【2026年最新版】医療法人の理事長・管理医師は兼務できる?本院・分院・他法人との兼務を完全解説

医療法人を運営する医師・歯科医師の先生から、

「医療法人の理事長とクリニックの院長は同じ人でもいいですか?」

「本院の管理医師をしながら、分院の管理医師も兼務できますか?」

「2つの医療法人の理事長を同時に務めることはできますか?」

「別の医療法人の理事長をしながら、自法人の分院長になることはできますか?」

「理事長は東京に住んでいて、診療所は大阪にありますが問題ありませんか?」

「管理医師は週3日の勤務でも大丈夫でしょうか?」

といったご相談があります。

医療法人の役員構成・分院開設・M&A・事業承継で非常に重要になるのが、「理事長」と「管理医師」の兼務です。

結論からいうと、

医療法人の理事長と、その医療法人が開設する診療所の管理医師を同じ医師・歯科医師が兼務すること自体は、一般的に可能です。

実際、多くの一人医師医療法人では、

理事長=院長=管理医師

という形で運営されています。

一方で、

複数の診療所の管理医師を同時に務める

ことや、

複数の医療法人の理事長を同時に務める

ことになると、話は大きく変わります。

例えば東京都は医療法人設立手引で、

複数の医療法人の理事長を兼務することは不適当

と明示しています。大阪府も同様に、複数医療法人の理事長兼務を不適当と案内しています。

また、医療法人が開設する病院・診療所等の管理者は、原則としてその医療法人の理事に加えなければなりません。厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱でも、法人が開設するすべての病院等の管理者が理事に加えられていることを確認事項としています。

したがって医療法人の兼務問題は、

「法律上禁止されているか」

だけで判断するのではなく、

実際にその役職の責任を果たせる勤務実態・管理体制があるか

まで確認することが非常に重要です。

本記事では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門的に取り扱う行政書士の立場から、

  • 医療法人の理事長とは何か
  • 管理医師とは何か
  • 理事長と管理医師は兼務できるか
  • 本院と分院の管理医師を兼務できるか
  • 複数医療法人の理事長を兼務できるか
  • 他医療法人の理事は兼務できるか
  • 理事長と他院勤務は両立できるか
  • 分院長は理事になる必要があるか
  • 管理医師の常勤性・勤務実態
  • 管理医師とMS法人役員の兼務
  • M&A時の兼務
  • 分院開設時の兼務
  • 保険医療機関管理者の要件
  • よくある失敗

まで、2026年時点の制度・行政実務を踏まえて詳しく解説します。


理事長・管理医師の兼務について相談したい先生へ

医療法人の兼務については、

「法律に禁止条文がないから大丈夫」

という判断だけでは不十分です。

例えば、

東京の医療法人Aの理事長をしている医師が、

大阪の医療法人Bでも理事長となり、

さらに大阪の診療所の管理医師を務める、

という構成を考えた場合、

単純に医師免許を持っているというだけでは判断できません。

  • それぞれの法人を実際に管理できるか
  • 理事長として理事会へ参加できるか
  • 管理医師として診療所を管理できるか
  • 勤務実態があるか
  • 移動距離に無理がないか
  • 診療時間が重複していないか
  • 他院での勤務状況
  • 行政庁の運用

などを確認する必要があります。

特に複数法人の理事長兼務については、東京都・大阪府が明確に「不適当」と案内しています。

【医療法人の理事長・管理医師兼務について相談する】


目次

医療法人の理事長とは?

理事長は、医療法人を代表する役員です。

医療法人では原則として理事3名以上、監事1名以上を置き、理事の中から理事長を選出します。医療法上、理事長は法人を代表し、法人業務について裁判上・裁判外の行為をする権限を有します。

簡単にいうと、

医療法人そのものの代表者

です。


管理医師とは?

