【2026年最新版】医療法人の理事長変更完全ガイド|社員総会・理事会・登記・役員変更届まで解説

「医療法人の理事長を変更したいのですが、何から始めればいいですか?」

「理事長を息子へ交代したい」

「医療法人を承継するので、新しい医師を理事長にしたい」

「現在の理事をそのまま理事長に変更できますか?」

「理事長を変更すると、保健所や厚生局への届出も必要ですか?」

「理事長と院長は同時に変更しなければならないのでしょうか?」

医療法人の運営・承継・M&Aにおいて、非常に重要な手続きの一つが理事長変更です。

結論からいうと、医療法人の理事長変更は、

「法務局で代表者を変更登記すれば終わり」

ではありません。

医療法人内部での理事・理事長選任手続きを適切に行った上で、

社員総会

理事会

理事長就任

理事長変更登記

都道府県への役員変更届

登記事項変更の届出

必要に応じて保健所・地方厚生局等への届出

という流れを確認する必要があります。

東京都は、役員の新規就任、任期途中辞任、重任、任期満了退任等について医療法人役員変更届の対象としており、理事長の変更については登記後に登記事項の届出も必要としています。

大阪府でも、理事長変更時には社員総会議事録、理事会議事録、就任承諾書、履歴書、医師・歯科医師免許証の写し等を役員変更届の添付書類として求めています。

また、

理事長変更

診療所の管理医師変更

は同じ手続きではありません。

理事長が院長・管理医師を兼ねている医療法人で、承継・M&A等によって両方を交代する場合には、法人側だけでなく診療所側の行政手続き、さらに保険医療機関の届出まで確認する必要があります。関東信越厚生局も、保険医療機関の開設者(代表者)や管理者の変更について届出事項として案内しています。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • 医療法人の理事長とは何か
  • 理事と理事長の違い
  • 理事長変更が必要になるケース
  • 理事長になるための要件
  • 医師・歯科医師でない者を理事長にできるか
  • 現在の理事を理事長にする場合
  • 新しい医師を理事・理事長へ就任させる場合
  • 社員総会は必要か
  • 理事会は必要か
  • 理事長変更登記
  • 都道府県への役員変更届
  • 登記事項変更届
  • 管理医師変更
  • 保健所への手続き
  • 地方厚生局への手続き
  • 医療法人M&A・承継時の注意点
  • 親子間承継
  • 理事長死亡・急逝時の対応
  • よくある失敗

まで、2026年時点の公的情報を踏まえて詳しく解説します。


目次

医療法人の理事長変更について相談したい先生へ

理事長変更で最も注意していただきたいのは、

「理事長だけを見るのではなく、変更前後の法人全体を見ること」

です。

例えば、

「父から息子へ理事長を交代したい」

という場合でも、

確認すべきなのは理事長だけではありません。

  • 息子は現在理事か
  • 息子は社員か
  • 父は理事として残るのか
  • 父は社員として残るのか
  • 監事はそのままか
  • 父が本院の管理医師を兼ねていないか
  • 息子が新しい管理医師になるのか
  • 保険医療機関関係の変更は必要か
  • 金融機関借入の代表者保証はどうするか
  • 法人名義口座・契約の代表者変更は必要か

などを確認します。

特に医療法人M&Aでは、

理事長だけ変更して、社員が旧経営者側のまま

という状態を作ることはおすすめできません。

理事長変更前に、現在の定款・社員・理事・管理医師等をまとめて確認することが重要です。


医療法人の理事長とは?

理事長は、医療法人を代表する役員です。

医療法人には原則として理事3名以上及び監事1名以上を置き、理事の中から1名を理事長として選出します。厚生労働省も、医療法人の役員制度についてこの原則を示しています。

簡単に整理すると、

区分主な役割
社員社員総会で法人の重要事項を決定
理事医療法人の業務執行
理事長医療法人を代表
監事医療法人の業務・財産状況等を監査

となります。

つまり、

理事長=医療法人の代表者

です。


理事と理事長は何が違う?

