兵庫県西宮市、神戸市、芦屋市、伊丹市、尼崎市などでクリニックや歯科などの医療法人設立認可申請や非営利型一般社団法人での分院開設などを専門にしているカミーユ行政書士事務所です。
今回は医療法人設立認可申請の流れやスケジュールについて解説をしていきます。

医療法人の設立認可申請は毎月受け付けているわけではなく、年に2回の申請になります。
よって申請スケジュールをしっかり把握して準備をして申請を行っていく必要があります。
最初に医療法人設立認可申請書を各都道府県に提出する必要があります。
こちらの手続きも自分で行うことが出来ますが、認可申請書の作成は複雑で手間がかかるため、「行政書士」等の専門家に依頼するのが一般的です。
手順としては仮申請→本申請と2回提出しなければなりません。
2回の審査を経て設立認可を受けることができ、設立認可書が郵送されてきます。
では医療法人設立認可申請はどのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか。
以下、解説をしていきます。
社員、理事、監事の決定
医療法人の役員は、理事と監事のことを指し、最低でも理事は3人、監事は1人、社員総会の決議で選任する必要があります(医療法第46条の5第1項)。
また、理事のうち一人を理事長とし、理事長は原則医師・歯科医師である必要があります(医療法第46条の6第1項)。
理事長は、全ての理事で構成される理事会で選出することになっています(医療法第46条の7第2項第3号)。
社員:原則3人以上必要です。
拠出の有無は問われませんが、信頼のおける人物を選定しましょう。
理事:原則3名以上必要です。
社員と兼任でも構いませんが、実際に法人の運営に参画できる者でなければなりません。
監事:1名以上。
理事又は従業員、理事の親族、医療法人に拠出している個人、取引・顧問関係にある個人(税理士、弁護士など)は監事となることができません。
監事は、監事自身が就任している医療法人の理事や、職員と兼任することはできません(医療法第46条の5第8項)。
ただし、医療法人の社員を兼ねることは可能です。
設立説明会への参加
設立説明会は都道府県などの自治体で開催されます。
都道府県によっては参加が必須のところもありますが、任意の自治体もありますので確認が必要ですので注意しましょう。
医療法人の手引きが市販されており、また都道府県の自治体のWebサイトからもダウンロードできるようになっているので、日程の都合が合わずに説明会に参加できなかった場合は、各自でダウンロードなどして確認しておくようにしてください。
事業年度の設定
医療法人の事業年度(会計年度)は4月1日から翌年3月31日までとされていますが、定款で異なる事業年度を設定しても問題ありません(医療法第53条)。
それでは1年以上の事業年度を設定しても問題無いかというと、医療法人の会計は一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うこととされており(医療法第50条)、法人税法第13条では、事業年度の期間が1年を超える場合は1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間が生じた場合は、その1年未満の期間)を事業年度と定義しているため、定款で任意の事業年度を設定するとしても、1年を超えない期間で設定する必要があります。
事業年度を設定する際は、医療法人の設立がどのタイミングになるのかを見極めることが必要です。
認可証を受け取って法務局に設立登記申請をした日が法人の設立日となります。
具体例を挙げると、定款で医療法人の事業年度を毎年9月1日から翌年8月31日までと定め、設立後最初の事業年度を法人の設立の日から翌年の8月31日までと定めた場合で、医療法人の設立登記申請をしたのが8月29日だったとき、定款の定めに従えば最初の事業年度は登記申請をした8月29日から翌年の8月31日、1年と3日となります。
しかし、法人税法の規定により事業年度が1年を超える場合は1年ごとに区分しなければならず、この場合は、設立日である8月29日から翌年8月28日までを1期目の事業年度、1期目末日の翌日である8月29日から8月31日の3日間を2期目の事業年度として、法人税の確定申告をすることになってしまいます。
こうした事態を避けるためにも、法人の設立タイミングを見極めた事業年度の設定が必要です。
ちなみに、上記事例の場合は、医療法人の事業年度を8月1日始まりの翌年7月31日締めにして最初の事業年度の設立日から翌年7月31日までとするか、事業年度は9月始まりのにして法人設立登記のタイミングを9月にするか、どちらかの対応が必要です。
定款の作成
定款とは法人のルールブックのようなものです。
医療法人の組織、運営等に関する基本を定めた定款を作成します。
基本的には、自治体が作るモデル定款に沿ったものを作成すると良いでしょう。
定款の記載内容は下記の通り医療法で定められています。
一 目的
二 名称
三 その開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理しようとする公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を含む。)の名称及び開設場所
四 事務所の所在地
五 資産及び会計に関する規定
六 役員に関する規定
七 理事会に関する規定
八 社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
九 財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定
十 解散に関する規定
十一 定款又は寄附行為の変更に関する規定