一方、管理医師は、

病院・診療所という個々の医療機関を管理する医師・歯科医師

です。

理事長が、

法人

を代表・運営する立場なのに対し、

管理医師は、

診療所・病院

を管理する立場です。

つまり、

理事長と管理医師は制度上まったく同じ役職ではありません。


理事長と管理医師の違い

整理すると次のようになります。

項目理事長管理医師
対象医療法人個々の病院・診療所
主な役割法人を代表医療機関を管理
選任理事から選出医療機関ごとに置く
医師資格原則医師・歯科医師原則として医師・歯科医師
登記理事長は登記事項通常は法人登記ではない
保健所法人代表者として関係管理者として届出
分院法人全体で原則1人原則各院に必要

したがって、

医療法人に理事長は1人でも、管理医師は診療所数だけ存在する

ということがあります。


理事長と本院の管理医師は兼務できる?

一般的に可能です。

典型的な一人医師医療法人では、

理事長=本院の院長=本院管理医師

という構成になります。

例えば、

医療法人社団A会

理事長:山田医師
Aクリニック管理医師:山田医師

という形です。

この構成自体に特段の問題があるわけではありません。


管理医師は医療法人の理事になる必要がある?

原則として必要です。

医療法人が開設する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の管理者は、原則として医療法人の理事に加えなければなりません。大阪府も医療法第46条の5第6項に基づき、この原則を明示しています。

つまり、

管理医師=原則として理事

です。


管理医師を理事にしなくてもいい例外はある?

例外制度はあります。

医療法上、都道府県知事の認可を受けた場合には、管理者を理事に加えない取扱いが認められることがあります。大阪府も「管理者を医療法人の理事に加えない認可」という手続きを設けています。

厚生労働省も、病院等の立地・機能等を総合的に勘案し、管理者の意向を法人運営へ反映できる場合などについて例外を検討する考え方を示しています。

ただし、

「希望すれば管理医師を理事にしなくてよい」

という制度ではありません。

原則は理事就任です。


本院と分院がある場合の理事構成

例えば、

医療法人A会

本院:Aクリニック
管理医師:山田医師

分院:Bクリニック
管理医師:鈴木医師

の場合、

原則として、

山田医師
鈴木医師

の両方を理事に加えます。

つまり分院開設では、

管理医師を確保するだけでなく、理事へ就任させること

まで考える必要があります。


理事長が本院管理医師、別の医師が分院管理医師でもいい?

もちろん可能です。

むしろ分院展開では一般的な構成です。

例えば、

理事長・本院管理医師:山田医師

分院管理医師・理事:鈴木医師

という形です。

医療法人全体の代表者は山田理事長ですが、

分院の日常的な管理は鈴木医師が担います。


理事長が本院と分院の管理医師を両方兼務できる?

ここは慎重な判断が必要です。

医療法人の管理者は、単なる肩書ではありません。

実際にその医療機関の管理を行う必要があります。

特に病院について、東京都は、ある病院の管理者が他の病院等の管理者を兼ねることについて、

病院運営の円滑を欠くため、極めて例外的な場合を除いて許可しない

としています。

診療所についても、

「2院だから自動的に兼務可能」

という全国一律の考え方ではありません。


診療所なら2院の管理医師を兼務できる?

案件ごとの判断になります。

確認されるのは、

  • 本院の診療日
  • 分院の診療日
  • 診療時間
  • 所在地
  • 移動時間
  • 患者数
  • スタッフ体制
  • 他医師の勤務状況
  • 管理業務の実態

などです。

例えば、

本院

月・水・金

分院

火・木

のように診療日が完全に分かれ、

距離も近く、

双方を実際に管理できる体制である場合と、

本院

月~土

分院

月~土

の両方が同時に診療している場合では、

当然、管理実態の説明力が違います。


「週3日勤務なら管理医師になれる」は本当?

全国一律に、

週3日ならOK

という単純なルールではありません。

管理医師として適切に医療機関を管理できる勤務実態が必要です。

特に他院勤務がある場合には、

管理する診療所の診療時間中に別の医療機関で勤務していないか

などを確認される可能性があります。

したがって、管理医師候補者を決める段階で管轄保健所へ具体的な勤務表を示して事前相談することをおすすめします。


管理医師は常勤でなければならない?

病院については常勤性が強く求められ、東京都の非営利性・開設者確認資料でも病院管理者は常勤とされています。

一方、診療所については診療日数・勤務時間・診療実態等を踏まえて判断されます。

したがって、

病院管理者

と、

診療所管理者

を同じ感覚で考えないことが重要です。


管理医師が他のクリニックで勤務することはできる?