すべての理事が法人を代表するわけではありません。

理事の中から選ばれた理事長が医療法人を代表します。

そのため、

「理事として就任すること」

と、

「理事長になること」

は別のステップです。

新しい人物を外部から理事長へ迎える場合には、通常、

理事に選任

理事として就任

理事長として選出

という流れを考えることになります。


医療法人の理事長は誰でもなれる?

原則として、

医師または歯科医師である理事

の中から理事長を選出します。

厚生労働省は、医療法人の理事長について、原則として医師または歯科医師である理事から選出するとしています。

したがって、

「医療経営に詳しい会社経営者を、そのまま医療法人理事長にする」

「医師ではない事務長をそのまま理事長にする」

ということは、通常の理事長選任とは異なります。


医師・歯科医師でない人を理事長にできる?

例外制度はあります。

医療法では、都道府県知事の認可を受けた場合には、医師・歯科医師ではない理事から理事長を選出することができます。

ただし、

「申請すれば必ず認められる」

という制度ではありません。

厚生労働省は、非医師・非歯科医師の理事長認可について、

  • 候補者の経歴
  • 理事会の構成
  • 適切かつ安定的な法人運営を損なうおそれがないか

等を総合的に勘案し、都道府県医療審議会の意見を聴いた上で判断する考え方を示しています。

したがって、通常の医療法人では、

医師・歯科医師である理事を理事長とする

ことを基本に設計します。

理事長を変更する場合でも、社員構成がそのままでよいとは限りません。特に親族承継や第三者M&Aでは、誰が社員として社員総会を構成しているかが重要になります。
社員の入社・退社については「医療法人の社員変更完全ガイド」で詳しく解説しています。


理事長変更が必要になる代表的なケース

理事長変更が発生するのは、主に次のようなケースです。

① 親子間の医療法人承継

父親である理事長から、医師である息子・娘へ医療法人を承継するケースです。


② 第三者への医療法人M&A

医療法人を第三者へ承継し、新しい医師・歯科医師を理事長とするケースです。


③ 現理事長の引退

高齢、健康上の理由等で理事長が退任し、別の理事へ代表を交代するケースです。


④ 理事長の死亡

理事長が急逝し、新しい理事長を速やかに選任する必要があるケースです。


⑤ 法人内部での世代交代

複数の医師が運営する医療法人で、一定期間ごとに理事長を交代するケースです。


⑥ 組織再編・経営方針変更

病院・診療所の統合、分院展開、法人再編等に伴い理事長を変更するケースです。


理事長変更のパターンは大きく2種類

理事長変更は、

新理事長候補がすでに理事かどうか

によって手続きが変わります。


パターン① 現在の理事を理事長にする

例えば現在、

  • 理事長:父
  • 理事:息子
  • 理事:母

となっていて、

息子を新理事長へ変更するケースです。

息子はすでに理事であるため、

新たに理事へ選任する手続き

は原則として不要です。

その上で、定款に従って理事長選出手続きを行います。

大阪府では、現理事が新たに理事長へ就任する場合でも、役員変更届に就任承諾書、履歴書、医師・歯科医師免許証の写し等を求めています。


パターン② 外部の医師を新たに理事長にする

例えばM&Aで、

旧体制

  • 理事長:A医師
  • 理事:B
  • 理事:C

から、

新しくD医師を迎えて理事長にするケースです。

この場合、

D医師を理事へ選任

D医師が理事就任

D医師を理事長へ選出

という流れを組みます。

理事は、社団医療法人の場合、社員総会の決議によって選任することが原則です。

そのため、

社員総会と理事会の双方

が関係するケースになります。


理事長変更に社員総会・理事会は必要?

理事長変更に社員総会は必要?