十二 公告の方法
定款は専門的な内容も多いため専門家と相談しながら進めていきましょう。
財産目録の作成と財産状況の整理、負債の状況の整理
診療所で使用している財産は原則として、医療法人に拠出するのが望ましいとされています。
また、 法人設立後2か月分以上の運転資金に見合う流動資産(現金・預金、医業未収金等)を拠出しなくてはなりません。
拠出する財産を決定したら、以下の基準の都が定める基準日時点の評価額を算定し、財産目録を作成します。
財産 | 評価額 | 添付する資料 |
土地・建物 | 不動産鑑定評価書・固定資産評価証明書の額 | 不動産鑑定評価書・固定資産評価証明書 履歴事項全部証明書 |
預金 | 残高証明書にある金額の範囲内の額 | 預金残高証明書 |
医業未収金 | 前年実績などからの推計額 | 直近の保険診療報酬通知書 |
敷金・保証金 | 契約書の記載額 ※契約書で償却について記載がある場合は、償却後の金額 | 賃貸借契約書 |
車両 | 基準日時点の簿価 | 減価償却計算書 車検証の写し 使用目的及び使用目的以外には使用しない旨を記載した書面(設立代表者名で作成) |
その他減価償却資産 | 基準日時点の簿価 | 減価償却計算書 購入した際の契約書・請求書及び領収書 |
現物拠出する財産の価額の総額が500万円を超える場合は、「現物拠出財産の価額が相当である証明」が必要です。
リース機器や賃貸借物件などは計上できないので注意しましょう。
都道府県によって拠出できるものが異なっているので確認が必要です。
個人開設診療所の医療機器購入費用などで、拠出した資産を取得するために発生した負債については、資産と同様に医療法人に引き継ぐことが可能です。
ただし、個人開設診療所の運転資金として借入した負債については、必ずしも資金使途が明確ではないこと、その立証が難しいことなどから、医療法人に引き継ぐことはできません。
事業計画と予算の決定
事業計画書に記載する内容は、運営方針、採用計画、建物の新築・増改築計画、物品計画、資金計画、弁済計画等の法人運営に関する様々な要素について、可能な限り具体的に記載をしていきます。
例えば引継債務に関する弁済計画がある場合には、認可申請書に添付する債務に関する資料との数字の整合性に気を付けながら、作成します。
事業計画書の初年度は、予算書とは異なり法人の設立月から1期間としてカウントするため、予算書とは一致しないこに注意が必要です。
予算書は、法人化に際して大きく経営環境が変わらないのであれば、過去の実績と乖離した数字にならないように気を付けます。
また、初年度は法人の設立月ではなく、診療所の開設月から最初の事業年度末を1期間としてカウントします。
通常、法人設立から診療開始までは1か月程度のタイムラグがあるので、その点を考慮して作成します。
予算書に記載する金額は、各種契約書や先に確定した役員報酬などと齟齬が無いようにします。
職員給与費内訳書は、法人化後の診療所の体制を基準に、作成します。 予算明細書等も含めて、各書類の整合性が取れているか、注意してください。
設立総会の開催
医療法人の設立認可申請をするために、まずは設立者で集まって、法人の設立に必要な事項を決めるための設立総会を開催します。
設立総会は、仮申請の日付よりも前に済ませておく必要があります。
3名以上の設立者が集まって定款を定めた後、設立時に決定すべき事項(下記)を設立者が集まり意見を述べて決議します。
決議した事項は議事録に記載し(設立総会議事録)、設立認可申請書に添付しなければなりません。
(医療法第四十四条第6項、医療法施行規則第三十一条第3号)
設立総会議事録に記載する事項は下記のような事項です。
- 医療法人設立趣旨承認
- 社員確認
- 定款承認
- 基金拠出申込および設立時の財産目録承認
- 役員および管理者選任
- 設立代表者選任
- 診療所の土地、建物を賃借する場合の契約の承認
- リース契約引継ぎ承認
- 会計年度、初年度分の事業計画および収支予算承認
- その他の必要事項
医療法人設立認可申請書の作成及び提出と登記
医療法人設立認可申請書を各都道府県に提出する必要があります。
こちらの手続きも自分で行うことが出来ますが、認可申請書の作成は複雑で手間がかかるため、「行政書士」等の専門家に依頼するのが一般的です。
手順としては仮申請→本申請と2回提出しなければなりません。
2回の審査を経て設立認可を受けることができ、設立認可書が郵送されてきます。
認可を受けた後2週間以内に、法務局へ医療法人設立登記の申請をしなければなりません。
設立登記申請においても書類の作成が煩雑なため、こちらも「司法書士」等の専門家に依頼するのが一般的です。
登記が完了することにより、医療法人の設立が成立します(申請から完了まで1~2週間前後かかります) 登記が完了した後は都道府県へ設立登記完了届を提出します。
診療所開設許可申請と保険医療機関指定申請
診療所の開設届を提出した後、保険医療機関指定申請を厚生局などへ提出します。
提出する前は指定開始日を管轄の厚生局に問い合わせておくことが大切です。
指定開始日より前に診療を開始してしまうと、患者さんは全額自己負担になってしまいます。
他に保険医療機関指定申請が必要になるケース
保険医療機関指定申請は診療所を移転する際にも必要です。
また保険医療機関の指定事項の変更がある場合も、そのつど変更届を提出しなければなりません。
例として下記のようなケースが挙げられます。
・病床の数を増加
・保険医療機関の名称変更
・法人名・代表者・管理者の変更
・事業の廃止・休業・再開
・保険医の勤務形態変更、退職、異動など
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