一律に禁止されているわけではありません。

例えば、

月・水・金:自身が管理するクリニック

火・木:別クリニック勤務

という勤務形態が検討できる場合があります。

ただし、

管理医師として管理責任を果たせるか

が最も重要です。

勤務地、診療時間、緊急時対応、スタッフ管理等も含めて確認してください。


管理医師が別医療法人の「理事」になることはできる?

理事長兼務とは分けて考える必要があります。

別医療法人の単なる理事であることについて、全国一律にすべて禁止されているわけではありません。

しかし、

  • 双方の法人で実際に理事職を果たせるか
  • 利益相反がないか
  • 取引関係がないか
  • MS法人等との関係
  • 常勤性

等を確認する必要があります。

特に医療法人同士で取引関係がある場合などは慎重に判断します。


複数の医療法人の理事長を兼務できる?

この問題は非常に重要です。

東京都は、

複数の医療法人の理事長を兼務することは不適当

と明示しています。

大阪府も同様に、

複数の医療法人の理事長を兼務する事は不適当

と案内しています。

したがって、

医療法人Aの理事長

と、

医療法人Bの理事長

を同一人物が兼ねる構成は、少なくとも東京都・大阪府では基本的に避けるべき構成です。


法律で「絶対禁止」と書かれていなければ兼務できる?

この考え方には注意が必要です。

行政実務では、

法律上明文で禁止されていない

ことと、

行政庁が適切な法人運営として認める

ことは別です。

東京都・大阪府が「不適当」と明示している以上、

「禁止条文がないから問題ない」

と判断して複数理事長兼務を前提に手続きを進めるのはおすすめできません。


なぜ複数医療法人の理事長兼務が問題になる?

理事長は単なる名誉職ではありません。

大阪府は、理事長について法人を代表するだけでなく、一定の頻度で自己の職務執行状況を理事会へ報告する義務があると案内しています。

つまり複数法人の理事長になれば、

  • 複数法人の業務を把握
  • 各理事会へ対応
  • 各法人を代表
  • 法人経営を監督

する必要があります。

そのため、実効的な法人運営という観点から兼務が不適当とされていると考えられます。


東京の医療法人と大阪の医療法人なら兼務できる?

所在地が離れていればむしろ実務上の懸念は大きくなります。

例えば、

東京の医療法人Aの理事長

かつ、

大阪の医療法人Bの理事長

となれば、

双方の法人で理事長職を実質的に遂行できるのかという疑問が生じます。

少なくとも東京都・大阪府双方が複数医療法人の理事長兼務を不適当と案内しているため、このような構成は慎重に避けるべきです。


既に複数医療法人の理事長を兼務している人がいる場合は?

「他で実例がある」

ことと、

現在の行政庁が適切と判断する

ことは別です。

既存事例には、

  • 古い時期から継続している
  • 行政庁が事情を把握していない
  • 個別事情がある
  • 是正指導中
  • 所管自治体の運用が異なる

などさまざまな可能性があります。

他法人の登記事項だけを見て、

「同じことができる」

と判断するのは危険です。


一つの医療法人で複数分院を運営する場合は?

これは複数法人の理事長兼務とは全く違います。

例えば、

医療法人A会

本院
分院1
分院2
分院3

を開設していても、

理事長はA医師1名

で問題ありません。

各院には別々の管理医師を置き、それぞれ原則として理事に加える形になります。

つまり多院展開したい場合、

複数医療法人を作って自分が全部理事長になる

よりも、

一つの医療法人で複数診療所を運営する

方が制度上自然なケースが多くあります。


複数法人に分けるメリットがある場合もある?

事業上の事情によっては別法人とするケースもあります。

しかし、その場合でも、

同じ医師が全部の理事長になる

ことを当然の前提にするべきではありません。

各法人に適切な理事長を配置できるかまで考えて法人スキームを設計する必要があります。


医療法人Aの理事長が、医療法人Bの「理事」になるのは?