ケースによります。

新理事長候補が新たに理事になる場合には、理事選任のため社員総会が必要になります。

一方、すでに適法に理事である人物の中から理事長だけを変更する場合には、定款の定めに従って理事会等で理事長を選出します。

大阪府は理事長変更の役員変更届に関して、

  • 社員総会議事録
  • 理事会議事録

をそれぞれ必要書類として示し、理事会議事録については理事長の就任・重任を承認した旨の議事録を求めています。

したがって実際には、

現在の定款+新理事長候補の現在の役職

を確認して必要な議事録を判断します。


理事長は社員でなければならない?

理事と社員は制度上別の立場です。

したがって、

理事長だから当然社員でなければならない

という単純な仕組みではありません。

ただし医療法人M&Aや親族承継では、理事長だけでなく社員構成が法人のガバナンスに大きく影響します。

そのため、

「新理事長を社員にもするか」

「旧理事長を社員として残すか」

については、承継後の意思決定構造まで考えて決めることが重要です。


理事長だけ変更して旧理事長を社員として残してもいい?

制度上考えられる構成ではあります。

ただし、特にM&Aの場合は注意が必要です。

社団医療法人では社員総会が重要な意思決定機関であり、役員選任等にも関与します。厚生労働省も、社団医療法人の役員を社員総会の決議で選任する仕組みを示しています。

したがって、

新理事長=買主側

なのに、

社員=旧オーナー側3名

という状態では、ガバナンス上の問題が生じる可能性があります。

M&Aでは理事長変更だけでなく社員構成も同時に確認してください。


理事長変更の基本的な流れ

一般的な社団医療法人では、次のような流れを検討します。

STEP1 現行定款を確認

まず、

  • 理事定数
  • 理事長選任方法
  • 理事任期
  • 社員総会の決議方法
  • 理事会の決議方法

を確認します。


STEP2 現在の社員・理事を確認

社員名簿・役員名簿・最新の議事録等を確認します。


STEP3 新理事長候補が理事か確認

すでに理事なら理事長選出手続きを検討します。

理事でなければ社員総会での理事選任を先に行います。


STEP4 必要に応じて社員総会

新理事選任、旧理事辞任等を決議します。


STEP5 理事会で理事長を選出

定款に従って新理事長を選びます。


STEP6 旧理事長退任・新理事長就任

日付を明確にします。


STEP7 理事長変更登記

法務局で医療法人の代表者変更登記を行います。


STEP8 役員変更届

所管都道府県へ役員変更関係の届出を行います。

東京都では、新規就任、辞任、重任、退任等が役員変更届の対象です。


STEP9 登記事項変更の届出

理事長変更の登記後、都道府県へ登記事項の変更を届け出ます。

東京都は理事長の重任・変更を登記事項届の主な対象として明示しています。


STEP10 必要に応じて診療所・厚生局等の変更

新旧理事長が診療所の管理者を兼ねている場合等は、保健所・地方厚生局等への変更手続きを確認します。


理事長変更後の登記・行政手続き

理事長変更登記は必要?

必要です。

医療法人の理事長は法人を代表する者であり、登記事項となっています。

東京都は、

理事長の重任または変更

を、医療法人が登記後に都へ届け出る主な事項として明示しています。

したがって、

法人内部で理事長を決めただけでは手続き完了ではありません。

法務局で変更登記を行います。

登記手続き自体については司法書士へ依頼することもできます。

理事長が同じ人物のまま続投する場合でも、理事としての任期満了に伴う重任手続きを確認する必要があります。

詳しくは「医療法人の役員任期・重任完全ガイド」をご覧ください。


理事長の「重任」でも登記が必要?

医療法人役員には任期があり、理事長が同じ人物であっても任期満了後に再任される場合には、必要な法人内部手続き・登記等を確認します。

東京都は理事長の重任又は変更を登記事項の届出対象として明示しています。

「同じ人だから何もしなくてよい」

とは考えないようにしてください。


理事長変更後に都道府県への届出は必要?

