社会福祉法人が「養老保険」を活用して従業員の退職金を準備するメリット

東京都、大阪府、兵庫県、福岡県などで補助金申請や保険を取り扱っているカミーユ行政書士事務所です。

今回は社会福祉法人が「養老保険」を活用して従業員の退職金を準備するメリットについて解説をしていきます。

社会福祉法人では養老保険を活用することで退職金を上手に積み立てていくことができます。

養老保険に関してご興味がございましたら弊所にぜひお問い合わせ下さい。

目次

はじめに:社会福祉法人における退職金制度の意義

社会福祉法人では、従業員の定着・安心感の確保・福利厚生制度の充実が重要な経営課題です。

退職金制度は、従業員が長く安心して働ける環境を整えるうえで大きな役割を果たします。

ただし、一般企業向け制度と異なり、社会福祉法人では収益構造・資金繰り・税務上の配慮などが異なり、制度設計にあたって“安全で長期的な積立”がより求められます。

そこで、退職金準備の手段として「養老保険(法人契約型)」を活用することが、近年注目を集めています。

この記事では、社会福祉法人が養老保険を活用するメリット、設計ポイント、税務上の扱い、導入ステップ、併用すべき制度、さらに注意点・リスクまでしっかり整理して解説していきます。


養老保険とは何か?法人契約で活用する仕組み

まず、養老保険の基本と、法人契約型として退職金・福利厚生に活用する仕組みを整理します。

養老保険の基本

養老保険とは、被保険者が保険期間中に亡くなった場合に「死亡保険金」が、何事もなく保険期間を満了した場合に「満期保険金」が支払われる生命保険商品です。
法人契約として活用する場合、契約者(=法人)、被保険者(=従業員・役員)、満期保険金受取人(通常は法人)、死亡保険金受取人(従業員の遺族)という設定が一般的です。

法人契約型・福利厚生プランの仕組み

法人が保険料を支払い、満期保険金を退職金原資として法人に受け取らせる。万一、従業員が在職中に亡くなった場合には遺族に死亡保険金を支給することで、弔慰金・死亡退職金の機能も果たせます。
また、一定の税務上・会計上の取り扱い(保険料の損金算入、資産計上など)を前提に制度設計されており、これが法人契約型養老保険を退職金準備手段として有効にしている理由の一つです。


社会福祉法人にとって養老保険活用のメリット

ここからは、「なぜ社会福祉法人が養老保険を退職金準備に用いるべきか」について、具体的なメリットを複数の視点から整理します。

1.計画的な退職金の原資準備

養老保険を活用することで、所定期間(例:定年退職時まで)に向けて保険料を支払い、満期保険金を退職金原資として活用できます。

保険期間満了時に法人が受け取る満期金を退職金支給原資とすることで、「将来の退職金支払いに向けた積立」機能を果たします。

社会福祉法人では、収益変動や補助金・寄付等で資金に波があるケースもありますが、保険料を一定額に抑えて長期積立を行うことで、将来的な退職金支払いに備える「制度的な備え」を作ることができます。

2.保障機能を兼ね備えている

養老保険契約には死亡保障の部分も含まれており、従業員が在職中に死亡した際には遺族に保険金(死亡保険金)が支払われます。

社会福祉法人は、利用者支援・地域貢献を担う人材を抱えるため、従業員の「もしも」の時の備えを整えることは、信頼の維持・福利厚生の充実という観点からも重要です。

養老保険なら「退職金の備え+保障」という二重の機能を併せ持つ点がメリットです。

3.税務・会計上のメリット

法人契約型養老保険には、次のような税務・会計上のメリットがあります。

  • 保険料の一部(条件を満たせば保険料の1/2)を「福利厚生費」として損金算入できるケースがあります。
  • 満期保険金を受け取った際、同年度に従業員に退職金として支給すれば、益金・損金の相殺で実質的な課税を抑える設計が可能という説明があります。カミーユ行政書士事務所 -+1
  • 保険料積立金として資産計上できるため、財務上の“備え”として明確化できます。

これらの点は、社会福祉法人が制度設計を行う上で、「ただ積み立てる」だけでなく、税務・財務面での視点を取り入えながら退職金制度を整備できるという点でも大きなメリットと言えます。

4.制度設計の柔軟性

養老保険を活用する場合、退職金規程・福利厚生規程と組み合わせて、支給対象、支給要件、給付金額などを法人ごと・従業員ごとに設計しやすいという特徴があります。例えば、勤続年数による給付差を設ける、特定役職に対する支給条件を定める、といった制度設計も可能です。