「理事長+理事」の組合せは、「理事長+理事長」とは異なります。

全国一律で全面禁止とされるわけではありませんが、

  • 法人運営へ実際に関与できるか
  • 利害関係
  • 取引関係
  • 勤務状況
  • 法人間関係

を確認します。

特に法人Bの管理医師も兼ねる場合は、さらに実勤務体制まで確認する必要があります。


医療法人Aの理事長が、医療法人Bの管理医師になるのは?

これはかなり慎重に検討する必要があります。

例えば、

A医療法人理事長:東京

B医療法人診療所管理医師:大阪

というケースでは、

A法人理事長としての職務

と、

B診療所管理医師としての勤務・管理責任

を両立できるかが問題になります。

さらにB法人の診療所管理者になれば、原則としてB法人の理事にも加わる必要があります。

したがって、

A法人理事長+B法人理事+B診療所管理医師

という構成になります。

これは形式的な兼務可否だけでなく、実態を行政庁へ具体的に説明できるかが重要です。


理事長が別の病院・クリニックで勤務医として働くのは?

勤務医として他院へ勤務すること自体が一律禁止されているわけではありません。

ただし、

  • 理事長として法人運営できるか
  • 自法人管理医師も兼ねる場合は診療所管理ができるか
  • 他院勤務時間と重複しないか
  • 常勤性に問題がないか

を確認します。

特に理事長兼管理医師の場合、

他院勤務が多すぎて自院にほとんどいない

という状態では、管理実態を疑われる可能性があります。


理事長が東京在住、クリニックが大阪でもいい?

住所が違うことだけで一律に不可とは言い切れません。

しかし重要なのは、

実際に理事長・管理医師として職務を遂行できるか

です。

特に理事長本人が大阪診療所の管理医師も兼ねる場合、

  • 毎週どの程度大阪にいるのか
  • 診療日はどうなっているか
  • 東京で別勤務していないか
  • 緊急時対応
  • スタッフ管理

などが問題になります。

単に、

「新幹線や飛行機で通えるから大丈夫」

という話ではありません。


管理医師がオンライン診療中心でも大丈夫?

オンライン診療を中心とするクリニックであっても、

管理医師という立場が形式化してよいわけではありません。

医療機関の管理責任は残ります。

オンライン診療だから、

「全国どこにいても名義上管理医師になれる」

と考えるのは危険です。

診療所の所在地、医療従事者、診療体制等を適切に管理できる実態が必要です。


管理医師とMS法人役員を兼務できる?

注意が必要です。

厚生労働省は医療機関の非営利性確認について、医療機関の管理者が、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないことを確認事項としています。

2026年1月の一般社団法人による医療機関開設に関する厚生労働省通知でも、管理者について、当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を原則兼務しないという考え方が改めて示されています。


MS法人とは?

MS法人とは、一般に医療法人・診療所へ、

  • 不動産
  • 医療機器
  • 広告
  • 人事
  • 事務
  • 経営支援

などを提供する株式会社等を指す実務上の呼称です。

例えば管理医師が、

診療所へ医療機器を高額で貸しているMS法人の代表取締役

でもある場合、

医療機関の非営利性・独立性という観点から問題になる可能性があります。


「自分のMS法人」なら大丈夫?

むしろ関係性が強いため慎重な確認が必要です。

問題なのは、

誰の会社か

だけではなく、

その営利法人が医療機関の開設・経営にどの程度影響しているか

です。


分院開設のとき最も注意する兼務

分院を出す場合、

「とりあえず現在の理事長を分院長にもしておこう」

と考えるケースがあります。

しかし、

管理医師の確保を後回しにするための暫定的な名義

として兼務させるのはおすすめできません。

分院開設時点から、

誰が実際に分院を管理するのか

を決めておくことが重要です。


分院長候補はいつ理事にする?

