兵庫県西宮市/神戸市のクリニックの医療法人化、非営利型一般社団法人などの分院開設に強いカミーユ行政書士事務所です。
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クリニック(医科、歯科)や医療法人、美容外科クリニックなどの様々なお手続きはお気軽にお問い合わせ下さい。
事業継承して開業する方法は?
クリニックが事業継承して開業する方法は次のように分類されます。
【個人クリニックを承継】
①個人開設のクリニックを承継
【医療法人等の法人クリニックを承継】
②医療法人等それ自体を承継(社員、所有者の入れ替え)
③医療法人が開業しているクリニックのみを承継(事業譲渡・分割譲渡)
④医療法人の法人格のみを承継(現存のクリニックは承継せずに法人のみを承継する。)
医院の承継は、個人開設と医療法人開設で、以下のようにスキームが異なります。
・個人開設:事業譲渡
・医療法人開設:出資持分譲渡+社員入れ替え
個人開設の医院は個人から個人、または個人から医療法人に経営権を譲渡するので、譲受側は譲渡対価を支払うことで譲渡が完了します。
一方、医療法人開設では、出資持分のある医療法人の場合、出資持分を全て買い取って経営権を引き継ぐのが一般的です。
出資持分とは、出資者の財産権を指します。
例えば、法人設立時の出資金400万円の内100万円を出資した場合、法人の純資産が1000万であれば、4分の1の250万円を払い戻せるということです。
事業譲渡で個人開設の医院を承継する場合は、許認可等が引き継がれないため、譲渡・譲受側の双方で手続きが必要です。
譲渡・譲受側で必要な主な手続きは以下の通りです。
譲渡側 | 診療所廃止届:保健所保健医療機関廃止届:厚生局 |
譲受側 | 診療所開設届:保健所保険医療機関指定申請書:厚生局 |
譲受側は、上記に加えて関係各所に事前相談が必要である他、従業員の引き継ぎには、社会保険事務所や労働局等で雇用についての手続きも必要となります。
また、医院にレントゲン機器がある・なしによって、エックス線装置設置または廃止届を提出する必要がある点にも注意しましょう。
なお、保健所に提出する開設届の期限は10日以内です。
個人開設の医院を承継する場合は、開設者が変わるため、保健医療機関コードも変更しなくてはなりません。
承継直後に行う診療報酬請求は、承継前に診察していた譲渡側(前院長)の保健医療機関コードで行うため、レセコンと電子カルテのコードの切り替えが必要になります。
承継後にトラブルにならないように、事前に取引先の電子カルテメーカーに相談しておくと良いでしょう。
承継開業のメリット・デメリットは?
承継開業のメリットとデメリットはどのようなものなのでしょうか?
承継開業のメリットとしては下記のような事柄が挙げられます。
承継開業のメリット①開業にかかる初期費用を削減できる
承継開業の場合、基本的には既存の建物を引き継ぐので、建設費がかかりません。
医療機器やインテリアなども一緒に引き継げば、かなり初期費用を削減できることになります。
地域においてクリニックや医院の認知度もすでにあるので、認知度の無い新規開業と比べると開業の際の広告費も少なくて済むことでしょう。
承継開業のメリット②患者を引き継げるため、事業の見通しを立てやすい
承継するクリニックや医院はすでに同じ科目で営業しているため、来院する患者層や患者単価、来院ニーズなどを引き継いだカルテのデータで知ることができます。
そのため、承継開業は新規開業に比べ、経営などの見通しが立てやすいと言えるでしょう。
また、患者を引き継ぐことも可能なため、収益を最初から見込むことができます。
承継開業のメリット③雇用されているスタッフを引き継げる
承継開業の場合には、雇用スタッフをそのまま引き継ぐことがほとんどです。
とくに、医療法人の場合には、雇用契約を医療法人とスタッフの間で結んでいるため、その医療法人を引き継ぐとそのまま雇用契約も継続となります。
医師や看護師など採用難易度が高い専門スタッフを引き継げることは、開業するクリニックや医院の大きな強みとなるでしょう。
承継開業のメリット④開業にかかる時間や労力を削減できる
承継開業では、必要な物件探しや設計、建設、雇用スタッフの採用などにかかる時間をカットできるため、開業までの準備期間が短縮できます。
また、建物や内装の設計、依頼業者の選定、医療機器の選定などもそのまま引き継げば、開業までの検討事項を削減することが可能です。
承継開業のメリット⑤承継元の前院長が築いてきた信頼関係を引き継げる
長年運営してきた承継元の実績があれば、銀行からの融資が受けやすい場合があります。
また、地域にあるほかの医療機関との連携や医師会への入会なども、スムーズに行える可能性が高まります。
一方でデメリットとしては下記のようなことが挙げられます。
承継開業のデメリット①承継元の前院長の診療方針を考慮する必要も
長く通院しているような患者の診療方針は前院長に聞いた方が良い場合もあります。
また、従業員が前院長の縁故者であったりする場合もあります。
そのように、承継元であるクリニックや医院の運営年数が長い場合、前院長と患者や従業員とのつながりが強いため、承継後もすぐに自分のスタイルで運営することが難しいことがあります。
一方で承継開業のデメリットは下記のようなことが挙げられます。
承継開業のデメリット②建て直しやリフォームなどが必要となることも
承継した建物が老朽化していたり、内装や設備の使い勝手が悪かったりする場合には、建て直しやリフォームをしなければならず、多額の修繕費がかかる場合があります。
承継開業のデメリット③売却案件の中から選ぶので、全てが希望条件に当てはまるとは限らない
限られた売却希望の案件の中から、立地や譲渡金額等さまざまな条件を比較しつつ、自分の承継したい案件を選ぶことになります。
では、新規開業か承継開業かどちらがいいのでしょうか?