必要です。

大きく、

役員変更関係

登記事項変更関係

を確認します。

東京都では役員変更届と登記事項の届出がそれぞれ用意されています。

大阪府でも役員変更届があり、2026年6月時点の必要書類として、社員総会議事録、理事会議事録、就任承諾書、履歴書、医師・歯科医師免許証写し等を案内しています。

兵庫県も医療法人関係手続きとして役員変更届・登記事項変更登記完了届の様式を公開しています。


理事長変更届に必要となる主な書類

自治体・変更内容によって異なりますが、例えば大阪府の2026年の案内では、理事長変更を含む役員変更届について次のような資料が示されています。

書類主な内容
役員変更届変更内容
社員総会議事録理事就退任等
理事会議事録理事長選任・重任
就任承諾書新理事長等
履歴書新任役員
医師・歯科医師免許証写し理事長変更時等

案件によっては、

  • 辞任届
  • 住民票
  • 印鑑証明
  • 登記事項証明書

等も確認します。

必ず申請先自治体の最新様式を使用してください。


「互選書」だけで理事長を決めていい?

自治体・定款を確認してください。

例えば大阪府は2026年6月時点で、理事長の就任・重任について**理事会議事録を求め、「互選書は不可」**と明示しています。

古い書式・過去の慣行をそのまま使用しないことが重要です。


理事長変更と管理医師変更の違い

理事長変更と管理医師変更は同じ?

違います。

これは理事長変更で最も重要なポイントの一つです。

理事長

は医療法人の代表者です。

一方、

管理医師

は個々の病院・診療所を管理する者です。

したがって、

ケースA

理事長A
管理医師B

から、

理事長C
管理医師B

へ変更する場合、

管理医師は変わりません。

ケースB

理事長A=管理医師A

から、

理事長B=管理医師B

へ変更する場合、

法人代表者+診療所管理者

の両方が変わります。

後者では行政手続きが増えます。


理事長を変えたら院長も変えなければならない?

必ずしも変更する必要はありません。

理事長と管理医師は別の立場だからです。

例えば複数院を運営する医療法人では、

理事長:A医師

本院管理者:B医師

分院管理者:C医師

という構成もあります。

したがって、

「理事長変更=院長変更」

ではありません。


院長・管理医師も変更する場合は?

診療所管理者を変更する場合には、管轄保健所等への変更届を確認します。

大阪府は法人等が開設する診療所について「診療所管理者変更届出書」を用意しています。

兵庫県も診療所開設届出事項変更届等の様式を公開しています。

自治体によって様式や期限が異なるため、診療所所在地を管轄する保健所へ確認してください。


保険医療機関の届出も必要?

変更内容によって必要です。

地方厚生局では、保険医療機関について、

  • 開設者(代表者)
  • 管理者

等の変更を届出事項として案内しています。

関東信越厚生局の2026年3月31日時点の案内でも、開設者(代表者)や管理者の変更欄が設けられています。管理者変更の場合には、保険医療機関管理者の要件を満たすことについても確認する仕組みとなっています。

そのため、

理事長変更後は厚生局手続きが何もない

と決めつけないことが重要です。


2026年から保険医療機関の管理者要件にも注意

保険医療機関の管理者については制度改正が行われており、厚生労働省は管理者の要件・責務に関する情報を公開しています。

したがって、M&Aや承継で新たな管理医師へ変更する場合には、

単に医師免許を持っているか

だけでなく、その時点で適用される保険医療機関管理者の要件も確認する必要があります。


理事長変更で定款変更は必要?

理事長の氏名だけが変わる場合、通常は理事長氏名を定款へ直接記載する形式ではないため、理事長変更だけを理由とする定款変更とは限りません。

ただし、理事長変更と同時に、

  • 法人名称変更
  • 主たる事務所変更
  • 診療所名称変更
  • 診療所所在地変更
  • 分院追加
  • 理事定数変更

等を行う場合には、定款変更認可・届出が関係する可能性があります。

したがって、

「今回の承継で理事長以外に何が変わるか」

を確認することが重要です。


医療法人M&Aに伴う理事長変更

医療法人M&Aでは、理事長変更は数ある手続きの一つにすぎません。

例えば、

旧体制

  • 社員A
  • 社員B
  • 社員C
  • 理事長A
  • 理事B
  • 理事C

から、

新体制

  • 社員D
  • 社員E
  • 社員F
  • 理事長D
  • 理事E
  • 理事F

へ変更する場合、

社員の入退社

理事・理事長の変更

を連動させます。

第三者への医療法人承継では、理事長だけを変更すればM&Aが完了するわけではありません。

社員・理事・監事等を含めたガバナンス移行を設計する必要があります。
医療法人M&A全体の流れについては「医療法人の承継・M&A完全ガイド」で詳しく解説しています。