分院管理医師は原則として理事になります。

そのため、

  • 定款変更認可
  • 分院追加
  • 理事追加
  • 役員変更
  • 管理医師就任

のタイミングを整合させます。

分院長就任後に、

「理事にするのを忘れていた」

という状態を避けてください。


分院追加で理事定数を超える場合

例えば定款が、

理事3名以上5名以内

で、

現在理事が5名いる場合、

新しい分院長を理事へ追加すると6名になります。

その場合、分院追加と合わせて理事定数の変更を検討する必要があります。


医療法人M&Aで兼務が問題になるケース

M&Aでは、新理事長候補がすでに別の医療法人の理事長であることがあります。

例えば、

買主側医師A

現在:医療法人X理事長

承継後:医療法人Y理事長予定

というケースです。

東京都・大阪府の運用を踏まえると、このままX・Y両法人の理事長を兼務する構成は不適当と判断される可能性が高いため、M&A前に役員構成を再設計する必要があります。


M&Aで新理事長を誰にするかは早めに決める

M&A契約を締結してから、

「買主は既に別医療法人の理事長だから、新法人の理事長になれない可能性がある」

と判明すると、クロージング全体に影響します。

したがってDD段階で、

  • 現在の役職
  • 他医療法人役員
  • 管理医師
  • 勤務先
  • MS法人役員

まで確認することをおすすめします。


親族承継でも同じ

例えば父親が2つの医療法人に関与しており、

医師である息子へ承継する場合、

息子を2法人の理事長にすることを当然の前提にしないことが重要です。

複数法人の理事長兼務について行政運用を確認し、それぞれ適切な代表者を配置できるか検討します。


保険医療機関の管理者要件にも注意

医療法上の管理者だけでなく、保険医療機関としての管理者要件も確認する必要があります。

2026年時点では、保険医療機関の管理者について一定の経験等に関する制度が整備されており、地方厚生局も管理者要件・責務に関する案内を更新しています。東海北陸厚生局の2026年7月案内では、病院等について保険医としての診療経験など複数の要件が示されています。

したがって、

「医療法上管理医師になれるから、保険医療機関の管理者としても何も確認不要」

とは限りません。


自由診療だけなら兼務は自由?

保険医療機関指定が関係しない点では論点が一つ減ります。

しかし、

医療法上の管理者責任

や、

医療法人役員としての職務

は残ります。

美容クリニックなど自由診療中心でも、管理医師が名義だけという状態は適切ではありません。


美容クリニックの多院展開で特に注意

美容クリニックでは、

  • 東京
  • 大阪
  • 名古屋
  • 福岡

など複数地域へ急速に分院展開するケースがあります。

このとき1人の医師を全院の管理医師にするのではなく、

各院に実態のある管理医師を配置する

ことを基本に設計するべきです。

管理医師は原則としてその医療法人の理事になるため、理事構成も合わせて考えます。


歯科医療法人でも同じ?

基本的な考え方は同じです。

歯科医療法人でも、

  • 理事長
  • 管理歯科医師
  • 分院管理者
  • 理事

という役割を整理します。

複数歯科医院を運営する場合、各院の管理歯科医師を原則として理事に加えます。


医療法人の理事長・管理医師兼務パターン一覧

代表的なケースを整理すると次のようになります。

パターン基本的な考え方
自法人理事長+本院管理医師一般的に可能
自法人理事長+分院管理医師個別に管理実態を確認
本院+分院の管理医師慎重な個別判断
医療法人A理事長+医療法人B理事長東京都・大阪府では不適当
医療法人A理事長+B法人理事個別判断
医療法人A理事長+B法人管理医師実態・勤務状況を慎重確認
管理医師+他院勤務医勤務実態を確認
管理医師+利害関係MS法人役員原則避けるべき
分院管理医師+自法人理事原則必要
病院管理者+他病院管理者極めて例外的