立地にこだわりがなければ承継開業も一つの選択肢として検討しても良いでしょう!
承継先を検討する際には下記の項目を意識すると良いです。
①患者が付くかどうかは承継される先生の手腕によります。(7割程度で評価を。) ⇒承継される前から週1くらいの割合で勤務されることをお薦めします。 ②承継開業は利害関係者が多いので新規開業よりも精神的な負担は大きいです。 ⇒タフな交渉が必要なことが多いです。 ③承継開業もそれなりの費用がかかります ⇒譲渡価格に固執することなく、銀行融資は受けられるだけ受けておいた方が後々のことを考えると良いです。
クリニック継承の流れは?
(1) 開業希望地・時期や診療コンセプト等を考えておく
スムーズなクリニック承継のためにもまず、いつ・どこで開業するかなど考えておく必要があります。
実際に承継するクリニックが希望地にあるかも分からないですし、開業することを決めたからといって直ぐに承継できるわけでもありません。
ご自身が実現したい診療のコンセプトを持っておけば、承継クリニックの選定も円滑になりますし、承継後のイメージも湧きやすくなります。
(2)クリニック承継について専門家へ相談等をする
次に、クリニック承継の専門家に相談しましょう。
承継先のクリニックを自分で見つけるのは困難ですし、承継クリニックの情報を複数有していることが多いので、承継したいクリニックの選択肢の幅も広がります。
特にヘルスケア専門の仲介業者であれば多くのクリニックに巡り合えますし、条件に合ったクリニックを紹介してくれます。
(3)秘密保持契約書及び仲介契約書(業務委託契約書)を締結する
信頼できる専門家を見つけたら、秘密保持契約書・仲介契約書を結びます。
秘密保持契約は、承継者から預かる個人情報や承継クリニックとの交渉過程で知り得た機密情報を第三者に開示しないことを定めた契約です。
仲介契約書は、依頼する専門家の業務内容、業務手数料や報酬体系等について定めた契約になります。
(4)承継クリニック候補先を選定する
承継クリニックの候補先を選定するステップです。承継希望地等の条件があれば専門家から条件に合った承継先を紹介してもらえます。
クリニックの情報はノンネームといって、クリニック名・所在地・詳細な財務情報等が分からない匿名での紹介になります。
詳しい情報の開示を希望する場合は、承継者の氏名や勤務先の情報を承継元に伝えた上で詳細情報開示の承諾を取ります。
この行為をネームクリアと呼びます。
ネームクリアは複数のクリニックに同時期に行うことができます。
(5)承継クリニックの内見・院長先生との面談
選定した候補先の中から、特に興味があるクリニックの内見と院長先生との面談を実施します。
詳細情報を知っているとはいえ、クリニックの内装・雰囲気・医療機器を見ておかないと決めることはできません。
また、院長先生がどのような診療を行っているかなどを面談で確認することで承継後にうまく運営できるかの判断材料になります。
内見・面談のステップを踏むことで承継先を絞り込んでいきます。
(6)承継クリニックを決定する
実際に承継するクリニックを決定します。
承継過程で得た情報を基に承継先を決めていきます。
(7)承継元と条件調整し、基本合意書を締結する
承継先が決まったら、承継元と承継条件の調整を行います。
内装や医療機器の老朽化が想定していたよりも進んでいて買い替えが必要になることもあります。
こういった場合は譲渡対価を減額するなど承継元と交渉します。
それ以外にも承継時期やスタッフ・契約関係の引き継ぎなどを調整していきます。
承継条件の調整が終わり、双方が合意した内容を盛り込み基本合意書を締結します。基本合意書は、合意した事項の内容を証する書面になりますが、一般的には法的拘束力を有しません。
(8)買収監査を実施する
基本合意書締結後に買収監査を実施します。
買収監査は、承継するクリニックにリスクがないか、財務情報の数字が適正であるかなどを調査することです。
個人運営のクリニックやクリニックの規模が小さい場合は買収監査を省略することがあります。
(9)最終条件を調整し、最終譲渡契約書を締結する
買収監査の結果、クリニックの承継にあたりリスクが存在していたり財務情報が不正確であったりした場合は承継条件の最終調整を行います。
最終条件調整後、双方が合意した内容を最終譲渡契約書に盛り込み締結します。
(10)承継を実行し対価を支払う
最終譲渡契約書の内容に沿い承継を実行していきます。
契約書には、承継実行日に承継の対象となるクリニックの資産を承継し、承継人は承継の対価を承継元に支払うことにより承継を完了させます。
(11)行政手続きを進める
承継元との間で承継が無事完了しただけで開業できるわけではありません。
開業するために、承継人は承継クリニックの所在地を管轄する保健所に診療所開設届を提出した上で保健所の検査を通過する必要があります。
また、保険診療を行う場合は厚生労働省所管の地方厚生局に保険診療医療機関の指定申請を行う必要があります。
いかがでしたか?
お聞きしてみたいことがございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。