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当事務所では全国対応で医療機関をサポートしております。
今回は医療法人やクリニックの院長先生が節税に活用できる養老保険について解説をしていきます。個人のクリニックの院長先生も活用できます。
「リタイア後の生活のために退職金をしっかり準備したい」
「でも、今の税負担もできるだけ抑えたい」
「スタッフの福利厚生も整えて離職率を下げたい」
このような悩みを抱える医療法人・クリニックの院長先生は少なくありません。
そんな時に注目されるのが、養老保険を活用した「福利厚生制度プラン」です。
養老保険は、退職金準備と節税を同時に実現できる数少ない手段のひとつです。
この記事では、医療法人・一般社団法人・個人事業主の先生それぞれに向けて、税務処理の仕組み・節税効果・導入時の注意点を、行政書士の視点で徹底解説します。
1. 養老保険とは?「福利厚生プラン」の基本構造
● 養老保険の仕組み
養老保険とは、死亡保障と貯蓄機能を兼ね備えた生命保険の一種です。
契約期間中に万一のことがあれば死亡保険金を、満期まで生存すれば満期保険金を受け取ることができます。
この仕組みを「退職金準備」に応用したのが、**福利厚生制度型養老保険(福利厚生プラン)**です。
● 福利厚生プランの3つの機能
| 機能 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 死亡退職金の準備 | 被保険者が死亡した場合、遺族に保険金を支払い | 弔慰金・死亡退職金の原資 |
| 生存退職金の準備 | 満期時に保険金を法人が受け取り | 定年退職金の原資 |
| 中途退職対応 | 途中解約時に返戻金を受け取り | 中途退職者への退職金支払い |
つまり、一つの保険で「保障」と「積立」を両立できる合理的な制度なのです。
2. 【医療法人向け】養老保険で退職金と節税を両立する方法
● 節税の仕組み:「保険料の1/2損金算入ルール」
医療法人が役員・従業員を被保険者として加入する場合、
支払った保険料の**1/2を損金算入(福利厚生費)**できるのが大きな特徴です。
✅ 損金算入の条件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 契約者 | 法人 |
| 被保険者 | 役員・従業員 |
| 満期保険金受取人 | 法人 |
| 死亡保険金受取人 | 被保険者の遺族 |
| 加入対象 | 全役職員に公平な条件で加入(普遍的加入) |
この条件を満たせば、税務上も「福利厚生費」として認められます。
● 節税シミュレーション例
年間保険料:100万円/法人税率:30%の場合
| 勘定科目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 福利厚生費(損金) | 500,000円 | 当期の損金算入額 |
| 保険料積立金(資産) | 500,000円 | 将来の退職金原資 |
| 現金・預金 | 1,000,000円 | 保険料支払い |
節税効果:50万円 × 30% = 15万円の法人税軽減。
10年間継続すれば、約150万円の節税効果が見込めます。
● 満期時の経理処理と退職金支給の流れ
満期時に保険金を受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金・預金 | 20,000,000円 | 保険料積立金 | 9,900,000円 |
| 雑収入(益金) | 10,100,000円 |
このままでは雑収入に課税されますが、
同年度内に退職金として支給すれば、課税は実質ゼロに抑えられます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 役員退職金(損金) | 20,000,000円 | 現金・預金 | 20,000,000円 |
結果的に、満期保険金の課税を回避しつつ、退職金を原資から支給できます。
● 院長個人側のメリット
院長が受け取る退職金は「退職所得」として扱われます。
給与所得よりも大幅に税率が軽減されるため、法人と個人の両面で節税が実現します。
退職所得控除=40万円×勤続年数(20年超は70万円×超過年数)
→ 長期勤続ほど有利!