東京都は病院管理者の他病院等管理者との兼務について、極めて例外的な場合を除き許可しないと案内しています。


理事長・管理医師兼務で行政庁が見るポイント

実務上、次の事項を整理しておくとよいでしょう。

① 勤務曜日

どの日にどの医療機関へ勤務するのか。

② 診療時間

診療時間の重複がないか。

③ 移動距離

実際に移動可能か。

④ 患者数

管理負担がどの程度あるか。

⑤ スタッフ数

管理対象となる従業者数。

⑥ 緊急時対応

管理者不在時の体制。

⑦ 他法人役職

他法人理事長・理事等になっていないか。

⑧ 営利法人関係

MS法人等との利害関係。


理事長・管理医師の兼務でよくある失敗① 「法律に禁止と書いていないから大丈夫」

行政実務では、

不適当

と判断される構成があります。

複数医療法人理事長兼務は、その代表例です。


よくある失敗② 既存の他法人事例をそのまま真似する

他法人で同じ兼務があるからといって、自分の案件でも認められるとは限りません。

所管行政庁・時期・個別事情が違います。


よくある失敗③ 分院長が決まらないので理事長を仮の管理医師にする

本当に管理できる勤務実態がなければ問題になります。

「求人が決まるまでの名義」という発想は避けてください。


よくある失敗④ 管理医師を理事へ追加していない

管理者は原則として理事へ加える必要があります。


よくある失敗⑤ 理事定数を確認していない

分院管理医師を追加した結果、定款上の理事数上限を超えることがあります。


よくある失敗⑥ 他院勤務時間が重複する

管理医師として勤務している時間に、別クリニックでも勤務しているような勤務表にならないよう注意してください。


よくある失敗⑦ MS法人役員兼務を軽く考える

管理医師と利害関係営利法人役職員との兼務は、非営利性の観点から問題になり得ます。


よくある失敗⑧ M&A後に初めて兼務問題に気づく

新理事長候補が既に別医療法人の理事長なら、クロージング前に確認してください。


よくある失敗⑨ オンライン診療だから所在地は関係ないと思う

管理医師として医療機関を実際に管理する責任があります。

オンライン診療中心でも管理責任が消えるわけではありません。


よくある失敗⑩ 医療法と保険医療機関の要件を混同する

医療法上の管理者要件と、保険医療機関としての管理者要件・届出は分けて確認してください。2026年時点でも厚生局は保険医療機関管理者の要件に関する案内を更新しています。


医療法人の理事長・管理医師兼務FAQ

Q1. 医療法人の理事長と院長は同じ人でもいいですか?

はい。

理事長が自法人の診療所管理医師を兼ねる構成は一般的です。


Q2. 理事長と管理医師は同じ役職ですか?

違います。

理事長は医療法人の代表者、管理医師は個々の医療機関の管理者です。


Q3. 管理医師は理事になる必要がありますか?

原則として必要です。

医療法人が開設する病院・診療所等の管理者は原則として理事へ加えます。


Q4. 管理医師を理事にしないことはできますか?

都道府県知事の認可を受ける例外制度がありますが、原則は理事就任です。


Q5. 理事長が本院と分院両方の管理医師になれますか?

一律に可能とはいえません。

診療日、診療時間、所在地、勤務実態等を踏まえて個別に判断されます。


Q6. 週3日勤務でも管理医師になれますか?

全国一律に「週3日なら可」という制度ではありません。

管理者として実際に医療機関を管理できる勤務実態が重要です。


Q7. 管理医師が別の病院・クリニックで勤務できますか?

可能な場合があります。

ただし管理医師としての管理責任を果たせる勤務スケジュールである必要があります。


Q8. 2つの病院の管理者を兼務できますか?

東京都では、病院管理者が他の病院等の管理者を兼務することについて、極めて例外的な場合を除いて許可しないとしています。


Q9. 2つの診療所なら管理医師を兼務できますか?

個別判断です。

診療日・時間、距離等を示して保健所へ事前確認することをおすすめします。


Q10. 2つの医療法人の理事長を兼務できますか?

東京都・大阪府は、複数医療法人の理事長兼務を「不適当」と明示しています。


Q11. 医療法人Aの理事長をしながら医療法人Bの理事になれますか?

一律禁止とは限りませんが、職務遂行、利害関係、勤務状況等を確認する必要があります。


Q12. 医療法人Aの理事長が医療法人Bの管理医師になれますか?

慎重な個別判断が必要です。

B法人の管理医師になれば原則としてB法人の理事にも加わるため、役職・勤務実態を総合的に確認してください。


Q13. 東京在住でも大阪の医療法人理事長になれますか?

住所だけで一律判断する問題ではありません。

実際に理事長職を遂行できる体制が重要です。


Q14. 東京在住で大阪の診療所管理医師になれますか?

勤務日数、診療時間、移動、管理実態等を具体的に確認する必要があります。


Q15. オンライン診療なら遠方居住でも管理医師になれますか?