M&Aでは理事長だけ先に変えない

医療法人M&Aで注意したいのが、クロージング順序です。

例えば旧社員が3名残っている状態で、

新オーナー側の医師だけ理事長へ変更

すると、理事長は新体制でも、社員総会は旧体制という状況が生じます。

社員総会は理事選任等の重要な権限を有するため、ガバナンス上好ましくありません。

M&Aでは、

新社員入社

必要な社員総会

新理事選任

新理事長選任

旧体制退任

など、法人を一瞬たりとも機関不在にしないよう順序を設計します。


親から子へ理事長を変更する場合

親族内承継では、例えば、

父:理事長兼管理医師

から、

息子:新理事長兼管理医師

へ変更するケースがあります。

この場合、

  • 息子が理事か
  • 息子が社員か
  • 父は社員として残るか
  • 父は理事として残るか
  • 本院管理医師も息子へ変更するか
  • 出資持分はあるか
  • 基金は誰が拠出しているか
  • 土地建物は父個人所有か
  • 金融機関借入はあるか

まで確認することをおすすめします。

理事長という役職だけ承継しても、医療法人全体の承継が完了したとは限りません。

親から子などへの理事長交代では、理事長変更だけでなく、社員、理事、管理医師、出資持分等を一体として確認することが重要です。
詳しくは「医療法人の親族承継完全ガイド」をご覧ください。


持分あり医療法人では持分も確認する

特に古い医療法人の場合、

理事長変更+出資持分承継

をセットで考える必要があります。

例えば父親が、

  • 理事長
  • 社員
  • 出資持分100%保有

している場合、

息子を理事長に変更しても、父の持分がそのまま残る可能性があります。

したがって、

経営権

財産権

を分けて確認してください。


基金拠出型医療法人では基金も確認

持分なし基金拠出型医療法人の場合には、

誰が基金を拠出しているか

を確認します。

例えば父が基金1,000万円を拠出したまま、息子へ理事長交代すること自体は制度上別の問題ですが、将来的な基金返還等を考えるなら整理しておく方がよいでしょう。

理事長変更、社員変更、基金返還請求権はそれぞれ別の法的関係です。


理事長が死亡・辞任した場合の対応

理事長が死亡した場合はどうする?

理事長が急逝した場合には、法人運営を止めることはできません。

まず、

  • 定款
  • 現在の理事
  • 社員
  • 理事任期
  • 管理医師
  • 出資持分・基金

等を確認し、速やかに新しい理事長を選任します。

また亡くなった理事長が診療所管理者でもあった場合には、管理者変更も緊急に対応する必要があります。

医療法人の代表者不在・診療所管理者不在を長期間放置しないことが重要です。


理事長が辞任した場合は?

任期途中で辞任することもあります。

東京都は任期途中の辞任を役員変更届の対象として案内しています。

辞任日と新理事長就任日を整理し、

代表者の空白期間

が生じないようにすることが重要です。


旧理事長を理事として残せる?

ケースによっては可能です。

例えば親子承継で、

父:理事長 → 理事

息子:理事 → 理事長

という形です。

父親が経営面を一定期間サポートしながら徐々に世代交代する方法として利用されることがあります。

ただし、

形式上は息子が理事長でも、実際には父親がすべて意思決定している

という状態が問題にならないよう、新体制での実際の法人運営を明確にしてください。


理事長変更後に確認したい金融機関・契約関係

理事長を変更したら銀行にも連絡する?