社会福祉法人においても、常勤・非常勤、職種別、勤続年数別に制度を設計したいというニーズはあるため、この柔軟性が活きる場面があります。

5.安定性・資金流動性の面で安心材料

制度として保険契約を一旦締結しておけば、満期日あるいは解約返戻金という形で将来一定の資金が戻ってくる構造があるため、自社でただ預金を積み立てるよりも「制度上の縛り」が明確です。

社会福祉法人では「何となく積立」ではなく「制度化・継続化」できる仕組みを整えることが、財務基盤を安定させる上でも重要です。


社会福祉法人が養老保険を導入する際の設計ポイント

メリットを享受するためには、適切な制度設計・契約設計・規程整備が欠かせません。以下、ポイントを整理します。

ポイント①:加入対象・普遍性の確保

税務上、保険料の一部を福利厚生費として損金算入を認めるためには「従業員全員または相当多数を対象とした普遍的加入」が条件となることがあります。

社会福祉法人においては、常勤・非常勤含め従業員を対象とするか、勤続一定以上の者を対象とするか、加入基準を明確に定めることが重要です。

ポイント②:退職金規程・福利厚生規程の整備

契約を有効に活用するためには、就業規則または附属規程として「退職金規程」および「福利厚生規程」を整備する必要があります。給付要件、支給額算定方法、不支給・減額の例、支給時期などを明記します。

社会福祉法人では、理事会・評議員会などで制度設計を承認しておくことも望ましいでしょう。

ポイント③:契約者・受取人の設計

以下のような契約構成が一般的です:

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員・従業員
  • 満期保険金受取人:法人(退職金原資)
  • 死亡保険金受取人:被保険者の遺族
    この設計を適切に行わないと、税務上の取り扱いが変わる可能性があります。

ポイント④:保険料水準・契約期間の設計

保険料を無理なく支払える水準に設定することが重要です。

途中退職・早期解約の可能性や、被保険者の入れ替わりなども想定しながら、契約期間(例:定年まで)を設定します。

社会福祉法人では、将来にわたる収益・資金繰りの変動を見据えて、保険料を長期にわたって支払える設計が求められます。

ポイント⑤:解約返戻金・資金流動性の確保

契約期間中に解約返戻金が発生するタイプの養老保険であれば、急な資金ニーズや従業員退職時の資金繰りの変化にも対応しやすくなります。

ただし、解約返戻率・時期・条件を事前に確認し、無理な設計にならないようにしましょう。

ポイント⑥:税務・会計処理の確認

保険料の損金算入、保険料積立金の資産計上、満期保険金受取時の益金・損金処理など、会計・税務処理を事前に税理士等と確認しておくことが重要です。

また、社会福祉法人は公益法人制度や税制上の特例が絡むケースもあるため、専門家に相談して設計を進めるべきです。


この制度を社会福祉法人で導入するステップ

以下は、一般的な導入ステップです。社会福祉法人の実情に合わせてアレンジが必要ですが、流れとして参考にしてください。

  1. 現状把握・目標設定
     ・現在の従業員数・勤続状況・退職金実績の把握
     ・将来何歳・何年勤続でどの程度の退職金を想定するか試算(例:65歳・勤続20年で500万円)
  2. 制度検討・保険プラン比較
     ・養老保険契約の保険会社・プラン(保険期間・保険料・解約返戻金・保障内容)を比較
     ・他の退職金制度(例:中小企業退職金共済、企業年金、社内積立)との比較検討。
  3. 規程整備
     ・就業規則への退職金規程・福利厚生規程の追加
     ・加入対象・支給要件・減額・不支給事項など定める
  4. 契約締結
     ・法人名義で契約を結び、被保険者となる従業員・役員の同意を得る
  5. 保険料支払・会計処理実施
     ・保険料支払い開始。損金・資産計上の処理を税理士と確認
  6. 従業員説明・運用管理
     ・制度を従業員に説明(「いつ」「どのように」「どのような条件で」退職金支給になるか)
     ・途中で従業員の入退社状況・資金繰り状況を定期チェック
  7. 満期保険金・退職金支給処理
     ・契約満了時に法人が満期保険金を受け取り、退職金として従業員に支給
     ・税務処理・会計処理を適切に実施

他制度との比較:なぜ養老保険が選ばれるのか

退職金準備手段としては、他にもシステムが存在します。ここでは主要な制度と比較し、養老保険活用の特徴を整理します

制度名主な特徴養老保険との比較ポイント
中小企業退職金共済(中退共)国の制度。掛金全額を損金算入可能。制度導入が比較的容易。死亡保障機能なし。法人に戻る資金として設計されていない。養老保険は保障+退職金原資として使える点が優位。
社内積立/預金自社で自由に積立可能。流動性あり。資金の目的があいまいになりやすく、税務上のメリットが少ない。養老保険は制度化・税務設計が可能。
企業型確定拠出年金(企業型DC)・確定給付企業年金(DB)専門性が高く、従業員資産形成として魅力的。社会福祉法人にとって導入コスト・運用負担が大きいことも。養老保険は比較的シンプルに始めやすい。

