条件で契約するか

です。

例えば、

市場家賃60万円

MS法人への家賃65万円

で、

医療用設備等の特殊性を説明できるなら、合理性を説明しやすいでしょう。

一方、

市場家賃60万円

MS法人への家賃300万円

で理由なし、

では説明が難しくなります。


「適正価格」を数字で説明できるようにする

MS法人取引では、

感覚

ではなく、

資料

を残します。

賃料なら、

不動産会社査定。

医療機器なら、

外部リース会社見積り。

コンサルなら、

業務時間・成果物・外部委託相場。

物品なら、

第三者見積り。

という形です。


年1回MS法人取引を点検する

医療法人の決算時に、

関係事業者取引一覧

を作ることをおすすめします。

例えば、

取引年額根拠資料要報告確認
建物賃料1,200万円賃料査定確認
医療機器600万円外部リース比較確認
経営支援900万円月次報告確認
Web広告500万円広告実績確認

こうしておけば行政対応・M&Aにも使えます。


医療法人とMS法人の取引を検討している先生へ

MS法人は、

使ってはいけない仕組み

ではありません。

適切に使えば、

  • 不動産管理
  • 医療機器
  • バックオフィス
  • Webマーケティング
  • 経営支援

などを医療法人本体から分離し、効率的な経営体制を作ることも可能です。

しかし、

医療法人の利益をMS法人へ移すための箱

として使えば、話は全く違います。

厚生労働省も、MS法人との市場価格等を超える取引について、医療法人の剰余金配当禁止との関係から指導監督の問題となり得ることを示しています。

そのため、

誰の会社か

より、

何を、いくらで、なぜ取引しているのか

が重要です。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

MS法人との人的関係整理

→ 医療法人役員構成確認
→ 賃貸借・業務委託内容の行政面確認
→ 非営利性確認
→ 関係事業者取引の整理
→ 医療法人設立・定款変更時の行政庁対応
→ M&A行政DD
→ クロージング前のMS法人契約整理

までサポートしています。

「理事長所有の建物を医療法人へ貸したい」

「MS法人への賃料を変更したい」

「医療機器をMS法人で持たせたい」

「MS法人へ業務委託料を払っている」

「理事長とMS法人代表を兼務している」

「M&A前にMS法人との関係を整理したい」

という場合には、契約条件を変更する前の段階からご相談ください。


まとめ|MS法人で重要なのは「実態・価格・独立性」

重要なポイントを整理すると、

  1. MS法人は法律上の法人類型の名称ではない
  2. 医療法人周辺の不動産・物品・事務等を担う法人として利用される
  3. MS法人との取引自体が一律禁止されているわけではない
  4. 医療法人には剰余金配当禁止がある
  5. MS法人への不当な利益移転は問題となり得る
  6. 市場価格等から見て妥当な価格であることが重要
  7. 建物賃貸では周辺賃料を確認する
  8. 医療機器リースでは外部リース相場等を確認する
  9. コンサル契約では業務実態を残す
  10. 広告・事務委託でも実態・価格を確認する
  11. 医療法人役員と営利法人役員の兼務は一律禁止ではない
  12. ただし医療法人経営への影響・非営利性を確認する
  13. 管理医師と利害関係営利法人役員との兼務は特に慎重に扱う
  14. 関係事業者との一定規模以上の取引には報告制度がある
  15. 事業収益・費用では1,000万円以上かつ総額10%以上等の基準がある
  16. 報告対象外でも適正価格である必要はある
  17. 理事・近親者が代表する法人等は関係事業者となり得る
  18. 利益相反取引を確認する
  19. 契約書だけでなく価格根拠を保存する
  20. MS法人からの融資では経営介入に注意する
  21. 医療法人とMS法人の資産所有を区別する
  22. 不動産所有者を確認する
  23. 医療機器所有者を確認する
  24. M&AではMS法人を必ずDDする
  25. 「第三者同士でも同じ条件で契約するか」を基準に考える

医療法人とMS法人の取引で最も重要なのは、

「MS法人を使っているかどうか」ではありません。

その取引を第三者へ説明したとき、医療法人にとって合理的な取引だと言えるか

です。

医療法人に1億円の利益が出ているからといって、

その利益をMS法人へ移すために家賃やコンサル料を上げることは適切ではありません。

一方、

実際に価値あるサービスをMS法人が提供し、

市場相場等に照らして合理的な対価を支払うのであれば、

医療法人とMS法人が適切に役割分担することは可能です。

つまりMS法人運営のキーワードは、

「実態」

「適正価格」

「透明性」

「医療法人の独立性」

の4つです。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、厚生労働省「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」、医療法施行規則、医療法人の関係事業者取引に関する通知、医療法人制度に関する検討会資料等を基に、2026年8月時点の制度・行政実務を整理しています。

厚生労働省は、MS法人が医療機器・物品購入、不動産管理等を担っている実態を踏まえつつ、医療法人との取引価格が市場価格等を超える場合には剰余金配当禁止との関係から問題となり得るという考え方を示しています。

また、医療法人役員と営利法人役職員との兼務については、2012年通知で問題がないと考えられる範囲を明確化するため従来の取扱いが改正されており、営利法人役員との兼務がすべて一律禁止という制度ではありません。

医療法施行規則では、医療法人役員や近親者が代表する法人等を関係事業者として規定するとともに、一定規模以上の取引について報告基準を定めています。事業収益・事業費用に係る取引では、1,000万円以上かつ事業収益・費用総額の10%以上などが基準です。

関係事業者取引報告では、取引内容、取引金額、取引条件、条件決定方針、債権債務残高等を記載することが求められています。

※具体的なMS法人との取引の適法性・価格の妥当性は、医療法人とMS法人の人的関係、資本関係、契約内容、金額、地域相場、業務実態等によって異なります。税務については税理士、契約・利益相反等の法的助言は弁護士、医療法人の非営利性・役員・行政手続きについては医療法人業務を取り扱う行政書士等へ個別にご相談ください。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

目次