通常、必要です。

理事長は法人の代表者ですので、

  • 法人口座
  • 借入金
  • クレジットカード
  • リース
  • 決済サービス

等の代表者情報変更が必要になる場合があります。

特に法人借入について旧理事長が個人保証している場合には、

理事長変更=保証人自動変更

ではありません。

金融機関と別途調整してください。


賃貸借契約も確認する

クリニックのテナント契約について、

代表者変更時の通知義務

が契約書に入っている場合があります。

理事長交代後に、

  • 賃貸人
  • 管理会社
  • リース会社
  • 取引業者

等へ変更通知が必要か確認してください。


電子証明書・オンライン手続きも忘れない

近年、医療法人や医療機関では、

  • オンライン資格確認
  • 電子申請
  • 各種医療DX手続き

が増えています。

理事長・代表者変更に伴い、管理者アカウント・電子証明書・法人情報等の変更が必要になるサービスがないか確認しておくことをおすすめします。


理事長変更時の実務チェックリスト

理事長変更を行う場合には、最低限次を確認してください。

  1. 現行定款
  2. 社員名簿
  3. 理事・監事名簿
  4. 現理事長の任期
  5. 新理事長候補の理事就任状況
  6. 医師・歯科医師資格
  7. 社員総会の要否
  8. 理事会の開催
  9. 就任承諾書
  10. 辞任届
  11. 理事長変更登記
  12. 役員変更届
  13. 登記事項変更届
  14. 管理医師変更の有無
  15. 保健所手続き
  16. 地方厚生局手続き
  17. 施設基準への影響
  18. 銀行・借入金
  19. テナント契約
  20. リース・主要取引先

医療法人の理事長変更でよくある失敗

理事長変更でよくある失敗① 新理事長が理事ではない

外部から連れてきた医師を、

「今日から理事長です」

とすることはできません。

まず理事として適切に選任する必要があります。

社団医療法人の理事は社員総会決議によって選任することが原則です。


よくある失敗② 理事会議事録を作っていない

理事長選出に必要な法人内部手続きを確認せず、登記だけ進めようとするケースです。

例えば大阪府は理事長就任・重任について理事会議事録を求めています。


よくある失敗③ 登記だけで終わったと思う

理事長変更後は、所管行政庁への役員変更・登記事項関係の届出を確認する必要があります。


よくある失敗④ 理事長と管理医師を混同する

理事長と診療所管理者は別の立場です。

両方同じ人物だった場合には、それぞれの変更手続きを確認してください。


よくある失敗⑤ 厚生局への変更を忘れる

保険医療機関の代表者・管理者変更については地方厚生局の届出事項を確認してください。


よくある失敗⑥ M&Aなのに社員を変更していない

理事長だけ買主側へ変更して、社員総会を旧オーナー側が握っているケースです。

医療法人承継では社員構成まで確認することが非常に重要です。


よくある失敗⑦ 父から息子へ理事長を変えて承継完了と思う

出資持分、基金、不動産、社員構成等が旧理事長側へ残っている可能性があります。

親族承継では財産関係まで整理してください。


よくある失敗⑧ 理事長の任期を把握していない

理事長変更以前に、現在の理事・理事長の任期が切れているケースがあります。

過去の社員総会・理事会議事録まで確認してください。


よくある失敗⑨ 古い定款のまま進める

長年運営している医療法人では、定款が現在の法令・法人実態と一致していない場合があります。

理事長変更・M&Aの際は現行定款を必ず確認してください。


よくある失敗⑩ 変更日を適当に決める

理事辞任日、理事就任日、理事長退任日、新理事長就任日、管理医師変更日などが食い違うと、書類全体に矛盾が生じます。

特にM&Aではクロージング日を基準に日付を統一して設計することが重要です。


医療法人の理事長変更FAQ

Q1. 医療法人の理事長は誰でもなれますか?

原則として医師または歯科医師である理事の中から選出します。


Q2. 医師でない人を理事長にできますか?