このように、養老保険は「退職金と保障を同時に整え」「法人・従業員双方にメリットを出し」「制度設計を比較的簡便にできる」点で、社会福祉法人のニーズに合致しやすい選択肢です。


注意点・リスクとその対応策

どんな制度でも「導入すれば万全」というわけではありません。養老保険を退職金準備手段として活用する際の注意点・リスクを整理し、対応策も併せてご紹介します。

注意点①:途中解約・早期退職による返戻率低下

契約期間が短かったり、従業員が途中で退職したりすると、解約返戻金が保険料支払い総額を下回る可能性があります。

対応策:契約期間を定年・勤続年数に応じて十分に長くする。途中退職者が出ても制度として公平になるよう、規程上の取り扱いを明確にしておく。

注意点②:被保険者の入れ替わりが激しいと制度負担になる

従業員の出入りが多い法人では、保険料支払い負担だけが残る可能性があります。

対応策:まずは加入対象を明確にし、一定の勤続要件を設ける、または加入初期段階はミニマム額から始めて状況を見ながら拡張する。

注意点③:制度設計・税務処理を誤ると損金否認・課税対象になるリスク

加入対象・契約設計・会計処理を適切に行わないと、税務上「福利厚生費」として認められなかったり、満期保険金を受け取った際に高い課税を受ける可能性があります。

対応策:税理士・社会保険労務士と連携し、制度設計・就業規則・福利厚生規程・会計処理を整える。

注意点④:資金繰りに影響を及ぼす可能性

長期にわたる保険料支払いは、安定的な収益や支出の見通しがないと、資金繰りを逼迫する恐れがあります。

対応策:保険料支払いのシミュレーションを行い、無理のない支払い額・期間を設定。保険料・返戻金のシミュレーションも確認。

注意点⑤:制度導入に伴う管理コスト・運用チェックの必要性

制度を導入した後も、従業員の異動・退職・契約の状況を見直す必要があります。放置すると制度が形骸化します。

対応策:定期的に制度の運用状況をレビューし、従業員への説明・加入状況・会計処理の確認を体制として整えておく。


社会福祉法人ならではの視点:導入メリットを活かすために

社会福祉法人ならではの特性を踏まえ、養老保険を活用する上で特に意識すべきポイントを整理します。

  • 人材定着・信頼性のアピール:地域に根ざす社会福祉法人において、「退職金制度が整っている」「安心して働ける環境」というメッセージは、従業員採用・定着の観点からも価値があります。
  • 非営利・収益波動のある運営環境への配慮:寄付・補助金・利用者数等の影響を受けやすい法人では、「長期支払い可能性」や「将来保障の見える化」が重要。養老保険はその意味で“制度化された備え”になります。
  • 地域貢献・福利厚生の一環としての活用:従業員が安心して働ける制度を整備することは、地域福祉サービスの質向上にもつながります。養老保険活用を福利厚生強化策として位置づけることが可能です。
  • 透明性・説明責任の強化:社会福祉法人では、理事会・評議員・利用者・地域に対して説明責任が高まります。退職金制度を明文化・規程化することで、運営の透明性を高められます。

まとめ:養老保険活用で退職金+保障+節税を実現

社会福祉法人において、従業員の退職金準備は「働き手の安心」「法人の安定運営」「経営上の備え」という多面的な意義を持ちます。

その手段として、養老保険を活用するメリットは次のとおりです:

  • 計画的に退職金原資を準備できる
  • 死亡保障機能も備えており福利厚生としても有効
  • 税務・会計上の設計次第で節税・資産計上が可能
  • 制度設計の柔軟性があり、法人の実情に合わせやすい
  • 資金流動性・長期備えという観点でも制度化が進めやすい

一方で、途中解約・早期退職・加入対象の抜け・設計不備・資金繰り悪化などのリスクがあります。

これらを回避するためには、制度設計段階での綿密なシミュレーションや専門家との連携が不可欠です。

社会福祉法人として「安心して働ける職場」「地域に信頼される人材基盤」を作るために、養老保険を活用した制度設計を検討してみる価値は十分にあります。

制度設計を始めたい場合は、弊所にまずは一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

カミーユ行政書士事務所 代表・行政書士 井上卓也
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社を経て行政書士事務所を開業。300社以上の実績。趣味は週7日の筋トレ。

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