兵庫県西宮市にて障害福祉サービス指定申請に強いカミーユ行政書士事務所です。
今回は「障害福祉サービス事業開始の手続き」をテーマに解説していきます。
LINEで無料お問い合わせ↓
障害福祉サービス事業の手続きの流れ
居宅介護、療養介護、短期入所など障害者総合支援法の規定に従って提供されるサービスのことを総称して障害福祉サービスと言います。
障害福祉サービスを提供する事業者となるためには、サービス事業者としての要件を満たしたうえで、当道府県知事(または政令指定都市や中核市の長)の指定を受けなければなりません。
また指定を受けた事業者は6年ごとに更新の手続きをすることも必要です。
この指定を受けている事業者のことを指定障害福祉サービス事業者といいます。
居宅介護をはじめ、障害者総合支援法が規定するサービスは社会福祉法に規定する第二種社会福祉事業に該当します。
第二種社会福祉事業は本来、事業開始の日から1か月以内に都道府県知事に届出をする必要があると規定されています。
これに対して障害者総合支援法が規定する各種サービスについては「事業開始前」に届出をする必要があり、異なりますので注意が必要です。
事業者が、障害福祉サービスの提供を始めるためには「サービス管理者等を配置する」「必要な設備や備品を備える」「運営規定を定める」などというように、人員・設備・運営に関する基準などを満たしたうえで都道府県知事などに申請をしなければなりません。
ただし、いきなり申請をするのではなく、事前に都道府県などの担当部署に相談をする方法が一般的です。
その後、指定申請書等の必要書類を提出すると審査が行われます。
審査の結果、問題がないと判断されれば指定を受けることができます。
一方、問題があると判断されれば申請は却下され、指定は受けることができないという結果になります。
申請の内容が法令に定められた基準を満たしていれば指定障害福祉サービス事業者として認められますが、事業所で従事する人の知識が不足していたり、適正な福祉サービス時事業の運営ができないという場合には、指定障害福祉サービス事業者として認定されませんので注意が必要です。
指定を受けるための要件
指定は、事業の種類、そして事業者ごとに行われます。
指定事業者になるためには次の要件をすべて満たしている必要があります。
①申請者が法人格を有していること
②事業所の従業者の知識・技術・人員が省令で定める基準を満たしていること
③法律や指針で定める基準に従って適正な事業の運営ができること
④法律上の欠格事由(指定の申請前5年以内に障害福祉サービスに関し不正な行為や著しく不当な行為をしたものなど)に該当しないこと
なお、介護保険の場合には、サービスを提供する側の環境が整っていないことを理由に、支給決定が拒否されません。
しかし、障害福祉サービスに関しては。障害者側の事情のほかにサービスを提供する側が、本当にサービスの提供が可能であるのか、という点も支給決定の有無の重要な判断要素になります。
事業者が受け取る報酬の仕組み
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを提供した事業者は、サービス提供の対価として報酬を受け取ることになります。
この事業者の受け取る報酬を算出するためには、まずは総費用額を計算する必要があります。
障害福祉サービスは、そのサービスの種類ごとに単位数が定められています。
例えば、居宅介護サービスのうち、日中に行う30分以上1時間未満の居宅における身体介護は392単位です。
この単位数に10円を基本とした地域ごとに設定されている単価を掛けた金額が原則的な総費用額となります。
このようにして計算された総費用額のうち、サービスを利用した障害者が負担する能力に応じて自己負担する分を除いた金額が、介護給付費または訓練等給付費として支給されることになります。
ただし、サービスの提供方法によっては、加算や減算が行われます。
例えば、喀痰吸引の体制を整えている事業者は加算の対象になり、配置されている栄養士が非常勤の場合は減算の対象となります。
各サービスの具体的な報酬の算定基準は「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」で定めらています。
この基準は社会の要請に合わせて随時改定が行われます。
最近では2018年度に報酬の単価の基準となる地域区分の見直しが行われました。
これにより今までは7区分であった地域区分が、1級地から7級地とその他の8区分に変更されました。
サービスを提供する事業者にも色々ある
事業者には以下の種類があります。