都道府県知事の認可を受ける例外制度があります。

候補者の経歴や理事会構成等を踏まえて判断されます。


Q3. 新理事長は先に理事になる必要がありますか?

はい。

理事長は理事の中から選出するため、新理事長候補が理事でなければ、まず適切に理事へ選任する必要があります。


Q4. 理事長変更に社員総会は必要ですか?

新理事の選任が伴う場合には社員総会が必要です。

すでに理事である人物から理事長を選ぶ場合には、定款の理事長選出方法に従います。


Q5. 理事長変更に理事会は必要ですか?

現在の医療法・定款に基づく理事長選出手続きを確認します。

大阪府は理事長就任・重任について理事会議事録を役員変更届の添付書類としています。


Q6. 理事長変更は登記が必要ですか?

必要です。

理事長は医療法人の代表者であり登記事項です。東京都も理事長の重任・変更を登記事項届の対象として明示しています。


Q7. 理事長変更後に都道府県への届出も必要ですか?

必要です。

役員変更届及び登記事項変更関係の届出を確認します。


Q8. 現在の理事を理事長に変更できますか?

医師・歯科医師である理事で、その他の要件を満たせば通常検討できます。

定款に従って理事長選出手続きを行います。


Q9. 理事長変更と院長変更は同じですか?

違います。

理事長は医療法人の代表者、院長・管理医師は診療所の管理者です。


Q10. 理事長を変更したら管理医師も変更する必要がありますか?

同一人物が両方を兼任していて、両方交代するのであれば管理医師変更も必要です。

理事長だけ交代し管理医師が残る場合は別です。


Q11. 管理医師変更はどこへ届けますか?

診療所所在地を管轄する保健所等への変更届を確認します。

大阪府も法人開設診療所の管理者変更様式を公開しています。


Q12. 厚生局にも届出が必要ですか?

保険医療機関の開設者(代表者)や管理者変更について、地方厚生局への届出を確認します。


Q13. 父から息子へ理事長を変えれば事業承継は完了しますか?

必ずしも完了しません。

社員、出資持分、基金、不動産、借入金、管理医師等も確認する必要があります。


Q14. 医療法人M&Aでは理事長を変えるだけでいいですか?

不十分です。

社員・理事・監事・基金・出資持分・診療所等を含めて承継設計する必要があります。


Q15. 旧理事長は理事として残れますか?

ケースによって可能です。

ただし新理事長との役割分担や実際の法人運営を明確にすることが重要です。


Q16. 旧理事長は社員として残せますか?

制度上検討可能ですが、M&Aの場合はガバナンスに大きく影響するため慎重に判断してください。


Q17. 理事長が突然亡くなった場合は?

現行定款、理事構成等を確認し、速やかに新理事長選任手続きを行います。

亡くなった理事長が管理医師でもあった場合には診療所側の管理者変更も必要になります。


Q18. 理事長の住所が変わった場合も届出が必要ですか?

役員情報・登記事項への影響を確認する必要があります。

東京都は役員の改姓・住所変更等も役員変更届の対象として案内しています。


Q19. 理事長変更と同時に法人名を変えられますか?

可能ですが、法人名称変更は定款変更や登記等の別手続きが関係します。

理事長変更だけの場合よりスケジュールが長くなる可能性があります。


Q20. 理事長変更と同時に分院を開設できますか?

制度上は複数手続きを並行して進めることを検討できますが、分院追加には定款変更認可等が必要となるため、全体スケジュールを設計する必要があります。


Q21. 理事長変更は行政書士に依頼できますか?