3. 【個人事業主向け】従業員の福利厚生と老後資金の準備
法人でなくても、個人事業主の先生も養老保険を活用できます。
● 従業員向けの福利厚生制度として
スタッフを雇用している場合、
福利厚生目的として養老保険を導入し、全員に公平な条件で加入すれば、
支払保険料の1/2を「福利厚生費」として必要経費に算入できるケースがあります。
スタッフのモチベーションや採用力向上に寄与し、長期雇用の安定化にもつながります。
● 院長自身の退職金準備には?
個人事業主には「事業主退職金」という制度がないため、
ご自身を被保険者にしても保険料は必要経費にできません。
そのため、節税+老後資金準備の両立には以下の制度を優先すべきです。
| 制度 | 概要 | 税制メリット |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 中小機構運営の退職金制度 | 掛金全額所得控除 |
| iDeCo(個人型確定拠出年金) | 自分で積み立てる年金制度 | 掛金全額所得控除+運用益非課税 |
これらを上限まで活用したうえで、養老保険を補完的に利用するのが理想です。


4. 養老保険導入前に必ず確認すべき3つの注意点
① 普遍的加入の原則
法人・事業主どちらも「公平な加入条件」が求められます。
院長だけが加入していると、給与課税の対象となり損金算入が認められません。
加入対象者の基準(勤続年数・役職など)を明確に設定しておくことが重要です。
② 被保険者の同意取得
従業員を被保険者とする場合、本人の書面同意が必須です。
同意がない契約は民法上無効となるため、加入時に必ず同意書を取り交わしましょう。
③ 資金繰りへの影響
養老保険の保険料は長期固定費になります。
契約期間中の資金繰りに無理がないように、返戻率や契約者貸付制度(返戻金の約90%まで借入可)も確認しておくことが大切です。
5. 【比較図表】養老保険 vs 通常積立 vs 小規模企業共済
| 項目 | 養老保険 | 通常積立 | 小規模企業共済 |
|---|---|---|---|
| 節税効果 | 保険料の1/2損金算入(法人) | なし | 掛金全額所得控除 |
| 万一の保障 | あり(死亡保険金) | なし | なし |
| 資金流動性 | 中程度(解約返戻金・貸付可) | 高い | 低い(原則解約不可) |
| 対象者 | 法人・従業員 | 任意 | 個人事業主・役員 |
| 老後資金形成 | 〇 | 〇 | ◎ |
6. 退職金規程の整備も忘れずに
養老保険を福利厚生プランとして活用する場合、税務上の整合性を保つために退職金規程の整備が不可欠です。
- 対象者(理事・従業員)の範囲
- 支給基準(勤続年数×基本給倍率など)
- 支給時期と決裁手順
これらを明文化し、法人の就業規則や定款附属書として備えることで、税務署からの指摘リスクを防ぐことができます。
7. 導入ステップと実行スケジュール(目安)
| ステップ | 内容 | 所要期間 |
|---|---|---|
| Step1 | 現状ヒアリング(法人形態・従業員構成・希望額) | 1〜2週間 |
| Step2 | 保険会社(プルデンシャル・日本生命など)で見積比較 | 1週間 |
| Step3 | 福利厚生規程の作成・税理士確認 | 2週間 |
| Step4 | 契約締結・経理処理反映 | 1週間 |
| Step5 | 年次見直し・節税効果検証 | 年1回 |
8. まとめ:クリニックの未来を見据えた資金設計を
養老保険を活用した退職金準備は、「今の節税」+「将来の備え」+「従業員満足度向上」を同時に叶える手段です。
ただし、加入要件・税務処理・退職金規程の整備を誤ると、「課税対象」や「損金否認」となるリスクもあります。
そのため、医療法人や一般社団法人の制度設計に精通した専門家への相談が最も確実です。
✳️ 行政書士からのアドバイス
養老保険は「金融商品」ではなく「経営戦略」です。
税理士・社会保険労務士・行政書士の連携により、退職金制度・福利厚生制度・節税対策を一体設計することが、最も効果的です。
いかがでしたか?
お聞きしてみたいことがございましたらお気軽にご相談ください。
養老保険を取り扱っている保険会社のご紹介もできます。