オンライン診療であることだけで管理責任が免除されるわけではありません。

医療機関を実際に管理できる体制が必要です。


Q16. 分院長は理事にしなければなりませんか?

分院長が管理者であれば原則として理事に加える必要があります。


Q17. 分院長は社員にもする必要がありますか?

理事就任と社員資格は別です。

管理者だから必ず社員にしなければならないわけではありません。


Q18. 理事長がMS法人社長を兼ねてもいいですか?

具体的な関係によって慎重な判断が必要です。

特に管理医師も兼ねる場合、当該医療機関と開設・経営上利害関係のある営利法人役職員との兼務は、原則避けるべきものとして厚生労働省が確認事項を示しています。


Q19. 管理医師が自院のMS法人役員でもいいですか?

医療機関との利害関係が強い場合には非営利性・独立性が問題になります。

事前に行政庁へ具体的な取引内容を示して確認してください。


Q20. M&Aで新理事長候補が別医療法人の理事長です。どうすればいいですか?

複数医療法人の理事長兼務を不適当としている自治体があるため、M&Aクロージング前に役員体制を再設計することをおすすめします。


Q21. 理事長変更と管理医師変更は同時にできますか?

可能ですが、医療法人側の役員・理事長変更と、診療所側の管理者変更は別手続きです。

それぞれ必要な届出を行います。


Q22. 保険医療機関でも管理医師の兼務だけ見ればいいですか?

いいえ。

保険医療機関管理者については、医療法とは別に保険医療機関としての要件・責務も確認する必要があります。


分院展開を考えている医療法人へ

分院を増やしていく場合、

「理事長が全部管理する」

という方法には限界があります。

例えば、

本院

分院1

分院2

分院3

と増やしていく場合、

それぞれに実態のある管理医師を配置し、

原則として各管理医師を理事へ追加する体制を作る方が、医療法人として自然なガバナンスになります。

将来的に5院、10院と展開することを考えている場合には、

医療法人設立時・分院1院目の段階から役員構成を設計する

ことをおすすめします。


医療法人M&Aを検討している方へ

M&Aでは、新理事長候補者について必ず、

  • 現在の勤務先
  • 現在の理事長職
  • 他医療法人の役員
  • 他院管理医師
  • MS法人役員
  • 居住地
  • 勤務予定

を確認してください。

特に、

現在すでに別医療法人の理事長

である場合、

その医師をそのまま譲受法人の理事長にすることは、東京都・大阪府などの運用上問題となる可能性があります。

M&A契約を締結してから気付くのでは遅いため、行政DD段階で確認することが重要です。


医療法人の理事長・管理医師兼務チェックリスト

兼務を検討する場合には、次の項目を確認してください。

  1. どの医療法人の理事長か
  2. 他の医療法人の理事長ではないか
  3. 他法人の理事ではないか
  4. どの診療所の管理医師か
  5. 他院でも管理医師ではないか
  6. 本院・分院の診療曜日
  7. 診療時間
  8. 移動距離
  9. 他院勤務時間
  10. 管理医師としての常勤性
  11. 理事就任状況
  12. 定款上の理事定数
  13. MS法人役員兼務
  14. 医療法人との取引関係
  15. 保険医療機関管理者要件
  16. 理事会参加状況
  17. 法人所在地
  18. 本人居住地
  19. 緊急対応体制
  20. 管轄行政庁の運用

理事長・管理医師の兼務でお悩みの先生へ

医療法人の兼務問題は、

「兼務できる/できない」

という二択だけではありません。

例えば、

理事長+自法人本院管理医師

なら一般的な構成ですが、

理事長+自法人分院管理医師

では勤務実態を確認する必要があります。

さらに、

医療法人A理事長+医療法人B理事長

になれば、東京都・大阪府では不適当と明示されています。

つまり、

どの法人の、どの役職を、どの勤務地で兼務するのか

によって結論が変わります。

当事務所では、医療法人・クリニック関係の行政手続きを専門分野として、

現在の役員構成確認
→ 兼務可否の整理
→ 行政庁への事前照会
→ 理事変更
→ 理事長変更
→ 分院追加
→ 管理医師変更
→ 保健所手続き
→ 保険医療機関関係手続き
→ M&A・承継時の役員設計