施設や相談支援などの種類があり、法人形態を問わず、実施できるものもあります。
①指定障害福祉サービス事業者
居宅介護、重度訪問介護などの障害福祉サービスを提供する事業者のことです。
指定障害福祉サービス事業者は、事業の運営が適正に行われる体制を整備する必要があり、責任者の配置、法令順守規定の作成、外部監査の実施などが求められます。
②指定障害者支援施設
障害者に対して、施設入所支援を行うとともに施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設のことです。
ただし、のぞみの園(重度の知的障害者に対して支援を行う国の施設)や児童福祉施設は障害者支援施設には含まれません。
③指定障害児通所支援事業者
児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービスおよび保育所等訪問支援を行う事業者のことです。
④指定障害児入所施設
障害児に対して、日常生活の世話や社会生活で必要な技能・知識の教育を行う施設のことです。
施設には医療型と福祉型があります。
⑤指定障害児相談支援事業者
障害児の心身の状況、環境、サービスの利用に関する意向などを踏まえてサービスの利用計画およびその案を作成する事業です。
⑥指定特定相談支援事業者
基本相談支援(必要な情報の提供や助言)と計画相談支援(サービス利用支援)の両方を行う事業者のことです。
⑦指定一般相談支援事業者
基本相談支援と地域相談支援の両方を行う事業者のことです。
地域相談支援とは、地域移行支援と地域定着支援のことです。
地域移行支援を行う事業者を指定地域移行支援事業者、地域定着支援を行う事業者を指定地域定着支援事業者といいます。
①ー⑦のそれぞれについて、名称の最初につく「指定」とは、都道府県の指定を受けているという意味です。
なお、①障害福祉サービス事業や③障害児通所支援事業、⑤~⑦の相談支援事業は、株式会社やNPO法人など法人形態を問わずに事業主になることができます。
②障害者支援施設や④障害児入所施設は運営主体として国、地方公共団体、社会福祉法人などを想定していることがあるため、確認が必要です。
人員基準・設備基準・運営基準の特徴
障害者総合支援法に定められている障害福祉サービスを提供したい事業者は、一定の基準をクリアして指定事業者として認められないといけません。
基準には、人員基準・設備基準・運営基準の3つがあります。
居宅介護、生活介護、自立訓練、施設入所支援、共同生活援助など様々な障害福祉サービスがありますが、それぞれに3つの基準の内容は異なります。
しかし、下記のような考え方は共通しています。
①障害福祉サービスを提供する場合には、障害種別に関わらず、共通の基準とすること
②サービスの質を向上させるため、サービス管理責任者などを配置することとし、虐待防止などの責務を明確にすること
③利用者に対して安全なサービスを行うために必要な面積の区画、設備、備品を設けること。
また身近な地域で利用者のニーズに応じたサービスを提供するため、多機能型の施設も設置可能とすること
質の高いサービスをより低コストで、一人でも多くの人に提供できるよう、区分・内容・定員・達成度に応じて報酬が設定されています。
例えば、最低基準や指定基準により、療養介護では医師・看護職員・生活支援員・サービス管理責任者を置く必要があります。
これと同じように、他の生活介護や短期入所といった支援制度の中でも、それぞれ具体的に人員基準について規定されています。
生活介護を行う場合も同じように、医師・看護職員・生活支援員・サービス管理責任者を置かなければなりません。
設備についても最低基準や指定基準により、訓練室・作業室・相談室・洗面所・便所を設ける必要があることが決められています。
他にも、自立訓練を行う場合には管理者・看護職員・理学療法士・作業療法士・生活支援員・サービス管理責任者を配置しなければなりません。
これらの決まりについては最低基準と指定基準の両方に規定されているので、両方の規定を参照する必要があります。
施設系事業では、人口規模が小さいところも地域の特性と利用者の状況に合わせて、複数のサービスが一体となった運営を行う多機能型が認められています。
このことにより、利用者は自分のニーズに合わせて複数のサービスを受けることができます。
ただし、事業者の指定は6年ごとの更新が必要な他、指定の取り消しがなされることもあります。
指定が取り消されるのは、自立支援給付費の不正請求や検査の拒否といった自由がある場合です。(障害者総合支援法50条)