医療法人の役員変更届、診療所関係の行政手続き等については、医療法人手続きを取り扱う行政書士へ相談できます。

登記は司法書士、税務は税理士等と連携して進めるのが一般的です。


医療法人の理事長変更を検討している先生へ

医療法人の理事長変更は、一見すると、

「代表者をA先生からB先生へ変えるだけ」

に見えます。

しかし実際には、

誰が理事長になるのか
その人は現在理事なのか
誰が社員なのか
旧理事長は残るのか
管理医師も変わるのか
持分・基金はどうなっているのか
金融機関・厚生局への変更は必要なのか

を確認しなければなりません。

特に、

  • 親から子への承継
  • 第三者M&A
  • 理事長の急逝
  • 複数院を運営する医療法人
  • 持分あり医療法人

では、単純な役員変更届だけでは完結しないケースが多くあります。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

現行定款・社員・役員確認
→ 承継スキーム整理
→ 社員入退社
→ 理事変更
→ 理事長変更
→ 司法書士との登記連携
→ 役員変更届
→ 登記事項変更届
→ 管理医師変更
→ 保健所手続き
→ 保険医療機関関係手続き

まで、一連の行政手続きをサポートしています。

「父から息子へ理事長を変更したい」

「医療法人を買収して理事長を交代したい」

「旧理事長を理事として残したい」

「社員も全部入れ替えたい」

「理事長と院長を同時に変えたい」

「どの届出が必要なのか分からない」

という先生は、変更日を確定する前にご相談ください。

【医療法人の理事長変更について相談する】


まとめ|理事長変更は「法人・診療所・保険医療機関」の3層で考える

最後に、医療法人の理事長変更で重要なポイントを整理します。

  1. 理事長は医療法人を代表する役員
  2. 原則として医師・歯科医師である理事から選出する
  3. 非医師・非歯科医師理事長には都道府県知事の認可が必要
  4. 新理事長候補が理事でなければ、まず理事選任が必要
  5. 社団医療法人の理事は原則として社員総会で選任する
  6. 理事長選出は定款に従って行う
  7. 理事長変更には登記が必要
  8. 所管行政庁への役員変更届を確認する
  9. 登記後は登記事項変更関係の届出も確認する
  10. 理事長と管理医師は別の立場
  11. 理事長変更=院長変更とは限らない
  12. 管理医師も変更する場合は保健所手続きが必要
  13. 保険医療機関の代表者・管理者変更は厚生局手続きも確認する
  14. M&Aでは理事長だけでなく社員構成を確認する
  15. 親族承継では持分・基金も確認する
  16. 旧理事長を理事・社員として残す場合はガバナンスを検討する
  17. 理事長急逝時は代表者・管理者の空白期間を作らない
  18. 金融機関・借入金・個人保証も確認する
  19. 契約・オンライン手続きの代表者情報も更新する
  20. 変更日から逆算して全手続きを設計する

理事長変更で最も重要なのは、

「役員変更届を出すこと」そのものではありません。

変更後も医療法人と診療所が適法かつ円滑に運営される状態を作ること

です。

そのためには、

医療法人のガバナンス

法人登記

診療所行政

保険医療機関

を一体として考えることが重要です。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、厚生労働省の医療法人関係通知、東京都・大阪府・兵庫県等が公表する2026年時点の医療法人関係情報、地方厚生局の保険医療機関関係情報をもとに作成しています。

厚生労働省は、医療法人には原則として理事3名以上、監事1名以上を置き、社団医療法人の役員は社員総会の決議によって選任すること、理事長は原則として医師・歯科医師である理事から選出する制度を示しています。

東京都は、医療法人役員の新規就任・辞任・重任・退任等について役員変更届を求め、理事長の重任・変更については必要な登記後に登記事項の届出を行うよう案内しています。

大阪府は2026年6月1日更新の役員変更届案内で、理事長変更時に社員総会議事録、理事会議事録、就任承諾書、履歴書、医師・歯科医師免許証の写し等を必要書類として示しています。

また、保険医療機関の代表者・管理者変更については地方厚生局への届出も確認する必要があります。関東信越厚生局は2026年3月31日更新の案内で、開設者(代表者)及び管理者変更について届出方法を示しています。

※医療法人の理事長選任方法、必要議事録、役員変更届、登記事項届、診療所管理者変更等の取扱いは、医療法人の定款、所管都道府県、保健所、個別案件によって異なる場合があります。実際の変更手続きでは最新の定款・行政庁資料をご確認ください。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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