までサポートしています。

「本院と分院を同じ管理医師にしたい」

「別の医療法人でも理事長をしている」

「M&Aで新理事長候補の兼務が問題にならないか知りたい」

「東京在住の医師を大阪の理事長・管理医師にしたい」

「管理医師が別クリニックでも勤務している」

という場合には、役員選任や分院開設・M&Aクロージングを行う前にご相談ください。

【医療法人の理事長・管理医師兼務について相談する】


まとめ|「肩書」ではなく実際に職務を果たせるかが重要

最後に重要なポイントを整理します。

  1. 理事長と管理医師は別の役職
  2. 理事長は医療法人を代表する
  3. 管理医師は個々の医療機関を管理する
  4. 理事長と自法人本院管理医師の兼務は一般的
  5. 管理医師は原則として医療法人の理事に加える
  6. 管理医師を理事にしない場合には例外的認可制度がある
  7. 分院管理医師も原則として理事になる
  8. 本院・分院双方の管理医師兼務は個別判断
  9. 診療日・診療時間・距離・管理実態が重要
  10. 全国一律の「週3日なら管理医師可」というルールではない
  11. 病院管理者の他病院等との兼務は非常に厳格
  12. 東京都は極めて例外的な場合を除き許可しないとしている
  13. 複数医療法人の理事長兼務は東京都で不適当
  14. 大阪府でも複数医療法人の理事長兼務は不適当
  15. 他医療法人の理事兼務は理事長兼務とは別に検討する
  16. 他法人の管理医師を兼ねる場合は勤務実態を慎重確認する
  17. 遠方居住の場合は実際の勤務・管理体制が重要
  18. オンライン診療でも管理責任はなくならない
  19. 管理医師と利害関係営利法人役員の兼務は原則慎重に扱う
  20. 分院展開では各院に実態ある管理医師を置くことが重要
  21. M&Aでは新理事長候補の他法人役職を事前確認する
  22. 保険医療機関管理者の要件も別途確認する
  23. 他の法人で実例があっても自法人で認められるとは限らない
  24. 法令上禁止されていないことと行政上適切であることは別
  25. 兼務判断は具体的な勤務実態を示して行政庁へ確認することが重要

医療法人の理事長・管理医師兼務について最も重要なのは、

「その肩書を名乗れるか」

ではありません。

「それぞれの役職に求められる責任を、実際に果たせる状態にあるか」

です。

理事長は医療法人全体を適切に運営し、

管理医師は医療機関を実際に管理する。

この両方を本当に遂行できる勤務実態・ガバナンスになっているかを基準に、兼務を判断することが重要です。


参考となる公的情報・一次情報

本記事は、医療法、厚生労働省「医療法人運営管理指導要綱」「医療法人が開設する病院等の管理者の理事就任について」、東京都・大阪府の医療法人関係資料、地方厚生局の保険医療機関管理者関係資料等を基に、2026年8月時点の制度・行政実務を整理しています。

厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱では、医療法人が開設する病院等の管理者が原則としてすべて理事へ加えられていることを確認事項としています。

東京都の医療法人設立関係資料では、複数の医療法人の理事長を兼務することを「不適当」と明示しています。

大阪府も2025年9月更新の医療法人構成員に関する案内で、複数医療法人の理事長兼務を不適当とし、法人が開設するすべての病院・診療所等の管理者について原則として理事へ就任する必要があると説明しています。

東京都は病院管理者について、他の病院等の管理者との兼務は病院運営の円滑を欠くため、極めて例外的な場合を除き許可しないとしています。

また厚生労働省は、医療機関の管理者について、当該医療機関の開設・経営上利害関係のある営利法人等の役職員を原則として兼務しないという非営利性確認上の考え方を示しています。

※理事長・管理医師・他院勤務・他法人役員の具体的な兼務可否については、医療機関の種類、診療時間、勤務実態、所在地、所管自治体等によって判断が異なる場合があります。実際の役員選任・診療所開設・分院追加・M&Aに際しては、事前に所管都道府県・保健所等へ具体的な勤務体制を示して確認することをおすすめします。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、東証プライム上場企業を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。医療法人関係、補助金申請に専門特化。趣味は週7日の筋トレ。

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